ITシステム導入を検討しているが、開発のリスクが高くて進められないと悩んでいませんか?この記事を読めば、開発リスクを低減しながら効果的にシステム検討が進められる「プロトタイピング」の概要がわかります。
プロトタイピングとは、開発前の早い段階でシステムの概念実証を行う手法です。簡易なプロトタイプを作り、設計に反映させることで失敗を減らし、開発効率と品質を高めます。
この記事では、プロトタイピングの目的や種類、プロセス、評価方法などを丁寧に解説しています。特に中小企業における活用のポイントを整理しています。コストや時間をかけずに、プロトタイピングを実現するコツがわかります。
本業でシステムエンジニアをしています。 分かりやすい記事を心がけています。
プロトタイピングとは何か?
ソフトウェア開発において、プロトタイピングは欠かせない重要なプロセスです。しかし実際には、その概念や意義を十分に理解している開発者はまだまだ少数派です。
本章では、プロトタイピングとは一体何か、その目的や「PoC」、「アジャイル」との違いについて解説します。
プロトタイピングの目的
プロトタイピングとは、新しい製品やサービスを開発する際に、実際の完成品を作る前にプロトタイプと呼ばれる試作品を作り、検証や評価を行うプロセスのことです。
例えば、新しいウェブサイトを制作する場合、最初からコーディングを始めるのではなく、紙やホワイトボードでサイトの構成をスケッチしたり、重要な機能の流れを示したモデルを作ったりすることがプロトタイピングです。
このプロトタイピングを行う目的は、開発前の段階で製品コンセプトを検証し、改善点を洗い出すことにあります。開発に多額のコストと時間がかかる前に、可能な限りリスクを減らし、品質を高めることができるのです。
プロトタイピングとPoCの違い
PoC | プロトタイピング | |
目的 | 実現可能性や効果の検証 | 方向性や実現性の確定、試作品作成 |
開発段階 | 事前の開発段階 | 比較的後の開発段階 |
作成物 | サービスやプロダクトの簡易版 | 試作品 |
評価 | 目的の効果やビジネス可能性 | 実用性やユーザビリティ |
関連性 | プロトタイプの前段階 | PoCの後段階 |
役割 | 技術やアイデアの実現可能性確認 | 機能やデザインの確定、改善 |
PoC(Proof of Concept)は新しいアイデアや技術の実現可能性を検証する段階であり、通常はサービスやプロダクトの簡易版を作成し、実際の運用環境で効果やビジネス可能性を評価します。
一方、プロトタイピングは既に方向性や実現性が一定程度確定した段階で、試作品を作成します。PoCとプロトタイピングは互いに関連しており、目的によってはPoCの段階でプロトタイプを作成することもありますが、基本的にはPoCはプロトタイプの前段階と捉えられます。
プロトタイピングとアジャイルの違い
アジャイル | プロトタイピング | |
開発手法 | 繰り返しのサイクルを通じた開発 | 試作品の作成と改善サイクル |
サイクル | 小さな単位に分割される | 作成と改善を繰り返す |
完成品の作成 | 分割して機能を追加していく | 試作品を改良して完成品に近づける |
適している場合 | 不明確な場合に適している | 初期の機能や仕様が明確な場合に適している |
フィードバック | 各サイクルで得られる | 試作品の改良によって得られる |
開発プロセス | 開発の一部を繰り返し実行 | 完成品に近づけるための一貫したプロセス |
アジャイル開発は、システム開発を小さな単位に分割して、短期間で繰り返し開発を行う手法であり、開発全体を複数のサイクルに分け、各サイクルで完成品に必要な機能を追加していきます。
一方、プロトタイピングは、完成品に近い形でシステムを作り、ユーザーのフィードバックを得ながら改善していく手法です。アジャイル開発とプロトタイピングの主な違いは、完成品の作成工程自体を分割するかどうかにあります。
プロトタイピングは、最初から必要な機能や仕様が明確な場合に適しており、アジャイル開発は不明確な場合に向いています。
プロトタイピングのメリット
近年、ソフトウェア開発の現場において、プロトタイピングの必要性が叫ばれるようになってきています。プロトタイプを作成し検証を重ねることで、どのような恩恵があるのでしょうか。
プロトタイピングを適切に活用することによる、代表的なメリットを4つの視点から整理したのが以下の通りです。
開発コストを削減できる
プロトタイピングによって、ソフトウェア開発のコスト削減が期待できる主なポイントは以下の通りです。
- 要件定義の明確化による返戻減
- 開発方針の白紙化リスク低減
- 未熟な設計変更に伴う手戻り防止
- テスト工程の効率化
こうした要因が作用することで、委託開発費用や人件費の大幅削減、工数の圧縮に成功するプロジェクトが増えつつあります。 コストパフォーマンスの高い開発を実現するために、プロトタイピング力は必要不可欠な要素といえます。
開発期間を短縮できる
プロトタイピングを活用することで、ソフトウェア開発の期間短縮を図れる主なポイントは以下の通りです。
- 並行作業が実現しやすい
- 要件変更に対する迅速な対応が可能
- リリース間隔を短くすることができる
- 手戻りリスクの発生頻度が低減する
これは、プロトタイピングがインクリメンタル・デリバリー型やアジャイル開発との相性が良いことが大きく影響しています。
小区切りの工程で、フィードバックと改善を繰り返しつつ部分リリースを行う開発は、全体最適化しづらいウォーターフォール開発と比較すると、納期の短縮につながりやすいのです。
品質の向上につながる
プロトタイピングを取り入れることで向上できる、ソフトウェア開発における品質の主な側面は以下の通りです。
- 機能面での要件漏れや不具合の減少
- UI/UXの改善による操作性と満足度の向上
- テスト工程の効率化で発見バグの削減
- プロジェクト計画の精度向上とリスク回避
これは、プロトタイプの段階で開発メンバーや、ステークホルダー間で十分な検証を重ねることが、要件定義の明確化や手戻り防止につながるためです。
品質の多面的な側面で効果を発揮しうるため、プロトタイピングは品質向上に欠かせない工程と言えます。
リスクを低減できる
プロトタイピングを取り入れることによって、ソフトウェア開発上のリスクを低減できる主なポイントは以下の通りです。
- 要件定義の漏れや齟齬に起因するリスクが低減
- 未成熟な設計変更から派生するリスクを防止
- テスト不足から生じる不具合発見のリスクが低減
これは、プロトタイプの早期段階で、機能面や設計面の検証を徹底的に行うことで、想定外の不具合や仕様変更の発生率を抑制できるためです。
プロジェクト成功の確率を高めるうえでも、プロトタイピング強化は欠かせないアプローチといえます。
プロトタイピングのデメリット
ここまでは、プロトタイピングのメリットについて紹介をしましたが、もちろんデメリットも存在します。
プロトタイピングで失敗をしないためにも、デメリットについても抑えておきましょう。
ここでは、主な4つのデメリットについて紹介をします。
時間とコストがかかる場合がある
プロトタイピングは、試作品を作成し、それを改良するために時間とリソースが必要です。特に、複雑なシステムや要求の場合、複数のプロトタイプが必要になることがあります。
なぜなら、最初のプロトタイプが完全な要求を満たさない場合や、ユーザーのフィードバックに基づいて改良が必要な場合があります。
そのため、新たなプロトタイプを作成し、それをテストしてフィードバックを取得し、さらに改良を行うというサイクルが繰り返されることがあります。この追加のプロトタイピングサイクルは、時間とコストを増加させる可能性があります。
プロトタイプの品質が最終製品と異なる場合がある
プロトタイプは、最終製品の機能や外観を模倣するためのものであり、完全な品質や機能性を提供するわけではありません。そのため、プロトタイプの品質や機能が最終製品と異なる場合があり、これによって開発プロセスが遅延したり、追加の修正や改善が必要になることがあります。
また、プロトタイプに対するユーザーのフィードバックを取得し、それに基づいて修正を加える過程も時間と労力を要することがあります。これらの理由から、プロトタイプの適切な管理とフィードバックの収集は、開発プロセスのスムーズな進行にとって重要です。
ステークホルダーが期待を持ちすぎることがある
プロトタイプは、一部のステークホルダーや利害関係者にとって、最終製品のイメージを形成する基準となることがあります。
しかし、プロトタイプはまだ試作品であり、完全な製品ではないため、ステークホルダーがその品質や機能を過剰に期待することがあります。
特に、プロトタイプが完成品の一部の機能や外観を模倣している場合、ステークホルダーはそれを最終製品と同等のものと誤解することがあります。その結果、開発チームに対する要求やプレッシャーが高まり、開発プロセスが適切に進行しづらくなる可能性があります。
さらに、ステークホルダーが過度な期待を持つことで、プロトタイプのフィードバックが適切に受け入れられず、開発チームが正しい方向性を見失うリスクもあります。したがって、プロトタイプの性質や目的を正しく理解し、ステークホルダーとのコミュニケーションを通じて適切な期待値を設定することが重要です。
プロトタイピングの種類と特徴
プロトタイピングを行う際には、目的や対象に合わせて様々なアプローチがあります。
代表的に分類すると、大まかなアイデアのスケッチ的なローファイプロトタイプと、実際の製品に近い質感で視覚要素を含むハイファイプロトタイプに区別されます。
以下でそれぞれの特徴を解説していきましょう。
ローファイプロトタイプ
ローファイプロトタイプとは、紙と鉛筆などのアナログなツールを使い、アイデアやコンセプトの概要を簡易的に表したプロトタイプです。
作成コストが非常に低く、説明会等で活用しやすいことが特徴です。ただし表現力に限界があるので、複雑な機能を実装した場合のイメージ共有は難しいでしょう。
ローファイプロトタイプの大きなメリットは、アイディア出しやブレインストーミングの段階では量産しやすく、多様な案を並行して検討できる点です。
紙と筆記用具を使えば、誰でも手軽に作成でき、修正も簡単です。短時間で、たくさんのプロトタイプを試作し、良いアイデアを絞り込むことができます。
一方で、実際のUIデザインを忠実に表現することは難しく、操作感の再現にも制限があるデメリットがあります。
UI要件定義の会議等の場面で、効果的に活用しつつ、後続のプロトタイプ制作フェーズで補完を図っていくことをおすすめします。
ハイファイプロトタイプ
ハイファイプロトタイプとは、画面遷移や機能概要がある程度再現された、完成品に近い質感のプロトタイプです。
専用ツールを使うことで、実際の製品とほぼ同じ操作感で機能を体験できるのが強みです。ただし、製作には高度なスキルと相応の工数が必要になります。
ハイファイプロトタイプの目的は、視覚デザインや操作性といった完成型の品質をある程度実現しつつ、開発工程の上流フェーズで検証を行うことにあります。
そのための専用ツールとして、プログラミング不要でインタラクティブなプロトタイプが作成できるノーコードツールが近年広く普及しています。
こうしたツールを使えば、開発者でなくても短時間で、実用度の高いハイファイプロトタイプを制作することが可能です。
一方で、馴染みにくいGUIや高度なカスタマイズが必要なケースもあるので、ある程度の習熟が必要不可欠と言えます。
プロトタイピングの手法
プロトタイプは手法には「ペーパープロトタイピング」、「デジタルプロトタイピング」、「モックアップ」、「ワイヤーフレーム」などがあります。
それぞれ一長一短があり、目的や状況に応じた技法を使い分けることが重要です。以下で特徴を解説します。
ペーパープロトタイピング
紙と筆記用具を使用した手書きのプロトタイプです。作業効率が高く改修がしやすい一方で、表現力の制限が課題です。
ペーパープロトタイピングのメリットを活かせる場面として、以下があります。
- アイデア出しや要件定義の初期段階
- 短納期のプロトタイプ検証が必要な場合
- 予算上の制約が大きいプロジェクト
- 機能よりも情報設計を検証したい時
紙と手書きなら誰にでもできる上に、改変が非常に容易です。アイデアの探索段階や手順の定義、レイアウト検討等、非常に幅広い場面で効果を発揮します。
デジタルプロトタイピング
タブレットやPC上で動作するプロトタイプです。視覚表現力が高い反面、作成の敷居が高くスキルが必要です。
デジタルプロトタイピングのメリットは以下の通りです。
- ビジュアル面でのクオリティが高い
- 操作感や動きのある表現が可能
- データ管理や提供がしやすい
反面、特殊なソフトウェアスキルがないと作成が難しいことがネックです。
しかし最近では、プログラミング不要のノーコードツールが登場しており、この課題をある程度緩和しています。簡単な動作を実現する分には、専門外の人でも比較的作れるようになってきています。
モックアップ
モックアップとは、最終製品とよく似た外観の模型のことです。視覚的な完成イメージを想起しやすくすることが主目的です。
モックアップの大きな特徴は、実際の製品と近い質感で視覚要素を提示できる点にあります。従来の画像やCGモデルでは伝えきれない、テクスチャや光の反射感など、リアルな幻想が味わえるのが強みです。
反面、製作コストと工数が高くなることがネックです。詳細な検証よりもイメージの想起・共有を主眼に置くシーンにおいて、活用シーンを選別することが重要といえます。
ワイヤーフレーム
ワイヤーフレームとは、画面構成の骨組みだけを線で表したシンプルなデザイン画のことです。情報設計の検証が主な目的です。
ワイヤーフレームの大きなメリットは、画面内容よりも配列や構成に着目しやすい点にあります。UI要素の視覚的な見た目ではなく、機能配分のバランスや情報の重要度が確認しやすい特徴があります。
そのため、Webサイトやアプリのインターフェース設計を検討する際に、まずはデザイン要素を極力シンプル化したワイヤーフレームを築き、配置計画やコンテンツ体系の検証を行うことが多いです。
一方で、実際の見た目や操作感が伝わりづらいこともデメリットです。ビジュアル面の評価に活用するよりは、情報設計や機能配置の最適化に向いていると言えます。
効果的なプロトタイピング手法の選び方
プロトタイピングには様々な手法が存在しますが、状況にあわせて最適なものを選ぶことが大切です。
効率的かつ効果的なプロトタイピングを実現するには、以下の3つの観点から手法を選定することをおすすめします。
コンセプトやデザインを検証する
製品コンセプト自体の妥当性を評価したり、視覚・操作性の検証に適した手法を選びます。
コンセプト検証やデザイン評価を主眼に置く場合、有効な手法としては以下があげられます。
- 多数の紙プロトタイプによるアイデア整理
- インタラクティブ原型のUI検証
- ビジュアル嗜好性を問うデザインレビュー
紙プロトタイプではアイデア出し段階での量産が可能ですし、インタラクティブプロトタイプを使えば操作感の妥当性が評価できます。
デザインレビューでは、可能な限り実物同等のCGや模型を提示することで、イメージしやすさと視覚的訴求力が高まります。
ユーザーの理解や納得を得る
ユーザー体験に近い表現で、直感的に理解してもらえる手法を選びます。
ユーザー理解や納得感を高めることを主眼とする場合、有効な手法は以下の通りです。
- 擬似体験可能なインタラクティブ
- プロトタイプ
- 実物に限りなく近いビジュアル表現
- 分かりやすさ重視のシナリオ解説
インタラクティブプロトタイプなら、実際に操作をしてもらうことで理解促進が図れますし、CGや映像を駆使すれば仮想空間での使用感の疑似体験が可能です。
ペルソナとシナリオの文字シートによる解説も、対話形式で分かりやすく理解を促せるメリットがあります。
最近ではVR技術を応用し、実際の商品とほぼ同じ生体感覚で操作体験ができるケースも増えています。技術革新を取り入れつつ、表現力の向上を図ることも重要な視点です。
予算やスケジュールで選ぶ
プロトタイピングには、コストと工数がかかるため、案件ごとの予算と納期状況で適切な手法を選ぶ必要があります。
予算に余裕がある大規模案件であれば、精巧なインタラクティブプロトタイプやVR/ARを活用した体験型プロトタイプの導入も検討できます。
一方、限られた予算・時間で早期フィードバックが必要な場合は、手軽な紙のプロトタイピングが有効です。作業効率と、コストパフォーマンスに優れているためです。
状況に応じた、柔軟な判断とトレードオフの考慮がプロトタイプを選定する上で極めて重要です。
コストや時間が限られているからこそ、効率的な工作とトライ&エラーが欠かせません。予算規模で見たマジックナンバーも参考に、スコープとリターンをしっかり見極める必要があるでしょう。
プロトタイピングのプロセス
新製品やサービスを開発する前に、プロトタイピングというプロセスを踏む意義は大きいです。
プロトタイピングでは、開発方針が固まる前の概念段階で、試作を通じた検証とブラッシュアップを繰り返すことができます。
これによって、製品完成後の手戻りリスクを最小限に抑え、効率的かつ効果的な開発を実現することが期待できるのです。
その代表的なプロセスとして、以下の4ステップがあげられます。
1. アイデア出し
まずはブレインストーミングを通じて、検討すべき製品やサービスの概要アイデアを出し合います。より良いアイデアを見出すことが第一歩です。
アイデア出しで心がけたいのは、できるだけたくさんの発想を出すことです。つまらない、現実的でないと思われる案でも構いません。
大事なことは「量」です。数多くのアイデアを出し尽くすことで、ヒットの可能性が高まります。
具体的な検討材料としては、以下のような切り口が考えられます。
- 業界トレンドからの着想
- 競合他社事例からのアプローチ
- 技術動向に基づくアイデア
- 使用シーンや課題からの発想
この段階ではアイデアの実現可能性よりも、単純に思いつく発想を幅広く集めることに注力しましょう。
2. 要件定義・設計
次に、アイデアから想定される、機能要件の整理・優先順位づけを行います。併せて、情報設計や画面設計の方向性を決定します。
この段階のポイントは、ユーザー視点での要件定義です。
要件定義と平行して、情報設計や画面遷移の設計フレームを作成します。 機能要件が、画面上でどう実現されるかを可視化していきます。
このフェーズで作成した要件定義書や設計書が、後続のプロトタイプ開発の指針となります。十分な議論を尽くすことが成否の鍵となります。
3. プロトタイプ開発
定義した要件や設計を元に、試作品であるプロトタイプを開発します。紙プロトタイプからツール利用まで、目的に応じた形で製作します。
プロトタイプ開発では、作り込みすぎてしまうと手戻りが大きくなるリスクがあります。
そのため、はじめはざっくりしたプロトタイプからスタートし、徐々に精度を高めていく「セグメント型開発」がおすすめです。
このアプローチによって、軌道修正がしやすく、スムーズに開発を進行できます。
4. 評価・修正
開発したプロトタイプに対するレビューや、ユーザーテストを通じて評価を行い、必要に応じてプロトタイプの改善を繰り返します。
このステップで特に重要なのが、短期間でのフィードバックです。
開発したプロトタイプを、関係者に速やかに見せて使用感や改善点を収集し、そのフィードバックを元に修正を繰り返す。このサイクルを早回しで回すことが、成果を生む上で大切です。
評価方法としては、専門家レビューやユーザーテスト以外にも、社内の各部署へのデモンストレーションを実施することで、多角的な意見収集が可能です。
プロトタイピングの成功事例
ここでは、プロトタイピングの成功事例として次の2つの事例を紹介します。
- Zappos
アメリカに本拠を構える靴を中心としたアパレル関連の通販小売店 - Airbnb
アメリカのバケーションレンタルのオンラインマーケットプレイス企業
Zappos
Zapposは設立当初、在庫を持たずに顧客からの注文が入る度に創業者が店舗に出向いて購入・梱包・発送を行う手法を採用し、需要調査を行った後に本格的なシステム構築を行いました。
この手法は「オズの魔法使い」と呼ばれ、顧客には本物のシステムが存在するかのように見せながら裏側では実際にはそうではないことを意味し、顧客側とサービス提供者側の双方にとって適切な価値を提供しながらシステムの価値検証を行う手法です。
Airbnb
Airbnbの創業者たちは、サイトに掲載される部屋写真のクオリティーが低いことに気付き、第一印象を向上させるために自らプロのカメラマンとして活動し、写真の質を向上させる取り組みを始めました。この取り組みにより、写真の質の向上がエリアの売上を伸ばす効果をもたらし、仮説が正しいことが確認されました。
このような結果から、Airbnbはプロダクトを写真の質に重点を置く方向に進化させていきました。Airbnbの使用したMVP手法は「コンシェルジュ」と呼ばれ、オズの魔法使いと異なり、顧客にはシステムが存在するように見えないことが特徴です。
コンシェルジュの最大の利点は、生身の人間がサービスを提供することで顧客との対話が容易になり、顧客の理解が図りやすいことです。
プロトタイピングの未来と展望
ソフトウェア開発において、プロトタイピングの重要性が高まっています。
本記事では、プロトタイピングの定義からメリット、プロセス、技法などを解説しました。特に、リソースに限りのある中小企業における実践ポイントを、低コストかつ効果的な運用を中心に解説しました。
今後もプロトタイピング手法は高度化し、開発現場での必須工程化が進むと考えられます。
プロトタイピングによる検証を通じ、ニーズに即した高品質な製品開発を実現できるよい機会と捉えましょう。Webサービス開発など、導入を検討している場合には、豊富な実績を持つJiteraにご相談ください。的確なアドバイスをご提供いたします。