「元請けと下請け、よく聞く言葉だけど、具体的にどんな役割なのかイマイチよくわからない…」
そんな人も多いのではないでしょうか。
簡単に言うと、元請けとは、発注者から直接仕事を受ける会社のこと。一方、下請けとは、元請け会社から仕事の一部を任される会社のことを指します。
しかし、ITエンジニアとして働いていると、いつかは自分が発注者や元請けの立場になる場合があります。
そのときに備えて、元請けと下請けの違いを理解しておくことは大切です。
この記事を読めば、元請けと下請けの役割の違いがスッキリ理解できます。それぞれのメリットとデメリット、責任の所在も明確になります。
ITエンジニアとしてのキャリアを考えている方は、ぜひ最後までお読みください。
2014年 大学在学中にソフトウェア開発企業を設立
2016年 新卒でリクルートに入社 SUUMOの開発担当
2017年 開発会社Jiteraを設立
開発AIエージェント「JITERA」を開発
2024年 「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」に選出
元請けとは?
元請けとは、発注者から直接仕事を請け負う業者のことです。
特に、IT業界では、新しいITシステムの導入や既存システムの刷新をする場合に、そのプロジェクトを一括して受託する企業のことを指します。
元請けは、プロジェクトの始めから終わりまで、すべての責任を持ちます。
つまり、要件定義からシステムの設計、プログラム開発、テストすることまで、多岐にわたります。
対応範囲が広域のため、自分の会社だけでは難しい部分があれば、信頼できる他のIT会社に依頼するケースが少なくありません。
元請けになるためには、顧客から直接仕事を受注できるだけの開発力や、プロジェクト管理力が必要です。
具体的には、要件定義能力やシステム設計能力に加え、数十人から百人規模の開発チームを管理運営できる組織力が求められます。
顧客から見た場合の元請けの特徴としては、以下の3つがあげられます。
- 自社の要件に合ったシステム開発が可能
- プロジェクト全体の品質と成果責任を担う
- 長期的なパートナーシップが構築できる
元請けが担うべき最も重要な能力は、全体最適の視点でのプロジェクトをマネジメントする力です。
元請けと下請けの違い
元請けと下請けの最も大きな違いは、発注者と直接契約しているかどうかです。
元請けは、発注者である企業・組織から直接プロジェクトを受注し、契約を結んでいます。対して下請けは、発注者とは直接契約せず、元請け企業からそのプロジェクトの一部を再委託される立場です。
つまり、元請けが全体の責任主体となるのに対し、下請けは部分的な役割を担うという役割の違いがあります。
比較項目 | 元請け | 下請け |
契約関係 | 発注者と直接契約 | 元請けと再委託契約 |
役割 | プロジェクト全体のマネジメント | 指定された部分の開発実施 |
業務範囲 | 要件定義からテスト・保守まで関与 | 基本設計・詳細設計・プログラミング等 |
特徴 | 全体最適を考える | 部分最適を追求する |
求められる能力 | 要件定義力、最適化提案力、リスク対応力等 | 受託部分の品質・工程管理力等 |
元請けの特徴
自動車メーカーの受注システム開発を例にして見ていきましょう。
- 自動車メーカーと直接契約
- プロジェクト全体の品質
- 成果責任 ・要件定義からテスト・保守まで関与
元請けにとって最も大切なのは、プロジェクト全体を見渡しながら、要件定義から開発、テストまでを切れ目なく管理していく力です。
自動車メーカーと直接契約を結ぶ立場だからこそ、メーカーが気づいていない要求や問題点を早めに見つけて要件定義に反映させます。
このように、元請けには全体のプロジェクトサイクルを通して、クライアントの要望をヒアリング能力や最適化提案する能力、リスク対応する能力が必要です。
発注者と一体化し、全体を最適化しながらプロジェクトを進行しましょう。
下請けの特徴
同じように、自動車メーカーの受注システム開発の例で見てみましょう。
- 元請けと再委託契約
- 受託した部分の開発を実施
- 基本設計やプログラミングを実装
下請けは、元請け企業からプロジェクトの一部を再委託される立場です。
自動車メーカーの受注システム開発の場合、在庫管理や物流管理といった下請けが担う部分開発が発生します。
下請けには、指定された範囲の設計・開発・単体テストといった部分的な受託開発が求められます。
元請けが下請けに業務を委託するメリットは、その会社の強みを活かした業務ができる点です。
元請けから提供される基本設計どおりに作業を進める必要がありますが、下請け側に経験やノウハウがあれば、不具合が発生するリスクを抑えられます。
また、請けに任せることで元請けの負担が減り、元請けはプロジェクト全体の管理により注力できます。
結果として、プロジェクトをより円滑に進めることが可能です。
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元請けの業務内容・責任
元請けの業務内容は、以下のようなものがあります。
- プロジェクト管理
- 品質管理
- 要件定義
- 人材管理
業務内容に加えて、具体的にどのような責任が伴うかについて確認しましょう。
プロジェクト管理
プロジェクト管理とは、プロジェクトの目標を達成するためにスケジュールや予算、品質、リスクなどを総合的に管理することです。
特に、大規模なシステム開発プロジェクトにおいて、工程とスケジュールの管理は、元請けに求められる最大の責任です。
例えば、全国展開する小売チェーンの新POSシステム構築を元請けが請け負ったとします。
基本設計、詳細設計、プログラミング、単体テスト、結合テスト、総合テストと多岐にわたるフェーズが、複数チームにまたがって並行作業で進行します。
この場合、設計規模や工程の見積もり、人員計画と作業割当、開発リソースの割り当てと調整などをしなければなりません。
つまり、元請は全体を俯瞰しながら、プロジェクトを回していく必要があります。
品質管理
品質管理とは、成果物の品質が一定の基準を満たすように管理することです。
小売業向けの新しいPOSシステムの開発を考えてみましょう。
このシステムが高い品質基準を満たし、全国1000店舗での使用に耐えられるようにするには、実際の使用場面を想定したシナリオテストが必要です。
このときに方針を決め、具体的なテストケースを作成します。そして、テストを実施しその結果を分析します。
これらの一連のテスト業務は、元請けが管理するのが一般的です。
また、システムを実際に使う部門の人たちと打ち合わせを重ね、予想外の動作が起こりそうなパターンを洗い出し、追加のテストシナリオも作成します。
このように、元請けは品質管理において中心的な役割を果たし、システムの高い品質を確保する責任を負っています。
要件定義
要件定義とは、システムに必要な機能や性能などを明確にすることです。
元請けの仕事は、まず本部や各部門の人々から詳しく話を聞き、必要な要件をリストアップすることから始まります。この要件定義の質が、プロジェクトの成否を大きく左右すると言っても過言ではありません。
元請けは、あらゆる利用部門や利用場面を想定し、漏れなく要件を洗い出す必要があります。
それらの要件の重要度や技術的な実現可能性を考慮しながら、最終的な要件を確定し、管理していきます。
要件がズレてしまうと、利用者のニーズを満たせないシステムができあがってしまうため、要件定義は非常に重要なプロセスです。
人材管理
人材管理とは、プロジェクトを成功に導くために、適切な人材を確保し効果的に活用していくことです。
大規模なシステム開発プロジェクトでは、多数のエンジニアを管理することが元請けの重要な責務の一つとなります。
小売業向けの新しいPOSシステムの開発を例にとると、以下のような幅広い専門性を持つ人材が必要です。
- 基本設計
- 開発
- システムの構築
- テスト
元請けは、自社の社員だけでなく、協力会社の社員も含めて、上記人材を確保しなければなりません。
そして、各メンバーが最も能力を発揮できるように、適材適所の配置する必要があります。プロジェクトの進行中も、必要に応じて柔軟に人員の入れ替えを行うことが重要です。
また、元請けには、OJT(On-the-Job Training)などを通じてメンバーのスキルを継続的に向上させたり、キャリア形成を支援する教育体制を整えたりすることも求められます。
元請けと下請けのメリット・デメリット
ここからは、元請けと下請けのメリット・デメリットを整理していきます。
項目 | メリット | デメリット |
元請け | ・プロジェクト全体の統括ができる ・マネジメントの経験を積める ・利益率を高く設定できる |
・プロジェクトの全責任がかかる ・人材管理や採用の手間がかかる |
下請け | ・資金調達リスクが少ない ・開発範囲が限定的 ・専門性を活かせる |
・元請けへの依存度が高い ・利益率が低くなってしまう |
元請けのメリット・デメリット
元請けがプロジェクトを請け負う場合における大きなメリットは、プロジェクト全体を統括できる点です。
元請けは、発注者と直接コミュニケーションを取り、プロジェクトの要件を深く理解し、実現するための設計、開発、運用までを一貫して実行できます。
この一連のプロセスを自社でコントロールできるのは、元請けならではの強みです。
また、元請けはプロジェクトの上流工程に位置するため、利益率を高く設定可能。下請けに比べて、収入面も上がる可能性があります。
一方で、元請けの責任は重大です。
技術面では、使用する技術の選定から、システムの設計、開発、テストまで、高い技術力が求められます。トラブルが発生した際には、解決するのは元請けの責務です。
また、要件の変更やスケジュールの遅延といったリスクへの対応、新たな人材の確保と教育、追加コストの負担など、プロジェクト全体を管理する責任も元請けにあります。
下請けのメリット・デメリット
下請けの大きなメリットとしては、資金調達の必要性が少ないことです。プロジェクトの資金調達は、発注者や元請けがするケースが多いため、自社が直接資金を用意する必要がありません。
コストを抑えられるのは、中小企業にとって大きなメリットです。
また、下請けは対応範囲が限定的であるため、プロジェクト全体ではなく自社が担当する部分に集中できます。
一方デメリットは、元請けへの依存度が高いことです。
下請けの仕事の量や内容は、元請けの方針に大きく左右されるため、状況によって事業の継続性が不安定になるリスクがあります。
また、下請けは元請けに比べて利益率が低くなります。プロジェクトの構造上、下請けの取り分は限られてしまうのです。
対応範囲が明確になりますが、その分、売り上げも限定的になります。
元請けと下請けにありがちなトラブル
元請けと下請けの関係においては、さまざまなトラブルが発生するときがあります。
ここでは、代表的な4つのトラブルについて詳しく見ていきましょう。
- 支払い遅延
- 依頼内容の変更
- コミュニケーション不足
- 品質の期待度の違い
支払い遅延
元請けから下請けへの支払いが遅れるケースは少なくありません。
具体的には、元請けの資金繰りが悪化した場合や発注者からの支払いが遅れた場合などに起こりやすいです。
支払い遅延は下請けの資金繰りに直接影響するため、深刻な問題となります。下請けは、支払いの遅延によって自社の運営に支障をきたすことがあるのです。
こうしたトラブルを防ぐためには、支払い条件の明記や元請けの財務状況の確認は大切です。
依頼内容の変更
プロジェクトの途中で、元請けから下請けへの依頼内容が変更されるケースがあります。なぜなら、発注者の要望の変化や、プロジェクトの方針転換などが起きるからです。
依頼内容の変更は、下請けの作業量や必要なリソースに影響を与えます。当初の予定になかった作業が追加されれば、下請けの負担が増えるのは言うまでもありません。
依頼変更が発生した際には、速やかに双方で協議し、対応方針を決定することが重要です。
コミュニケーション不足
元請けと下請けの間でコミュニケーションが不足すると、多くの問題が生じます。
最悪の場合、プロジェクトの失敗にもつながってしまいます。
プロジェクトの成功には、元請けと下請けの緊密なコミュニケーションが不可欠です。
こうしたトラブルを防ぐためには、週次や月次で打ち合わせが有効です。15分や30分程度であれば、いくら元請け会社が忙しくても実施はできるのではないでしょうか。
メールやチャットだけでなく、リアルで話す機会を設定しましょう。
品質の期待度の違い
元請けと下請けの間で、成果物の品質に対する期待度にズレる場合があります。
元請けは高い品質を求めるのに対し、下請けがその期待に応えられないケースです。
品質の期待度の違いは、作業の手戻りや、クレームの発生につながります。最悪の場合、下請けの交代や、プロジェクトの失敗にもつながりかねません。
そのため、品質基準を早い段階で明確にしておくことが重要です。作業の進捗に合わせて、定期的に品質をチェックすると、後戻りする場合が少なくなります。
元請けについてのまとめ
元請けは、ITプロジェクトの発注者として、中心的な役割を果たす企業や組織を指します。
元請けは、発注者である企業や組織から直接プロジェクトを引き受け、全体の進行や品質管理を担当します。一方で、下請けは元請けから一部のプロジェクトを委託され、その一部の開発に特化します。
元請けに関するご質問やプロジェクトの相談があれば、株式会社Jiteraにお気軽にお問い合わせください。お客様のビジネスニーズに合わせた最適なサポートを提供いたします。