エニアック(ENIAC)とは?世界初の汎用電子式コンピュータの性能や開発者など紹介

時は1946年、人類が夢見た”電子ブレイン”が誕生しました。

その名は「エニアック」

世界初の本格的な電子式デジタルコンピューターは、膨大な大きさと18,000本もの真空管で構成され、毎秒5,000回もの高速計算を可能にした革命的な機械でした。

しかし、その道のりは決して平たんなものではありませんでした。軍事目的で開発が進められたエニアックは、プログラミングや運用に多くの困難が伴っていましたのです。

本記事では、世界初の本格的な電子式コンピュータ「エニアック(ENIAC)」について、その概要や特徴、開発の経緯などを詳しく解説します。

当時としては画期的な性能を持っていたエニアックの仕組みを紐解きながら、コンピューターの転換点を見ていきましょう。

Nao Yanagisawa
監修者 Jitera代表取締役 柳澤 直

2014年 大学在学中にソフトウェア開発企業を設立

2016年 新卒でリクルートに入社 SUUMOの開発担当

2017年 開発会社Jiteraを設立
開発AIエージェント「JITERA」を開発

2024年 「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」に選出

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執筆者 猫暮 てねこ

システムエンジニア(SE)、プログラマー、ウェブサイト作成業務、ネットワークエンジニアなどを経験。 現在、フリーマルチライターとして活動中。最近はAI活用方面に没頭中。

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    エニアックとは?

    エニアック(ENIAC)は、1946年2月にペンシルベニア大学で公開され、世界で初めて実用化された電子式デジタルコンピューターです。

    正式名称は「Electronic Numerical Integrator and Computer」の略で、第二次世界大戦中の1943年から軍事目的、主に大砲の弾道計算のために開発が進められました。

    エニアックは、従来の計算機は人力やリレーなどを使った機械式とは一線を画する、プログラム内蔵式な大規模な電子計算機として、コンピューターの発展に大きく貢献しました。

    エニアックの開発が進められていた1940年代は、計算機の父と呼ばれるCharles Babbage(チャールズ・バベッジ)が設計した「分析機関」の構想から約100年が経過していました。

    バベッジの分析機関は蒸気機関を動力源とし、プログラム制御、条件分岐、ループなどの機能を搭載した近代的なコンピューターの原型ともいえる画期的な発明品でしたが、当時の技術力の限界から実用化には至りませんでした。

    エニアックは電子技術の発達により、バベッジの夢を現実のものとした画期的な機械だったのです。

    開発者

    エニアックの設計と製作は、物理学者のJohn Mauchly(ジョン・モークリー)電気技師のJ. Presper Eckert(ジョン・プレスパー・エッカート)が中心となり、ペンシルベニア大学のムーアスクール電子工学研究室(フィラデルフィア)で行われました。

    2人はコンピューターの父と称えられ、後にエニアックの技術を民間企業に移して資金を得るなど、実業家としても活躍しました。

    モークリーとエッカートの二人は、かつて教師と生徒の間柄でした。エッカートが電子工学の学生だった時、モークリーは彼の大学の教授であり、二人が意気投合したことがエニアック開発のきっかけだと言われています。

    エニアックはソフトウェア的な発想の面でも注目を集めており、とくにモークリーは「プログラムする」(to program)という動詞を初めて使った人物であるとされています。

    仕組み

    エニアックの内部構造は、当時の主流であった10進法を採用していました。

    現在のコンピューターでは2進法が主流ですが、エニアックでは1桁の10進数を格納するのに10ビットのリング・カウンタを使用し、1桁の記憶に36本の真空管を必要としていました。

    エニアック全体では約18,000本もの真空管が使われていました。ただし真空管の寿命や耐久性がも問題となり、エニアックの稼働率は極めて低かったのです。たとえば、部屋の気温や気圧といった環境に影響を受けたり、ネズミや昆虫による噛害といった問題もしばしば起こっていました。

    プログラムの誤作動を修正する際に、実際にリレー接点の間に虫(バグ)が挟まっていたことを発見したエピソードから、プログラムのエラーを「バグ」と呼ぶようになった由来ともいわれています。

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    エニアックの特徴は?

    エニアックは、アメリカ陸軍省がモークリーとエッカートに協力要請や資金援助を行い、第二次世界大戦中の弾道計算を目的として開発された電子式デジタルコンピューターでした。

    当時としては画期的な性能と機能を備えており、のちにパーソナル・コンピューターの発展に大きく貢献しました。主な特徴は以下の通りです。

    • メモリが少量だった
    • 約18,000本もの真空管が使用されていた
    • ループ処理、条件分岐、サブルーチン呼び出しなど、プログラミングが可能だった。
    • 毎秒5,000演算・約150KWもの膨大な電力を消費していた

    メモリが少量

    エニアックのメモリ容量は20基のアキュムレータに20個の10桁の数値を記憶できるだけで、ハードウェア自体にプログラムを内蔵する能力はほとんどありませんでした。

    そのため、パンチカードなどの外部デバイスからプログラムを取り込む方式を採用していました。プログラムの取り込み作業には、アキュムレータの接続を手作業で切り替える大変な作業が伴っていたそうです。

    そういった作業において、のちにモークリーの妻となるKathleen Antonelli(キャスリーン・アントネッリ)を筆頭とした6名の女性プログラマーが膨大な数の真空管の交換や地道な作業に従事していました。

    彼女たちは業務への従事だけでなく、弾道計算のファストパス発見、プログラムの改良を日々加え、エニアックの性能を世に知らしめた実績から偉大な女性技術者(Women in Technology Hall of Fame)として表彰をされています。

    現在でも、下記公式サイトより確認ができます。

    参考:Women in Technology Hall of Fame

    プログラムはループ・分岐・サブルーチンが可能

    エニアックはループ処理、条件分岐、サブルーチンなどの機能を備えており、当時としては比較的複雑なプログラミングが可能でした。

    ただし、そういった機能を内蔵する機構がなく、主に外部デバイスを用いてプログラミングをエアニックに取り込ませる必要があり、先ほどの女性プログラマーたちをはじめとして専門技術者による入念な準備が日々行われていました。

    まずパンチカードなど外部デバイスを1週間ほどかけてを作成。さらにその後、エアニック本体のケーブル配線やスイッチの切り替え、その後のバグチェックといったもろもろの作業でさらに数日かかったとされています。

    毎秒5,000演算・約150KWもの電力を消費

    エニアックは、非常に高性能で、毎秒約5,000回の演算処理が可能でした。当時の単一的なコンピュータ機構にくらべ約1000倍の速度を誇りました。

    しかし、幅30m、高さ2.4m、奥行き0.9m、総重量27トンという大がかりな構造から、約150KWもの膨大な電力を消費していました。おそろしい話ですが、150KWの電力は、東京23区の一般家庭約500世帯分の1ヶ月の電力使用量に相当します。(現代のマイクロプロセッサは毎秒100億演算以上の性能、PCの消費電力はせいぜい300W程度)

    発熱量も非常に大きく、エニアックに設置されている部屋では常に冷却ファンが回っていたそうです。しかし、フィラメントが耐熱量をよく上回り、電球の破損が一日に数回起こりました。これらの交換に一つ30分ほど修理時間を取られたと語られています。

    開発者のエッカートによる設計時の計算ミスで、エニアックの演算速度が予定より10倍速くなってしまったというエピソードもあります。

    彼はこの高速演算能力をエニアックの利点として売り込み、のちのコンピュータ販売会社の設立や後継機の開発に多くの援助を受ける形となりました。

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      エニアックの後継機は?

      エニアックの設計思想は、次世代のコンピューターEDVAC(Electronic Discrete Variable Automatic Computer)に受け継がれました。

      EDVACは「悪魔の頭脳」と名高いJohn von Neumann(ジョン・フォン・ノイマン)によりプログラム内蔵方式が提唱され、次世代型コンピューターとして設計されました。

      EDVACは前身のエニアックとは異なり、計算の基礎を10進数ではなく2進数で行う点が大きな特徴でした。2進数の採用により、メモリ容量の削減やプログラムの効率化が可能になりました。

      しかしEDVACの開発は難航。実用化されたのは1952年と、エニアックの1946年からかなり遅れてしまいました。その間には、より小型で高速な計算能力を持つコンピューターが、EDSAC(ケンブリッジ大学開発のコンピュータ)UNIVAC(比較的小型の一般オフィス向けコンピュータ)など、続々と登場していきます。

      EDVACの開発が遅れた理由の一つに、モークリーとエッカートの対立があったと言われています。EDVACの主導権を巡って対立し、お互いに非難の応酬を繰り返したため、開発に支障が出てしまったようです。

      モークリーとエッカートの不仲は、アイデアの衝突から生まれたものの、結果としてコンピューター業界の分裂と発展の遅れを引き起こしてしまったといえるでしょう。

      エニアックまとめ

      エニアックは、世界初の本格的な電子式デジタルコンピュータとして、その後のコンピューター発展の基礎を築きました。稼働時間は大きく限られているもののプログラミング機能を備えていたことが大きな特徴でした。

      真空管の半永久的な交換作業や、プログラムの手作業での取り込みなど、現代から見れば大変な作業が伴っていました。しかし、エニアックなくしてはコンピューターの発展はなかったでしょう。

      エニアックは1955年に運用を停止しました。

      実際に稼働していたエニアックは、ペンシルベニア大学工学部を始めとした世界各国の博物館や協会などに保管され、今でもコンピューター史に残る偉大な機械として展示され続けています。

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