Google Cloud(旧称:Google Cloud Platform)をはじめとするクラウドコンピューティングサービスは、システムの運用コスト削減や安定運用につながるインフラ環境を提供します。
システムが大規模になるほどインフラ構築や管理のコストが大きくなりますが、クラウドコンピューティングサービスの提供する管理ツールやその仕組みによって大幅にコストが軽減されます。
また、クラウド上に構築することはオンプレミスとは違ったメリットも多いです。
ハードウェアの調達やメンテナンス、ネットワーク構築など物理的な作業が多く、導入コストが高くなります。
一方、クラウド上での運用は柔軟な対応が可能です。
使用量に応じて課金されるためコストパフォーマンスが良く、自動スケーリングや冗長性への対応が容易で過負荷への柔軟性が高いです。
本記事では、Google Cloudの特徴と付随するサービスを紹介します。
また、クラウドコンピューティングサービスで高いシェアを誇るAmazon Web Services(以下、AWS)との比較を行い、Google Cloudを選ぶメリットを解説しています。
![Nao Yanagisawa](https://xs691486.xsrv.jp/wp-content/themes/JITERA/images/director-nao-1.png)
2014年 大学在学中にソフトウェア開発企業を設立
2016年 新卒でリクルートに入社 SUUMOの開発担当
2017年 開発会社Jiteraを設立
開発AIエージェント「JITERA」を開発
2024年 「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」に選出
Google Cloudとは?
Google Cloudは、Googleが提供するクラウドコンピューティングサービスです。
クラウドコンピューティングサービスは、クラウド上にサーバ、ネットワーク、ストレージ、データベースなどのインフラを仮想的に割り当てて提供します。
そのためGoogle Cloudでは、物理的なインフラを用意することなく、Googleが持つ巨大なリソースの一部を利用したシステム構築が可能です。
また、使用量に応じて料金が発生する仕組みで、コストパフォーマンスが高いのも特徴です。一定量は無料で利用できるため、試験的な運用にも向いています。
さらに、Google独自の機械学習モデルやデータ分析基盤を提供しており、得意領域のメリットを享受できます。
本章では、Google Cloudの特徴と、類似サービスのAWSとの違いを解説します。
Google Cloudの特徴
Google Cloudでは、世界各地にあるGoogleのデータセンターを仮想的なインフラとしてユーザーに提供します。
物理的なインフラを扱う場合は、ハードウェアに対するメンテナンス、故障時の態勢、冗長化、災害対策など必要な対応項目が多岐にわたります。
Google Cloudを利用することで、インフラのメンテナンスや責任はGoogle側が担うため、ユーザーは開発や運用に集中できます。
なお、提供されるリソースの範囲に応じてIaaS、PaaS、SaaSなどと区別され、提供範囲を大きくするほどユーザー側の管理業務を削減できます。
またGoogle Cloudには、ブラウザで操作できる専用の管理画面(Google Cloudコンソール)が用意されており、非エンジニアでも操作しやすいUIを備えています。
開発や運用にかかる作業負担を減らすサービスも提供されており、開発サイクルをより短縮できます。
AWS(Amazon Web Services)との違い
Google CloudとAWSでは、提供サービスや料金体系で共通する内容が多いですが、それぞれ特徴があります。
Google Cloudには、可用性が高く強固なインフラと、機械学習モデルやデータ分析などビッグデータ処理基盤があります。
それに対してAWSは長く利用されてきた実績があり、世界中で高いシェアを誇ります。
そのため、資格を有する専門のエンジニアが多く、ノウハウが積み上げられています。
以降では、各項目に分けて違いを紹介していきます。
サービス | Google Cloud | AWS |
運営元 | Google ※グーグル・クラウド・ジャパン合同会社 |
Amazon ※アマゾンジャパン合同会社 |
料金体系 | 従量課金制 ※無料枠あり |
従量課金制 ※無料枠あり |
機能の特徴 | 機械学習、データ分析に特化 | ・幅広い分野のサービスを提供 ・量子コンピューティング、ロボット工学、人工衛星など |
ストレージ | ・Persistent Disk ・Cloud Storage |
・Amazon EBS、EFS ・Amazon S3 |
セキュリティ | ・専門家による常時監視 ・データセンター内の物理的セキュリティ |
・官公庁でも採用される実績がある |
データベース | ・Cloud SQL | ・Amazon Aurora ・Amazon Redshift |
運営元
Google CloudはアメリカのGoogleが運営しており、日本ではグーグル・クラウド・ジャパン合同会社が運営しています。
Googleはエンドユーザー向けの検索エンジン、Gmail、Googleドライブなど広く認知されたサービスを提供しており、Web業界のスタンダードを生み出してきた企業です。
また、ユーザーを第一に考える経営理念を掲げ、「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにする」をモットーとする広告会社でもあります。
一方でAWSは、大手ECサイトとしても有名なAmazonが運営するサービスです。
AWSの事業収益はAmazonの中でも大きなウェイトを占め、力を入れている事業です。
総務省の調査によれば、クラウドコンピューティングサービス市場において国内第2位のシェアを誇ります。
サービス | シェア率 |
Azure(Microsoft) | 17.1% |
AWS(Amazon) | 15.2% |
Google Cloud(Google) | 4.7% |
どちらのサービスも世界規模のWebサービスを展開するグローバル企業が運営しており、高い可用性を誇るネットワークインフラを提供します。
料金体系
どちらのクラウドコンピューティングサービスも利用料金は従量課金制です。
契約時の初期費用はなく、サービス使用量に応じて料金が決められているため、コストパフォーマンスに優れています。
使用量はサービスによって異なり、使用時間、数量、通信量、データ容量、回数などさまざまです。
各サービスには無料枠が存在し、使用量によっては費用なしで利用できます。
ただし、何の使用量がどの時点で課金されるかを理解しておく必要があり、サービスの仕組みへの理解が不可欠です。
便利なサービスを取り入れることも重要ですが、料金がかさむためコストに見合う設計が求められます。
料金計算ツールが公式で用意されているため、予算におさまるか事前に見積りしておきましょう。
機能の特徴
どちらのクラウドコンピューティングサービスも基礎的なインフラを提供しますが、特定の目的で利用されるサービスの種類で違いがあります。
機械学習、データ分析などビッグデータ処理を扱うサービスに特徴があります。
例えば、Googleの検索エンジンは膨大な量のインデックスを高速処理できるパフォーマンスを実現でき、インフラを持ちます。
また、AI研究に多額の投資を続けており、言語翻訳、音声認識、画像認識などの機械学習サービスの改良に今後も期待できます。
AWS
提供サービスの種類が多く、幅広いIT分野をカバーしています。例えば、IoT、量子コンピューティング、ロボット工学、人工衛星など将来性のある分野のサービスを展開しています。
ストレージ
クラウドコンピューティングのストレージは、物理ディスクと違ってスケーラブルで、用途に応じてディスクの種類を切り替えできる柔軟性があります。
例えば、安価で長期保管向きのHDD、高速処理向きのSSDといった使い分けが可能です。
また、容量無制限で保存できるクラウドストレージサービスも選べます。
ストレージの料金はデータ容量に比例しますが、クラウドストレージの場合は読み込みや書き込みにかかるデータ転送量も影響します。
サービス | ストレージ |
Google Cloud | ・Persistent Disk ・Cloud Strage |
AWS | ・Amazon EBS ・Amazon EFS ・Amazon S3 |
セキュリティ
クラウドコンピューティングにおいてセキュリティは重視するべき要素の1つです。
オンプレミスと違って、クラウド上のリソースは外部ネットワークからのアクセスに対して厳重なセキュリティを確保する必要があります。
Googleはセキュリティとプライバシーを重んじており、社内教育も盛んで、多数の専門家をかかえています。
また、データセンターのセキュリティ対策では、厳格な入出管理に加え、万全な災害対策が行われています。
さらに、物理サーバにはGoogle独自のハードウェアを採用しており、データの保護や高可用性を実現しています。
AWS
AWSは安定運用とセキュリティを両立させるクラウドインフラとして設計されており、国内の官公庁でも採用されています。
データベース
どちらのクラウドコンピューティングサービスでも、さまざまなデータベースサービスが提供されています。
リレーショナルデータベース、NoSQLデータベース、インメモリデータベースなど用途に応じたデータ保管方法が選べます。
また、仮想サーバにホストされるデータベースと比べてスケーラブルで柔軟性があります。
各社で独自のデータベースが提供されていますが、既存のエンジンにも対応しているためオンプレミスからの移設も可能です。
サービス | データベース |
Google Cloud | Cloud SQL ※PostgreSQL、SQL Server、MySQL |
AWS | Amazon Aurora ※PostgreSQL、SQL Server、MySQL、MariaDB、Oracle、Db2 |
Google Cloudを利用するとできること
Google Cloudでは、個々の目的を解決するための多くのサービスが提供されています。
サービスの種類は多いですが、すべてのサービスを理解する必要はなく、目的に応じてサービスを選定していきましょう。
本章では、Google Cloudで提供される主要なサービスを紹介していきます。
分類 | 個別サービス名 |
データ分析 | Cloud Dataflow BigQuery |
コンピューティング | Compute Engine App Engine Kubernetes Engine |
ストレージ | Cloud Storage Cloud SQL Cloud Datastore |
ネットワーク | Cloud DNS |
機械学習 | Translate API |
その他ツール | Cloud Pub/Sub Cloud Endpoints Google Workspace |
Google Workspace(旧G Suite)
Google Workspaceには、ビジネスで活用できるツールが集約されています。
Gmail、Googleカレンダー、Google Meet、Googleドライブ、ドキュメント、スプレッドシート、スライド、フォームなどを含むサービスです。
個々のサービスは個人向けにも無償で提供されていますが、有償ではストレージ量、電話・メールでのサポート、メールの稼働率保証、セキュリティ機能の拡充などが異なります。
法人向けのサービスでは、組織内の一員にアカウントを配布し、管理が可能です。
Cloud Dataflow
Cloud Dataflowはサーバーレスのパイプラン処理環境を提供するサービスです。
例えば、機械学習モデルを生成する一連の流れを定義でき、データの前処理、トレーニング、検証、評価を効率良く処理します。
データの入出力には、規模や保存形態に合わせた他のデータ管理サービスとの連携が可能です。
なお、サーバーリソースは使用率に応じて自動スケーリングされるため、データの規模を気にする必要はありません。
リアルタイムデータを用いた異常検知、ビジネスインサイトを引き出す予測パイプラインに活用できます。
BigQuery
BigQueryは、ビッグデータ処理のためのストレージとデータ分析基盤を提供するサービスです。
コンソール画面上で構造化・非構造化データを集約でき、なじみのあるSQLによる分析が可能です。
BigQueryはサーバーレスのサービスで、分析に必要なリソースやストレージを気にする必要はありません。
また高速処理が可能で、ビジネスにおける素早い意思決定に役立つリアルタイム分析や予測分析に適しています。
また、機械学習向けのBigQuery MLは、プログラミングが不要なので非エンジニアでも簡単にモデル作成が可能です。
線形回帰やロジスティック回帰のように簡単なモデルはすぐに利用でき、外部で生成したTensorFlowモデルを取り込むことも可能です。
Compute Engine
Compute Engineは、仮想マシンをクラウド上にプロビジョニングするIaaSです。
サーバー用途に応じて、CPU、GPU、メモリ、ストレージなどのリソースを選べます。
なお、仮想マシン作成後にスケールアップ・スケールダウンすることができ、リソースの需要に応じた柔軟性があります。
また、仮想マシンのOSを選ぶことができ、初期状態でホストされるため、自由に設定することが可能です。
必要なアプリケーションやミドルウェアのインストールが可能で、オンプレミスからの移行にも対応しやすいです。
オンプレミスと比べて、初期費用が不要で、選択したリソースに応じた月額料金で済むため、予算が組みやすいメリットがあります。
App Engine
App Engineは、Webアプリケーションのホスティング環境を提供するサービスです。
また、サーバーレスで規模に応じて自動スケーリングされるため、安定した環境でアプリケーションを運用できる特徴を持ちます。
そのため、アプリケーションの開発やデプロイに集中できます。
なお、アプリケーションの言語はPython、Java、PHP、Node.jsなどの種類があります。
Cloud Storage
Cloud Storageは、データ容量無制限で使える従量課金制のクラウドストレージです。
利用料金は目的ごとに異なり、高頻度で使うデータ、利用頻度は低いが長期間保存しておきたいデータ、バックアップデータなど用途に応じてコストパフォーマンスの良いストレージタイプが用意されています。
なお、Googleドライブと違って、独自ドメイン設定や柔軟なアクセス制御が可能なため、他のサービスとの連携を目的に利用されます。
また、低レイテンシで高速なアクセスが特徴なため、アクセス頻度の高いWebサイトの画像や動画の保管先として利用されます。
Kubernetes Engine
Kubernetes Engineは、Google Cloud上で扱えるKubernetesマネージドサービスです。
Kubernetesは、アプリケーションの構成要素をひとまとめにしたコンテナを組み上げる管理ツールで、環境によらずアプリケーションを簡単にデプロイできる環境を提供します。
それにより、開発者のためのアプリケーション実行環境の共有が容易になります。
また、アプリケーションのテストからデプロイまで一貫した構成管理が行えます。
なお、コンテナは仮想マシンと違って、同一のOS上にホストされるため、余計なサーバーリソースを必要としません。
Kubernetes Engineは、水平・垂直スケーリングに対応しており、効率的なリソース消費による高いコストパフォーマンスを実現します。
Cloud SQL
Cloud SQLは、クラウド上でさまざまなデータベースを、サーバーレスで利用できるサービスです。
例えば、下記のRDBMSを利用可能で、オンプレミスからの移行も容易です。
- PostgreSQL
- SQL Server
- MySQL
Cloud SQLでは、データベース管理者が行うアップグレード対応、バックアップ管理などの作業負担を削減する機能を備えています。
普段の保守管理にはPHPMyAdmin、SQL Server Management Studioなど使い慣れた管理ツールも利用できるので、移行の負担も少ないでしょう。
なお簡単なアプリケーションであれば、App Engineと組み合わせてサーバーレスで素早くデプロイできます。
また、データベースの冗長化、レプリケーションなど高可用性を確保する構成もサポートしており、大規模な構成にも対応可能です。
より高いパフォーマンスやシステムダウンが許容できないシステムの場合は、Google Cloud内の別サービスであるCloud Spannerを検討してみましょう。
Cloud Datastore
Cloud Datastoreは、NoSQLデータベースをサーバーレスで提供するサービスです。
NoSQLデータベースは、DBMSよりも高いパフォーマンスで大容量のデータを扱うのに向いている反面、厳密な整合性が求められるデータの扱いには不向きです。
スキーマレスのデータベースであるため、ログ書き込みや非構造化データのリアルタイム保存に適しています。
また、Cloud Datastoreはスケーラブルなデータベースであり、アプリケーションの需要に合わせてリソースが拡張されます。
App EngineやCloud Functionsなど他のGoogle Cloudのサービスとの連携も容易で、柔軟なアプリケーション構築が可能です。
Cloud Pub/Sub
Cloud Pub/Subは、データ収集のパイプ役を担うメッセージングサービスです。
分析のために収集するデータをGoogle Cloud上の各リソースに対して効率的に送り出すことが可能です。
データの収集元と保存先が増えるほど管理が煩雑になりますが、Cloud Pub/Subがデータ送受信を一手に引き受けることで構成が明確になり、変更への柔軟性が高くなります。
また、Cloud Pub/Subは非同期に並列処理され、低レイテンシであることから、リアルタイムのデータ収集に適しています。
データの保存先としては、スケーラブルなデータベースのCloud Datastoreや、分析基盤を兼ねたBigQueryが選ばれます。
Cloud DNS
Cloud DNSは、Google CloudのDNSで独自ドメインを管理するためのサービスです。
独自にDNSサーバを建てることなく、ドメインをインターネット上に公開できます。
また、一般的な公開だけでなく、組織のイントラネット内での限定公開も可能です。
組織内のイントラネット内のDNSサーバーと連携できるため、外部にドメインを公開することなくクラウドとオンプレミス間で利用できます。
なお、新規ドメインを取得できるGoogle Domainsは、Squarespaceに事業売却ののち引き継がれました。2023年6月にサービス終了しています。
Cloud Endpoints
Cloud Endpointsは、独自のAPIをデプロイするためのAPI管理サービスです。
API開発に必要なフレームワークを提供し、アクセス制限するためのAPIキーやトークンの仕組みを簡単に実現できます。
APIのプロトコルは次の3種類から選択します。
- Cloud Endpoints for OpenAPI
- Cloud Endpoints for gRPC
- Cloud Endpoints Frameworks
また、Cloud Endpointsではスケーラブルで高パフォーマンスのリソースが提供されます。
さらに、APIのパフォーマンス改善に役立つロギング、モニタリングツールが提供され、トラフィックやエラー率の収集や分析が可能です。
Translate API
Translate APIはかつてGoogle翻訳として提供されていたテキスト翻訳サービスです。
現在では、動画や音声を含めた翻訳を行うCloud Translationに統合され、その中のCloud Translation APIの機能として集約されています。
Googleの独自の大規模言語モデルによって違和感のない翻訳を行います。
Cloud Translationでは、翻訳APIとして利用できるだけでなく、言語モデルを独自にカスタマイズ可能です。
組織内のドキュメントでトレーニングを行うことで、業界にフィットした言語モデルに成長させ、高い翻訳精度を実現できます。
動画の字幕、吹き替えを付けたり、チャットでのリアルタイム翻訳などあらゆる場面に対応できるようになります。
Google Cloudのメリット・デメリットは?
Google Cloud以外にも国内外で多くのクラウドコンピューティングサービスが提供されています。
それぞれ特徴があり、採用において重視するポイントによって選び方が変わります。
Google Cloudではシステムの安定稼働、セキュリティの面で特徴的です。
ただし、Google Cloudは海外のサービスであるがゆえに、言語や文化の違いなどサポート面のデメリットもあります。
なお、国産のサービスは国内企業の信頼性やサポート面での安心感がある反面、提供サービスの種類が少ないです。
ここではGoogleと同列のグローバル企業と比較したときのメリット、デメリットを紹介します。
Google Cloudのメリット
Google Cloudを選ぶメリットは、実績のある世界規模のインフラを利用したシステムを構築できることにあります。
低レイテンシのネットワークや堅牢なセキュリティのもとで利用できます。
また、GoogleのAI研究の成果を享受できる機械学習に関連したサービスが豊富です。
本章では、Google Cloudの具体的なメリットを3つ紹介します。
安定性が高く通信やデータ処理の速度が高い
Google Cloudは、世界規模のインフラの上に構築されるサービスです。
Googleの検索エンジン、Gmail、YouTube、Googleドキュメントなどのエンドユーザー向けサービスは、巨大なリソースによって支えられています。
世界中からのアクセスに耐えうるネットワークやサーバーを備えており、高い可用性と応答速度を発揮します。
Google Cloudも同様のインフラに基づき、安定したパフォーマンスを発揮します。
分析ツールや機械学習ツールが充実している
Googleは機械学習やAI分野の研究に力を入れています。AI開発で先行していたDeepMindを買収するなど、AI分野に対して長年にわたり研究や投資を続けてきました。
最近では、OpenAIの生成AIであるChatGPTが注目され始めましたが、Googleでも生成AIのGeminiを発表し、追従しています。
そういった背景もあり、Google Cloudは長年積み上げられてきたノウハウに基づいたテキスト翻訳、音声認識といった機械学習サービスを提供しています。
また、機械学習モデルの生成に最適なGPUやTPU、ビッグデータの高速処理に必要なストレージを提供します。
Googleのノウハウに基づいた学習基盤を利用することで、ビジネスに活用できる生成AI、画像認識のモデルを作り出すことも可能です。
さらに、データサイエンティストやデータアナリストの業務をサポートするツールや、開発サイクルのパイプライン構築基盤を提供します。
セキュリティ面もしっかり対策
Googleのデータセンターは、強力なセキュリティを備えた独自のOSやハードウェアで構成されています。
世界中に配備されたサーバーは、自社のセキュリティ専門エンジニアの監視体制のもと運用されています。
データセンター内では、通信データやストレージ内のデータは暗号化されており、Googleの厳格なセキュリティ基準に基づいてユーザーのリソースが保護されます。
そのため、企業の機密情報や顧客情報をクラウド上で安心して運用可能でしょう。
Google Cloudのデメリット
Google Cloudはクラウドコンピューティングサービスとして申し分ないですが、他社と比較したデメリットもあります。
採用する場合は、デメリットをカバーできるか見極めることが重要です。
以降ではGoogle Cloudのデメリットを2つ紹介します。
日本語訳が対応していない部分もある
Google Cloudの最新情報は英語で発信されるため、各ドキュメントの日本語への翻訳が間に合っていないことがあります。
Google Cloudのサービスは種類が多く、適宜アップデートされていくため、それぞれのメリットや特徴、詳細な仕様を把握するのにドキュメントの読み込みが必要です。
なお、主要なサービスは日本語のドキュメントが整備されていますが、翻訳された文章であるため違和感やわかりづらさがあります。
リージョン(データセンター)が少ない
Google Cloudで利用される物理的なサーバーは、各地域のデータセンターで管理されています。
利用地域とリージョン(データセンターの場所)の物理的な距離が近いほどネットワークパフォーマンスが高いため、近くのリージョンが望ましいです。
ただし、1つのリージョンだけ使用していると、リージョンで障害が起こった時に大きな影響を及ぼします。
そのため、障害を見越して、複数リージョンに分けることもあります。
例えば、日本では東京と大阪にリージョンがあるため、冗長性を持たせる場合に別リージョンでサービスをホストすることがあります。
なお、世界各地に拠点を持つ場合、必要な地域にデータセンターがないことはデメリットです。
主要な地域にはデータセンターが配備されていますが、拠点付近にリージョンがあるか確認しておきましょう。
サービス | Google Cloud | AWS | Azure |
リージョン数 | 40 | 33 | 60 |
ゾーン数 | 121 | 105 | 120 |
利用可能地域 | 200 | 245 | 140 |
Google Cloudの使い方
Google Cloudを利用するには、公式サイトから登録します。
本章では、Google Cloudへの登録からコンソールへのアクセスまでの手順を紹介します。
なお、Google Cloudの無料枠だけ使うとしても、クレジットカード登録が必須なので準備しましょう。
また、新規ユーザーには無料トライアルとして300ドル相当のクレジットが付与されます。
クレジットは無料枠とは別で使用でき、登録から90日間有効です。
Googleアカウントを作成する
Google Cloudの利用登録をするには、下記の2点が必要です。
- Googleアカウント
- クレジットカード
まずはGoogle公式サイトにアクセスしてGoogleアカウントを登録しましょう。
公式サイトの「無料で利用開始」ボタンをクリックすると、ログインページに遷移します。
Googleにログインしているなら、登録ページに遷移します。
Googleアカウントがない場合は、「アカウントを作成」から登録しましょう。
Google Cloudにアクセスする
Google Cloudの公式サイト経由でGoogleアカウントにログインすると、「ステップ1/2 アカウント情報」のページに遷移します。
国の選択肢から「日本」を選び、「同意して続行」ボタンをクリックしましょう。
続いて、「ステップ2/2 お支払い情報の確認」のページに遷移します。
アカウントの種類で「個人」または「法人」を選び、お支払い方法でクレジットカード情報と住所を入力しましょう。
無料枠だけを使うつもりでもクレジットカードの入力は必要になります。
Google Cloudの登録が完了すると、Googleアカウントのメールアドレス宛に完了通知メールが送信されます。
メニューボタンから機能にアクセス
Google Cloudの登録完了後は、管理画面であるGoogle Cloudコンソールに遷移します。
Google Cloudコンソールでは、各サービスにアクセスでき、リソースの作成・削除が行えます。
Google Cloudコンソールからは、GUI操作だけでなく、Cloud Shellと呼ばれるCUI操作も可能です。
なお、gcloud CLIを使うことで、クライアントPCからの操作が可能です。
gcloud CLIはGoogle公式サイトからダウンロードして、インストールできます。
Google Cloudのまとめ
Google Cloudは、安定運用の実績のあるインフラを背景に持つGoogleが提供するクラウドコンピューティングサービスです。
利用料金は使用量に応じて発生するため、コストパフォーマンスが良いです。
サービス内容は他社と比べても遜色なく、万全なセキュリティと高い可用性を持つインフラを利用でき、クラウド環境の構築基盤として申し分ありません。
また、Google独自のノウハウを生かした機械学習やデータ分析の基盤をサービスとして提供します。
クラウド環境の柔軟性を考えれば、複数社のサービスを組み合わせるマルチクラウド構成も容易なため、必要なサービスだけ採用しても良いでしょう。
ただし、ミッションクリティカルな業務システムや、オンプレミスとの連携が必要な社内システムは問題が複雑になり、適切な構成を探るのが難しいでしょう。
クラウド専門のエンジニアであれば、自社の事情を汲み目的や予算に合わせた提案を行ってくれるため、豊富な実績を持つ株式会社Jiteraに依頼を検討してみてください。