仮想化技術は今日のIT環境において欠かせない要素となっています。特にVMwareは、その分野を開拓した影響力のあるプラットフォームです。
この記事では、VMwareと仮想サーバの基本的な仕組みから便利な使い方に至るまでをわかりやすく解説しました。仮想環境について知りたい方や仮想環境でシステム開発をしてみたい方に向けて、VMwareへの理解が深められる内容になっています。
ぜひ最後までお読みください。
VMwareとは?基本や役割を紹介
VMwareとは、米国の大手企業VMware社の製品群です。1998年に設立されたVMware社は、仮想化技術を用いた多様なソリューションを提供しています。特にサーバ、デスクトップ、ストレージにおける仮想化技術の製品が知られています。
ここではVMwareの基本的な説明や役割、仮想化技術としての特徴について詳しく掘り下げていきます。VMwareがなぜビジネス環境で広く採用されているのか理解できるでしょう。
VMwareとは?
VMware社はソフトウェアによる仮想化を実現する製品を開発しています。データセンターからクラウド、モバイルデバイスまで幅広い環境で利用されています。
仮想化とはハードウェアをソフトウェアで抽象化(仮想化)することであり、これにより物理的な制約からの解放が実現できます。
ハードウェアのマシンをソフトウェアで仮想化したものは仮想マシンと呼ばれ、仮想マシンがサーバとして用いられる場合は仮想サーバとも呼ばれます。ストレージを仮想化したものは仮想ストレージ、ネットワークでは仮想ネットワークと呼ばれます。
1つの物理マシン上に複数の仮想マシンを作ることで、複数のオペレーティングシステム(OS)やアプリケーションを分離して実行できるようになります。
VMwareの技術は、システムの柔軟性と効率を高めてITインフラの最適化に貢献します。
仮想化技術としてのVMware
VMwareは仮想化技術の先駆者であり、その技術はサーバのみならず、ストレージやネットワークにも革新をもたらしました。
仮想化したサーバは物理サーバのリソースを効率的に分割して利用できるようになり、ストレージの仮想化によってデータ管理の柔軟性が向上し、ネットワーク仮想化によってネットワーク構成の調整がソフトウェアレベルで容易に行えるようになりました。
これらの技術は、企業のIT環境をより効率的かつ柔軟に運用するための基盤となっています。
仮想化技術とは?仕組みと原理
仮想化技術では、物理的なリソースをソフトウェアで仮想的に再構成し、利用効率を向上させられます。その仕組みと原理について詳しく解説し、仮想化がビジネス環境にもたらすメリットを示します。
仮想化の仕組み
仮想化技術では、物理的なハードウェアリソース(CPU、メモリ、ストレージなど)をソフトウェアで抽象化(仮想化)し、複数の仮想マシンがそれらのリソースを共有し動作します。
仮想マシンは各々で独立したOSとアプリケーションを実行し、物理的なマシン上で分離された環境を実現します。これにより、1つの物理マシンで複数の異なる環境を同時に稼働させられるのです。
仮想化技術にはホスト型とハイーパーバイザー型の2種類があります。
ホスト型は、物理サーバ上のOS(Windowsなど)に仮想化技術のソフトウェアをインストールし、アプリケーションとして仮想マシンを作成し稼働させます。
ハイーパーバイザー型は、物理マシンへOSの代わりにハイーパーバイザーと呼ばれる仮想化技術のソフトウェアをインストールし、管理ソフトウェアを用いてハイーパーバイザーの上に仮想マシンを作成し稼働させます。
ホスト型の方が気軽に導入して利用しやすく、ハイーパーバイザー型の方が高性能で管理しやすいというメリットがあります。初心者はホスト型で仮想化技術を試し、本格的に導入するとなればハイパーバイザー型にするのがおすすめです。
仮想化がもたらすメリット
仮想化技術に導入には、システムの拡張性向上、ITコストの削減、運用管理者の負担軽減といった多くのメリットがあります。それぞれについて解説します。
システムの拡張性が向上
仮想化技術の導入により、システムの拡張性が大幅に向上します。
物理的なハードウェアの制約から解放され、仮想マシンを容易に追加したり削除したりできます。リソースの動的な再配分によりシステムを最適化し、常に効率的な運用状態を維持できるようになります。新しいアプリケーションソフトウェアのテスト、システムのアップグレード、新しい技術の試験導入などでは、仮想マシンが有用です。
これらにより、ビジネスの成長や市場の変化に柔軟に対応できるIT環境を構築できます。
ITコストの削減
仮想化技術を導入することで、ITコストが削減されます。
物理サーバの数を減らすことで、ハードウェアの購入費用や運用コストを削減できます。仮想マシンは物理サーバーのリソースを共有するため、未使用のリソースが効率的に活用でき電力コストの削減につながります。仮想技術の導入でハードウェアの保守やアップデートに要する時間とコストも削減できます。
これらにより、ITコストが削減できるのです。
運用管理者の負担を軽減
仮想化技術により、システムの運用と管理が大幅に簡素化されます。
物理的なハードウェアのメンテナンス作業が減少し、一元的に仮想マシンを管理できるようになります。システム管理者は日常的なルーチンワークから解放されるのです。
仮想マシンのバックアップと復元機能により、予期せぬシステム障害からの回復が迅速かつ効率的に行えます。システム管理者に必要な対応プロセスを簡略化できるのです。
これらにより、運用管理者の負担が大幅に軽減できます。
VMwareの主要製品と機能
VMwareの中でも主要な7製品について解説します。それらの特徴や用途を表にまとめました。
VMware製品 | 特徴 | 用途 |
---|---|---|
vSphere | サーバ仮想化プラットフォーム | 効率的なデータセンター運用 |
vSan | ストレージリソースの運用管理 | ストレージコスト削減、性能向上 |
NSX-T Data Center | ネットワーク仮想化とセキュリティ | マルチクラウド環境のセキュリティ強化 |
vRealize Suite | クラウド管理プラットフォーム | IT運用の自動化と最適化 |
Workspace ONE | 統合エンドポイント管理 | リモートワークとモバイルデバイス管理 |
Horizon | デスクトップとアプリケーションの仮想化 | リモートアクセスとリソース管理 |
Carbon Black | エンドポイントセキュリティ | サイバー攻撃からの保護 |
VMwareの製品はさまざまな仮想化を実現しているため、最適なVMware製品を選択する上で参考になるでしょう。
vSphere
vSphereはVMwareの中核製品であり、サーバ仮想化プラットフォームとして広く利用されています。
ハイパーバイザー型の仮想化技術であるESXiをはじめ、管理ツール、高可用性と障害復旧の機能、分散リソーススケジューラー、仮想マシンを別の物理マシンへダウンタイムなしに移動させる機能、仮想化ネットワークとセキュリティ、データ保護とバックアップといった機能があります。
大規模なデータセンター環境でも安定した運用が可能です。
vSan
vSanはサーバ内のストレージリソースをプール化し、仮想マシンのデータストレージとして利用できます。ストレージの階層化やデータ保護機能、地理的にサーバを分散させて障害耐性を高めるストレッチクラスタといった機能もあります。
vSanを導入することで、ストレージのスケーラビリティと性能が向上し、コスト効率が向上します。コンピュータやストレージ、ネットワークといった仮想化環境を統合的に管理するHCIの構築に適しています。
NSX-T Data Center
NSX-T Data Centerは、ネットワークを仮想化する製品です。
物理ネットワーク上に仮想ネットワークを構築し、セキュアかつ柔軟なネットワーク構成を可能にします。効率的なトラフィック管理とパフォーマンス向上、ネットワークのリアルタイム監視もします。
マルチクラウド環境やコンテナ化されたアプリケーションのネットワーク要件に対応できます。
vRealize Suite
vRealize Suiteは、クラウド管理プラットフォームです。プライベートおよびパブリッククラウドの管理、自動化、運用を一元化します。
リソースの最適化、ログ分析、コスト管理、セキュリティとコンプライアンスの管理など、複雑なクラウド環境の運用に不可欠な機能を提供します。
より迅速で柔軟、かつ効果的なITサービスの提供が可能になります。
Workspace ONE
VMware Workspace ONEは、統合エンドポイント管理およびデジタルワークスペースプラットフォームです。
モバイルデバイス管理、アプリケーション管理、およびITのセキュリティニーズを統合することで、従業員が必要な情報やツールにいつでもどこからでも安全にアクセスできるようになります。
生産性の向上とITのセキュリティ強化を両立させることで、柔軟なワークスタイルを支援します。
Horizon
Horizonは、デスクトップとアプリケーションの仮想化を実現する製品です。どのデバイスからでもセキュアにアクセス可能なデスクトップ環境が利用できます。
リモートワークやフレキシブルなワークスタイルを支援し、ITインフラの運用効率とセキュリティを強化するための効果的なソリューションです。
ユーザーに安全で柔軟なデジタルワークスペースを提供し、生産性の向上を図れます。
Carbon Black
Carbon BlackはVMwareのセキュリティ製品であり、エンドポイントセキュリティとサーバセキュリティを提供します。
高度な脅威分析と対応機能を備え、機械学習と人工知能を用いて新しい脅威や未知の攻撃を予測し、企業のIT環境を潜在的なサイバー攻撃から保護します。
エンタープライズ環境における複雑なセキュリティニーズに対応し、組織のリスクを低減します。
VMwareの導入メリット
VMwareの導入には多くのメリットがあり、特に中小企業の発展に大きく寄与します。ここでは、ハードウェアのコスト削減、システム運用の効率化、事業の拡大に合わせたシステムの調整可能性という主な3つのメリットについて解説します。
ハードウェアのコスト削減
VMwareの仮想化技術を活用することで、物理的なハードウェアに依存する必要性が減少します。仮想マシンにより、1つの物理サーバ上に複数のOSとアプリケーションを動作させられるため、ハードウェアの購入数を減らせます。
ハードウェアの初期投資コストやメンテナンスコストが削減され、特にリソースが限られている中小企業にとって大きな経済的メリットになります。
システム運用の効率化
VMwareの導入により、ITインフラの管理と運用が大幅に簡素化されます。管理者は物理サーバごとに異なるハードウェア環境を扱う代わりに、一元化された管理インターフェースを通じて仮想マシンを効率的に管理できます。
システムの監視、メンテナンス、アップデートなどの作業が迅速かつ容易に行えるようになり、運用を効率化させてコストを削減します。
事業の拡大に合わせて調整可能
VMwareの仮想化技術は高い拡張性を持っています。
事業の成長や需要の変化に応じて、追加のリソースが必要になった場合には仮想マシンを迅速に増設できます。仮想環境は物理的な制約から自由であるため、事業の拡大に伴うシステムのアップグレードや再構成が柔軟に行えます。
ビジネスの成長速度に合わせてITインフラを増強でき、事業の発展をサポートします。
VMware入門:基本的な使い方とポイント
VMwareによる仮想化技術を活用するには、基本的な使い方を理解することが不可欠です。VMwareのインストールから仮想マシンの作成、設定、使用方法まで順を追って説明します。
仮想化技術への入門であるため、ここではハイパーバイザー型(ESXi)ではなく、気軽に導入しやすいホスト型の製品を取り上げます。
VMwareには、ホスト型の製品としてVMware Workstation PlayerとVMware Fusionがあります。
VMware Workstation PlayerはWindowsもしくはLinux上で動作し、個人的な非商用利用に限り無償です。商用利用の場合はライセンスの購入が必要です。
VMware FusionはMac上で動作し、無償版はありません。
実際にご自分のパソコンへインストールし、仮想化技術を体感してみましょう。
VMwareのインストール要件
VMwareをインストールする前に、いくつかの要件を確認する必要があります。
対応するOS(Windows/Linux/Mac)や最低限のプロセッサ速度、メモリ容量、そして十分なストレージが求められます。
メモリ容量については、ホストシステムとしてVMware Workstation Playerの場合で2GBが最小、4GB以上が推奨です。VMware Fusionの場合は4GBが最小、8GB以上が推奨です。いずれも、これらに加えて仮想マシンに要するメモリも必要になります。
VMwareを利用するためには、CPUが仮想化をサポートしている必要があります。
これらの要件を確認し、VMwareのインストールに適しているか判断してください。
VMwareのインストール手順
VMwareのインストールは、通常のアプリケーションと同様で直感的にできます。
インストールファイルのダウンロード
VMwareの公式ウェブサイトにアクセスし、VMware Workstation PlayerやVMware Fusionを選択します。
利用条件に合致するバージョンを選び、ダウンロードページからインストールファイルをダウンロードしてください。
Windows用は.exe形式で、Mac用は.dmg形式です。Linux用は.bundleという拡張子ですが、中身はシェルスクリプトです。
インストールの実行
ダウンロードしたインストールファイルを実行します。
WindowsやMacの場合は、ダウンロードしたファイルをダブルクリックし、その後は画面の指示に従って必要なオプションを選択してインストールを進めてください。Linuxの場合は、シェルで実行権限を付与した後で実行すると、インストール画面が現れます。
インストールプロセスは数分で完了し、その後、再起動を求められることがあります。
仮想マシンの作成
VMwareをインストールしたら、次は仮想マシンの作成に移ります。
VMwareのメイン画面で「新規仮想マシンの作成」オプションを選び、ガイドに従って進めていきます。ここでは、OSの選択、ディスクサイズの割り当て、ネットワーク設定などをします。
これらの設定は後から変更可能ですが、初期設定で必要な項目を適切に設定することが重要です。
仮想マシンの設定
作成した仮想マシンには、さまざまな設定ができます。
プロセッサ数やメモリの割り当て、ディスクの容量など、性能に関わる設定が必要です。ネットワークアダプタの設定を通じて、仮想マシンがネットワークリソースにどのようにアクセスするかも管理できます。その他、USBデバイスの接続やディスプレイなども設定できます。
これらの設定は、仮想マシンを作成した後でも変更できます。
仮想マシンの使用
作成した仮想マシンは、VMwareのメイン画面から起動します。起動後、仮想マシンは通常のコンピュータと同様に動作し、さまざまなアプリケーションのインストールやファイルの管理ができます。
スナップショットやクローンなど仮想マシンならではの機能を活用すれば、その利便性に驚くことでしょう。
VMwareを利用した仮想サーバの便利な使い方・活用方法
VMwareを利用することで、仮想サーバの管理や運用が大幅に効率化されます。VMwareの機能を最大限に活用するためのいくつかの便利な使い方を紹介します。
スナップショット
スナップショットは、仮想マシンの特定の時点での状態を保存し、必要に応じてその状態に戻せる機能です。アップデートや新しいアプリケーションの導入前の状態を保存しておくことで、万が一の際にすぐに元の状態に戻せます。
設定を変更する前にスナップショットを撮っておけば、問題があってもスナップショットした状態に戻れます。異なる設定での挙動を確認したい時にも有用です。
テスト環境で用いれば、同一の状態からのさまざまなテストを実施でき便利です。
クローン
クローンは、既存の仮想マシンを複製して新しい仮想マシンを作成する機能です。
同じ設定やアプリケーションを持つ仮想マシンを迅速に複数準備できます。テスト環境や開発環境、トーレーニング用の環境などの展開に有用です。
本番環境の仮想マシンをそのままにしておいて作成したクローンでテストや変更などを行えば、本番環境へのリスクを軽減できます。
ストレージ ポリシー
VMwareでは、ストレージポリシーと呼ばれる仮想マシンのストレージリソースを管理、最適化するためのガイドラインやルールのセットを設定することで、仮想マシンが使用するストレージリソースを効率的に管理できます。
性能要件やストレージの使用率、障害の発生状況に従い、ストレージを自動的に割り当てます。ストレージの管理が簡素化され、システムのパフォーマンスや信頼性が向上します。
ネットワーク ポリシー
ネットワークポリシーとは、仮想マシンのネットワーク接続と通信を管理するための設定やルールです。
セキュリティ設定や帯域幅の割り当てなどをカスタマイズすることで、ネットワークのセキュリティを強化し、リソースの使用効率を最適化できます。
ただし、ホスト型であるVMware Workstation PlayerやVMware Fusionよりも、ハイパーバイザー型であるESXiの方がVMware vSphereにより詳細なネットワークポリシーが設定できます。
仮想マシンの移行
VMwareを使用すると、仮想マシンを物理的な場所やサーバ間で簡単に移行できます。ハードウェアのメンテナンスやアップグレード時に、ダウンタイムを最小限に抑えながら作業できます。
既存の仮想マシンをエクスポートしてファイルにまとめ、移行先の物理マシンへ転送します。移行先にて仮想マシンのファイルをインポートすることで仮想マシンを移行します。
特に大規模なデータセンターでは、この機能がシステムの柔軟性と信頼性を高めます。
仮想マシンの自動化
VMwareの自動化ツールを用いることで、仮想マシンの設定、起動、シャットダウン、展開、管理、監視といったプロセスを自動化できます。
自動化をするには、コマンドラインツールによる操作やスクリプトの作成、OSのスケジューリング機能、他のテスト自動化ツールの活用といった方法があります。
時間を要する繰り返し作業を削減し、生産性を向上させられます。
仮想化環境の監視・管理
VMwareには、仮想マシンの性能、リソース使用状況の確認、仮想マシンの設定管理を追跡する監視機能と、性能の最適化やスナップショットの利用といった管理機能があります。
問題が発生する前に対処し、システムの安定性と可用性を維持できます。
より高度な監視や管理は、ハイパーバイザー型であるESXiの方がVMware vSphereやVMware vCenterにより可能になります。
まとめ:VMwareの仮想化で開発力を向上させましょう
VMwareの仮想化技術は、中小企業の情報システムにとって強力なツールです。
仮想サーバの便利な使い方や活用方法を理解してVMwareを導入することで、システム開発の柔軟性が向上し、ITコストの削減が可能になります。仮想化による効率的なリソース管理は、会社の成長に合わせたシステムのスケーリングを容易にし、ビジネスの拡大をサポートします。
VMwareはただの仮想化ツールではなく、ビジネスの成長を促進する強力なパートナーとなり得るのです。
システム開発においてリソースや体制が不足していると感じているならば、VMwareの仮想化は問題を解決して開発力を大きく向上させるきっかけとなるでしょう。
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