近年のAIの進化とともに、AI開発で求められるPCスペックのレベルは高くなっています。
特に企業レベルでのAIプロジェクトでは、より大規模なデータセットの処理や複雑な機械学習モデルの訓練が求められます。そのため、高性能なCPUや大容量のメモリ、そして高速なSSDを備えたPCが必要です。
本記事では、大規模データの処理を想定したAI開発を行う際のPC選びのポイントを中心にわかりやすく解説していきますので、AI開発を検討されている場合はぜひお役立てください。
COBOL→Java経験ありの元エンジニアです。システム開発に携わった経験から、皆さまにわかりやすいITの情報をお伝えします。
AI開発やディープラーニングにGPUが重要な理由
AI開発やディープラーニングにおいて、GPUが重要な役割を果たしています。GPUは、大量の行列計算を高速に処理できるため、深層学習で必要となる膨大な数の行列計算を効率的に行うことができます。
ここではAI開発やディープラーニングにGPUが重要な以下の2つの理由について、さらに詳しく解説します。
深層学習の高速化のため
AI開発やディープラーニングにおいてGPUが重要な役割を果たす理由は、深層学習の学習を高速化するためです。
GPUは大量の行列計算を高速に処理できるため、CPUよりも深層学習で必要となる膨大な数の行列計算を短時間で処理することが可能です。また、GPUに搭載されている専用メモリのVRAMにより、大容量のデータを高速にやり取りでき、学習効率が向上します。
さらに、ディープラーニング向けの専用アーキテクチャを採用したGPUを活用することで、さらなる高速化が実現できます。
推論処理の高速化のため
AI開発やディープラーニングにおいてGPUが重要な役割を果たすもう一つの理由は、推論処理を高速化できることです。
推論処理とは学習済みのAIモデルを使用して、新しいデータに対する予測や判断を行うことを指します。
GPUを活用することで、大量のデータに対する推論処理を高速に行うことができます。これにより、リアルタイムでの予測や判断が可能となり、AIシステムの実用性が大幅に向上します。
また、推論処理の高速化はエネルギー効率の面でもメリットがあります。同じタスクをより短時間で完了できるため、消費電力を抑えることができるのです。
より詳しく知りたい方は、以下の記事をご一読ください。
AI開発に使われる代表的なGPU
AI開発に使われる代表的なGPUとしては、NVIDIA社のGPUが広く利用されています。中でもNVIDIA Tesla V100やNVIDIA A100は、高性能な深層学習向けGPUとして知られています。
またNVIDIA GeForce RTXシリーズは、ゲーミング向けGPUとして人気がありますが、AIの学習や推論にも利用可能です。特にRTX 3090やRTX 4090は、大容量のVRAMを搭載しており、大規模なAIモデルの学習に適しています。
AMD社のGPUもAI開発に使用されます。AMD Radeon Instinct MI100やAMD Radeon Instinct MI250Xは、高性能なAI向けGPUとして注目されています。
これらのGPUは、大量の行列計算を高速に処理できるだけでなく、ディープラーニング向けの専用アーキテクチャを搭載しているため、AI開発に最適化されています。GPUの選択にあたっては、予算、性能、メモリ容量などを考慮する必要があるでしょう。
ここでは以下2つのGPUについて、さらに詳しく解説します。
GeForceシリーズ(NVIDIA社)
NVIDIA社のGeForceシリーズはゲーミング向けとして知られている、AI開発にも使用されるGPUです。
GeForceシリーズの特長は、高性能な画像処理能力と大容量のビデオメモリ(VRAM)です。特にハイエンドモデルであるRTX 3090やRTX 4090は、大規模なAIモデルの学習に適しています。これらのGPUは、24GBを超える大容量のVRAMを搭載しており、大量のデータを高速に処理することができます。
またGeForceシリーズのなかには、ディープラーニング向けの専用コアであるTensorコアを搭載しているモデルもあります。Tensorコアは、行列演算を高速に処理することができ、AIの学習速度を大幅に向上させます。
ただしGeForceシリーズはゲーミング向けに最適化されているため、AI開発専用のTeslaシリーズと比較すると、性能面では一歩劣る可能性があります。しかしコストパフォーマンスの高さから、多くのAI開発者に利用されています。
同製品についてはこちらもご一読ください。
Radeonシリーズ(AMD社)
AIの開発に使われる代表的なGPUの1つが、AMD社のRadeonシリーズです。Radeonシリーズは、ゲーミング用グラフィックカードとしての認知度が高い一方で、AI開発にも使用されています。
Radeonシリーズの特長は、並列処理に優れたアーキテクチャを採用しており、大量の演算を高速に処理できることです。またメモリ帯域幅が広いため、大規模なデータセットを扱うAI開発に適しています。
価格面でもNVIDIA社のGPUと比較して安価であり、コストパフォーマンスに優れています。
AI開発やディープラーニングに最適なPCの選び方
AI開発やディープラーニングにおいて、ノートパソコンの選択は最も重要な工程の一つです。
ノートパソコンを選ぶ際は、GPUやCPU、メモリといったPCの処理能力に関わるハードウェアへの理解が必要です。開発の目的や規模に合わせて選べるようになると、開発の効率性を高められるようになります。
本セクションでは、AI開発やディープラーニングに最適なノートパソコンの特徴についてモデルを比較しながら詳しく解説していきます。
搭載GPUの種類で決める
AI開発やディープラーニングに最適なPCを選ぶ際、搭載GPUの種類は重要な要素の1つです。
現在AI開発で主に使用されているGPUは、以下3つ。
- NVIDIA社のGeForceシリーズ
- Teslaシリーズ
- AMD社のRadeonシリーズ
GeForceシリーズはゲーミング用GPUとして知られていますが、CUDAコアを多数搭載しているため、AI開発にも適しています。一方、Teslaシリーズは、AI開発専用のGPUで、大規模な並列処理が可能です。
AMD社のRadeonシリーズは、並列処理に優れたアーキテクチャを採用しており、メモリ帯域幅が広いため、大規模なデータセットを扱うAI開発に適しています。また、価格面でもNVIDIA社のGPUと比較して比較的安価であるため、コストパフォーマンスに優れているという利点があります。
コア数やクロック周波数が多いか
AI開発やディープラーニングに最適なPCを選ぶ際、GPUのコア数やクロック周波数が重要な要素となります。コア数が多く、クロック周波数が高いGPUほど並列処理能力が高くなり、AI開発やディープラーニングの処理速度が向上します。
現在、AI開発で主に使用されているNVIDIA社のGeForceシリーズやTeslaシリーズのGPUは、多数のCUDAコアを搭載しており、高いクロック周波数で動作します。大規模な並列処理が可能となるため、AI開発やディープラーニングに適しています。
またAMD社のRadeonシリーズのGPUも、並列処理に優れたアーキテクチャを採用しており、AI開発やディープラーニングに適しています。以上のように、AI開発やディープラーニングに最適なPCを選ぶ際は、GPUのコア数やクロック周波数が高いものを選ぶことが重要です。
メモリ容量が十分か
AI開発やディープラーニングに最適なPCを選ぶ際、メモリ容量が十分であることは重要な要素の1つです。AI開発やディープラーニングでは、大量のデータを処理する必要があるため、メモリ容量が不足していると処理速度が低下したり、エラーが発生したりする可能性があります。
一般的にAI開発やディープラーニングには、32GB以上のメモリ容量が推奨されています。ただし扱うデータの量やモデルの複雑さによっては、さらに多くのメモリ容量が必要な場合もあります。
またメモリの種類としては、高速なDDR4やDDR5のメモリを選ぶことが望ましいでしょう。これによりデータの読み書きが高速化され、処理速度の向上が期待できます。
大容量ストレージを搭載しているか
AI開発やディープラーニングに最適なPCを選ぶ際、大容量ストレージを搭載しているかどうかは重要な要素の1つです。AI開発やディープラーニングでは、大量のデータを扱うため、十分なストレージ容量が必要となります。
一般的に、AI開発やディープラーニングには、以下のようなストレージ容量が推奨されています。
- システムドライブ(OS用): 500GB以上のSSD
- データ用ドライブ: 1TB以上のHDD or SSD
システムドライブにはSSDを使用することで、OSの起動やアプリケーションの読み込みを高速化できます。データ用ドライブは、大容量のHDDまたはSSDを使用することで、大量のデータの効率的な保存・読み込みが可能です。
拡張性があるか
AI開発やディープラーニングに最適なPCを選ぶ際、拡張性は重要な要素の1つです。将来的にシステムを拡張したり、新しいハードウェアを追加したりする可能性があるため、拡張性の高いPCを選ぶことが賢明です。
拡張性を確保するために、以下の点に注目しましょう。
- マザーボードの拡張スロット数(PCIe、M.2など)
- 空きメモリスロット数
- 電源ユニットの容量と予備電力
マザーボードに十分な拡張スロットがあれば、必要に応じてGPUやストレージを追加できます。空きメモリスロットがあれば、メモリを増設することも可能です。また、電源ユニットの容量と予備電力が十分であれば、追加ハードウェアに対応しやすくなります。
AI開発やディープラーニングに最適なPCを選ぶ際は、将来の拡張性を見据えて、十分な拡張スロットやメモリスロット、電源容量を備えたものを選ぶことが重要です。
AI開発に最適なGPUを搭載したおすすめPC
ここからは、AI開発に最適なGPUを搭載したおすすめPCを3つ紹介します。
- NVIDIA DGX Station
- Dell Precision 7920 Tower
- HP Z8 G4 Workstation
NVIDIA DGX Station
NVIDIA DGX Stationは、AI開発に特化したワークステーションです。最大4基のNVIDIA Tesla V100 GPUを搭載可能で、卓越した並列処理性能を実現します。また大容量のGPUメモリ(最大512GB)とシステムメモリ(最大1.5TB)を搭載し、大規模なデータセットを扱うことが可能です。高速なNVLink接続により、GPU間の通信速度を最大化し、スケーラビリティを向上させます。
さらにディープラーニングフレームワーク(TensorFlow、PyTorch、Caffeなど)やNVIDIAのSDK(CUDA、cuDNN)が最適化されており、効率的なモデル開発が可能です。水冷システムを採用し、安定した動作と静音性を実現しています。
NVIDIA DGX Stationは、大規模なAIモデルの訓練や推論に適しており、研究機関や企業のAI開発において高い性能を発揮します。ただし価格は比較的高額であるため、予算や用途に応じて適切な選択が必要です。
Dell Precision 7920 Tower
Dell Precision 7920 Towerは、AI開発に最適なGPUを搭載したハイエンドワークステーションです。最大で4基のNVIDIA Quadro GPUを搭載可能で、大規模なディープラーニングモデルの学習や推論を高速に処理できます。
またインテルXeonプロセッサやECCメモリなど、信頼性の高いハードウェアを採用しているため、安定した開発環境を構築できます。
Dell Precision 7920 Towerは、AIエンジニアが大規模なデータセットを使った機械学習モデルの開発や、リアルタイム推論システムの構築など、高度なAI開発業務を効率的に行うための強力なプラットフォームといえます。
HP Z8 G4 Workstation
HP Z8 G4 Workstationは、最大で4基のNVIDIA Quadro GPUを搭載可能な、AI開発に最適なハイエンドワークステーションです。インテルXeonプロセッサやECCメモリなど、信頼性の高いハードウェアを採用しているため、大規模なディープラーニングモデルの学習や推論を安定して高速に処理できます。
HP Z8 G4 Workstationは、AIエンジニアがビッグデータを活用した機械学習モデルの開発や、リアルタイム推論システムの構築など、高度なAI開発業務を効率的に行うための強力なプラットフォームを提供します。
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まとめ:AI開発のPC選びはGPUを確認しましょう
ディープラーニングや機械学習を効率的に行うためには、一度に大量のデータを学習させられる高性能なPCが必要です。
AI開発を行うPCを選ぶ際は、この記事で紹介したようにハードウェアの性能だけでなく拡張性・持ち運びやすさやコストパフォーマンスも考慮して、プロジェクトの規模や目的に合わせて選びましょう。
そして、クラウドサービスやデバッグ・テストツールを活用して開発の効率化を図ることも大切です。
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