AI推論とは?AIの学習と推論の違いを簡単に解説!使用例も紹介

推論AIアイソメトリック

人工知能(AI)技術の発展が止まるところを知りません。機械学習は特にAIの中核を成す重要技術で、ビジネスからエンターテインメントまで、あらゆる場面で活用が広がっています。

従来であれば、「モノ」をシステムやプログラムに作らせることは出来ても、あくまで使うのは人でした。それは人自身が予測し、意思をもって物事を決定できる生き物であるからです。

しかし、近年ではAIがモノを使う時代になり、人が自然に行っている行動や思考を理解する必要が求められるようになりました。そのために欠かせない概念が「推論」なのです。

本記事では、機械学習を支える「推論」について、その意味や仕組み、具体的な使用例を分かりやすく解説します。推論とAIの関係を理解することで、AIの可能性をより深く理解できるでしょう。

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監修者 猫暮 てねこ

システムエンジニア(SE)、プログラマー、ウェブサイト作成業務、ネットワークエンジニアなどを経験。 現在、フリーマルチライターとして活動中。最近はAI活用方面に没頭中。

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    推論とは?AIが学習してきた知識を活用するプロセス

    AI推論

    推論とは、既に持っている情報や知識から新しい事実や結論を導き出すプロセスのことを指します。日常生活でも、私たちはよく推論を行っています。

    たとえば、友人に会った際に「顔色が悪いな」と感じたら「具合が悪いのかもしれない」と思いますし、先を行く人が急に走り出したら「電車に遅れそうなのかも」と考えるかもしれません。

    私たちは日常的に、目に見えるものや感じ取れることからその背景や原因、結果といったことを推論し、判断や行動に生かしています。

    AIにおける推論も同様で、学習した知識を活用することで、新しい状況について予想や予測を立てて対処できるようになっていくのです。大まかなプロセスとして下記のような段階を踏んでいます。

    • AIの推論 -機械学習の学習フェーズと推論フェーズの違い
    • AIの学習 -大量のインプットデータが機械学習を支える
    • AIの訓練 -試行錯誤を重ねて学習モデルを磨く

    順番に解説していきましょう。

    AIの推論 -機械学習の学習フェーズと推論フェーズの違い

    機械学習とは、データから一般的な規則を自動的に学習するプロセスです。大量の訓練データを与えて学習させた後、規則を見つけ出しモデルを構築していくのが「学習フェーズ」。一方、学習フェーズを経たモデルが、データ結果を出力をするまでに至った過程が「推論フェーズ」と呼ばれるものですね。

    推論の質がAIの精度を決めるといっていいでしょう。特にディープラーニングは多層のニューラルネットワーク(人間の思考パターンに近い学習モデル)を使うため、より複雑で高度な推論が可能になりました。

    機械学習のプロセスを料理作りにたとえてみましょう。

    「学習フェーズ」が、レシピを読んで理解し、材料を準備し、調理する工程に当たります。この段階で、材料の下準備や加熱の仕方、調味料の配合などを学習していきます。

    一方で「推論フェーズ」は、実際に完成した料理を食べて評価するところです。うまく調理できていたか、味が良かったかをフィードバックします。もし具材が足りなかったり、味付けが薄かったりすれば、次に作る時はそこを改善する必要がありますね。

    調理器具の選定といったことも大事な推論要素です。レンジの使い方を知っていたとしても「与えられた情報や学習した情報をどう使うことで、よりよい結果が生まれるか」が、ずばり推論フェーズにあたるのです。

    AIの学習 -大量のインプットデータが機械学習を支える

    機械学習の学習フェーズでは、まず大量の訓練用データを用意する必要があります。画像を認識するAIを作りたい場合で見てみましょう。

    まず数千枚、数万枚という膨大な量の画像データと、その画像に含まれるものの正解ラベル(「犬」「猫」など)をあらかじめ与えます。

    次に、ディープラーニングなどの手法を用いて、数値化された画像データと正解ラベルの組み合わせを機械学習モデルに入力していきます。すると、モデル内部のパラメーターが自動的に調整されていき、徐々に画像と正解ラベルを関連付ける能力を身に付けていくのです。

    機械学習モデルを構築するには、入力データの準備や前処理に多大な労力を要します。しかし、それら優れた学習モデルは、いまやオープンなサービスとして私たちも利用できるようになりました。

    たちえば、筆者もよく活用しているAI画像生成サービス、Stable Diffusionnovel Ai diffusion v3

    これらはクロウラー機能を使い、インターネット上のありとあらゆる画像を参照するアルゴリズムが採用されています。「こんな絵がほしい」と文脈を与えることで、そこからユーザーの欲しい絵を膨大なモデルデータから推論し、出力してくれるのです。

    AIの訓練 -試行錯誤を重ねて学習モデルを磨く

    機械学習モデルが正しい推論を行うためには、前述した通り質の高い訓練が重要です。訓練とは、機械学習モデルに対して望ましい入力(データ)と出力(結果)の例を何度も提示し、その関係性を学習させていくプロセスです。

    学習用データに正解ラベルを付与し、モデル出力と正解ラベルの誤差を最小化するようモデルのパラメーターを調整することで、徐々にモデルの性能が向上していきます。

    訓練は試行錯誤の連続です。学習データの質やパラメーターの調整、最適な学習アルゴリズムの選択など、この過程を何万回、何十万回と繰り返すことで様々な要因を検討・改善しながら、モデルの性能を高めていきます。

    このプロセスは、スポーツ選手がフォームを磨き上げるのと似ていますね。ただ、闇雲に反復するだけでは上手くはなりません。

    様々な調整を重ねたり、専属のコーチからアドバイスを受けたりしながら、地道に基礎を身に付けていき、その努力の積み重ねによってスキルや技術が熟達していきますよね。

    AIモデルもそれと同じように、訓練を重ね、パラメータを調整し続けることで、精度の高い推論を打ち出せるようになっていくのです。

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    AIの推論の具体的な使用例 -ビジネス分野での活躍


    参考:Anthropic

    推論技術を活用したAIは、あらゆる産業でイノベーションを起こしています。ビジネスの現場はもちろん、医療、交通、エンターテインメントなど、身近な場面でAIの推論が活躍する機会が増えつつあります。

    特にビジネスシーンにおけるAIの応用例は目覚ましく、企業の生産性向上やDX(デジタルトランスフォーメーション)を大きく後押ししています。

    ここでは、AIの推論技術がビジネスで実際にどのように役立っているのかを、以下の具体例を交えてご紹介します。これらの事例を確認することで、「AI 推論 ビジネス活用」「機械学習 推論 企業」などの関連キーワードの理解が深まるでしょう。

    • 大規模言語モデル(LLM)における高度な推論
    • 予測分析における精度の高い推論
    • メールセキュリティにおける脅威検知の推論
    • 自動車の自律運転における推論

    それぞれ解説していきましょう。

    大規模言語モデル(LLM)における高度な推論

    大規模言語モデル(LLM)は、莫大な量のテキストデータを学習し、文章の意味や文脈を理解する能力を備えています。LLMは推論を駆使することで、単なる単語の並びではなく、入力された文章の本質的な意味を捉え、的確に解釈することができます。

    さらに、事前に学習したことのない新しい文字列に対しても、意味を推測し自然な文章を生成できるのがLLMの大きな強みです。この高度な推論能力によって、人間に極めて近い自然な対話が実現できるほか、要約、翻訳、テキスト生成など、様々な応用が可能になっています。

    ChatGPTAnthropic AI Assistant(Claude)Gemini などの最新AIアシスタントはLLMを活用しており、日々進化を続けています。

    LLMの言語処理能力は本当に驚くべきものがあります。たとえば「次は緑信号だからスピードを落とす必要はない」と入力すると、LLMは「交差点で信号が変わる可能性があり、事故のリスクがある」と的確に指摘してきます。

    状況から合理的に推論を行い、安全運転を促すよう人間に助言するのです。LLMは文脈を読み解き、的確な判断を示せるため、AIとのコミュニケーションといっても差支えない技術となりつつあります。

    予測分析における精度の高い推論

    ビッグデータ解析の分野でもAIの推論は威力を発揮しています。機械学習を用いた予測分析とは、過去のデータから将来の傾向を高精度で予測する手法です。消費行動の変化や市場動向、機械の故障時期など、様々な事象を対象に予測できます。

    予測分析によってビジネスリスクを最小化し、新規事業の展開時期を的確に判断したり、製品の需要予測を立てたりできます。

    プロ野球の監督が、試合のデータを基に次の試合の作戦を立てるようなものでしょうか。過去の打者の打撃データから、どの投手を使えば打ち取れるかを予測したり、守備位置の配置を決めたりするわけです。

    機械学習モデルも同様に過去のデータを学習し、未来を予測するための指針を見つけ出すことで、よりDX(デジタルトランスフォーメーション)が促進されていくと考えられます。

    メールセキュリティにおける脅威検知の推論

    メールセキュリティの分野でも機械学習の推論が重要な役割を果たしています。スパムメールやマルウェア、フィッシング詐欺などの悪意のあるメールをリアルタイムで検出する際に、過去の事例から学習したモデルに基づいて推論が行われます。

    従来のパターンマッチングによる検出方式に比べ、機械学習による推論では、メールの本文や添付ファイル、送信元IPアドレスなど、様々な要素を総合的に分析し、悪意の有無を高い確率で判断できます。モデルは絶えず新しい事例を取り込み、訓練を重ねることでさらに精度が上がっていくことでしょう。

    Microsoft:Outlook向けの『Dynamics 365 Sales』などがAIを活用したサービスの一例として挙げられますね。フィルタリングや自動的なメール作成など、AI推論が盛り込まれています。たとえるなら、税関の検査と同じようなものですね。

    過去に押収された違法物品のデータから、どのような特徴があれば危険物か見分けられるか推論するのです。これらのおかげで、即時に対応できるセキュリティ対策が実現できるようになりました。

    参考:『Dynamics 365 Sales』

    自動車の自律運転における推論

    自動車の自律運転技術においても、機械学習による推論が欠かせません。ディープラーニングを駆使したAIシステムが、カメラやセンサーから得られる走行映像や周辺情報をリアルタイムで分析し、安全な走行パスを推論します

    歩行者や障害物の存在を検知したり、走行車線からの逸脱を予測したり、最適な加速・減速を判断したりと、瞬時に多くの要素を考慮した高度な推論が求められます。訓練データの精度と量が自動運転の鍵となり、推論技術なしには実現が難しい分野です。

    特に自動運転に関しては、米国のSAE International(自動車技術会)「自動車自動運転レベル(Levels of Driving Automation)」という定められた基準を以下のように公表しています。

    • レベル1:基礎的な運転機能の自動化(左折、右折、車線維持など)
    • レベル2:高度な運転機能の自動化(車間距離制御や追い越しなど複雑な機能)
    • レベル3:条件付き運転自動化(高速道路などの限定された状況下で自動運転可能)
    • レベル4:高度な運転自動化(ほとんどの状況で自動運転可能だが、推論に不安あり)
    • レベル5:完全な運転自動化

    参考:国土交通省 自動運転のレベル分け

    レベル3以上の高度な自動運転を実現するには、AIの推論能力が極めて重要です。

    機械学習モデルに人間の運転ロジックを学習させて、信号無視や一時停止不履行などの違反行為をしないよう徹底しています。また渋滞や事故発生時にも冷静に判断し、安全な走行経路を導き出す予測能力が必須となります。

    自動運転は、ハードウェアだけでなくAIの推論能力の進化抜きには実現が困難な分野といえるのです。自動車メーカーはAIベンダーと密に連携し、さらなる推論性能の向上に力を注いでいることでしょう。

    推論のまとめ

    GPTs(ジーピーティーズ)とは

    以上、AIの推論とは機械学習の中核をなす重要な概念であり、ディープラーニングの発展と相まって、その応用は加速しています。

    推論によって、LLMは自然な言語処理が可能になり、ビッグデータ解析では将来予測が可能になり、セキュリティ分野ではリアルタイムの脅威検知に貢献し、自動車の自動運転技術を実現できるようになったことが分かりました。

    AIは目覚ましい発展を遂げていますが、推論をはじめとする機械学習技術の粋がなければここまでの進化はあり得ませんでした。今後も機械学習は多くの産業分野でイノベーションを生み出すことが期待されています。

    当社Jiteraでは、アプリ・システム開発を積極的に行っています。小さなスタートからビジネスを確実に前に進める開発をサポートさせて頂いております。AI推論に関するご相談やご質問がありましたら、Jiteraまでお気軽にお問い合わせください。

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