NFC(エヌエフシー)とおサイフケータイの違いは?機能やビジネス活用例も紹介

近年のデジタル決済の普及に伴い、NFC(エヌエフシー)おサイフケータイが改めて注目を集めています。

NFCは「Near Field Communication」の略称で、日本語では「近距離無線通信」と訳される通信技術の一つです。スマートフォンやカードなどのデバイス間でデータをやり取りができ、タッチ決済・チケットレス・個人認証などに活用され、今や生活に密接している技術となっています。

一方、おサイフケータイは日本が独自開発したモバイルシステム決済システムであり、NFCが活用されている技術です。

この記事では、NFC(エヌエフシー)とおサイフケータイの違いそれぞれの機能とビジネスにおいての活用例を詳しくご紹介します。

Nao Yanagisawa
監修者 Jitera代表取締役 柳澤 直

2014年 大学在学中にソフトウェア開発企業を設立

2016年 新卒でリクルートに入社 SUUMOの開発担当

2017年 開発会社Jiteraを設立
開発AIエージェント「JITERA」を開発

2024年 「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」に選出

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執筆者 shu-ichi

とある企業のシステム管理者として10年以上勤めています。 自身の経験や知識を活かし、誰にでも分かりやすい記事をお届けしたいです。

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    NFCとは

    NFC(Near Field Communication)は短距離無線通信技術の一種で、主にスマートフォンやタブレットなどデバイス間でのデータ通信に使用されています。

    NFCは、接触型ICカードやクレジットカードのように物理的な接触を必要とせず、対応デバイスを互いに近付けるだけで通信が可能です。

    ここでは、NFC技術の特徴やおサイフケータイとの関係について解説します。

    NFCの特徴

    NFCの最大の特徴は、データ処理速度が速い点です。

    この特徴を活かした例として、NFCを搭載している交通系ICカードのSuicaは、改札にカードを一瞬かざすだけでチャージされたお金が引き落とされる仕組みとなっています。

    また、セキュリティレベルも高く、キャッシュレス決済のほか、運転免許証やマイナンバーカードにも活用されており、セキュリティ面の信頼性が高いのが特徴です。

    NFCには多くのメリットがある一方、デメリットも少なからず存在します。それは「通信可能距離が短い」と「通信速度が遅い」点です。

    NFCは「短距離無線通信」技術なので、通信可能な距離は10cm程度と非常に短くなっています。この制限があるため、NFCによる通信を行う際はデバイスをかざしたり、軽く触れなければなりません。

    また、通信速度が遅いために大容量のデータ通信には不向きです。他の無線通信技術であるWi-FiやBluetoothとは違い、小さなデータの通信にのみ活用されています。

    NFCとおサイフケータイの違い

    NFC おサイフケータイ
    開発 海外企業 日本企業(ソニー)
    規格 国際標準規格 日本独自の規格
    特徴 値段が安くて幅広い用途に活用されており、欧米では主流 カードにICチップを搭載しており、日本では主流
    通信速度 424 kbps 847 kbps
    採用されているもの Taspoカード
    マイナンバーカード
    運転免許証
    パスポート
    おサイフケータイ
    交通系ICカード
    ヘルスケア製品

    NFCとおサイフケータイの主な違いは、対応するサービスや機能の範囲です。

    NFCは国際的な規格に基づいた技術であり、世界中の多くのデバイスやサービスで利用されています。

    セキュリティ面でも優れており、通信距離が短いという制限がゆえに不正利用のリスクが低く、金融取引や個人情報の取り扱いでも安全にデータ通信ができるのが特徴です。

    一方、おサイフケータイは日本独自の技術であり、特定のサービスやアプリケーションでしか利用できません。ビジネスの目的によって、どちらの技術を活用するかが重要です。

    おサイフケータイの基本情報とNFCとの関係

    おサイフケータイは日本独自のモバイル決済システムであり、「Felica(フェリカ)」という仕組みを使っています。

    Felicaは、日本企業であるソニーがNFCの規格に準じて開発した非接触型ICカード技術です。他にもFelicaの技術が使われているものとしては、下記の例が該当します。

    • JR東日本の「Suica」
    • 首都圏にある私鉄やバスで利用できる「PASMO」
    • 電子マネーの「Edy」
    • セブンイレブンで使える電子マネー「nanaco」

    つまり、おサイフケータイとは「Felicaを搭載した携帯電話やスマートフォン」です。

    このおサイフケータイという名称も、元々はNTTドコモが契約者が分かりやすくするためにつけたもので、登録商標もNTTドコモが持っていますが、現代ではauやソフトバンクなど他のキャリアでも使える名称となっています。

    おサイフケータイとNFCは、全く同じ技術というわけではありませんが、NFCから派生したいわば親戚のような関係性といえます。

    NFCの機能とは

    世界中の多くのデバイスやサービスで利用されていたり、おサイフケータイといった日本独自の技術にも活用されているNFCは、いくつかの機能を掛け合わせて構築されている仕組みです。

    • カードエミュレーション機能
    • リーダー・ライター機能
    • 端末間通信機能(P2P)

    ここでは、NFCが持つ特徴的な3つの機能についてご紹介します。

    カードエミュレーション機能

    カードエミュレーション機能とは、接触型のICカードやICタグと同じようにカードリーダーへかざすだけで通信ができる機能です。「実際のカードであるかのように振る舞う(エミュレーションする)」という意味からきています。

    おサイフケータイはまさにこの機能の応用として開発されており、携帯電話やスマートフォンにお金をチャージしておけば、電車の切符や航空券、コンサートのチケットやポイントカードの代わりになる仕組みです。

    リーダー・ライター機能

    NFCでは、ICカードやICタグから情報(データ)の読み書きが可能であり、これが「リーダー・ライター機能」です。

    活用例としては、地図情報やお得なクーポン、お店のWebサイトURLなどをお店の宣伝ポスターにICタグとして埋め込めば、お客さんはポスターにスマートフォンをかざすだけで店舗に関する様々な情報の読み取りが可能となります。

    端末間通信機能(P2P)

    端末間通信機能(P2P)とは、NFCを搭載した機器同士でデータのやり取りが行える機能です。端末同士を近付けないと通信ができないため、悪用されるリスクが低いというメリットがあります。

    例えば、NFCを搭載したスマートフォン同士でメールアドレスを交換したり、スマートフォンからパソコンへ写真を転送したりなど、「無線で使えるUSB」といった感覚で利用できるのが特徴です。

    実際にAndroid搭載のスマートフォンでは、機器間でデータの送受信ができる「Android Beam」という機能がありましたが、現在のバージョンでは廃止されています。

    NFCの4つの規格

    便利な機能があり、様々な機器に用いられているNFCの技術ですが、このNFCには用途によって使い分けられている規格が主に4種類存在します。

    • Type-A
    • Type-B
    • Type-F(FeliCa)
    • Type-V(ISO15693)

    それぞれの規格ごとに特徴が異なり、活用されているデバイスも異なるため、詳細な仕組みを理解しておくのが肝心です。

    ここでは、NFCの4つの規格について詳しく解説します。

    コスト 最大通信速度 日本での活用
    Type-A 安価 424kbps e-Tax
    taspoカード
    Type-B 高価 424kbps マイナンバーカード
    運転免許証
    Type-F(Felica) 高価 847kbps 交通系ICカード
    おサイフケータイ
    Type-V(ISO15693) 高価 424kbps 施設管理

    Type-A

    Type-Aは、オランダの企業が開発したNFCの規格です。導入にかかるコストが比較的安価であり、世界中の国や地域で普及している通信規格となっています。

    Type-Aは「MIFARE(マイフェア)」という名称でも呼ばれており、特にヨーロッパの交通機関ではこちらの名称での利用が一般的です。

    日本においては、国税電子申告・納税システムである「e-Tax」や、たばこ購入の際に使われるtaspoカードなどでType-A規格が採用されています。

    Type-B

    Type-Bは、アメリカの企業が開発したNFCの規格であり、こちらも世界中で活用されています。

    CPU搭載が必須とされているため処理速度が高速であり、セキュリティレベルも高い規格ですが、導入コストが比較的高価なのが特徴です。

    セキュリティレベルが高いため、日本においては政府が発行しているマイナンバーカードや住民基本台帳カード、運転免許証やパスポートなどに利用されています。

    Type-F(FeliCa)

    Type-Fは日本企業のソニーが開発し、「Felica(フェリカ)」という名称で知られている規格です。JRで使えるSuicaや、電子マネーのEdy、おサイフケータイなどに活用されています。

    世界標準といえるNFC規格のType-A/Bとは違い、Type-F(Felica)は日本でのみ普及している規格であり、一般的な海外製のスマートフォンには搭載されていません。

    Type-Fは、Type-A/Bよりも通信速度が2倍以上も速いという特徴があります。この特徴から、通勤ラッシュ時などで迅速な決済が必要とされる日本の交通機関のニーズにマッチし、日本でのFelica普及が一気に加速しました。

    Type-V(ISO15693)

    Type-V(ISO15693)は、他の規格と比べ長い距離(10cm~70cm)を通信できるという特徴があります。

    他にも「取り扱えるデータ容量が大きい」や「データ破損のリスクが低い」といった特徴もありますが、他の規格よりもセキュリティ面が弱く、個人情報や決済などのデータのやり取りでは使われていません。

    通信距離が長いという特性を活かし、図書館内での本の貸出管理や駐車場などで利用されている規格です。

    NFCを活用したビジネスモデル

    NFC技術を活用した日本独自のモバイル決済システムである「おサイフケータイ」は、今や国内で販売されている多くのスマートフォンに標準搭載されるようになりました。

    NFCを活用した近距離無線通信は、現代においてはモバイル決済だけに限らず、他の様々なビジネスにも活用されているのです。

    ここでは、NFCを活用したビジネスモデルについて解説します。

    キャッシュレス決済

    あらかじめお金をチャージしておく、もしくはクレジットカードと紐付けておけば、現金を使わずにお店で商品やサービス代金の支払いができる仕組みがキャッシュレス決済です。

    これによって、代金の支払い時に素早い決済が可能となり、店舗側・客側の双方にとってメリットがあるといえます。

    現代において広く浸透してきた代金支払い方法であり、キャッシュレス決済があるかないかで商品やサービスを購入するお店を変えるといったユーザーも少なくありません。

    電子チケット

    イベントやエンターテイメント業界においても、NFC技術やおサイフケータイの活用が注目されています。

    既にコンサートやスポーツイベントのチケット購入や入場管理などにおいて、おサイフケータイの技術を活用する動きが広がっているのです。

    紙のチケットを用意する必要がなくなり、よりスムーズに入場できるようになったため、お客さん側は満足度が向上し、運営側はコストの削減が見込めます。

    デバイス間でのデータ通信

    スマホなどNFCが搭載されているデバイス同士であれば、相互でデータ通信も可能となっています。

    機器同士を近付けるだけでデータの送受信ができ、相手の連絡先やメールデータ、写真データなどでもスムーズな交換が可能です。

    さらに同じデバイス(スマホ)同士だけでなく、周辺機器との接続も簡単に行えます。

    NFCに対応したワイヤレススピーカーがあれば、スマホを近づけるだけで接続可能となるので汎用性が高いのが特徴です。

    商品管理

    NFC技術は、社内業務の効率化にも役立てられています。

    一部の在庫管理システムではNFC技術をシステムに組み込んでおり、在庫商品に取り付けたICタグを読み込んで、棚卸し業務の効率化を可能にしました。

    大規模な倉庫に何千個とある商品の中から、目的の商品を探すためにNFC技術を採用するなど、ビジネスにおける管理の効率化においても活用されている技術です。

    ポイントカードシステム

    例えば、カフェやレストランなどでおサイフケータイを使ったポイントプログラムやクーポン配布を行うなどして、お客さんのリピート利用を促すアイディアとしてNFCが活用されています。

    この方法は店舗側にとってもメリットがあり、クーポンを使った顧客データを収集して分析すれば、常連客の囲い込みや、新しいキャンペーンの開発など、マーケティング戦略に役立つデータとして収集できるでしょう。

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    中小企業でのNFC導入のメリットと戦略

    NFC技術を導入すれば、中小企業にとって多くのメリットをもたらします。

    NFC技術を活用すれば、企業は顧客体験の向上、効率的なオペレーション、そして新たなビジネスチャンスの創出を実現可能です。NFCは、低コストでの導入と使いやすさが特徴であり、リソースが限られている中小企業にとって大きなメリットになり得ます。

    また、顧客満足度の向上も、NFC技術の導入によってもたらされるメリットの一つです。

    NFCを利用したスマートな決済システムは、顧客にとって迅速かつ便利な支払い方法となります。顧客の満足度が高まればリピート率の向上に繋がり、企業にとっても導入コスト以上の利益をもたらしてくれるでしょう。

    効率的なオペレーションが実現できるのも、NFC技術を導入するメリットです。在庫管理にNFCタグを利用すれば商品の追跡・管理が容易になり、作業の効率化が図れます。

    また、イベントや展示会などの入場管理にNFC技術を活用すると、手作業による確認の必要がなくなり、運営の効率化も実現できるでしょう。

    NFC技術導入の障壁と克服方法

    NFC技術の導入は中小企業にとって多くのメリットがありますが、その一方、導入にはいくつかの障壁が存在します。

    一つ目の大きな障壁は、技術的な知識の不足です。多くの中小企業では、NFC技術に関する専門知識が不足しているため、導入の際に不安や誤解が生じる可能性があります。

    この技術的な障壁を克服するためには、適切なトレーニングとサポートが不可欠です。

    専門的な知識を持つ外部のコンサルタントやサービスプロバイダーと協力するなどして、従業員がNFC技術を理解できれば、顧客に対してより良いサービスを提供できるようになります。

    二つ目の大きな障壁は、コストです。特に初期投資が必要な場合、中小企業にとっては大きな負担となる可能性があります。

    この問題を解決するには、コスト効率の良いNFCソリューションの選択が重要です。投資の回収期間やROI(投資収益率)を事前に計算し、長期的な視点でのコスト対効果を検討しなくてはなりません。

    NFC技術の将来性と中小企業への影響

    NFC技術は、その柔軟性と拡張性によって、今後も多方面での発展が期待されています。

    特に中小企業にとっては、NFC技術で新たなビジネス機会を創出し、顧客との関係を強化できる重要なツールとなるでしょう。

    将来的にNFC技術はさらに進化し、より複雑なアプリケーションへ対応可能になると予想されています。

    スマートホーム・ヘルスケア・個人認証システムなど、新たな分野での応用が期待されており、技術の進歩によって、中小企業にとって新しい市場を開拓する機会を提供してくれるでしょう。

    また、NFC技術の普及は、中小企業の業務管理にも大きな影響を与えます。

    在庫管理・資産追跡・顧客管理など、多くの業務がNFC技術による効率化が期待できます。さらに、NFC技術を活用したデータ収集と分析によって、市場の動向や顧客のニーズをより深く理解し、戦略的な意思決定が可能になるでしょう。

    NFC(エヌエフシー)とおサイフケータイの違いのまとめ

    今回は、NFC(エヌエフシー)とおサイフケータイの違い、そしてそれぞれの機能やビジネスへの活用例についてご紹介しました。

    NFCはおサイフケータイの基となった技術であり、また、そのNFCにもいくつかの種類があって、それぞれ適した用途が異なるというのがご理解頂けたのではないでしょうか。

    中小企業にとってNFC技術を活用するのは、様々なメリットが期待できます。

    決済システムとして導入すれば顧客満足度が向上し、在庫管理システムとして導入すれば業務効率化が見込めるなど、メリットを享受できる分野は多岐にわたるでしょう。

    NFCとおサイフケータイの機能を理解して、それらを自社のビジネスモデルにどう活用できるかを考えれば、新たな市場の開拓も可能となります。

    弊社ではAIを使ったシステム開発やAIの導入支援を行っておりますので、AIに関する質問や、案件のご相談がある場合は、ぜひ弊社株式会社Jiteraへお問い合わせください。

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