ビジネスの現場でよく耳にする「マイルストーン」。
基幹系システムやアプリ開発を含めシステム開発全般で役に立つ、プロジェクト管理手法の一つです。
本記事ではシステム開発プロジェクトを円滑に進めるため、マイルストーンの意味、役割、書き方や具体例を解説します。
新規システム開発プロジェクトの発足を予定している企業の方、プロジェクト管理にお悩みの方は特に役に立つかと思いますので、ぜひご一読ください。
2014年 大学在学中にソフトウェア開発企業を設立
2016年 新卒でリクルートに入社 SUUMOの開発担当
2017年 開発会社Jiteraを設立
開発AIエージェント「JITERA」を開発
2024年 「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」に選出
マイルストーンとは?基本的な意味と役割
マイルストーンは、かつて距離(マイル)を計測する際に目印として使用されていた石(ストーン)から発生した用語です。
現在、システム開発を含めビジネスの現場では最終目標に向けての「中間目標」や「節目」の意味があります。
役割について、例えば大規模なプロジェクトでは最終目標が遠く、「自分たちが今どこにいるのか」「スケジュール通りプロジェクトを進行できているのか」が分かりにくい状況に陥りやすいです。
スケジュール上にマイルストーンを設定することで、プロジェクトの進捗の把握が容易になります。また、マイルストーン通過を品質チェックの機会とすることで品質向上にも繋がります。
さらに、大規模なプロジェクトは最終目標が遠いことからメンバーの仕事へのやる気が下がりがちですが、中間目標をクリアしていくことでやる気アップにも繋がるというメリットもあります。
- マイルストーンはプロジェクトの中間目標・節目。
- スケジュール管理、品質管理、メンバーのモチベーション向上に有効。
マイルストーンの書き方のポイント
マイルストーンを設定するには、事前にWBS(Work Breakdown Structure)を作成しておく必要があります。
下記手順にてWBSを作成し、節目となるポイントをマイルストーンとして管理しましょう。
1. プロジェクトの目標を明確にする
まずプロジェクトの最終目標(ゴール)を明確にします。
例えばシステム開発プロジェクトならばシステムのリリースやサービスのローンチが挙げられます。
2. プロジェクトの重要タスクを洗い出す
次は重要タスクを洗い出します。この段階ではタスクは細分化する必要はなく、ざっくりとした洗い出しで問題ありません。
3. プロジェクトのスケジュールを作成
目標達成の期限と各重要タスクの完了予定を大まかに記載し、スケジュールを作成しましょう。
4.WBSを作成
大まかに洗い出したタスクを細分化します。
各タスクの担当者とスケジュールを決め一覧とし、WBSを作成しましょう。
マイルストーンとロードマップの違い
マイルストーンとロードマップの違いを理解し、それぞれの適切な使用方法を学びます。
マイルストーンが中間目標である一方、ロードマップはプロジェクト全体の指針やフローが記載され、プロジェクト開始から終了までの全体計画を示す地図のような位置づけです。
混同されやすい2つの用語ですが、目的や活用方法をしっかり理解し効率的なプロジェクト管理に役立てたいですね。
マイルストーンとロードマップの比較
マイルストーンとロードマップの意味、目的、使用することのメリットを表に記載しました。
進捗管理や情報共有など、目的に応じて適切に使い分けられると良いですね。
マイルストーン | ロードマップ | |
意味 | 中間目標。節目。 | プロジェクト全体の計画書。 |
目的 | 進捗/品質管理。 | ステークホルダーとの情報共有や合意形成。 |
メリット | ・プロジェクトの節目ごとに進捗を把握することができる。
・品質のチェックポイントとすることで品質向上に繋がる。 ・メンバーのやる気アップに繋がる。 |
・プロジェクト全体の今後のスケジュールとタスクが把握できる。
・将来の計画が明示されているためチームメンバーやクライアントなどと情報共有がしやすい。 ・プロジェクトの方向性や期限について認識齟齬を防止できる。 |
ロードマップの作成と活用方法
システム開発プロジェクトでロードマップを活用するため、作成と活用の方法について記載します。
1.最終目標と期限を明らかにする
プロジェクトのゴールと達成期限を確認します。
2.ざっくりとタスクとスケジュールを整理する
プロジェクト開始から完了までに必要なタスクとスケジュールを整理しましょう。
タスクは大まかな粒度で大丈夫です。
3.計画書として成形する
タスクとスケジュールを任意の形式で記載します。
ガントチャートやフローチャートで記載されることが多いですが、エクセルで表のように記載しても問題ありません。
活用方法については、プロジェクト全体の計画が記載されているため、社内メンバーやクライアント、ベンダーなどステークホルダーとの認識合わせに役立ちます。
システム開発のマイルストーン作成例
実際のシステム開発プロジェクトにおけるマイルストーンの作成例を具体的に紹介します。
基本的には下記のように、フェーズごとにマイルストーンが設定されます。
- 要件定義
- 基本設計
- 詳細設計
- 開発
- テスト
- リリース/ローンチ
ただし、大規模なプロジェクトの場合はフェーズが数ヶ月、時には1年以上を要することもあります。
その場合、フェーズをマイルストーンとするだけでは間隔が開きすぎてしまい、チェックポイントの役割は発揮できません。
長期間に及ぶプロジェクトの場合、各フェーズのタスクをWBSにて確認し、目安としては2週間~1ヶ月に一度マイルストーンが訪れるように設定をすると良いでしょう。
下記は実際の大規模システム開発プロジェクトにおける、テストフェーズのマイルストーンの例です。
- テストケース作成
- テストデータ作成
- 機能テスト
- 非機能テスト
このように、基本的にフェーズごと、必要に応じてフェーズを細分化しマイルストーンとします。
作り方に悩んだ際はぜひ参考にしてみてください。
マイルストーン管理のコツとツールの活用
効果的なマイルストーン管理のコツと、それをサポートするツールについて解説します。
効果的にマイルストーンを管理するには、今後のタスク、スケジュール、マイルストーンが整理されており、その情報にアクセスしやすいことが重要になります。
そこでオススメしたいのがプロジェクト管理ツールです。
ここではマイルストーン管理のコツと役に立つプロジェクト管理ツールをいくつかご紹介します。
マイルストーンの追跡と管理方法
マイルストーンを作成するだけでもメリットはありますが、追跡することでスケジュール管理の効果を発揮します。
マイルストーン到達日が予定よりも早い場合、プロジェクトは順調であると言えますが予定より遅い場合は遅延が発生しています。
その場合取るべき行動は2つあり、「計画よりも時間がかかったタスク(ボトルネック)の分析」と「リカバリプランの策定」です。
ボトルネックとなったタスクを特定し、原因を分析することで今後の進捗の予想に役立ちます。
該当タスクが今後も発生する場合、遅延の幅が大きくなる可能性があるため注意が必要です。
リカバリプランの策定は、遅延しているスケジュールをどのようにリカバリするかの検討です。
プロジェクトの状況によりますが、増員する、納期を調整するなどが考えられます。
マイルストーンを追跡し、早期に対策をおこなうことで重大な遅延を防ぐことができます。
定期的に追跡作業ができると良いですね。
マイルストーン管理に役立つツール紹介
ロードマップを作成する機能を持ち、情報の一元管理やメンバー間の情報共有をサポートするプロジェクト管理ツール。
ここではマイルストーン管理に有効なツールを2つ、ご紹介します。
Lychee Redmine
ガントチャートの見やすさ、作りやすさの特徴をもつツールです。
ガントチャート上にマイルストーンを作成し、視覚的に分かりやすいマイルストーン管理が可能です。
また、日々の進捗をグラフで分かりやすく表示し、マイルストーン到達前に遅延リスクを検知することができます。
wrike
進捗の可視化とチームを横断したコラボレーション機能が豊富なツールです。
充実したツールを使用し、プロジェクト全体で情報共有や進捗管理が容易におこなえます。
プロジェクト管理ツールをもっと知りたい方は下記の記事を参照ください。
プロジェクト管理ツール21選徹底比較!目的や費用など選び方も紹介
マイルストーンの注意点
プロジェクトの進捗管理に有効なマイルストーンですが、設定方法を誤るとかえって進捗を妨げてしまうことがあります。
ここでは効果的なマイルストーンの設定方法と注意点について説明します。
・マイルストーンを設定しすぎない
マイルストーンをあまりに細かく設定をすると、どの地点が重要な節目であるのかが分かりにくくなります。
さらに、過度な進捗管理となりメンバーの負担となってしまう可能性があります。
・マイルストーンとタスクを混同しない
マイルストーンは中間目標であり、タスクは作業です。
作業を消化していくことで目標を達成するのであり、意味合いは異なることに注意ください。
・プロジェクトの情報を一元管理する
プロジェクトの情報は一元管理をしておくと効率的にプロジェクトを進めることができます。
情報が散在していると作業が非効率になり、情報を探すのが負荷になる場合もあります。
成功への道:マイルストーンを活用したシステム開発
マイルストーンを適切に活用し、システム開発プロジェクトを成功に導くための戦略について解説します。
システム開発プロジェクトでは、重要なポイントや潜在リスク(まだ発生していないが将来発生する可能性のあるリスク)が多く存在します。
マイルストーンを正しく活用してリスクに備え、プロジェクトを円滑に進めましょう。
マイルストーンを活用した開発計画の立案
新規でシステム開発計画を立ち上げる際、重要なポイントは数多く存在します。
- 最終目標(ゴール)が明確であること
- 必要なタスクとスケジュールが明確化されていること
- メンバーやステークホルダーと正確に情報共有ができていること
- 進捗に遅延が発生した際に早期に発見できる仕組みが整っていること
- 高品質なシステムを開発すること
マイルストーンチャート(マイルストーンを記載したロードマップ)を使用すれば、上記ポイントを全てカバーすることができます。
ロードマップとしてプロジェクト全体の計画を明確化し情報共有をした上で、マイルストーン管理の特徴を生かしスケジュール管理、品質管理が可能になるメリットがあります。
新規でシステム開発計画を立案する際は、ぜひマイルストーンチャートの導入を検討してみてください。
マイルストーンに基づくリスク管理と調整
プロジェクトが発足し目標に達するまでの過程には、様々なリスクが存在します。
リスク管理とはそういった潜在的リスクを検知し事前に対策を検討しておくことを指します。
ここではシステム開発プロジェクトで発生しやすい「遅延」を例に、マイルストーンに基づいた対策を記載します。
開発プロジェクトでは綿密にスケジュールが練られているにも関わらず、頻繁に遅延が発生します。
遅延の原因は様々なものがありますが、ハードウェア故障やメンバーの体調不良による欠員など避けられない原因も多々あります。
上記のような事象は回避することはできませんが、マイルストーンを追跡すると予定日に目標到達していないことが分かり、早い段階で検知することができます。
遅延を検知した段階で、リスケジュールやメンバーの増員といった調整をおこない、早期リカバリが可能です。
このように、マイルストーン追跡と早期の調整がリスク管理に重要となります。
マイルストーンを設定して効果的なシステム開発なシステム開発をしましょう
本記事ではマイルストーンの意味や書き方、具体例を解説してきました。
下記に重要なポイントをまとめます。
円滑なプロジェクト進捗のため、ぜひ貴社のプロジェクトにマイルストーンを取り入れてみてください。
- マイルストーンは中間目標。節目。
- 進捗確認、品質管理、メンバーのやる気アップやリスク管理に有効。
- マイルストーンは基本的にはフェーズごとに作成するが、長期間に及ぶプロジェクトではフェーズよりも細分化して作成する。過度に設定をするとプロジェクト進捗を妨げてしまう。
- ロードマップと組み合わせてマイルストーンチャートとすることでプロジェクト管理の効果を増す。
- 作成するだけでなく追跡することで進捗確認の効果がある。
マイルストーン管理やプロジェクト管理にお悩みの際は、実績豊富な株式会社Jiteraに一度ご相談ください。
貴社の悩みに寄り添い、効率的なプロジェクト管理のお手伝いをさせていただきます。