強化学習とは?3つのアルゴリズム(手法)や仕組み、活用事例も紹介

「AIや機械学習には興味があるけど、強化学習って具体的に何ができる?
そう疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。

強化学習は、システム自身が「試行錯誤」を繰り返しながら、最適な行動方針を見つけ出すプロセスを通じて、自動的に性能を向上させていく仕組みを持っています。

具体的には、Q-Learning、SARSA、モンテカルロ法といったアルゴリズムが強化学習の基本とされており、それぞれが異なる状況や目的に応じて最良の結果を導き出す手助けをします。また、深層強化学習はこれらのアルゴリズムを深層学習と組み合わせることで、より複雑な問題の解決を可能にしています。

AI技術の中でも特にダイナミックな進化を遂げている分野です。

そのメカニズムや活用事例を理解することは、今後の技術選択において非常に重要です。
この記事では、強化学習がどのような原理に基づいて動いているのか、どんなアルゴリズムが存在するのかを解説し、さらに実際にどのような場面で使われているかを紹介します。

Nao Yanagisawa
監修者 Jitera代表取締役 柳澤 直

2014年 大学在学中にソフトウェア開発企業を設立

2016年 新卒でリクルートに入社 SUUMOの開発担当

2017年 開発会社Jiteraを設立
開発AIエージェント「JITERA」を開発

2024年 「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」に選出

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執筆者 エンジニア kota_writer

大小さまざまなシステム構築案件や製品開発に携わってきています。 要件定義工程から運用保守まで、一気通貫での開発プロセス最適化や品質管理担当のPMOとして従事しています。

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    強化学習とは?


    強化学習は、環境からのフィードバックに基づいて最適な決定を学ぶAIの一形態です。

    この学習形式の魅力は、プリプログラムされたルールに依存せず、自己発見的なプロセスを経て最適な行動パターンを導き出す点にあります。

    強化学習の特徴についてより詳しく見ていきましょう。

    強化学習が重要視されている理由

    強化学習は、未知の環境に適応し最適な決定を下す能力が求められる状況で非常に重要です。この技術は、自動化システムやスマートデバイスが予測不能な変更に迅速に対応するためのキーとなります。

    たとえば、自動運転車が交通状況に応じて最適なルートを選択するケースなど、日々の操作を最適化し、効率を大幅に向上させることができます。

    また、進化する市場や消費者行動のパターンを分析し、戦略を調整するビジネスアプリケーションにおいても中核を担う技術として注目されています。

    強化学習の2つの要素

    強化学習は主に二つの核心要素から構成されます。
    エージェントと環境です。

    エージェントは学習を行う主体であり、環境はそれが操作または影響を与える対象です。この相互作用を通じて、エージェントは試行錯誤を繰り返し、経験から学習していきます。

    具体的には、エージェントは環境からのフィードバック(報酬)を基に行動選択を行い、目標達成に向けた最適な戦略を自ら獲得していきます。このプロセスにより、エージェントは徐々に効率的な行動パターンを身につけ、環境内で成功確率を高めていくことが可能になります。

    エージェント:学習主体(AI)

    エージェントは強化学習における学習を担うAIです。このエージェントの役割は、与えられた環境内で行動を選択し、その結果として得られる報酬を基に自身の行動パターンを調整することにあります。

    行動の選択は、目前の報酬だけでなく、将来的な報酬も考慮に入れて最適化されます。これにより、エージェントは経験を積むごとにより効果的な行動戦略を学習し、複雑な問題解決能力を発展させていきます。

    エージェントの学習能力の進化は、強化学習がAI技術の中でも特にダイナミックな進歩を遂げる理由の一つです。

    環境:制御対象

    環境はエージェントが相互作用を行う物理的または仮想の領域です。強化学習のコンテキストでは、この環境がエージェントに対して連続的なフィードバック(報酬)を提供します。

    エージェントの行動が環境にどのような影響を与えるかを理解し、それに基づいて最適な行動を選択することが求められます。環境は通常、動的で複雑であり、エージェントはこの変化する環境に適応することで、より高度な学習と意思決定が可能になります。

    このプロセスを通じて、エージェントは最適な解決策を模索し続けることが可能となり、それが強化学習システムの効率を大幅に向上させる要因となっています。

    強化学習の目的

    強化学習の主な目的は、収益を最大化する方策(ポリシー)を獲得することです。方策とは、エージェントがどのように行動を決定するかを定義するモデルであり、その選択が直接収益に影響を及ぼします。

    ここでいう「収益」とは、エージェントが一連の行動を通じて得られる報酬の合計値を指し、最適な行動を選択することで最大化を目指します。このプロセスでは、短期的な報酬だけでなく、長期的な利益も考慮に入れることが重要です。

    効果的な方策を見つけ出すことにより、エージェントはより複雑で変動する環境内で成功する確率を高めることができます。

    強化学習の流れ

    強化学習の基本的な流れは、エージェントが行動を起こし、その結果として報酬を獲得し、これを通じてより価値の高い行動を学習するプロセスです。

    このサイクルは、エージェントが環境内で繰り返し行動を試すことによって継続します。具体的には、エージェントは初めにランダムまたは予定された行動を取り、その行動がもたらす結果(報酬またはペナルティ)を観察します。

    このフィードバックを基に、エージェントはどの行動が最も効果的かを判断し、次回の同様の状況でより良い決定を下せるように自身の行動方針(ポリシー)を更新します。

    このようにして、エージェントは徐々に最適な行動パターンを身につけ、全体のパフォーマンスを向上させていくのです。

    AI・機械学習・深層学習と強化学習の関係


    AI(人工知能)は、人間の知的行動を模倣するために設計されたシステムやプログラムを指します。その中でも、機械学習は、AIが大量のデータからパターンを学習し、新しいデータに対する予測や決定を自動で行う技術です。

    機械学習にはさまざまな形式があり、その一つが強化学習です。強化学習では、目的を達成するために自動的に最適な行動を見つけるために、試行錯誤と環境からのフィードバック(報酬)を基に学習が進行します。

    これにより、エージェントは自身の経験を元に行動を最適化し、より効果的な決定を行う能力を身につけます。

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      強化学習とディープラーニング(深層学習)の違い


      強化学習とディープラーニング(深層学習)は、AIの分野でよく聞かれる用語ですが、その目的とアプローチには以下のような違いがあります。

      学習手法 内容
      深層学習 通称「ディープラーニング」は、大量のデータを通じて複雑なパターンを識別し、これを学習するための手法です。
      ディープラーニングは主にラベル付きデータから学習を行います。
      強化学習 エージェントが環境との相互作用を通じて最適な行動を学び、最大の報酬を得る過程を指します。
      強化学習は試行錯誤とその結果得られる報酬に基づいて学習を進めます。

      それぞれ詳しく見ていきましょう。

      強化学習の3つのアルゴリズム(手法)

      強化学習には多様なアルゴリズムが存在しますが、特に重要な3つの手法にはそれぞれ独自の特徴があります。

      これらのアルゴリズムは、それぞれ異なる状況や目的に適しており、強化学習の多様な応用を可能にしています。

      Q-Learning(Q学習)

      Q-Learning(Q学習)

      Q-Learningは、環境内の全ての状態と行動から最適な行動選択を学ぶオフポリシーの強化学習アルゴリズムです。この手法は、報酬の最大化を目指して、エージェントがどの状態でどの行動を取るべきかの価値(Q値)を推定します。

      Q値は、特定の状態から特定の行動をとった場合の期待される報酬の合計です。学習過程で、エージェントはQ値を更新し続け、最も報酬の高い行動を選択するようになります。

      Q-Learningはその汎用性と実装の容易さから、多くの実世界の問題に適用されています。

      Sarsa

      Sarsa

      Sarsaは、オンポリシーメソッドの一種で、現在のポリシーに基づいた行動選択から学習を進める強化学習アルゴリズムです。この手法では、エージェントが行動を取るごとに、次の状態とその状態で取る行動も同時に考慮して学習が行われます。

      具体的には、エージェントが状態 \( s \) で行動 \( a \) を取り、報酬 \( r \) を受け、次の状態 \( s’ \) へ移動し、次の行動 \( a’ \) を選択する過程を通じて、行動価値関数(Q値)を更新します。

      Sarsaの特徴は、安定した学習が可能であり、特にポリシーに大きく依存する環境で効果を発揮します。

      モンテカルロ法

      モンテカルロ法

      モンテカルロ法は、完了したエピソード全体を基にして学習を行う強化学習のアプローチです。この手法では、エピソードが完了するまでの各ステップで得られる報酬を用いて、行動価値関数を更新します。

      モンテカルロ法の主な特徴は、一つのエピソードの結果から平均を取ることによって、推定を行う点にあります。このアプローチは、特に結果が確定するまでの間が長い場合や、状態遷移が確率的で予測が困難な場合に有効です。

      AI開発のプロセスについては、以下の記事もご参照ください。

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      強化学習の活用事例


      強化学習はその適用範囲の広さで知られ、多様な産業や分野で革新をもたらしており、複雑な意思決定問題に対処するための強力なツールであり、その効果は今後もさらに広がることが期待されます。

      囲碁プログラム「AlphaGo」(ディープマインド)


      引用元:https://deepmind.google/technologies/alphago/
      「AlphaGo」は、ディープマインドによって開発された囲碁プログラムで、強化学習とディープラーニングを組み合わせた技術が使用されています。

      このプログラムは、人間のプロ囲碁プレイヤーとの対局で顕著な成果を上げ、2016年には世界チャンピオンの李世ドルを破る歴史的な勝利を収めました。

      AlphaGoの成功は、複雑な意思決定を必要とする環境でAIがいかに有効であるかを示し、AI研究の新たな地平を開いたとされています。その後のバージョンであるAlphaGo Zeroはさらに進化し、完全に自己学習によって高いレベルに到達しました。

      マーケティング支援(ナビプラス)


      引用元:https://www.naviplus.co.jp/search.html
      ナビプラスが提供するマーケティング支援ツールは、強化学習を活用して消費者の行動を予測 し、最適な広告配信を実現します。

      このシステムは、ユーザーの過去の行動データを分析し、どの広告が最も効果的かをリアルタイムで計算。これにより、企業はマーケティングキャンペーンのROIを大幅に向上させることが可能です。

      特にEコマースプラットフォームでの利用が増えており、顧客の購買行動に合わせたパーソナライズされた広告表示がコンバージョン率の向上に直結しています。この技術の進化により、マーケティングの精度と効率が飛躍的に向上しています。

      自動運転(Preferred Networks)


      引用元:https://www.preferred.jp/ja/projects/transportation/
      Preferred Networksは、強化学習を利用して自動運転技術の開発を推進しています。この技術は車両が環境を理解し、最適な判断を下すことを可能にします。

      具体的には、車両が遭遇する無数の交通状況に対して、リアルタイムで最良の行動選択を行うことができるようになります。強化学習を活用することで、車両は試行錯誤を通じて効率的な運転パターンを学習し、安全でスムーズな運転を実現します。

      この進歩は、自動運転の普及と安全性向上に大きく寄与しており、将来の交通システムの変革に貢献しています。

      コンテンツをレコメンド(NETFLIX)


      引用元:https://www.netflix.com/jp/
      Netflixは強化学習を活用して、ユーザー個々の好みに合わせた映画やテレビ番組の推薦システムを進化させています。

      このシステムは、ユーザーの視聴履歴や評価データから学習し、それぞれのユーザーに最も適したコンテンツを提案します。

      強化学習を用いることで、ユーザーの反応に基づいて推薦アルゴリズム自体が自動的に更新され、より精度の高いパーソナライズされた視聴体験を提供します。この技術により、Netflixは顧客満足度を高めると同時に、エンゲージメントの増加を図っています。

      ゲーム開発工程の効率化・自動化(セガ/ブレインパッド)


      引用元:https://www.brainpad.co.jp/doors/contents/02_ai_development_story_sega/
      セガとブレインパッドは強化学習を利用して、ゲーム開発の工程を効率化および自動化しています。

      この技術を活用することで、ゲーム内のキャラクターAIの行動パターンやゲームテストの自動化が可能になり、開発期間の短縮とコスト削減が実現されています。

      特に、キャラクターがプレイヤーの行動に基づいてリアルタイムで適応し、よりリアルな挑戦を提供することが可能です。

      また、自動テストにより、バグの早期発見と修正がスムーズに行われ、全体的なゲーム品質が向上しています。このような革新は、ゲーム業界における開発プロセスの改革に寄与しています。

      通信ネットワークでデータを特性に応じたトラフィックの最適化


      引用元:https://www.tupl.com/solutions/rf-shaping/
      通信ネットワークにおけるデータトラフィックの最適化は、強化学習を使用して効率的に行われています。

      このアプローチでは、ネットワークの状態をリアルタイムで分析し、データの流れを動的に制御することで、帯域幅の利用効率を最大限に高めます。

      特に、異なるデータタイプや緊急度に応じて優先順位を変更し、ネットワークの輻輳を防ぎつつ、応答時間を短縮することが可能です。このようなシステムは、高負荷時でも安定した通信品質を保つために極めて重要です。

      エレベーターの稼働効率を上げる取り組み


      引用元:https://www.meltec.co.jp/elevator/maintenance/elefirst-smart.html
      エレベーターの稼働効率を向上させるための強化学習の応用は、ビル管理の新たなフロンティアと言えるのかもしれません。

      この技術を活用することで、エレベーターの待ち時間を最小限に抑え、利用者の流れを効率的に管理することが可能になります。

      具体的には、エレベーターが最も需要の高い階を予測し、事前に適切な階へ移動して待機することで、全体の運行効率を大幅に改善します。このアプローチは、ビルのエネルギー消費を削減し、利用者の満足度を向上させる重要な手段となっています。

      AI 強化学習のまとめ


      強化学習は、AI技術の中でも特に進歩が目覚ましい分野であり、その応用範囲は日々拡大しています。

      この技術は、環境からのフィードバックを基に最適な行動戦略を学ぶことで、自動運転車から金融取引、ゲーム開発に至るまで多岐にわたる領域で利用されています。

      特に、エージェントが行動を通じて経験を積み重ね、より良い決定を下す能力は、複雑な問題解決において重要な役割を果たします。深層学習と組み合わせることで、さらに精度の高い学習が可能になり、未来のテクノロジーにおけるキーと言えるかもしれません。

      Jiteraでは、これらのAI技術を活用したシステムの開発や導入をサポートしており、具体的なアプリケーションやシステム開発に関してお気軽にお問合せください。

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