テクノロジーの進化に伴い、企業でもデジタル化が急速に進んでいます。便利になる一方で懸念されている点が、情報漏えいや不正アクセスといったセキュリティ問題です。
こうした問題を解決する手段のひとつとして、生体認証が挙げられます。今回は、生体認証の概要やメリット、種類などを詳しく解説します。
2014年 大学在学中にソフトウェア開発企業を設立
2016年 新卒でリクルートに入社 SUUMOの開発担当
2017年 開発会社Jiteraを設立
開発AIエージェント「JITERA」を開発
2024年 「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」に選出
生体認証(バイオメトリクス認証)とは?
生体認証とは、バイオメトリクス認証とも呼ばれる認証方法です。声や指紋など、個々に異なる特性を活用して個人を特定します。スマートフォンのロック解除にも導入されているため、普段から使っている人も多いでしょう。
生体認証の歴史は意外と古く、コンピューターが世の中に出る前から存在していました。日本の「血判」も生体認証の例といえるでしょう。
テクノロジーと生体認証がかけ合わさり技術が発展したのは1980年代初頭とされています。電機メーカーであるNECが指紋を自動的に照合するシステムを開発しました。
2000年代に入ると生体認証が一気に普及し始め、スマートフォンをはじめ、空港の入国審査やATMなどでも導入されています。
生体認証(バイオメトリクス認証)のメリット
生体認証(バイオメトリクス認証)は、様々なメリットがあります。主なメリットとして3点を解説します。
利便性が高い
従来、認証システムの多くはパスワードを入力する方式やICカードを活用したものが一般的でした。これらは記憶したり物理的にものを持ち歩いたりする必要がありますが、生体認証の場合は不要です。
指紋や静脈、掌紋といった体の一部を認証するため手ぶらで個人を特定することができます。
また、瞬時に認証できるため手間がかからず利便性が高い点が大きなメリットといえるでしょう。
セキュリティ対策になる
従来のパスワードやICカードを使った認証方式は、パスワードの流出やICカードの紛失といった危険性があります。万が一、外部に情報が漏れれば不正アクセスの要因となりかねないため、セキュリティ対策が課題となっていました。
一方で、生体認証はパスワードやICカードが不要であり、流出や紛失のリスクがありません。また、静脈や虹彩認証など、コピーしにくい部位を認証するタイプの方式であれば、さらにセキュリティ効果が高いといえるでしょう。
コスト削減
認証方式としてICカードは一般的ですが、ICカード自体を制作するのに費用がかかります。また、盗難や紛失があれば再発行する必要もあるほか、万が一不正アクセスや情報漏えいが発生すれば対応が求められるため、導入後のランニングコストがかかる点がデメリットです。
一方、生体認証は物理的なアイテムが必要ありません。導入時の初期費用はかかりますが、長い目で見るとコスト削減につながるシステムといえるでしょう。
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生体認証(バイオメトリクス認証)の主な種類と特徴
生体認証(バイオメトリクス認証)には、様々な種類があります。主な種類は以下の表の通りです。
種類 | 特徴 | 精度 | 導入のしやすさ |
指紋認証 | 指先の指紋を使って認証する | 指の状態によって精度が下がる | 比較的導入しやすい |
静脈認証 | 指や手の甲の静脈を使って認証する | 認証精度が高い | 設備や運用コストが高額 |
顔認証 | 顔情報を照合して認証する | システムによって認証精度に差がある | 専用設備が不要で導入しやすい |
虹彩認証 | 瞳にある虹彩を使って認証する | 認証精度が高い | 最先端技術につき機器が高価 |
声紋認証 | 声紋情報を使って認証する | 周辺環境によっては精度が下がる | 比較的導入しやすい |
掌紋認証 | 掌全体の紋を使って認証する | 掌の状態によって精度が下がる | 比較的導入しやすい |
網膜認証 | 網膜上の血管パターンで認証する | 認証精度が高い | システムが高額 |
DNA認証 | DNA情報を使って認証する | 認証精度が高い | 特定の試薬が必要であり導入しにくい |
指紋認証
指紋認証とは、手の指先の指紋を活用して認証するシステムです。生体認証システムの中でも、もっとも早く実用化されました。
指紋は個々で異なる上に、年齢を重ねても変化しないため生体認証として活用しやすい部位です。また、顔認証とは異なり、マスクやサングラスなどをしていても関係なく本人を特定できる点がメリットといえるでしょう。
ただし、手が汗や水で濡れていたり乾燥していたりすると認証精度が下がる可能性がある点がデメリットです。
近年は、小型の認証機器が普及している上に、比較的安価に使えるため、スマートフォンやパソコンのロック解除など幅広く導入されています。予算をかけずに生体認証を取り入れたい企業におすすめです。
静脈認証
静脈認証は、掌や指の静脈パターンを読み込むことで個人を特定する仕組みです。事前に静脈パターンを登録しておくと、センサーに手をかざすだけで認証できます。
指紋認証とよく似ていますが、指紋認証は機器に指を触れる必要があります。一方で、静脈認証は非接触で利用可能なので、衛生面に気をつけなければならないシーンで役立つでしょう。
また、静脈は体の内部を走っている器官であり、なりすましや偽造がしにくい点もメリットです。こうした特性を生かして、銀行のATMに採用されるケースが多いでしょう。
ただし、設備や運用コストが高額になりやすいため、導入しにくい点がデメリットです。
顔認証
顔認証は、カメラに映った顔と事前に登録されたデータを照合させることで個人を特定する仕組みです。精度の高いシステムでは、移動している状況でも認証することができます。
顔認証が多く利用されているシーンは、空港の入国審査です。装置を通過するだけで本人確認ができるため、有人で入国審査をする必要がなく、業務効率化やコスト削減に役立ちます。そのほか、決済システムに顔認証を取り入れるケースも増えています。
また、機器に触れずに認証できるため、非接触対応が必要な現場でも活用しやすいでしょう。
近年は、マスクやサングラスをしていても本人確認が可能な精度の高いシステムも登場しています。
虹彩認証
虹彩とは、瞳の中にあるドーナツ状の部分を指します。遺伝子的に影響しないため、たとえ双子でも違いがあるほか、左右でも異なるので本人を特定する上で非常に認証精度が高いパーツです。
虹彩は、生後数年経つと虹彩の成長が止まり、以降変化することがありません。つまり、一度データを登録すると、更新をする必要がない点がメリットといえます。
新しい技術であり、指紋認証や顔認証と比較すると普及度は低いものの、その精度の高さから注目されているシステムです。日本では、企業におけるID認証や会員制の施設管理などに採用されるケースが多く見られます。
とはいえ、まだシステムの導入にかかる費用が高く、気軽に利用できるとはいえません。
声紋認証
声紋認証とは、音声認証ともいい声を活用した認証システムです。事前に録音した声を元に、認証する際の発声を照合して個人を特定します。
声紋認証の大きなメリットは、言語が必要ない点です。合言葉や適当なワードを発するなど認証方法は様々ですが、「声」のみに反応するため、国籍に関係なく認証できます。
必要な設備は、音声を認証するためのソフトウェアと音声認識用のマイクだけです。虹彩認証や静脈認証のようにセンサーが必要ない上に、スマートフォンやタブレット、パソコンにも対応したシステムもあります。つまり、比較的導入費用を抑えられるので、コストをかけずに生体認証を導入したい企業に向いています。
掌紋認証
人間の手には、指紋だけでなく掌紋もあります。掌紋とは掌にある皮膚の隆起であり、指紋と同様に個人で異なる点が特徴です。そのため、個人を特定する際の生体認証として使われるケースがあります。
ただし、掌が汗で濡れていたり、乾燥していたりすると反応しにくい点がデメリットです。虹彩認証や声紋認証などと比べて精度が低い点は否めません。
また、認証機器に触れる必要があるほか、指紋認証よりも触れる面が広いため大きい設備を用意しなければならない点も特徴です。非接触対応を求めるシーンには不向きな認証方式といえるでしょう。
網膜認証
網膜認証は、人それぞれに異なる網膜の血管パターンを元に個人を特定する仕組みです。網膜は非常に微細であり生涯変わることがないため、なりすましや偽造が難しい点が大きなメリットといえます。
ただし、大掛かりな設備が必要になることから、簡単に導入することができません。また、センサーを目に近づける必要があるほか、白内障を患っている人には利用できない点もデメリットです。
網膜認証とよく似た方法として虹彩認証が挙げられます。導入のしやすさで比較すると、虹彩認証のほうが撮影しやすく実装向きといえるでしょう。
DNA認証
DNAとは、細胞内の核に含まれる分子で、遺伝情報の本体です。髪の毛や爪、皮膚などわずかな手がかりから個人を特定できるため、DNA鑑定でも活用されています。
DNA認証を導入するには、登録する人の塩基配列を確定する必要があります。この作業には時間がかかるので、すぐに利用を開始することは困難です。とはいえ、確定できれば非常に高い精度を誇る認証システムとなります。
ただし、DNA情報から個人IDを生成するには、特別な試薬が不可欠です。非常に高価な薬品のため気軽に手に入るものではありません。コストパフォーマンスを考えると、別の生体認証を選んだほうがよいでしょう。
生体認証(バイオメトリクス認証)システムの導入における注意点
生体認証(バイオメトリクス認証)は、従来の認証システムと比較して高い精度を誇ります。また、利便性やコスト削減にもつながるため導入を検討している方も多いでしょう。
しかし、導入時は注意点を把握しておかなければ、思うような効果が得られない可能性があります。ここでは、生体認証システムを導入する際の注意点を解説します。
導入のコストとROI(投資収益率)
生体認証の種類は多岐にわたり、精度の高いものは導入にかかる費用が高額になります。闇雲に導入してしまうと、想定よりも費用がかかる上に、費用対効果が得られないという可能性もあるでしょう。
生体認証システムを導入する際は、ROI(Return on Investment)を踏まえて検討することが大切です。ROIとは、投資収益率を意味します。複数のシステムのROIを比較しながら、よりベストなシステムを選びましょう。
認証精度
生体認証の精度は、製品や種類によって異なります。例えば、精度の低い顔認証システムは、マスクやサングラスを着用していると識別できません。また、メイクや髪型、髭などで別人と判断される可能性もあるでしょう。精度の高いものであれば、赤外線センサーを使って3Dで顔を識別するので、不特定多数の人物でも速やかに判断できます。
そのほか、認証精度の高さで比較すると虹彩認証もおすすめです。ただし、高精度になるとそれだけ費用もかかるので、予算を踏まえて検討する必要があります。
プライバシーや倫理的な問題
生体認証に活用する指紋や顔、DNAなどはいずれも個人情報です。照合するためには、個々のデータを集める必要がありますが、管理方法を誤れば重大な事件に発展する可能性も否めません。
また、指名手配犯や不審者を特定する際に生体認証が使われるケースでは、不特定多数の人物を監視することから倫理的な問題もあるとされています。
このように、生体認証は便利な反面、複数の課題がある点は否めません。自社で生体認証を導入する際は、こうした課題にも留意して慎重に取り扱うことが大切です。
まとめ:生体認証(バイオメトリクス認証)システムの未来と展望
この先、デジタル機器はさらに進化を遂げることが予想されます。それに伴い、生体認証(バイオメトリクス認証)の発展もますます期待されるでしょう。
DNA認証や網膜認証などより精度が高く、なりすましや偽造が困難な認証システムの研究が進み、より身近なものになれば活用シーンも広がります。近い将来、「パスワード」という概念が消え、生体認証が主流となるのではないでしょうか。また、顔認証を使ったセルフレジの実験が進んでいることから、買い物をするのに財布はもちろんスマートフォンやスマートウォッチなどのデバイスすら不要となる時がそこまで訪れています。
企業においても、業務効率化やセキュリティ対策、コスト削減を目的とした生体認証の導入を検討するケースが少なくありません。しかし、数ある生体認証システムの中から、何を選べばよいか迷う方も多いでしょう。
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