イノベーション戦略とは?経営のポイントや企業事例つきで解説

イノベーション戦略を考えることは、中小企業にとって急務になっています。

DX化への対応や大企業との差別化、グローバル展開など、激しい変化のあるビジネス環境ではイノベーションは生き残りをかけた重要課題です。

この記事ではイノベーション戦略とは何か、具体例を交えた要素の解説や進め方、成功事例を紹介します。

「何から進めたらいいのか分からない」「基本から知りたい」という方はぜひ最後まで読んでください。

Nao Yanagisawa
監修者 Jitera代表取締役 柳澤 直

2014年 大学在学中にソフトウェア開発企業を設立

2016年 新卒でリクルートに入社 SUUMOの開発担当

2017年 開発会社Jiteraを設立
開発AIエージェント「JITERA」を開発

2024年 「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」に選出

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執筆者 toshi_writer

小中規模プロジェクトを中心にSEやコンサルとして活動。クラウド導入やスタートアップ、新規事業開拓の支援も経験しました。

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    イノベーション戦略とは

    イノベーションという言葉は、社会に新たなものと価値を創造する行為を意味します。

    ビジネスにおけるイノベーション戦略の定義とは、企業が新しい価値を創造し、競争力を高めるために、「様々なイノベーションの取り組みを体系的に推進するための方針や計画」のことを指します。

    単なる新製品開発ではなく、企業の将来ビジョンの実現に向けて、あらゆる側面から革新的な取り組みを体系的に推進する総合的な戦略です。

    現在、環境変化に対応しながら持続的に成長していくためには、各企業が自社に合ったイノベーション戦略を策定・実行することが不可欠となっています。

    イノベーション戦略の要素

    イノベーション戦略を成功させるには必要な要素が5つあります。

    • プロダクト
    • プロセス
    • マーケティング
    • サプライチェーン
    • オーガニゼーション

    それぞれ影響を及ぼす範囲も異なってきます。まずはこの5つの中から、自社のビジネスに最も影響を与えるタイプを選定する必要があります。

    何れのタイプについても、全く新しい何かを生み出すのではなく、まずは既存のものを組み合わせたり進化させることでイノベーションを起こすことが多いです。

    プロダクト

    プロダクト・イノベーションは製品やサービスそのものを新しくしたり、大幅に改良することです。

    • 完全に新しい製品カテゴリーを創造
    • 既存製品の代替となる革新的な製品を投入
    • 価値提案や対象顧客を大きく変更するサービスの導入

    プロダクト・イノベーションには、製品やサービスそのものを新しくしたり、新機能の追加や既存機能の大幅な改善も含まれます。

    例えば、Appleの革新的なスマートフォンiPhoneは、従来の携帯電話とはまったく異なる新しい製品でした。また、テスラがガソリン車に代わる電気自動車モデル3を投入したのも、プロダクトイノベーションの成功例です。

    プロセス

    プロセス・イノベーションは、製品やサービスを生産する過程において、新しい手法やシステムを導入することです。

    • リーン生産方式の導入
    • RPAやAIなどの新技術の活用
    • アジャイル開発の導入
    • 組織の意思決定をデータドリブンにする

    製造プロセス、業務フロー、意思決定プロセスなど様々な側面での革新がプロセス・イノベーションと呼ばれます。

    製造現場ではリーン生産方式の導入による無駄削減、自働化・自動化の推進が代表例です。また、トヨタ生産方式で無駄を徹底的に排除したり、3Dプリンターで部品を効率的に製造したりするのがプロセスイノベーションにあたります。

    業務フローを抜本的に見直し、ビジネスプロセスを再設計することも含まれます。

    マーケティング

    製品やサービスの販売促進における、新しいアプローチや戦略の導入です。

    • マーケティングリサーチにおける新手法の導入
    • 価格戦略の革新
    • 製品ラインの再編やパッケージングの工夫

    マーケティング・イノベーションにはマーケティングリサーチの手法革新、新しいブランディング戦略の導入や価格戦略も含まれます。

    アマゾンが開拓した電子商取引は、マーケティングの面で大きなイノベーションでした。また、ソーシャルメディアを活用した広告手法や、サブスクリプション課金モデルなどもマーケティングイノベーションです。

    サプライチェーン

    サプライチェーンにおける、原材料の調達から製品の販売までの新しい取り組みのことです。

    • グローバル最適調達の推進、サプライヤー統合や構造再編
    • 自動化や3Dプリンティングなど新技術の導入
    • ジャストインタイム方式の徹底
    • ビッグデータを活用した高度な需要予測の実施
    • サプライチェーン全体の可視化
    • AIによる最適化

    ジャストインタイム方式の導入で在庫を最小化したり、ドローン配送を実用化して物流を改革したりすることがサプライチェーンイノベーションにあたります。サプライチェーン全体の見える化による、サプライヤー管理の改善もイノベーションの一つです。

    オーガニゼーション

    オーガニゼーション・イノベーションは企業の組織構造、人事制度、経営理念、企業文化など、組織の在り方そのものを変革することです。

    • フラット構造やホラクラシー型組織への移行による階層の撤廃
    • リモートワーク制度の本格導入による働き方改革
    • ジョブ型人事制度の導入や従業員の権限移譲による組織の分権化
    • パーパス経営の確立による社会的使命の明確化
    • ダイバーシティ&インクルージョンの推進による多様性の確保
    • 旧来の企業文化からの転換による組織風土の一新

    従来の階層構造に代わるフラットな組織を導入したり、リモートワーク制度を拡大したりすることで、組織を一新することもイノベーションです。また、従業員持ち株会のように、従業員のインセンティブ制度を抜本的に改革することも、組織イノベーションと言えます。

    自社のビジネスモデルや強み、市場環境に合わせて、最も影響力のあるタイプを選ぶことが重要です。より詳しく知りたいという方は以下の本が参考になります。

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      内閣府による統合イノベーション戦略とは

      出典:内閣府サイト

      内閣府による統合イノベーション戦略とは、科学技術イノベーションを経済成長の中核に据え、産業競争力の強化と社会課題の解決を両立させることを目指す政府の取り組みです。以下の3本柱から構成されています。

      • イノベーション力の強化
      • 研究力の強化
      • 教育・人材育成

      この統合イノベーション戦略はSociety 5.0の実現に向けた重要な政策という位置づけです。日本の科学技術・イノベーション力の抜本的な底上げと国際競争力の向上を目指しています。

      予算面でも革新的研究開発推進プログラム(ARPM、現在は終了)のような、挑戦的な研究開発に集中投資するなど科学技術振興に力を入れています。

      イノベーション力の強化

      日本のイノベーション力を抜本的に高めるため、重要な先端分野への重点投資と社会実装を見据えた実証研究を推進することです。

      AIやバイオテクノロジー、量子技術など、将来の産業や社会への影響が大きい分野に研究開発リソースを集中させています。また、スマートシティ、次世代モビリティ、ロボティクスなどの分野で、実際の社会課題解決に直結する実証研究にも力を入れています。

      また、ベンチャー企業への支援や、大企業との連携によるオープンイノベーションを促進し、新しいイノベーションの芽を育てていく施策をするとしています。

      研究力の強化

      日本の基礎研究力と最先端の科学技術力を大きく向上させるとしています。

      国際的にインパクトの大きい独創的な研究を強力に後押しし、最先端の大型研究施設の整備と、産学官への共用促進を図ります。そして、大学の優れた研究シーズを事業化に繋げるため、大学発ベンチャー企業の創出支援や、産学官連携の強化に取り組むことが目標です。

      教育・人材育成

      イノベーションを支える人材基盤の強化が不可欠です。

      理工系人材の確保と育成を図るため、大学教育の改革や社会人のリカレント教育を拡大します。特に、データサイエンスやAIなど最先端分野の人材育成に注力するとしています。

      また、ベンチャー人材やスタートアップ人材の育成にも力を入れ、新しいイノベーションの担い手を生み出していくことが目標です。

      イノベーション戦略の企業事例

      この章ではイノベーション戦略を実施し、そして成功に導いた企業の事例やそれぞれの戦略のポイントについて解説していきます。それぞれの企業はイノベーションの多様な側面に意識的に取り組むことで、新しい価値を創出し、ビジネスを成長軌道に乗せています。

      メルカリ(日本)

       フリマアプリのパイオニアとして大ヒットしたメルカリは、マーケティングイノベーションとプロダクトイノベーションの良い例です。

      マーケティングイノベーションの点では、個人間の売買にSNS的な機能を組み込んだことが成功のポイント。友人の投稿を見て商品購入ができるユニークな販売チャネルを構築しました。

      プロダクトイノベーションとしては、スマホアプリによるフリマサービス自体がイノベーションと言えるでしょう。写真を撮って手軽に出品でき、決済もアプリ内で完結する革新的な使い勝手がイノベーションとして評価されました。

      公式サイト

      富士フイルム株式会社(日本)

      デジタルカメラの普及によりフィルム事業が衰退する中で、プロセスイノベーションとオーガニゼーションイノベーションを実施し、事業の多角化に成功した例です。

      プロセスイノベーションとしては、フィルム製造で培った高い化学技術・材料技術を活かし、医療・ヘルスケア、高機能材料などの新規事業を立ち上げました。

      オーガニゼーションイノベーションでは、新規事業に柔軟に取り組めるよう、組織の役割分担と意思決定プロセスを見直し、スピーディな対応を可能にしました。

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      Amazon(アメリカ)

      Eコマースの最大手Amazonは、長年に渡りプロダクト、プロセス、マーケティングなど、あらゆる側面でイノベーションを続けてきた企業です。

      マーケティングイノベーションとしては、オンライン広告やレコメンド機能の活用により、販売を大きく伸ばしました

      プロセスイノベーションでは、物流システムの抜本改革を行い、スピーディで低コストな配送を実現しています。

      また、プロダクトイノベーションとしては、Kindle、Alexa、AWSなど、様々な新製品・サービスを市場に排出し続けてきました。

      公式サイト

      イノベーション戦略の課題と対策

      イノベーション戦略をするには、人材、資金、産学官連携、グローバル化において、具体的な施策を打ち出すことが重要です。政府と民間が連携し、総合的な対策を講じる必要があります。現在、直面している課題について解説していきます。

      人材の育成と確保が難しい

      まず人材の確保と育成が大きな壁となります。AI(人口知能)やIoTなどの先端技術分野では、高度な専門性を持つ人材が慢性的に不足しています。

      この課題に対処するため、大学における理工系教育の充実や、リカレント教育の拡充による社会人の再教育が求められます。また、外国人材の受入れ促進なども重要な対策となるでしょう。

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      資金の供給不足

      革新的な技術を開発し、事業化するには莫大な初期投資が必要です。

      しかし、民間企業だけではその資金を十分に調達するのが難しい状況にあります。

      こうした状況を打開するため、政府による研究開発予算の重点配分や、官民が出資するイノベーションファンドの創設など、公的な資金供給が欠かせません。また、ベンチャー企業が株式公開により資金調達できる環境整備も重要でしょう。

      産学官連携が取れていない

      基礎研究と実用化のつながりを強化するため、産学官連携が課題となっています。

      大学での優れた基礎研究の成果が、なかなか企業での実用化・事業化につながっていないのが実情です。

      この課題に対しては、大学発のベンチャー創出支援や、クロスアポイントメント制度による産学の人的交流の活性化などの対策が有効です。

      グローバル展開の遅延

      優れた技術を持ちながら、海外展開が遅れがちという課題もあります。

      この課題に対しては、海外企業の国内への研究開発拠点誘致や、イノベーション特区における規制緩和などの取り組みが重要となります。また、スタートアップ企業の海外ビジネスマッチングの支援も効果的でしょう。

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      イノベーション戦略の進め方

      イノベーション戦略は進めていくのも簡単ではありませんが、策定することも簡単ではありません。イノベーション戦略を具体的な形にする方法はそれぞれの企業のビジネスによって異なるため、この章では成長戦略の策定ステップを解説します。

      進め方1. ビジョンと目標設定

      イノベーション戦略を進める上で最初に重要なのは、成長戦略ビジョンと目標を明確に設定することです。ビジョンとは、長期的にめざすべき姿や理想の状態を指します。一方、目標とは、具体的に達成したい短期・中期的な指標を意味します。

      例えばAppleのビジョンは「人々の創造性を解き放つ製品を作り続ける」ことです。そして、その実現に向けた目標として、「5年以内に新しいモバイル端末を開発する」などが設定されます。ビジョンと目標を明確にすることで、イノベーション活動に方向性と意義が生まれます。

      その指針を確定したうえで、どのような技術を導入するのか、どこの部署の管理方法を変化させるかなどの具体的な方針を練っていく必要があります。事前の準備をしっかりとしてくことで、不測の事態にも柔軟に対応することが可能になります。

      進め方2. 状況分析

      次に、自社や業界、市場環境などの現状を徹底的に分析する必要があります。自社の強みや弱み、競合他社の動向、顧客ニーズの変化、テクノロジートレンドなどを多角的に検討します。この状況分析を通じて、イノベーションのチャンスと脅威を見極めることができます。

      この段階で「イノベーションを起こしても、投資したお金や労力に見合う成長戦略にならない」という結論に至ることもあります。この場合は、経営計画を練り直したり一時撤退したりするといった決断も必要です。

      進め方3. アイデア出し

      状況分析の結果を踏まえ、新しいアイデアを出していきます。

      自由な発想を尊重しつつ、ブレインストーミングのような手法を活用してアイデアを組み合わせ具体化していきます。アイデアの芽を大切に育てながら、潜在的なニーズに応える経営的なソリューションを生み出していきます。

      進め方4. 開発と商用化

      有望なアイデアが生まれたら、具現化に向けた開発プロセスへと移行します。

      製造、評価、改良を重ねながら、事業化に向けた準備を進めていきます。ツール導入や開発、商品化、サービス提供、マーケティング、販売戦略など、具体的な施策を立案する必要があります。

      イノベーションは常に経営的価値を考えなければならないため、途中経過を常に管理することも重要です。「人員を追加すれば良いのか」「経費を削減すれば計画が成功するか」などがわかるようになります。

      進め方5. 実行と評価

      最後に、イノベーションを実際に市場や現場に投入して効果を検証します。PDCAサイクルを回しながら、必要に応じて軌道修正を行います。

      もし製品やサービスを市場に投入した場合は、顧客の反応、売上げ、収益性などを評価指標とし、改善を重ねていきます。うまくいかなかった場合でも失敗から学びましょう

      市場や現場からのフィードバックや意見交換をすることで、次のイノベーションはより効率良く進められる可能性が高くなります。どんなプロジェクトも、次のイノベーションに活かしていくことが重要です。

      まとめ:イノベーション戦略の未来と展望

      今後、日本の中小企業のビジネスを持続するためには、イノベーションは必要不可欠です。企業の経営陣はイノベーションを起こすための成長戦略を練っておかなければなりません。

      自社のビジネスの長期的な展望に合わせてビジネス戦略を練り、成長戦略を適宜修正していくことは経営陣の大事な仕事です。

      しかし、「イノベーションやテクノロジーとは縁が遠い」「保守的な環境でしかビジネスの経験がない」という経営者も少なくないです。

      経験や知見が全くないという方や何から始めていいか分からないという方は、ぜひ株式会社Jiteraにご相談ください。当社では新規事業開発やIT化の気軽な相談、スタートアップ支援も行っています。様々な経験をもとに、最適な成長戦略の実現に協力します。

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