「デジタルワークプレイス」という言葉を耳にしたことはありますか？

従業員の生産性やワークライフバランスを向上させるコンセプトであり、現代の働き方には不可欠です。

しかし、テレワークとの違いや導入ステップを知りたい方も多いでしょう。

そこで本記事では、デジタルワークプレイスの基本情報やメリット・課題について詳しく解説します。

導入するための方法や実際に導入した事例もお伝えするので、どのような変革があるかをチェックしましょう。

デジタルワークプレイスの可能性に、ぜひ注目してください。

デジタルワークプレイスとは？

デジタルワークプレイス（DWP）とは、端的に言うと、オフィス環境を仮想化したものです。

物理的なオフィスがなく、インターネットを通じて仕事ができる環境を提供します。

時間や場所を問わず、効率的に仕事ができるため、従業員のワークライフバランスが向上し、仕事の生産性が高まります。

ワークプレイスで使用する主なデジタルツールを以下にまとめました。

ツール名	概要
チャットツール	パソコンやスマホでリアルタイムにコミュニケーションが取れるツール。メールと比べると、スピード感や手軽さが違う
オンライン会議ツール	オンラインでミーティングができるツール。テレビ会議のように専用端末を用意する必要がない
オンライン商談サービス	遠隔地にいる顧客と商談ができるツール。商談記録や顧客管理などの機能を搭載
タスク管理ツール	プロジェクトの進捗状況やメンバーの作業状況などを管理するツール。進捗の見える化やタスクの抜け漏れを確認できる
クラウドサービス	データをクラウド上に保存し、どこからでもアクセスできるようにするツール
データ分析ツール	データ分析の作業を効率化し、精度の高い結果を提供するツール

一例として、チャットツールとオンライン会議ツールを活用すれば、会社に出社せずに仕事を進められる方が多いのではないでしょうか。

デジタルワークプレイスは、柔軟な働き方をサポートし、従業員のワークライフバランスを向上させます。

また、オフィススペースの削減によるコストダウンや、紙の使用量の減少によるエコ活動などのメリットも大きいです。

このような環境が整備できれば、従業員はより効率的かつ生産的になり、企業全体のパフォーマンスが向上します。

デジタルワークプレイスの目的は？

デジタルワークプレイス（DWP）の目的は、会社全体のパフォーマンスアップです。

上記を達成するために、DWPは主に以下の4つの領域に焦点を当てています。

• 生産性の向上
• コミュニケーションの改善
• 進捗の共有
• モチベーションの共有

生産性の向上

デジタルワークプレイスは、デジタルツールを活用し作業効率を高めます。

例えば、自動化ツールを用いて繰り返し行うタスクを減らすことで、従業員はより重要な業務に集中できます。

文書管理システムやクラウドストレージを活用して、手間や時間のかかるファイル管理と共有プロセスを簡単にします。

コミュニケーションの改善

デジタルツールを利用すれば、スピード感のあるコミュニケーションが可能です。

チャットツールやビデオ会議システムを活用すれば、クライアントやチームメンバーとのやり取りが迅速かつ効率的にできます。

結果として、情報共有の遅延による機会損失を減らせます。

進捗の共有

テレワークでは、チームメンバーとのコミュニケーションが取りにくいなどの問題があります。

この問題に対処するために、タスク管理ツールの活用が効果的です。

タスク管理ツールを使用すると、プロジェクトの進捗状況をリアルタイムで可視化し、チーム全体が把握しやすくなります。

タスクの優先順位や期限も一目で確認できるため、効率的に仕事を進めることが可能です。

その結果、メンバー間の透明性が高まり、信頼関係の構築にもつながります。

モチベーションの共有

デジタルワークプレイスは従業員がモチベーションや仕事に対する考え方を共有するためのプラットフォームを提供します。

特にテレワークでは、チームメンバーと雑談がしにくく、孤独に感じやすいです。

この問題に対処するため、社内の共有掲示板やバーチャルカフェのような仮想空間を設けると、社員間のカジュアルなコミュニケーションの機会をつくれるようになります。

このような非公式なコミュニケーションの場は、社員間のつながりを強化し、チーム内の透明性を高める上で効果的です。

最終的に、社内コミュニケーションが促進され、全体のモチベーションと協力関係が向上します。

デジタルワークプレイスの市場規模

REPOERT OCEANの2022年01月09日のレポートによると、デジタルワークプレイスの世界市場は、2021年から2027年の予測期間にかけて、20.73%以上拡大すると予測されています。

Report Oceanは、業界分析と市場調査レポートを提供する会社です。個人や組織に向けて、さまざまな市場調査レポートを提供しています。

成長が予想されている理由は、企業が効率性と柔軟性を高めるためにデジタルツールに投資しているからです。

2020年には、デジタルワークプレイス市場は約2,268万米ドルと評価されました。

この数値は、テクノロジーの進化、リモートワークの普及、デジタル化へのニーズの高まりが反映されたものです。

20.73%の成長率は、企業がデジタル化を積極的に進める中で、デジタルワークプレイスの需要が大幅に増加することを意味しています。

デジタルワークプレイスの市場規模の拡大は、今後も企業の働き方とビジネス戦略に大きな影響を与えるのではないでしょうか。

デジタルワークプレイスとテレワークの違い

デジタルワークプレイスとテレワークは、現代の職場でよく使われますが、それぞれ重視している点が異なります。

デジタルワークプレイスは、オフィスの機能をデジタル化し、実際に出社しているかのような環境を再現することにフォーカスしています。

そのため、仕事を効率的に進めるためのデジタルツールを複数入れたり、より働きやすくするための取り組みを導入したりします。

バーチャルオフィスはその一例です。

ブラウザ上にオフィスのマップが表示され、ユーザーは自分のアバターを設定してオフィス内を自由に移動できます。他人との会話や小規模な打ち合わせができるため、リアルオフィスと大差ありません。

一方、テレワークは仕事場所の柔軟性に重点を置いています。

具体的には、従業員が自宅やカフェ、コワーキングスペースなどで働くことを可能にする働き方です。

テレワークの主な目的は、従業員に場所を選ばず働く自由を与えることです。

デジタルツールの使用は必須ではないものの、効果的なリモートワークをサポートするためによく活用されます。

まとめると、テレワークはデジタルワークプレイスの一部です。

デジタルワークプレイスは、効率的な仕事ができるように環境整備やツール、仕組みの導入を意味し、多様化する現代の働き方には欠かせません。

デジタルワークプレイスの4つのメリット

デジタルワークプレイスには、以下のメリットがあります。

• 生産性が向上する
• 時間と場所に関係なく働ける
• 地域に関係なく採用できる
• DXを推進できる

詳細は以下の通りです。

生産性が向上する

デジタルワークプレイスの導入は作業を効率化し、生産性を大幅に向上させます。

デジタルツールにより、日常の業務プロセスが合理化されるため、従業員はより重要な作業や創造的な仕事に専念できるようになります。

自動化ツールは特に有効です。繰り返し行うルーチンワークを減少させ、より生産性の高い活動に時間を使えるようになります。

さらに、メールからチャットツールに置き換えると、報告、連絡、相談のプロセスがスムーズになり、プロジェクトの遅延を防止できます。

これらの要素が組み合わさると、デジタルワークプレイスは従業員の生産性を高め、企業全体のパフォーマンスアップにつながるわけです。

時間と場所に関係なく働ける

デジタルワークプレイスが整備されると、従業員は時間や場所を問わずに仕事ができます。

なぜなら、デジタル化されたツールとシステムがどこからでも簡単にアクセスできるからです。従業員はオフィスにいなくても、自宅やカフェ、移動中など、どこからでも仕事に取り組めます。

このような柔軟性は、スタッフの働きやすさと満足度を大きく向上させる上で大きなメリットです。

「通勤電車に乗らなくて済む」「退勤後に病院に行きやすくなる」などの具体例を挙げると、従業員は自分のライフスタイルに合わせて仕事ができます。

ワークライフバランスが改善されるため、従業員が満足して働ける環境が整備されていくようになります。

その結果、従業員の定着率も高まるのです。

地域に関係なく採用できる

デジタルワークプレイスの導入で、企業は地域に関係なく採用ができます。

これまで出社を前提とする会社では、オフィスに通勤できる方しか採用できませんでした。

しかし、デジタルワークプレイスが整備されていれば、自宅で仕事ができるため、地方や海外に住む方も採用の範囲に入るようになります。

そのため、より会社のミッション・バリューに合った人材を集めることが可能です。

異なる文化的背景や視点を持つ人材がチームに加わると、企業の創造性やイノベーションが促進され、多彩なアイデアが生まれます。

DXを推進できる

デジタルワークプレイスには、企業のデジタルトランスフォーメーション（DX）を推進できるメリットがあります。

その理由は、オンライン作業が進むことで、企業がペーパーレス化を導入せざるを得ないからです。

リモートワークは基本的にペーパーレスが前提です。

書類のデジタル化や紙を使わない業務プロセスの導入により、ペーパーレス化は確実に進みます。

また、ペーパーレス化による紙の使用量の減少は、森林伐採の削減やエネルギー消費の低減など、環境への負担を軽減します。

サステナビリティ（持続可能）の取り組みとしても、不可欠です。

結果として、社内のDX化が自然と推進し、持続可能な企業運営につながります。

デジタルワークプレイスの4つの課題

デジタルワークプレイスには多くのメリットがありますが、以下の課題も無視できません。

• セキュリティのリスクが存在する
• 導入の際にコストがかかる
• 勤怠管理を見直す必要がある
• 人間関係が薄くなりやすい

それぞれ見ていきましょう。

セキュリティのリスクが存在する

デジタルツールを導入する際に、ウィルス感染や情報漏洩のリスクが常にあります。

これらのリスクは、企業のセキュリティ体制と従業員のリテラシーに大きく依存しています。

従業員のリテラシーを向上させるためには、定期的なセキュリティ研修やアクセス管理の強化が不可欠です。

実際に、2021年の総務省の調査では、デジタル化が進まない理由として「情報セキュリティやプライバシー漏洩への不安」が過半数を占めています。

▼総務省の調査結果

引用：https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd111410.html

デジタル化の重要性を理解しながらも、セキュリティやプライバシーの問題が大きな懸念であると示しています。

このことからも、デジタルワークプレイスのセキュリティ対策は重要です。

安全なデジタルワーク環境を自社で構築するのが難しければ、外注できないか検討しましょう。ワンストップでセキュリティ対策を任せることで、管理がしやすくなります。

導入の際にコストがかかる

デジタルツールを導入するには、コストがかかります。

チャットツールであれば月に1,000円ほどですが、仮想デスクトップであれば月に500万円かかるケースも珍しくありません。

必要なデバイスやソフトウェアの購入やライセンス数によっても、異なります。

当然ながら、複数のツールを同時に利用する場合、その分コストはさらに増大します。

そのため、デジタルワークプレイスを導入する際には、本当に必要なツールかどうか判断しましょう。

企業のニーズに合ったツールを選定し、段階的に導入することで、効率的に管理できるため、無駄遣いを避けることが可能です。

そのためには、複数の業者から提案を受けて、各ツールの特徴やコストを比較検討してください。

基本的な知識は勉強し、自社のニーズに合ったツールを選択することが推奨されます。

勤怠管理を見直す必要がある

デジタルワークプレイスにより、時間と場所に限定されずに働くことが可能です。

自由に仕事ができる反面、勤務態度が緩んでしまうリスクがあります。

例えば、自宅での作業中に、休憩と称してYouTubeやSNSを見てしまい、思いのほか時間を使ってしまう場合が考えられます。

そのため、勤務管理の見直しが必要です。

このような状況に対処するには、会社としては従業員が7〜8時間しっかり集中できる環境を提供しなければなりません。

具体的には、勤怠管理システムの導入や定期的なオンラインミーティングの設定、作業進捗のツール利用などが有効です。

また、従業員が必要に応じて出社できるようにすれば、それぞれのニーズに合わせた最適な作業環境を選択できます。

人間関係が薄くなりやすい

デジタルワークプレイスが導入されると、基本的にテレワークがメインとなります。

そのため、直接対面で会う回数が減るため、人間関係はどうしても希薄になりがち。日常的な交流が減少してしまうと、従業員同士のつながりがどうしても弱まります。

また、コミュニケーションがオンラインに限定されると、必要最低限のやり取りに留まるため、深い人間関係の構築が難しくなります。

このような状況に対処するためには、Zoomやほかのオンラインツールを活用して、定期的なコミュニケーションの場をつくりましょう。

クライアントやチームメンバーの価値観や性格をより深く理解し、関係を強化できます。

デジタルワークプレイス導入する5つのステップ

ここからは、デジタルワークプレイスの導入手順をチェックしていきましょう。

1. 最適なデジタルツールを選定する
2. セキュリティ対策を実施する
3. 就業規則を整備し直す
4. 研修ととサポート体制を整える
5. フィードバックと改善の継続する

上記5つのステップを順番に説明します。

1.最適なデジタルツールを選定する

デジタルワークプレイスを成功させるためには、最適なデジタルツールの選定が不可欠です。

企業のビジネスニーズに合致するツールを選ぶ必要があります。

この選定プロセスには、従業員の意見も積極的に取り入れるべきです。ユーザーの視点から使いやすさや効率性を考慮すると、実際に利用されるツールを見つけられます。

例えば、コミュニケーションツールの選定では、チャットワークやSlackが人気です。

これらのツールは、チャット機能やファイル共有、ビデオ会議などを一つのプラットフォームで提供し、チーム間で効果的にコミュニケーションできるように設計されています。

また、タスク管理にはTrelloやAsanaが適しており、プロジェクトの進行状況を視覚的に追跡しやすいです。

2.セキュリティ対策を実施する

デジタルワークプレイスの運用において、セキュリティ対策はとても重要です。

データ保護やウイルス対策、情報漏洩防止のために、適切なセキュリティシステムを導入する必要があります。

具体的には、ファイアウォールやアンチウイルスソフトウェア、暗号化技術などです。

また、従業員へのセキュリティ研修も不可欠です。

従業員がセキュリティリスクを理解し、適切な行動を取ることで、企業全体のセキュリティが強化されます。

下記は、従業員に伝えるべき重要なセキュリティ対策の一例です。

• カフェや公共の場所でZoomの使用を避ける
• フリーWi-Fiの使用を控える
• 複雑なパスワードを設定し、定期的に更新する
• 見知らぬファイルやリンクは開かない

基本的なセキュリティ対策であってもリスク回避のために、忘れずに伝えるようにしましょう。

3.就業規則を整備し直す

デジタルワークプレイスの導入に伴い、従来の就業規則を見直し更新しましょう。

新しい働き方に適応するためには、リモートワーク時の勤務時間や業務遂行の基準を明確に定めるのがおすすめです。

具体的には、デジタルワークプレイスに適した就業規則をつくり、労働時間や業務の進め方、評価基準などを明確化します。

例えば、朝のミーティングの実施や日報の提出を義務付けると、従業員が生活リズムを崩さずに、仕事に取り組めるようになります。

このような就業規則の整備は、従業員がどのように働くべきか、どのような成果が期待されるのかを理解する上で必須です。

4.研修とサポート体制を整える

デジタルワークプレイスの成功は、適切な研修とサポート体制に大きく関わっています。

導入初期には、従業員が新しいツールやプラットフォームをスムーズに利用できるように、研修やサポート体制の構築が大切です。

新サービスへの移行は、予想以上に時間がかかるケースも少なくありません。基本的にツールを提供している専門会社が研修とサポートを提供するため、一括して依頼できます。

5.フィードバックと改善の継続する

デジタルワークプレイスは常に進化し続けます。

そのため、スタッフからのフィードバックを定期的に収集し、環境やプロセスを改善することが重要です。

従業員の体験談や提案、懸念をヒアリングし、問題や業務プロセスの改善点があれば迅速に対応します。

コツコツ改善すれば、デジタルワークプレイスは常に最新で、従業員の満足度を高めるとともに、企業の生産性向上に貢献します。

デジタルワークプレイスは一度導入して終わりではなく、継続的な見直しが欠かせません。

デジタルワークプレイスの活用事例

最後に、デジタルワークプレイスの活用事例をいくつか紹介します。

キリンホールディングス

キリンホールディングスは、2022年6月に本社オフィスをリニューアルし、デジタル化を推進しました。

主な変更点は以下の通りです。

• 座席の在籍情報をスマホから確認できるシステム導入
• Web会議に適した部屋を構築
• フリーアドレス制による柔軟な座席選択
• 100%ペーパーレス化の目標設定

これらの施策により、効率的で柔軟性のあるオフィス環境の構築とリモートワークが実現できます。

→キリンホールディングスの公式サイト

アクセンチュア株式会社は、マイクロソフトとの強固なパートナーシップをベースにして、デジタルトランスフォーメーション（DX）を推進しています。

「Microsoft Azure」や「Microsoft 365」、「OneDrive for Business」などのプラットフォームを活用し、社内の情報共有や業務連携を効率化しました。

これらのツールにより、生産性が飛躍的に向上し、最先端の働き方が実現されました。

また、その経験を活かし、顧客に業務効率化の提案を実施しており、業界全体の変革を牽引しています。

→アクセンチュアの公式サイト

まとめ：デジタルワークプレイスの役割とビジネスへの価値

デジタルワークプレイスは、今後のビジネスにおいてより重要な役割を果たします。

企業の生産性の向上や従業員のワークライフバランスの改善、業務プロセスの効率化など、そのメリットは計り知れません。

導入すれば、企業は持続可能な成長を実現し、従業員の満足度を高めることが可能です。

Webアプリ開発などデジタルソリューションのご検討があれば、実績豊富な株式会社Jiteraまでご相談ください。

実績豊富な弊社では、貴社のニーズに応じて的確に提案し、デジタルワークプレイスの実現に向けたサポートを実施します。