イーサネットは、ネットワークで接続された機器が正常な通信を行うための重要な規格です。
この記事では、イーサネットの種類や規格だけでなく、通信で果たす役割、ほかにも車載ネットワークに関しても紹介しています。
この記事を読んで、イーサネットのことをより深く理解し、自社でどのように活用するかの参考にしてください。
イーサネット(Ethernet)とは?
イーサネット(Ethernet)とは、コンピューターネットワーク技術の1つであり、おもに局所的な範囲(ローカルエリアネットワーク:LAN)で使用されるものです。
以下はそのおもな特徴です。
- 標準化
- 速度のバリエーション
- 接続方式
- アクセスメソッド
- スケーラビリティ
イーサネットは、IEEE 802.3という国際標準で規定されています。標準の規定であるため、異なるメーカーの機器でも互換性が保たれるのが特徴的です。
初期のイーサネットは、10Mbpsでしたが、技術の進化により100Mbps・1Gbps・10Gbps以上の高速バージョンも開発されています。
当初は、同軸ケーブルを使用していましたが、現在はツイストペアケーブルや光ファイバーがおもに使用されています。
CSMA/CDという方式を使い、ネットワーク上でほかのデバイスがデータを送ってこないことを確認してからデータを送信する仕組みです。
ただし、フルデュープレックスモードの普及で、この方式はあまり用いられなくなっています。また、スイッチやルーターを使用することで、大規模なネットワークに拡張することが可能です。
イーサネットの通信の仕組み
イーサネットは、局所的な範囲で使用されるものであることがわかりました。次に、この通信の仕組みを見ていきましょう。
ここでは、以下の項目に触れながら、イーサネットの通信の仕組みを解説します。
- OSI参照モデル
- TCP/IP
これらの項目をみながら、イーサネットの通信の仕組みを理解していきましょう。
OSI参照モデル
イーサネットの通信プロトコルは、OSI参照モデルの下層に位置する、おもに物理層とデータリンク層で活動するものです。
OSI参照モデルは、ネットワーク上でのデータの流れを理解しやすくするために、国際標準化機構(ISO)によって開発されたモデルで、全部で以下の7層から成り立っています。
- 物理層(Layer 1)
- データリンク層(Layer 2)
- ネットワーク層(Layer 3)
- トランスポート層(Layer 4)
- セッション層(Layer 5)
- プレゼンテーション層(Layer 6)
- アプリケーション層(Layer 7)
以下、それぞれのデータ層について簡単に解説します。
物理層(Layer 1)
物理層は、データを電気信号に変換し、ネットワーク上のメディア(ケーブルなど)を通じて送受信するものです。イーサネットでは、ケーブル・ハブ・リピータなどがここに該当します。
データリンク層(Layer 2)
データリンク層は、フレームの生成とエラーチェック、MACアドレスによるネットワークデバイスの識別を行うものです。イーサネットの適用では、データをフレームと呼ばれる単位に分け、送信するフレーミングがあります。
ほかにも、ネットワーク上の各デバイスにユニークなMACアドレスを持ちます。CSMA/CDは、イーサネットの初期のアクセス制御メソッドで、データ送信前にほかのデバイスが送信していないかを確認し、送信中に衝突が起きた場合には送信を行う仕組みです。
ネットワーク層(Layer 3)
ネットワーク層以降は、イーサネットとしての役割はありませんが、このネットワーク層では、IPアドレスを用いてパケットをルーティングし、異なるネットワーク間での通信が可能です。
トランスポート層(Layer 4)
トランスポート層は、通信の品質管理を行い、データの送受信を確実なものにします。TCPやUDPなどのプロトコルがここに該当します。
セッション層(Layer 5)
セッション層は、通信相手とのセッションの確率・維持・終了を管理するための層です。
プレセンテーション層(Layer 6)
プレゼンテーション層は、データの表現形式や文法を定義し、通信端末間でのデータの変換や符号化を行うための層です。
アプリケーション層(Layer 7)
アプリケーション層は、最上位の層であり、ユーザーが直接利用するアプリケーションとネットワーク間のインタフェースを提供する層です。
TCP/IP
イーサネットが物理的なデータ転送を担当する一方で、TCP/IPプロトコルスタックは、インターネットやほかの多くのネットワークでデータ通信を制御するための標準です。
TCP/IPは先述のOSI参照モデルで解説した、トランスポート層とインターネット層のプロトコルで構成され、より高い層のアプリケーション間のデータ送受信を可能にします。
以下は、TCP/IPモデルを構成しているOSI参照モデルにおける、4層です。
- データリンク層
- ネットワーク層
- トランスポート層
- アプリケーション層
以下、それぞれ簡単に解説します。
データリンク層
データリンク層にてイーサネットは活動し、データの物理的な送受信を担当します。データはフレームとして処理され、各フレームには送信元と宛先のMACアドレスが含まれます。
ネットワーク層
ネットワーク層の主要なプロトコルはIP(Internet Protocol)です。IPは、パケットの配送とルーティングを担当し、送信元と宛先のIPアドレスに基づいてパケットを適切な宛先へと転送します。
トランスポート層
トランスポート層は、TCPとUDPの主要なプロトコルです。
TCPは、信頼性の高い接続指向のサービスを提供し、データの順序付け・エラー検出・再送制御を行います。UDPは、接続を必要としない非信頼性のサービスで、リアルタイムアプリケーションに適しているものです。
アプリケーション層
アプリケーション層は、ネットワークサービスを直接ユーザーのアプリケーションに提供します。HTTP・FTP・SMTP・DNSなどのプロトコルがここで動作し、インターネット上でのさまざまなアプリケーション間のデータ交換の実現が可能です。
イーサネットとTCP/IPが組み合わさることで、ローカルからグローバルなスケールまで幅広くネットワークを構築できます。具体的には、イーサネットがデータリンク層としての役割を果たし、TCP/IPのスタックのほかの層がそれぞれの機能を担当します。
イーサネットの規格
ここまで、イーサネットの通信の仕組みをみて、OSI参照モデルでのイーサネットの位置付けを学びました。
次に、イーサネットの規格をみていきましょう。イーサネットの規格は、最大通信速度と媒体(ケーブル)で分けられます。
ここでは、この2つの項目に分けて、イーサネットの規格を解説します。
- 最大通信速度
- 媒体(ケーブル)
それぞれの項目をみて、イーサネットの規格を理解していきましょう。
最大通信速度
イーサネットの規格の1つに、最大通信速度があります。以下は、そのおもな規格の種類です。
- イーサネット(10Mbps)
- ファスト・イーサネット(100Mbps)
- ギガビット・イーサネット(1,000Mbps)
ここからは、それぞれの最大通信速度の規格をそれぞれ詳細に解説します。
イーサネット(10Mbps)
イーサネットの基本的な規格である「10BASE-T」イーサネットは、最大通信速度が10Mbpsです。この規格は、1980年代に登場し、広く普及しました。
10BASE-Tは、RJ45コネクタを使用し、カテゴリー3以上のツイストペアケーブルを通じて通信を行います。最大ケーブル長は100メートルとされており、オフィスや小規模なネットワーク環境での利用に適しています。
この規格の普及により、イーサネット技術が一般的なネットワーク技術として根付くこととなりました。
ファスト・イーサネット(100Mbps)
ファスト・イーサネットは、イーサネット技術の1つで、最大通信速度が100Mbpsである通信規格です。この規格は、元々の10Mbpsのイーサネット規格を拡張したもので、1995年に標準化されました。
ファスト・イーサネットは、特に100BASE-TXという形式が広く使われていますが、そのほかにも以下のようなバリエーションが存在します。
- 100BASE-TX
- 100BASE-T4
- 100BASE-FX
ファスト・イーサネットは、10BASE-Tの10倍の速度を提供することで、より帯域の要求が高いアプリケーションや、ユーザー数が多いネットワーク環境での適応が可能です。このため、ファイルサーバーへのアクセス・マルチメディアのストリーミング・高解像度のビデオ会議など、データ転送ニーズが増大する状況で有効なソリューションを提供できます。
また、この規格は下位互換性があり、10BASE-T機器との間で通信が可能です。これにより、ネットワークの段階的なアップグレードが容易になり、広範囲にわたって採用されてきました。
ギガビット・イーサネット(1,000Mbps)
ギガビット・イーサネットは、最大通信速度が1,000Mbpsで、より高速なデータ転送を可能にするイーサネットの規格です。
この規格は、1999年にIEEE 802.3abとして標準化され、オフィスやデータセンターなどの大規模ネットワークでの使用に適しています。
ギガビット・イーサネットの一般的な規格は1000BASE-Tですが、ほかにも以下のような規格があります。
- 1000BASE-T
- 1000BASE-SX
- 1000BASE-LX
- 1000BASE-CX
ギガビット・イーサネットは、ファスト・イーサネットに比べて10倍の速度を提供し、高解像度ビデオのストリーミング・大容量のデータ転送・および大規模なネットワークトラフィックを扱う環境での利用が想定されているものです。
また、100BASE-TXや10BASE-Tとの下位互換性があるため、既存のネットワークを容易に拡張できる、という利点があります。
このように、ギガビット・イーサネットは、その高速性と汎用性により、ビジネスや学術機関などの多くの分野で広く採用されています。
媒体(ケーブル)
イーサネット技術において使用される媒体(ケーブル)は、その規格により異なり、それぞれ特定の用途や環境に適した特性を持っています。
おもなケーブルの種類としては、以下のとおりです。
- LANケーブル
- 光ファイバーケーブル
- 同軸ケーブル
ここでは、これらイーサネットの媒体(ケーブル)の規格を、それぞれ解説します。
LANケーブル
イーサネット規格において使用されるLANケーブルは、ツイストペアケーブルが使われます。
以下は、そのLANケーブルとして使用されるおもなツイストペアケーブルのカテゴリーとそれに対応するイーサネット規格でをまとめたものです。
規格 | 最大通信速度 | 最大ケーブル長 | 特徴 |
カテゴリー5e(Cat5e)ケーブル | 1Gbps | 100メートル | 10BASE-T・100BASE-TX・1000 ASE-Tなど、さまざまなイーサネット規格に対応 |
カテゴリー6(Cat6)ケーブル | 10Gbps | 100メートル | 10GBASE-T規格の最大距離接続に対応 |
カテゴリー6a(Cat6a)ケーブル | 10Gbps | 55メートル | 110GBASE-T規格の最大距離接続に対応 |
これらのLANケーブルは、ネットワークインフラストラクチャーの構築において、重要な役割を果たします。適切なケーブルの選択は、高速かつ安定したネットワーク通信を実現するために重要です。
光ファイバーケーブル
イーサネット規格における光ファイバーケーブルは、高速で信頼性の高いデータ転送を可能にするために使用されるものです。
以下は、光ファイバーケーブルが使用される、おもなイーサネット規格とその特徴をまとめたものです。
規格 | 最大通信速度 | 最大ケーブル長 | ケーブルの種類 | 用途 | 特徴 |
1000BASE-SX | 1Gbps | 550メートル | マルチモードファイバーケーブル | データセンターやキャンパス内での短距離接続 | 低コストで幅広く使用 |
1000BASE-LX | 1Gbps | 10キロメートル以上 | シングルモードファイバーケーブル | 長距離接続や広範囲のネットワークでの使用 | 電磁干渉の影響を受けにくいため、ビル間や都市間の通信に最適 |
10GBASE-SR | 10Gbps | 300メートル | マルチモードファイバーケーブル | データセンターや大規模ネットワークでの短距離接続 | 高速で大容量のデータ転送に対応 |
10GBASE-LR | 10Gbps | 10キロメートル以上 | シングルモードファイバーケーブル | 長距離接続や広範囲のネットワークでの使用に最適 | 高速で信頼性の高い通信を実現 |
光ファイバーケーブルは、電磁干渉やセキュリティの問題に強く、高速で大容量のデータ転送が必要なネットワーク環境で広く使用されています。
同軸ケーブル
イーサネット規格における同軸ケーブルは、おもに過去に使用されてきたもので、現在は一般的ではありません。
同軸ケーブルは、イーサネットの初期バージョンである10BASE5および10BASE2で使用されることが多いものでした。
以下は、これらの同軸ケーブルが使用されていたおもなイーサネット規格と特徴をまとめたものです。
規格 | 最大通信速度 | 最大ケーブル長 | 用途 | 特徴 |
10BASE5 | 10Mbps | 500メートル | 初期のローカルエリアネットワーク (LAN) 接続 | 太い同軸ケーブル(通称”Thicknet”)を使用し、コネクタには、N型コネクタが使用 |
10BASE2 | 10Mbps | 185メートル | ローカルエリアネットワーク (LAN) 接続 | 薄い同軸ケーブル(通称”Thinnet”)を使用し、コネクタには、BNCコネクタが使用 |
これらの同軸ケーブルは、1990年以前は一般的でしたが、現在では主流ではありません。
同軸ケーブルは、ツイストペアケーブルや光ファイバーケーブルと比較して、取り扱いが難しく、構築やメンテナンスが複雑でコストもかかるため、より効率的で使いやすいケーブルが普及しました。
イーサネットのメリット
ここまで、イーサネットのさまざまな規格をみてきました。次に、このイーサネットのメリットをみていきましょう。
ここでは、以下の2つのメリットを解説します。
- ケーブルを用いる有線接続で通信が安定
- 不正アクセスが困難なのでセキュリティ面で優れている
それぞれのメリットを理解して、イーサネットを利用していきましょう。
ケーブルを用いる有線接続で通信が安定
イーサネットの有線接続には、以下のようなメリットがあります。
- 信頼性の向上
- 一貫した帯域幅
- 低遅延
- セキュリティの強化
- 環境に対する耐性
ケーブルを使用した有線接続は、電波干渉や周囲の電子機器の影響を受けにくいため、信頼性が高く安定した通信の実現が可能です。信頼性が高く安定した通信ができるため、データの安全性や正確性が向上します。
ケーブルを使用した有線接続では、通信路が物理的に確保されているため、帯域幅が一貫して高速で安定しているのが特徴です。高速で安定しているため、データの送受信が迅速かつ効率的に行えるでしょう。
ケーブルを使用した有線接続は、データが物理的なケーブルを通じて直接送受信されるため、通信遅延が少なくなります。特に、リアルタイム性が求められるアプリケーションサービスにおいて重要です。
また、外部からの不正アクセスや盗撮などのセキュリティリスクの軽減が可能です。物理的なアクセスが必要であるために電波を傍受されるリスクが低いため、データの安全性が向上します。
ケーブルは物理的な構造を持ち、通信路が明確に区切られているため、外部環境の影響を受けにくくなります。外部環境の影響を受けにくいため、屋内や屋外など、さまざまな気候条件下で安定した通信が可能です。
不正アクセスが困難なのでセキュリティ面で優れている
イーサネットのセキュリティ面におけるメリットの1つは、不正アクセスが困難であることです。以下は、そのおもな理由やメリットなどです。
- 物理的なアクセスが必要
- MACアドレス制御
- 物理的なセキュリティ
- 内部ネットワークの保護
- ネットワークの監視と制御
イーサネットは、物理的なケーブルを介して接続されるものです。このため、不正アクセスを行うためには、ネットワークに物理的に接続する必要があります。
これは、リモートからの攻撃やネットワーク上のデータの傍受が難しくなる理由の1つです。
イーサネットでは、ネットワーク上のデバイスは固有のMACアドレスを持ちます。ネットワーク管理者は、MACアドレス制御を用いて、ネットワークに接続できるデバイスの制限が可能です。
このため、不正なデバイスの接続の防止が実現できます。
イーサネットは、物理的なケーブルを通じて接続されるため、外部からのアクセスや攻撃が困難です。外部からのアクセスや攻撃が困難であるために、セキュリティの面で安心感が得られるでしょう。
また、外部の不正アクセスから内部ネットワークを保護する役割を果たし、特に、企業や組織の内部ネットワークでは、機密性の高い情報を保護するために重要です。
イーサネットのネットワークは、管理者が物理的な構成や接続を監視し、制御することが可能です。このため、不正なアクセスを早期に検出し、対処することができます。
イーサネットの問題点
イーサネットには、有線接続であるためのメリットがあることがわかりました。では、どのような問題点があるのでしょうか。
ここでは、以下2つの問題点を解説します。
- ケーブルの劣化や損傷
- ケーブルの引き回し方が難しい
イーサネットのメリットだけでなく問題点も理解した上で、イーサネットを利用するのが重要です。
ケーブルの劣化や損傷
イーサネットを利用する際の問題点の1つに、ケーブルの劣化や損傷があります。以下は、そのおもな要因です。
- 物理的な損傷
- 環境要因
- 老朽化
ケーブルが折れ曲がったり、圧迫されたりすることによって、内部の導体や絶縁材料が損傷する可能性があります。また、接続部分が揺れたり、歪んだりすることで、接続不良が生じることもあるでしょう。
ケーブルが露天や屋外で使用される場合、天気や湿気、温度変化などの環境要因によって劣化や損傷が起こりやすくなります。ほかにも、ケーブルは時間の経過とともに劣化し、性能が低下するものが多いです。
特に、長時間使用されたり、頻繁に折り曲げられたりすると、ケーブルの耐久性は低下しやすいでしょう。
このような要因でケーブルが劣化や損傷したりすると、以下のような影響があります。
- 通信品質の低下
- 過信の不安定性
- ネットワーク障害の発生
ケーブルの劣化や損傷により、データの送受信に際してノイズやエラーが発生しやすくなります。ノイズやエラーが発生しやすくなると、通信品質が低下し、データ転送速度が遅くなる可能性があるでしょう。
ケーブルの劣化や損傷が進行すると、通信が断続的になったり、完全に切断されることがあります。このような状況になると、ネットワークの安定性が低下し、通信が不安定になる可能性があるでしょう。
ケーブルの劣化や損傷が並行すると、最悪の場合、ネットワーク全体がダウンする可能性があります。ネットワーク全体がダウンしてしまうと、重大なネットワーク障害が発生し、業務の停止やデータの損失が発生する恐れがあり、大きな問題となる可能性があります。
ケーブルの引き回し方が難しい
イーサネットのケーブルを引き回す際には、以下のような問題が発生することがあります。
- 物理的な制約
- 配線規制や安全規制
- 見栄えや整理の問題
- 保守性とアクセス
建物やオフィスの構造によって、ケーブルを引き回すための適切な経路が限られることがあります。壁や天井の配線が複雑であったり、障害物がある場合、ケーブルの引き回しが困難になる可能性があるでしょう。
建築コードや安全規制に従う必要がある場合、ケーブルの引き回しに関する制約が生じることがあります。特に、火災や電気ショックの危険を回避するための規制がある場合、ケーブルの配置が制限されることもあるでしょう。
また、ケーブルを見栄え良く配置し、整理することは重要ですが、容易にできることではありません。特に、多くのケーブルを一箇所にまとめる際には、配線が乱雑になりやすく、メンテナンスやトラブルシューティングが困難になることがあるでしょう。
ケーブルを引き回す際には、将来の保守性やアクセス可能性を考慮する必要があります。ケーブルが容易に取り外せない場合、修理や交換が困難になる可能性があるでしょう。
イーサネットが使われているシーン
ここまで、イーサネットのメリットと問題点をそれぞれみてきました。では、イーサネットはどのようなシーンで使われているのでしょうか。
一般的に、企業でのネットワーク環境や家庭でのパソコンやゲームで利用されることが多いですが、ほかにもさまざまなシーンで利用されています。
ここでは、以下のシーンに分けて、イーサネットが使われているシーンを紹介します。
- データセンターでのインフラ
- 通信事業者の伝送システムや巨大ルーターの接続
- 自動運転などの次世代システムの構築
それぞれのシーンをみながら、自社でどのように活用できるかの参考にしてください。
また、以下の記事では、イーサネットと関わりのあるNASに関して解説しているため、参考にしてください。
データセンターでのインフラ
データセンターでは、イーサネットが広く使用されています。以下は、そのおもな利用シーンです。
- サーバー接続
- ストレージ接続
- ネットワークバックボーン
- クラウドサービス
- 仮想化インフラストラクチャー
データセンター内のサーバーは、イーサネットを使用してネットワークに接続されます。サーバー間の通信や、サーバーとネットワークストレージなどのほかのデバイスとの通信に使用されることが多いです。
データセンターでは、ストレージネットワーク(SAN)やネットワークアタッチストレージ(NAS)を使用して、大容量のデータを保存および共有します。これらのストレージデバイスには、イーサネットを介してのネットワーク接続が可能です。
データセンター内のネットワークバックボーンには、高性能なイーサネットスイッチが使用されます。イーサネットスイッチを使用することで、データセンター内の各デバイスやサーバー間で高速かつ信頼性の高い通信の実現が可能です。
クラウドサービスプロバイダーが提供するサービスも、イーサネットを使用してネットワークに接続されます。クラウドインフラストラクチャー内での仮想マシンやコンテナなどのインスタンスは、イーサネットを介してのネットワークにアクセスが可能です。
データセンターでは、仮想化技術が広く使用されており、仮想化環境では、ネットワークインターフェースカード(NIC)などの仮想ネットワークデバイスが使用され、これらもイーサネットを介して通信します。
通信事業者の伝送システムや巨大ルーターの接続
通信事業者の伝送システムや巨大ルーターの接続においても、イーサネットが利用される場面があります。以下は、そのおもなシーンです。
- バックボーンネットワークの接続
- 光ファイバーネットワークの終端装置接続
- 巨大ルーターの内部接続
- アグリゲーションとトラフィック管理
通信事業者のバックボーンネットワークでは、膨大な量のデータを高速化つ効率的に転送する必要があります。このようなネットワークでのルーターや伝送装置の接続には、高性能なイーサネットスイッチが使用されます。
高性能なイーサネットスイッチを利用することで、複数のネットワーク機器を接続し、データのスケーラビリティと信頼性の確保が可能です。
通信事業者が提供する、光ファイバーネットワークの終端装置や光回線終端装置(OLT)などの機器は、イーサネットを介してネットワークに接続されます。
イーサネットを介して接続することで、光ファイバーネットワークからイーサネットのネットワークへのトラフィック変換や、異なるネットワークプロトコル間での通信が可能です。
通信事業者や大規模なネットワーク運営者が使用する巨大なルーターでは、複数のインターフェースやポートを備えた、高性能なイーサネットスイッチが内部に組み込まれています。イーサネットスイッチが内部に組み込まれているため、異なるネットワークセグメント間の通信を調整し、トラフィックの効率的な制御が可能です。
イーサネットは、通信事業者のネットワークでのトラフィックの集約や管理にも利用されます。複数の経路からのトラフィックを受け入れて効率的に処理し、最適な経路にルーティングするためのアグリケーションやトラフィックエンジニアリングにおいて、イーサネットが活用されます。
自動運転などの次世代システムの構築
イーサネットは、自動運転などの、次世代システムの構築でも利用されています。
ここでは、次世代システムの1つである、車載ネットワークに注目し、以下の項目に分けて解説します。
- 車載ネットワークの種類
- 注目の車載イーサネット「100BASE-T1」
これらの項目をみながら、車載ネットワークに関して理解していきましょう。
車載ネットワークの種類
車載ネットワークは、自動車内でのさまざまな電子機器やシステム間でデータを交換するためのネットワークです。
おもな車載ネットワークの種類には、以下のようなものがあります。
- Controller Area Network (CAN)
- Local Interconnect Network(LIN)
- FlexRay
CANは、車両内のさまざまな電子制御ユニット(ECU)間でのデータ通信に使用される最も一般的なネットワークです。高信頼性とリアルタイム性を提供し、エンジン制御・ブレーキ制御・エアバック制御などの重要なシステムで広く使用されています。
LINは、より低コストで低速のシステムはデバイス間での簡単な通信に使用されるものです。窓やミラーの制御、シートベルトの警告などの機能に適しています。
FlexRayは、高速化つリアルタイムな通信が必要なシステムに使用されるものです。電動ステアリングやブレーキ制御などの安全性が重要なアプリケーションに適しています。
注目の車載イーサネット「100BASE-T1」
100BASE-T1は、自動車で使用される車載イーサネットの規格の1つです。以下は、そのおもな特徴です。
- 通信速度
- シングルツイストペアケーブル
- 低電力化
- ノイズ耐性
1000BASE-T1は、最大100Mbpsのデータ転送速度を提供し、自動車内での高速かつリアルタイムなデータ通信を実現します。また、シングルツイストペアケーブルを使用して、通信を行い、配線の簡素化や軽量化が可能です。
自動車の電気系統における電力効率の向上を目指して、100BASE-T1は低電力化が図られており、車両のバッテリー寿命を伸ばしてエネルギー効率を向上させます。
車載環境では、エンジンや駆動系からのノイズが発生しやすいため、通信システムはノイズに対して耐性を持つ必要があります。100BASE-T1は、ノイズ耐性が高い設計がなされています。
このように、100BASE-T1は、自動車業界でのイーサネットの普及と、次世代の自動車技術の実現において重要な役割を果たしています。
有線、無線の使い分けは
ここまで、イーサネットが利用されるさまざまなシーンをみてきました。次に、有線と無線の使い分けをみていましょう。
有線と無線は、用途によって使い分けることが重要ですが、どう使い分けるとよいのでしょうか。
ここでは、有線と無線の使い分けのポイントを、以下の項目に分けて解説します。
- 有線LAN
- 無線LAN
有線と無線の使い分けを理解し、自社でどちらで利用するとよいかの参考にしてください。
有線LAN
イーサネットを有線で利用するシーンは、おもに以下のようなシーンが多いでしょう。
- オフィス環境
- データセンター
- 産業用途
- 医療機関
- 教育機関
- ホームネットワーク
オフィスやビジネス環境では、デスクトップコンピューターやサーバー、プリンターなどのデバイスをネットワークに接続するためにイーサネットが使用されます。
また、データセンターでは、サーバー・ストレージ・ネットワーク機器などが、高速かつ安定したネットワーク接続を必要とするため、イーサネットが利用されることが多いです。
工場や製造業の環境では、機械や制御システムをネットワークに接続するためにイーサネットが使用されます。
ほかにも、病院や医療機関では、患者のデータや医療機器の情報をネットワークで管理する際にイーサネットの湯煎接続が利用されることが多いです。
自宅のネットワーク環境でも、有線接続が利用されることがあり、特に、ストリーミングやオンラインゲームなどの高帯域幅のアプリケーションにおいて、イーサネットの有線接続は有効です。
無線LAN
イーサネットを無線で利用するシーンはいくつかあり、おもな利点は、移動性と柔軟性が高まることです。
以下は、そのおもな利用シーンです。
- 移動体通信
- イベントや展示会
- 屋外環境
- モバイルデバイス
- リモートアクセス
車載システムや移動体通信システムでは、イーサネットを無線で使用することが一般的で、車両や移動体がネットワークに接続され、リアルタイムのデータが通信や情報共有が可能です。
イベントや展示会などの一時的な場所では、有線ネットワークの設置が困難な場合があります。このような場合は、イーサネットを無線LAN経由で使用することで、短期間でネットワークを構築し、参加者のインターネットへの接続が可能です。
屋外でのネットワーク接続が必要な場合、有線接続には制約がある場合が多いです。無線LANを使用することで、屋外のイーサネット接続を実現し、建物間やキャンパス内などの広範囲での通信を可能にします。
スマートフォン・タブレット・ノートパソコンなどのモバイルデバイスは、無線LAN接続が一般的で、デバイスが移動中でもインターネットに接続し、メールの受信やWebの閲覧などが可能です。
離れた場所からネットワークに接続する場合、有線接続が不可能な場合があるでしょう。このような場合は、無線LANを使用すれば、リモートアクセスを実現でき、外出先や移動中でもネットワークにアクセスが可能です。
イーサネットのまとめ
今回は、イーサネットに関して、以下のことがわかりました。
- イーサネットはコンピューターネットワーク技術の1つでありおもに局所的な範囲で使用されるもの
- OSI参照モデルにおける物理層とデータリンク層がイーサネットが活躍する領域である
- イーサネットの規格は最大通信速度と媒体(ケーブル)で分けられる
- 不正アクセスが困難であることがイーサネットのメリット
- イーサネットはケーブルの劣化や損傷する可能性がある
イーサネットは、コンピュータネットワーク技術の1つで、おもに局所的な場所で使用されるものです。
OSI参照モデルにおけるイーサネットの活躍する層は、物理層とデータリンク層です。
また、イーサネットの規格は、最大通信速度と媒体(ケーブル)で、多くの規格に分けられます。
イーサネットには多くのメリットがあり、有線接続であるために、不正アクセスが困難であることがメリットの1つです。
ただし、問題点もあり、ケーブルの劣化や損傷する可能性があることが、イーサネットの問題点の1つです。
このように、さまざまなシーンで利用できるイーサネットですが、自社でどのように活用すればよいかわからないこともあるでしょう。イーサネットに関して、わからないことや不明な点があれば、これらに多くの知見を持つ、株式会社Jiteraへご相談ください。
自社でどのようにイーサネットを活用したいかをヒアリングさせていただき、適切なアドバイスをご提案させていただきます。