BevyはRust製のオープンソースゲームエンジンです。
シンプルで直感的な設計が特徴で、Rustの安全性と性能を最大限に活用できます。
Bevyの強みはECS(エンティティ・コンポーネント・システム)アーキテクチャで、データ駆動型のゲーム開発が可能です。
この記事では、Bevyの特徴やできることについて、詳しく解説します。
2014年 大学在学中にソフトウェア開発企業を設立
2016年 新卒でリクルートに入社 SUUMOの開発担当
2017年 開発会社Jiteraを設立
開発AIエージェント「JITERA」を開発
2024年 「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」に選出
Bevy(ベヴィー)とは
Bevyは、Rust言語で開発されたオープンソースのゲームエンジンです。
軽量でモジュール化された設計のため、初心者からプロフェッショナルまで幅広いユーザーに好まれています。
Rustの安全性と高速性を活かしており、高性能なゲームやシミュレーションを簡単に構築できます。
Bevyの特徴のひとつは、ECSを採用している点です。柔軟で拡張性のあるゲーム開発が可能になり、ゲームオブジェクトの管理や処理が効率的に行えます。
また、リアルタイムレンダリングや物理シミュレーション、オーディオ処理など、ゲーム開発に必要な機能を一通り備えており、さまざまなタイプのゲームを開発可能です。
RustとBevyの組み合わせは、メモリ管理の安全性や並行処理の効率性を高め、バグやパフォーマンス問題を減少させます。
複雑なプロジェクトでも安心して取り組むことができ、質の高いゲームを効率的に制作できるのです。
Bevyの特徴
ここからは、以下6つのBevyの特徴について、詳しく解説します。
- ECSを採用している
- 無料のオープンソースである
- データ指向である
- 2D/3Dレンダリングに対応している
- ホットリロードに対応している
- クロスプラットフォームに対応している
ECSを採用している
ECS(エンティティコンポーネントシステム)は、ゲームエンジンの設計で広く使われているアーキテクチャで、BevyはこのECSを採用しています。
エンティティ(ゲーム内のオブジェクト)をコンポーネント(属性や機能を持つ要素)で構成し、システムでそれらを制御します。
この設計により、複雑なオブジェクトやキャラクターの管理がシンプルになり、効率的にゲームのロジックを実装できます。
Bevyでは、ECSによってパフォーマンスの最適化がしやすく、大規模なゲーム開発にも対応可能です。
無料のオープンソースである
Bevyは、Rust製の無料オープンソースゲームエンジンであるため、コストを気にせずに利用可能です。
さらにオープンソースの利点である、コミュニティで提供される豊富なサポートやサンプルコードがあるため、学習リソースも充実しています。
また誰でも自由に利用、改変、再配布が可能であることから、自分のプロジェクトに合わせてエンジンのコードをカスタマイズできます。特定のニーズに応じた最適なソリューションを実現可能です。
コミュニティフォーラムやチャットも活発で、技術的な質問や新しいアイデアの共有が行われています。これらのリソースを活用することで、効率的にゲーム開発を進められるでしょう。
データ指向である
Bevyは、データ指向設計(Data-Oriented Design, DOD)を採用しています。この設計により、メモリの効率的な使用や、パフォーマンスの向上が期待できます。
データとロジックを明確に分離することで、コードの再利用性が高まり、複雑なゲームロジックの実装を簡単に行うことが可能です。さらに柔軟なモジュール構造により、ユーザーが自由にカスタマイズできる点も、大きなメリットです。
DODはECSを中心に構築されており、ゲームオブジェクトをエンティティとし、それに付随するデータをコンポーネントとして管理します。エンティティごとの動作をコンポーネント単位で細かく制御でき、特定の機能を持つコンポーネントを必要に応じて追加・削除できます。
2D/3Dレンダリングに対応している
Bevyは、2Dおよび3Dレンダリングに対応している点が大きな特徴です。Bevyの2Dレンダリング機能は、シンプルなスプライト描画から複雑なアニメーションまで幅広く対応しており、初心者でも扱いやすい設計となっています。
3Dレンダリングにおいても、高度なグラフィックス機能を備えており、リアルタイムの光や影の表現が可能です。これにより、リアルなゲーム環境を構築できます。
2D/3Dレンダリングに対応していることで、3Dゲームの中に2D要素を含ませるなど、双方の特色を反映したゲーム開発も可能です。より表現の幅が広がるほか、斬新でオリジナリティー溢れるゲーム制作に役立ちます。
ホットリロードに対応している
Bevyは、ホットリロードに対応しているゲームエンジンです。この機能により、コードを変更した際に、アプリケーションを再起動することなくリアルタイムでその変更を反映できます。
ホットリロードに対応していることで、開発サイクルが大幅に短縮され、効率的なデバッグと迅速なフィードバックが可能となります。
特にゲーム開発においては、頻繁に試行錯誤が必要なため、このホットリロード機能は非常に有用です。
ホットリロード対応の利点は、開発速度の向上に留まらず、クリエイティブなアイデアの即時実装を促進する点にあります。
コード変更の影響をすぐに確認できるため、プロトタイピングがスムーズに行えます。また、チームでの共同作業も効率化され、全員が最新のコードに基づいて作業を進めることが可能です。
クロスプラットフォームに対応している
Bevyは、クロスプラットフォームに対応しています。
具体的にはWindows、Linux、MacOS、Web、Android、iOSといった主要なプラットフォームで動作します。この特徴により、一つのコードベースで複数のプラットフォーム向けにゲームを展開することが可能です。
時間とコストの削減が期待できるだけでなく、広範なユーザー層にリーチできます。クロスプラットフォームに対応していることで開発プロセスを効率化するだけでなく、より多くのデバイスでのテストとデプロイが容易になるのです。
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Bevyにおける重要な概念
Bevyには、EntityとEvent、Componentという重要な概念があります。
3つともBevyに必要な概念(要素)です。それぞれを詳しくご紹介します。
Entity(エンティティ)
Bevyにおける「エンティティ」は、ゲーム内のあらゆるオブジェクトを表す単位のことで、これ自体は属性や機能を持ちません。
エンティティは識別子(ID)で、その実際の動作や性質は「コンポーネント」を通じて与えます。
ゲームで言えばユーザーのキャラクターやアイテム、背景のオブジェクトなどがすべてエンティティとして扱われます。
エンティティ自体は何も持たず、軽量であるため、多くのエンティティを効率的に管理できるのがECSの大きな利点です。
Event(イベント)
Bevyの「イベント」は、ゲーム内での動的な出来事や変化を表す概念です。
イベントシステムは、ユーザーの入力や状態の変化など、システム間での情報伝達に利用されます。
イベントは生成されると、対応するシステムで処理されます。例えば、キーを入力するタイプのイベントが発生した際には、それに応じた処理を行うシステムが動作します。
イベントシステムを活用することで、コンポーネント同士が直接依存せずに動作できるため、柔軟で拡張性の高い設計が可能です。
Component(コンポーネント)
Bevyの「コンポーネント」は、エンティティに付与される属性や機能を定義する要素です。
エンティティ自体は識別子なので、コンポーネントを追加することでエンティティに指定の性質や機能を持たせることが可能です。
例えば、位置情報を管理する「Transform」コンポーネントや、描画に必要な「Sprite」コンポーネントなどがあります。
コンポーネントは独立しているため、他のシステムやエンティティと組み合わせることが可能です。
Bevyの導入方法
Bevyの導入は、比較的簡単です。ここでは以下2つのステップにわけて、Bevyの導入方法を詳しく解説します。
- Rustをインストールする
- Bevyのプロジェクトを作成・ビルドする
Rustをインストールする
Bevyを導入するには、まずRustのインストールが必要です。RustはBevyで使用するプログラミング言語であり、クロスプラットフォーム対応のため、Windows、Linux、MacOSのいずれのOSでもインストールできます。
公式サイトから「rustup」というツールを使用することで簡単にインストールが可能です。インストール後、以下のコマンドを実行してください。
これにより最新のRust環境が整い、Bevyのプロジェクトをスムーズに始められます。
Bevyのプロジェクトを作成・ビルドする
Bevyのプロジェクトを作成するには、以下のコマンドを使用します。
cd my_bevy_game
次にCargo.tomlファイルを編集し、Bevyを依存関係として追加します。
bevy = “0.10”
これで、プロジェクトにBevyが追加されます。次に、main.rsファイルを編集し、Bevyの基本的なセットアップを行います。
use bevy::prelude::*;
fn main() {
App::build()
.add_plugins(DefaultPlugins)
.add_startup_system(setup.system())
.run();
}
fn setup(mut commands: Commands) {
commands.spawn_bundle(OrthographicCameraBundle::new_2d());
}
最後に、以下のコマンドでプロジェクトをビルドし、実行します。
これで、Bevyを使用した基本的なプロジェクトが実行されます。
ビルドしたゲームを保存する
Bevyのプロジェクトを保存する際はRustプロジェクト全体のファイルと設定を管理しましょう。
プロジェクトは一般的に「Cargo」というRustのビルドシステムとパッケージマネージャによって管理されるため、Bevyプロジェクトの保存もCargoを中心に行います。
まず、プロジェクトディレクトリ全体を保存します。ディレクトリには、ソースコードが入ったsrcフォルダ、プロジェクト設定ファイルのCargo.toml、ビルドされたバイナリファイルや依存関係が含まれるtargetディレクトリが含まれます。
①ソースコードを保存
srcフォルダ内のmain.rsやその他のRustファイルは、実際のコードが含まれる部分なので、必ずバックアップやバージョン管理システムを使って保存しましょう。
②依存関係を再構築する
Cargoのパッケージ管理システムにより、Cargo.tomlファイルさえあれば依存関係を復元できます。
プロジェクトを保存する時にCargo.tomlとCargo.lockファイルを含めると、他の環境でも同じバージョンのライブラリをインストールすることができます。
③バージョン管理システムを活用する
期間が長いプロジェクト管理にはGitなどのバージョン管理システムを利用することをおすすめします。
次のコマンドでGitリポジトリを初期化し、プロジェクトを管理できます。
④外部ストレージやクラウドサービスに保存
GitHubなどのリポジトリサービスを利用してプロジェクトをクラウド上に保存することで、他の開発者と共有したり、どこからでもアクセスできるようになります。
また、他の環境でも同じBevyプロジェクトを再現できます。
Bevyを導入する際の注意点
Bevyを導入する場合にはいくつかの注意点があります。
ここでは、Bevyを使用する上で知っておくべき注意点についてご紹介します。
開発のスムーズな進行を可能にするために把握しておきましょう。
Bevy専用ECSへのロックインが起こる
BevyはECS(エンティティコンポーネントシステム)を中心に構築されたゲームエンジンです。
そのため、Bevyで開発を進めるとBevy独自のECSアーキテクチャに依存することになるため、他のエンジンやフレームワークへ移行する際に大きな費用が発生する可能性があります。
Bevy特有のAPIやシステムに慣れてしまうと、他のECSやゲームエンジンを使う際に再学習が必要になるため、長期的な視野で見たエンジンの選択が必要です。
プラグインの種類が少ない
Bevyは新しいゲームエンジンなので、他のエンジンに比べるとプラグインやライブラリの数が少ない点に注意が必要です。
そのため、特定の機能を簡単に導入できるプラグインが見つからず、開発者自身で機能を実装しなければならないケースが多くなることも。
コミュニティが成長するにつれてプラグインの数は増える可能性がありますが、現時点では他のエンジンに比べて柔軟性に欠ける場面があるため、自作のスキルが求められることがあります。
クレートの拡張が難しい
Bevyを使った開発では、Rustのクレート(ライブラリ)を使ってプロジェクトを拡張できますが、Bevyの構造によって既存のRustクレートをそのまま使うのが難しい場合があります。
BevyのECSに合わせた設計が必要となるため、他のRustプロジェクトで簡単に使えるクレートでもBevyプロジェクトに組み込む場合は追加の調整が必要になることが多くあります。
Bevyを活用して作られたゲーム3選
ここからは、Bevyを活用して作られた以下3つのゲームの特徴について、詳しく解説します。これからBevyでゲーム開発をしようとしている方は、ぜひ参考にしてください。
- Bottled beer go around
- Yarn Spinner for Rust Demo
- Side Swap
Bottled beer go around
「Bottled Beer Go Around」はBevyを使って開発されたアートゲームで、ユニークなビジュアルとゲームプレイが特徴です。
このゲームはプレイヤーが瓶ビールを回していくことで進行し、その過程でさまざまなビジュアル効果とインタラクティブな要素が楽しめます。
Bevyの強力な2Dおよび3Dレンダリング機能を活用しており、Rustの高性能と安全性を最大限に引き出しています。このゲームはプレイヤーに新しいゲーム体験を提供し、Bevyの可能性を示したものといえるでしょう。
Yarn Spinner for Rust Demo
「Yarn Spinner for Rust Demo」は、対話型物語を簡単に作成できるツールであるYarn SpinnerをRustで実装したデモです。
このプロジェクトはRustとBevyを活用しており、ユーザーが対話型ストーリーテリングを手軽に楽しめます。ゲーム内での会話やシナリオの管理が容易になり、物語の分岐や選択肢を直感的に組み込むことが可能です。複雑なストーリーラインを持つゲームを効率的に開発できます。
「Yarn Spinner for Rust Demo」は、直感的なインターフェースと強力なスクリプト機能を持ち、対話型ストーリーテリングの幅を広げることが期待されます。このデモを通じて、BevyとRustの組み合わせによる高いパフォーマンスと柔軟性を体感できるでしょう。
Side Swap
「Side Swap」は、Bevyを使用して開発された魅力的なゲームの一つです。このゲームは、シンプルながらも中毒性のあるパズルゲームで、プレイヤーは画面上のタイルをスワップして一致させることでポイントを獲得します。
Bevyの強力な2Dレンダリング機能を活用して、美しいグラフィックとスムーズなアニメーションが実現されているのが特徴です。ゲーム内のインタラクティブな要素は、Bevyのシステムが提供するECSによって効率的に管理されています。
プレイヤーは直感的な操作感と戦略的な思考を楽しむことができ、Bevyの柔軟性とパフォーマンスの高さを実感できます。
Rustでゲーム開発するならBevyを導入してみよう
Bevyは、高速かつモジュール性に優れた設計が特徴のRust製のオープンソースゲームエンジンです。
Rustの安全性とパフォーマンスを活かし、ゲーム開発者にとって柔軟かつ効率的な環境を提供します。
ECSアーキテクチャを採用し、大規模なゲーム開発にも対応可能です。またコミュニティによる活発なサポートがあり、ドキュメントやチュートリアルも充実しています。
Bevyを使用することで、2Dおよび3Dゲームを比較的簡単に開発できるでしょう。レンダリングやシーン管理、インプット処理、物理シミュレーションなど、ゲーム開発に必要な機能が豊富に揃っています。さらに、プラグインシステムにより、必要に応じて機能を拡張することが可能です。
Bevyを使用した開発についての質問や相談がある場合は、株式会社Jiteraにご連絡ください。専門家がサポートし、プロジェクトの成功をサポートいたします。