パナソニックが社内で活用しているAIアシスタントサービスが「ConnectAI」です。
自社内のさまざまな課題を解決するために開発されたAIサービスであり、幅広い業務に活用されています。自社に特化した生成AIは今後の進化が期待されている分野であり注目度が高いです。
本記事ではConnectAIの特徴や活用事例、将来性についてまで解説します。自社のニーズに合ったAIサービスの開発に興味のある方は参考にしてください。

現役のシステムエンジニアとして10年程度のキャリアがあります。 Webシステム開発を中心に、バックエンドからフロントエンドまで幅広く対応してきました。 最近はAIやノーコードツールも触っています。
ConnectAIとは?
ConnectAIはパナソニックコネクトとMicrosoft社が協力をして開発されたAIアシスタントサービスです。
パナソニック社内で活用することを前提として開発されたため、他企業や開発者向けに提供されていません。
パナソニック社内の業務生産性の向上や社員のAIスキルの向上、シャドーAI利用のリスク軽減などを目的として開発され、以下のような機能を提供しています。
- 生成AIチャット
- 社内文書の引用
- 検索エンジンとの連携
- 不適切利用の検知
- 音声入出力機能
ConnectAIを構成する主なAIツールは以下のとおりです。
AIツール・機能 | 概要 |
ChatGPT API / OpenAI API | GPT-3.5 / GPT-4を実装し、生成AIチャット機能を提供 |
Azure OpenAI Service | 高水準のセキュリティを確保し、社外秘データの取り扱いが可能 |
RAG (Retrieval-Augmented Generation) | 社内文書の引用や検索エンジンとの連携を実現 |
Moderation API | 不適切利用の検知を行い、セキュリティを強化 |
ConnectAIは、1日に平均して5,000回以上利用されており、社員が日常的に業務で活用しています。質問に対する回答や文章の自動生成、文章の分類といった役割を果たしており、多くの業務を効率化しています。
ConnectAIの仕組み
ConnectAIの特徴をまとめると以下の通りです。
- Azure OpenAI Serviceを利用している
- GPT3.5-Turboを活用して構築
ConnectAIでは、Microsoftの提供するAzure OpenAI ServiceやOpenAIの提供するGPT3.5-Turboが活用されています。このため、社外秘データも含めて豊富なデータを活用してAIサポートを行える点が特徴です。
以下ではConnectAIの仕組みについて詳しく解説します。
Azure OpenAI Serviceを利用している
ConnectAIは、Azure OpenAI Serviceによって構築されたサービスです。Microsoft Azure OpenAI Serviceとは、Microsoft社の運営するクラウドサービス上で利用できるAIサービスです。
Azure OpenAI Serviceでは、Microsoft Azureで提供されているサービスで生成AIをAPI経由で利用可能です。クラウドサーバー上で利用できるAIサービスであり、強固なセキュリティで保護されているため安全性が高いことで知られています。
Azure OpenAI Serviceを用いればOpenAIの各種AIモデルを活用でき、ConnectAIもこの技術を使用しています。
パナソニックコネクトはMicrosoft社の技術を取り入れて自社内の問題解決に特化したAIアシスタントを実現しました。Microsoft社と協議を行い、パナソニックの社内システムにConnectAIを組み込むことに成功し、全社員を対象に提供されています。
GPT3.5-Turboを活用して構築
ConnectAIはAzure OpenAI Serviceで利用できるAIモデルの中でもGPT3.5-Turboを活用しているのが大きな特徴です。GPT3.5-Turboとは2023年の3月にOpenAIによって発表されたAIモデルで、会話用のモデルとなっています。
ChatGPTのシリーズの1つであり、GPT3.5-Turboを用いればテキストで質問をするとAIが回答してくれるサービスの開発が可能です。
ConnectAIが開発された時点ではGPT3.5-TurboはChatCPTの最新モデルでした。ConnectAIでもGPT3.5-Turboを活用することで、精度の高い回答を実現しています。
ConnectAIから学ぶ自社AIの導入効果や活用事例
ConnectAIはパナソニック社内においてさまざまな事例に活用されています。
例えば資料作成業務では、情報収集から情報整理、ドラフト作成までの業務の自動化を実現しています。AIによる自動化により、人間は創造性が必要とされる仕上げの部分に集中できるようになりました。
他には文章の翻訳をAIにさせるケースや、キャリアに関する質問を行うケースまで公表されています。
ConnectAIの活用事例は以下のとおりです。
- 質問に対する回答生成
- 品質管理の課題を解消
- プログラミング業務の短縮
- アンケート結果分析の短縮
以下では、ConnectAIから学ぶ自社AIの導入効果や活用事例を具体的に紹介します。
質問に対する回答生成
ConnectAIによる質問に対する回答生成が業務に役立っています。ConnectAIは、社外秘情報も参照するため、業務に関する専門的な質問にも正確な回答を得ることが可能です。
たとえば、リチウムイオン電池を活用する際の不具合事例や対策を教えてくださいと質問すれば、詳細な事例の紹介や対策まで回答してくれます。
回答の引用元まで表示されるため、自分で一から資料を調べる手間を省けます。
品質管理の課題を解消
ConnectAIの学習元データの中には品質管理規定や過去の事例まで含まれているため、品質管理に関する課題の解決にも役立ちます。
ConnectAIを用いることで、過去の事例の検索をして判断をする時間を短縮し、品質管理について迅速な対処が可能になります。
ConnectAIのおかげで品質管理のノウハウの共有が進んだという効果も得られています。
プログラミング業務の短縮
ConnectAIを導入したところ、従来は3時間かかっていたコーディング前の事前調査が5分に短縮されたという事例があります。
ConnectAIを導入する前までは複数拠点においてデータを収集する作業に時間がかかっていました。ConnectAIを活用すれば、AIがデータの収集から分析まで行うため、事前調査にかかる時間の大幅な短縮を実現しています。
プログラミング業務にかかる時間を短縮することでより重要な業務に時間をかけられるようになり、生産性の向上に大きく寄与しています。
アンケート結果分析の短縮
ConnectAIを導入した結果、約1,500件のアンケートの結果分析にかかる時間が9時間から6分に短縮されました。
これまで人力で行っていた分析作業をAIで自動化することで業務効率化を実現しました。アンケートの結果分析は所定の手順に従って機械的に判定していくものであり、AIによって自動化しやすい分野といえるでしょう。
アンケート結果分析にかける時間を短縮したことで、コア業務へ注力できるようになり、生産性向上の効果を得ています。
ConnectAIから見る自社専用AIのメリット
ConnectAIのような自社専用AIを開発して導入するメリットは以下の通りです。
- 自社のノウハウを蓄積できる
- 生産性の向上ができる
- コスト削減ができる
- イノベーションの推進が期待できる
- 社外秘データを含めたAIサポートができる
自社専用AIを実現すれば、生産性の向上やコスト削減、イノベーションの推進といった効果を期待できます。また、企業内に蓄積された幅広いデータをAIに整理・活用させることで、自社のノウハウの蓄積も実現できます。
以下では自社専用AIを活用するメリットを詳しく紹介します。
自社のノウハウを蓄積できる
自社専用AIを導入することで自社のノウハウの蓄積が進みます。AIによって過去の業務記録やノウハウなどを整理・分析させることができるからです。
AIの学習モデルとして自社のノウハウに関するデータを与えれば、AIは過去のデータから業務に関する正確な回答や提言を行います。
自社専用AIによって、自社のノウハウの整理や分類が可能であり、業務に関する知識や情報の共有が促進されます。
生産性の向上ができる
自社専用AIに業務に関する疑問点や課題などを質問すれば的確な回答を得られるようになり、生産性の向上につながります。
たとえば、新製品の企画案をAIに提案してもらうことでアイデア出しをさせることが可能です。これまで人力で行っていたデータ収集や分析の作業をAIに任せることもできます。
人が行っていた業務をAIに効率的に行わせることで、より重要な業務にリソースを集中させることができ、生産性の向上を実現します。
コスト削減ができる
自社専用AIの導入は幅広いコストの削減につながり、企業の収益性を上げられます。たとえば、生成AIに一部の業務を担当させることで少ない人員で対応できるようになれば、人件費の削減につながります。
また、AIに予測させることで無駄な在庫を削減し、廃棄コストを削減することが可能です。これまで外注していた業務をAIにさせられる場合は、外注コストの削減を実現できます。
イノベーションの推進が期待できる
自社専用AIに公開データから社外秘データまで学習させると、幅広い知識を組み合わせて斬新なアイデアを生み出せます。人間の常識では出てこない発想に基づいたアイデアや改善案の出力を期待できます。
たとえば、新製品・サービスの企画開発の際にAIにアイデアを出してもらい、今までにないアイデアが生まれれば、イノベーションの推進につながります。
AIに業務改善のアイデアを出してもらい、これまでのビジネスプロセスの常識を覆すアイデアが生まれるケースもあります。
社外秘データを含めたAIサポートができる
ConnectAIは自社の公開情報についてだけではなく、社外秘情報についての回答もしてくれるのが特徴です。
自社に固有の社外秘情報についても回答するAIサポートを実現しており、企業に関する幅広い質問について回答できます。たとえば、品質管理規定や過去の製品設計の品質に関する質問が可能になりました。
回答の際のデータの引用元を表示する機能も実装されており、回答結果の正しさを社員が確認できるように工夫されています。
ConnectAIからわかる自社AI導入のポイント
ConnectAIのような業務をサポートするAIは今後さらに発展していき、多くの会社で活用されるようになると予想できます。
ここではConnectAIの事例から分かる自社AI導入のポイントを紹介します。
今回紹介するポイントは以下のとおりです。
- データとモデルの最適化を行う
- 性能を発揮できる環境を整える
- 不公平や倫理的な配慮を徹底する
- 継続的な学習と改善を行う
以下ではそれぞれについて説明します。
データとモデルの最適化を行う
AIの精度は、学習するデータの質と量に大きく依存します。
ConnectAIの開発においても、パナソニックは社内に蓄積された膨大なデータの整理・分析を行い、高品質なデータセットを構築しました。自社AI導入においても、目的に最適なデータを選定し、適切な形で前処理を行うことが重要となります。
さらに、精度の高いAIモデルの構築も欠かせません。業務に最適なAIモデルを選択し、自社のニーズに合わせて微調整を行いましょう。
性能を発揮できる環境を整える
高性能なAIモデルを構築しても、それを動作させるためのインフラストラクチャが整っていなければ、期待するパフォーマンスを発揮できません。
ConnectAIでは、Microsoft Azureの堅牢なインフラストラクチャを活用することで、安定したパフォーマンスと高いスケーラビリティを実現しています。
自社AI導入においても、AIの性能を最大限に引き出すための環境構築が重要になります。
不公平や倫理的な配慮を徹底する
AIの開発・運用においては、公平性や倫理面への配慮が不可欠です。
ConnectAIの開発においても、倫理的なガイドラインを設け、AIの判断が特定の個人やグループに不利益をもたらさないよう、徹底したチェック体制を構築しています。
自社AI導入においても、倫理的な観点からのリスクを認識し、適切な対策を講じる必要があります。
継続的な学習と改善を行う
AIは、一度開発したら終わりではありません。変化する状況や新たなデータに対応するために、継続的な学習と改善が不可欠です。
ConnectAIでは、ユーザーからのフィードバックや運用データをもとに、定期的なモデルのアップデートや機能改善を行っています。
自社AI導入においても、継続的な学習と改善をサイクルに組み込むことで、AIの精度維持・向上を図る必要があるでしょう。
まとめ:ConnectAIのような自社用AIは効果的に導入
パナソニック社が自社専用のAIとして活用するConnectAIは多方面から注目されています。自社用AIを実現できれば、多くの課題を解決し、業務効率化や生産性の向上に寄与するからです。
日本は労働力の減少が大きな課題となっており、解決策としてAIによるDXが注目されています。人が行っていた業務をAIが担えるようになれば、人手不足の問題を解決できます。
今後はあらゆる領域においてAIの活用が進んでいき、多くの仕事をAIが自律的にこなしていくようになるでしょう。
自社のニーズに合ったAI開発に興味のある方はJiteraにご相談ください。
JiteraはAIを利用したシステム開発で豊富な実績を持っています。豊富な経験と実績に基づいたコンサルティングから、AIモデルの開発・運用まで、お客様のニーズに合わせたサービスを提供いたします。
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