テスト駆動開発(Test-Driven Development:TDD)は、新しいソフトウェア開発の手法として注目されています。
効率的に開発ができる多くのメリットがありますが、従来の開発手法とは異なる部分もあるため、開発方法の流れを理解しておく必要があります。
この記事では、テスト駆動開発の概要から言語別のやり方・ポイント、メリット・デメリットまで幅広く解説していきます。
システム・アプリ開発を検討している方はぜひご参照ください。
テスト駆動開発(TDD)とは
テスト駆動開発(TDD)はソフトウェア開発のアプローチの一つで、開発プロセスを「テスト→実装→リファクタリング」の繰り返し進める方法です。
従来の「設計→実装→テスト」という流れではなく、テストを最初に実施することで機能が正確に実装されていることを保証しようとするのが目的です。
TDDの基本サイクルは「レッド・グリーン・リファクタリング」と呼ばれ、まず「レッド」フェーズで失敗するテストを書き、実装されるべき新しい機能や修正が必要なバグに対応していきます。
次に「グリーン」フェーズで、テストがパスする最小限のコードを書きます。
この段階では、コードの質よりもテストをパスさせることが優先されます。
最後に「リファクタリング」フェーズでコードを整理し、重複を排除することで可読性を高め、保守性と拡張性を向上させていきます。
アジャイル開発を実現した方法
テスト駆動開発は、アジャイル開発の重要な要素として広く認識されています。
アジャイル開発は、「計画」「設計」「実装」「テスト」という一連のプロセスを小さなサイクルで繰り返し、素早く成果物を完成させていく手法です。
このアプローチでは、各サイクルの早い段階でテストを実施する必要があります。
テスト駆動開発は、テストを先に作成し、それに基づいてコードを実装していくという方法論です。結果として、品質の高いソフトウェアを効率的に開発できます。
テスト駆動開発とアジャイル開発は、相性の良い組み合わせです。
アジャイル開発のサイクルにおいて、テスト駆動開発を取り入れることで、バグの早期発見や仕様変更への柔軟な対応できるようになり、ソフトウェアの品質や保守性も向上します。
アジャイル開発については以下の記事で詳細をまとめているので、ぜひご確認ください。
【言語別】テスト駆動開発(TDD)のポイント
テスト駆動開発(TDD)は品質の高いソフトウェアを効率的に開発するための手法で、さまざまなプログラミング言語で適用可能であり、言語の特性やエコシステムに応じて異なるツールやフレームワークが利用されています。
ここでは、主要なプログラミング言語ごとにTDDの適用方法とポイントを具体的に紹介していきます。
Java
JavaでのTDD実践についてはJUnitが広く使われています。
JUnitはJavaのテストフレームワークのデファクトスタンダードであり、シンプルなアノテーションを用いてテストケースを簡単に記述できます。
例えば、@Test アノテーションを使ってテストメソッドを定義し、アサーションを用いて期待値と実際の結果を比較するなどがあります。
JavaにおけるTDDのポイントとして、テストを書く過程でインターフェースや抽象クラスを適切に利用し、依存性の注入(DI)を行うことでモジュール間の疎結合を実現しやすくなります。
これにより、コードの再利用性と保守性が向上するのでリファクタリングもしやすくなります。
Python
PythonでTDDを行う際には、unittest モジュールやより洗練された機能を提供するpytest がよく使用されます。
特にpytest は、シンプルな構文と強力なフィクスチャ管理能力によりPythonコミュニティ内で高い人気を誇っています。
PythonにおけるTDDのキーポイントは、動的型付け言語の柔軟性を生かしつつテストを通じてコードの規律性を明確にすることです。
Pythonのテストでは、よくモックオブジェクトやパッチを使用して外部依存性を制御してテストの範囲を適切に限定するため、テストの実行速度を保ちつつコードの正確性を保証することができます。
JavaScript
JavaScriptでのTDDには、JestやMochaといったテストフレームワークがよく利用されます。
これらのフレームワークは、フロントエンド開発だけでなくNode.jsを使ったバックエンド開発においても有効です。
JavaScriptにおけるTDDのポイントとしては非同期処理のテストに特に注意を払っている点です。
しかし、JavaScriptは非同期処理が豊富に用いられる言語であるため、Promiseやasync/awaitを適切に扱う必要があります。
例えばJestなどのモダンなテストフレームワークでは、非同期処理のテストを簡潔に記述するための機能を提供しています。
Ruby
RubyにおけるTDDではRSpecが広く採用されています。
RSpecは、読みやすい自然言語風の構文を特徴とするBDD(Behavior Driven Development)フレームワークですが、TDDにも適しています。
RubyとRSpecを用いたTDDのポイントは、ドメイン固有言語(DSL)を活用して意図を明確に表現したテストコードを書くことです。
RSpecのDSLを用いることでテストコード自体が仕様書としての役割を果たすようになり、開発者だけでなくステークホルダーとのコミュニケーションツールとしても機能します。
テスト駆動開発(TDD)の4つのメリット
TDDには、以下のようなメリットがあります。
- 不具合の検知が早い
- 開発者の負担を軽減できる
- 開発の進捗が見える
- 要件や仕様を深く理解できる
それぞれ確認しましょう。
不具合の検知が早い
TDDでは、プログラムの規模が小さい段階からテストを実施します。
そのため、バグを早い段階で発見し、修正することが可能です。
不具合の修正コストは、開発の後半になるほど高くなるため、早期発見はとても重要と言えます。
開発者の負担を軽減できる
TDDでは、早い段階からテストを実行しながら開発を進めるため、後から大きな変更ややり直しが発生するリスクが低くなります。
安心して開発作業を進められる点はエンジニアにとって大きなメリットです。
開発の進捗が見える
TDDでは、必要最低限の機能から実装し、テストを繰り返す方式です。
この方法により、開発の進捗状況が明確になり、プロジェクト管理がしやすくなります。スケジュールも立てやすくなります。
要件や仕様を深く理解できる
TDDを実践するには、事前に要件や仕様を深く理解する必要があります。
テストを設計する過程で、開発者は要件・仕様を詳細に分析し、理解を深めることができるため、的確な実装が可能です。
テスト駆動開発(TDD)の3つのデメリット
TDDには以下のデメリットも存在します。
- テストコードの実装や保守に時間がかかる
- 開発にかかるコストが増える
- 慣れないと作業漏れが起きやすい
上記3点の詳細は以下の通りです。
テストコードの実装や保守に時間がかかる
TDDでは、本番コードだけでなくテストコードも実装する必要があります。
テストコードの作成には時間がかかるため、開発全体の工数が増加する点はデメリットです。
テストコードもメンテナンスが必要なため、保守コストも考慮しなければなりません。
しかし、テストコードの実装に成功すれば、後の不具合修正などの手間を削減できる場合があるため、結果的には開発時間の短縮につながります。
開発にかかるコストが増える
先述した通り、TDDの導入でテストコードの実装に時間を要するため、開発コストが増加します。
特に、短期的なプロジェクトでは、コスト増加で予算内に収めるのが難しくなるケースがあります。
ただし、長期的に見ると、品質向上によるコスト削減効果も期待できるため、TDDのメリットは大きいと言えるでしょう。
慣れないと作業漏れが起きやすい
今までの方法からTDDに切り替える場合、習熟度が低いと作業漏れが起きやすくなります。
テストコードの実装忘れやテストケースの不足などが発生する恐れがあるため、思ったよりもうまくいかないケースが考えられます。
特に、TDDの導入初期は特に注意が必要です。
教育や訓練に時間を割いて、長期的にコストダウンできるように運用しましょう。
テスト駆動開発(TDD)の進め方
TDDをうまく進めるには、以下のステップに沿って実施しましょう。
- 必ず失敗するテストコードを記載する
- 成功するテストコードを記載する
- リファクタリングする
1.必ず失敗するテストコードを記載する
TDDでは、まず実装したい機能に対して、必ず失敗するテストコードを記述します。
このテストコードは、まだ実装されていない機能に対するテストであるため、当然失敗しますが、それで問題ありません。
なぜなら、テストケースを考えることは、機能の入力パターンや期待する出力結果を明確になるからです。
例えば、ユーザー登録機能を実装する際に、以下のようなテストケースを考えるとします。
- 有効なユーザー情報を入力した場合、登録が成功する
- 必須項目が未入力の場合、登録が失敗する
- すでに登録されているメールアドレスを使用した場合、登録が失敗する
これらのテストケースを考えることで、一例として必須項目のチェックやメールアドレスの重複チェックが必要であると分かります。
テストケースを見れば、どこまでの機能を実装すればよいのかが分かるため、必要以上の機能を実装してしまうことを防げます。
このように、テストコードが失敗することで、これから実装する機能が正しく動作していないことを確認可能です。
2.成功するテストコードを記載する
次に、先ほど記述した失敗するテストコードを成功させるために、最小限の実装を行います。
このステップでは、テストコードを満たすことだけを目的とし、できるだけシンプルな実装を心がけます。
テストコードが成功することで、実装した機能が要求された仕様を満たしていると確認可能です。
ただし、このステップでは、コードの可読性や効率性は考慮する必要はありません。
3.リファクタリングする
前のステップでテストコードが成功したら、リファクタリングに入ります。
リファクタリングとは、コードの動作を変えずに、可読性や保守性を向上させる作業です。
具体的には、重複したコードの削除、変数名の見直し、コードの整理などを行います。リファクタリングにより、コードの品質を向上させることが可能です。
ただし、リファクタリング後もテストコードが成功することを確認しなければなりません。
テストコードが失敗した場合は、リファクタリングによってバグが混入したリスクがあるため、修正が必要です。
テスト駆動開発(TDD)に適した開発環境の構築
テスト駆動開発(TDD)はソフトウェア開発の品質を向上させる開発手法ですが、この開発手法を最大限に活用するためには適切な開発環境の構築が不可欠です。
ここでは、TDDに適した開発環境を構築するための重要な要素を詳しく解説していきます。
テストフレームワークの選択
TDDを実践する上で重要なツールの一つがテストフレームワークです。
適切なテストフレームワークを選択することでTDDの効率を上げることが可能です。
使用するプログラミング言語やプロジェクトの特性に応じて最適なフレームワークを選ぶ必要がありますが、例えばJavaではJUnitが、JavaScriptではJestやMochaが、Pythonではpytestやunittestがよく使用されています。
これらのフレームワークは、テストの記述、実行、結果の報告を簡単に行えるように設計されています。
フレームワークを選択する際には、コミュニティのサポートやドキュメントの充実度、拡張性なども考慮していくと良いでしょう。
テストランナーの設定
テストランナーは、テストフレームワークと連携してテストスイートを実行して結果を報告するツールです。
多くのテストフレームワークには組み込みのテストランナーが含まれていますが、CI/CDパイプラインとの統合やテスト結果のカスタマイズされた報告を行うために、追加のテストランナーやツールを設定することがあります。
例えば、JavaScriptの環境ではKarmaやWebpackといったツールがテストランナーとして利用されることがあります。
テストランナーを設定する際には、テストの実行速度や異なる環境(ブラウザ、ヘッドレスブラウザ、Node.jsなど)でのテスト実行能力も重要な要素です。
コードエディタ/IDEの設定
効率的なTDDには、コードエディタや統合開発環境(IDE)の適切な設定が欠かせません。
多くのエディタやIDEにはテストコードの作成、実行、デバッグをサポートする機能が備わっています。
例えばVisual Studio Code、IntelliJ IDEA、Eclipseなどは、プラグインや組み込み機能を通じてTDDを強力にサポートしています。
これらのツールを使用することで、テストの実行結果をリアルタイムで確認したりテストカバレッジを視覚的に表示したりすることができます。
また、リファクタリングツールを利用してテストが成功した後のコード改善を効率的に行うことも可能です。
バージョン管理システムの導入
TDDプロセスでは頻繁にコードが変更されるため、バージョン管理システムの導入は変更の追跡、コードの共有、チームメンバー間の連携をしやすくする上で非常に重要です。
Gitはその柔軟性と強力なブランチングモデルにより、TDDを実践する開発チームに広く採用されています。
GitHub、GitLab、Bitbucketなどのオンラインプラットフォームを利用することで、プルリクエストを通じたコードレビュー、CI/CDパイプラインとの統合、テスト結果の共有などTDDプロセスをさらに強化できます。
システム・アプリ開発を外注化した方がいい理由
システムやアプリを開発する際に、以下の理由から外注化がおすすめです。
- 必要なリソースだけを確保できるから
- 自社のリソースを空けられるから
- 専門性の高い会社に依頼できるから
必要なリソースだけを確保できるから
外注化することで、プロジェクトに必要な人材やスキルを必要な期間だけ確保できます。
自社で全てのリソースを抱える必要がないため、コストを最適化することが可能です。
また、プロジェクトの規模に合わせて柔軟にリソースを調整できるのも大きなメリットです。
自社のリソースを空けられるから
外注化によって自社の人材を開発案件にアサインする必要がなくなります。
社内リソースが限られている場合でも、外注化によって開発を進めることが可能です。
また、自社スタッフは今までどおり、これまでの業務に集中できます。
特に、自社の強みのある分野にフォーカスすることで、より生産性の高い仕事ができるようになります。
専門性の高い会社に依頼できるから
システム・アプリ開発の専門会社に外注することで、高い技術力やノウハウを活用できます。
専門会社は多くの開発経験を持ち、最新の技術トレンドにも精通しています。
また、専門会社はプロジェクト管理のスキルも高いため、円滑に開発を進めることが可能です。
そのため、高品質なシステムやアプリを期待通りのスケジュールで開発できる可能性が高くなります。
さらに、これまでの実績から、業界特有の課題やニーズに対応したシステムやアプリを提案してくれる可能性もあるため、自社だけでは得られない知見を入手可能です。
まとめ:TDDの実践でビジネスを加速
TDDにはメリットとデメリットが存在しますが、ビジネススピードが求められる現代において、開発チームの力を最大限に引き出す有効な手段です。
TDDを積極的に取り入れ、ビジネスの成長を加速させましょう。
特にシステム・アプリ開発を検討されている方は、知識と経験が豊富なJitera社に一度ご相談してみてはいかがでしょうか。
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