リバースプロキシは、インターネット上のクライアントとサーバー間で仲介する役割を果たすネットワークデバイスまたはサービスです。
このリバースプロキシやプロキシの技術は、ネットワークを構成する上で欠かせないものです。
この記事では、リバースプロキシとプロキシの違いや、その仕組みと設置するメリット、目的などを解説しています。
この記事を読んで、自社でリバースプロキシをどのように活用するかの参考にしてください。

PHPを独学で勉強した後にWeb業界に参入。大手企業でプログラマーとして活躍後、自社サービスの立ち上げ、大手検索エンジンサービスの保守運用作業、ソーシャルゲーム開発などに携わりながら、SE・管理職の道を歩んで現在に至る。現在は、管理職に携わる傍ら、これまでの経験を活かした執筆活動を続けている。
リバースプロキシ(Reverse Proxy)とは?
リバースプロキシ(Reverse Proxy)は、インターネット上のクライアント(ユーザーのブラウザなど)と、サーバー間で仲介する役割を果たすネットワークデバイスまたはサービスです。
リバースプロキシは、外部からの要求を受け取り、それをサーバへ転送し、サーバーからの応答をクライアントに戻す役割を担います。
おもな目的は、セキュリティの強化・負荷分散・キャッシュ機能・SSL機能などを提供することです。
以下は、リバースプロキシのおもな機能です。
- セキュリティの向上
- 負荷分散
- キャッシュ機能
- SSL終端
- コンテンツの圧縮と最適化
リバースプロキシは、バックエンドのサーバーを直接外部に公開しないため、攻撃者からの直接的なアクセスを防ぐことができます。サーバーのIPアドレスやその他の詳細情報が外部に漏れることも防ぎます。
複数のサーバーがある場合、リバースプロキシは、入ってくるトラフィックをこれらのサーバーに均等に分散させることが可能です。サーバーの負荷を均等に分散できるため、システムの全体的な処理能力を向上させ、1つのサーバーに過負荷がかかることを防ぐことができます。
リバースプロキシは、頻繁にアクセスされるページやデータをキャッシュすることが可能です。キャッシュすることで、サーバーへの負担を軽減し、応答時間の短縮を実現しています。
SSL(Secure Sockets Layer)の処理をリバースプロキシが行い、暗号されたデータの処理をバックエンドのサーバーから削減が可能です。暗号化処理をリバースプロキシが行うことで、サーバーのリソースを節約し、かつ、セキュリティの向上も実現しています。
リバースプロキシは、データをクライアントに送る前に圧縮や特定の最適化が可能です。データの圧縮や最適化を行うことで、データ転送量が削減され、パフォーマンス向上が期待できます。
プロキシとは
リバースプロキシは、インターネット上のクライアントと、サーバー間を仲介する役割を果たすネットワークデバイスまたはサービスであることがわかりました。
ここで、プロキシについてもみていきましょう。
プロキシ(Proxy)は、ネットワークにおいて他のコンピューターの代理として機能するサーバーまたはプログラムのことを指します。
インターネット利用時にプロキシを使用すると、ユーザーの要求(Webサイトへのアクセスなど)が直接インターネットに送られるのではなく、まずはプロキシサーバーを経由します。
その後、プロキシサーバーがユーザーの代わりにインターネットにアクセスし、要求したデータを取得してユーザーに返すという仕組みです。
このように、プロキシには、プロキシサーバーとリバースプロキシがあります。
ここでは、それぞれについて詳細に解説します。
- プロキシサーバーとは
- リバースプロキシとは
それぞれの内容をみながら、2つのプロキシの違いを理解していきましょう。
プロキシサーバーとは
プロキシサーバーとは、クライアント(通常はWebブラウザやアプリケーション)とインターネット上の他のサーバーとの間で中契約を果たすサーバーです。
このサーバーは、クライアントのリクエストを受け取り、そのリクエストを代行して目的のサーバーに送信し、応答をクライアントに戻します。
このプロセスを通じて、さまざまな機能を提供し、ユーザーや組織にさまざまなメリットをもたらします。
以下は、プロキシサーバーのおもな機能です。
- キャッシング
- セキュリティ強化
- アクセス制御
- 地理的制約の回避
- 負荷分散
プロキシサーバーは、よくアクセスされるWebページやファイルをローカルに保存することができます。同じリクエストが再度来た場合には、インターネットからデータを取得する代わりに、キャッシュされたデータを提供することで応答時間を短縮し、帯域幅の節約が可能です。
プロキシサーバーは、ユーザーの実際のIPアドレスを隠し、外部の攻撃者からの直接的なアクセスを防ぐことができます。また、不適切なWebサイトや危険なコンテンツのフィルタリングを行うこともできます。
プロキシサーバーを使用すれば、特定のWebサイトやインターネットサービスへのアクセス制限が可能です。アクセス制限をすれば、従業員が業務時間中に不適切なサイトの閲覧を防ぐなどの管理ができるでしょう。
特定の地域からしかアクセスできないコンテンツへのアクセスを可能にするために、地理的な位置を偽装する目的でプロキシサーバーを使用することができます。
複数のプロキシサーバーを用いることで、トラフィックを複数のサーバーに分散させ、サーバーの負荷を軽減し、システムの可用性を高められます。
リバースプロキシとは
リバースプロキシは、インターネット上のクライアントと、サーバー間を仲介する役割を果たす、ネットワークデバイスまたはサービスです。
上図のとおり、クライアントからWebサーバーへの経路は以下のようになっています。
- クライアント
- インターネット
- リバースプロキシ
- Webサーバ
リバースプロキシを用いた通信を行う場合、外部のネットワークにあるクライアントが、インターネットを介して、リバースプロキシにアクセスします。
リバースプロキシは、外部からの通信を受けて、Webサーバーへアクセスしてその処理結果を受け取ります。
受け取った処理結果は、リバースプロキシを介してインターネットを通じて、外部ネットワーク上にあるクライアントへと返答されます。
このように、リバースプロキシを用いた通信は、外部のネットワークから内部のネットワークへの通信を中継する仕組みです。
リバースプロキシ(Reverse Proxy)の仕組み
出典:Winserver
プロキシには、プロキシサーバーとリバースプロキシがあることがわかりました。次に、リバースプロキシの仕組みをより詳しくみていきましょう。
ここでは、以下の項目に分けて、リバースプロキシの仕組みを詳しく解説します。
- 外部ネットワークとアクセスされるサーバーの間に設置
- 複数のサーバー間で負荷分散
- セキュリティ対策としても活用
- 実際の動き
これらの項目をみながら、リバースプロキシの仕組みをより深く理解していきましょう。
外部ネットワークとアクセスされるサーバーの間に設置
リバースプロキシの仕組みは、外部ネットワーク(クライアント)とアクセスされるサーバーの間に設置することで、その間の通信を中継する役割を果たします。
以下は、その基本的な仕組みのポイントです。
- クライアントからのリクエスト
- リバースプロキシの受信
- 目的のサーバーの選択
- サーバーへの転送
- サーバーからの応答の受信
- クライアントへの応答の受信
クライアントからのリクエストがリバースプロキシに送信され、そのリクエストには、目的のWebサイトやサービスのアドレス、要求内容が含まれています。
リバースプロキシは、外部からのリクエストを受け取って通信を行うため、クライアントは直接サーバーに接続するのではなく、リバースプロキシを通じて通信することが可能です。
さらに、リバースプロキシは、受信したリクエストを処理してその要求を適切な内部サーバーに転送します。転送先のサーバーは、負荷分散・キャッシング・または他のロジックにも基づいて決定されることが多いです。
また、クライアントから受け取ったリクエストは、決定された目的のサーバーに対してリバースプロキシがリクエストを転送します。
この際、必要に応じてリクエストを変更したり、追加の処理を行なったりすることがあります。この目的のサーバーは、リクエストを処理し、その結果として生成されたレスポンスをリバースプロキシに送信します。
リバースプロキシは、サーバーからの応答を受け取り、それを元のクライアントに送信し、この過程では、必要に応じて応答を変更することも可能です。これは、たとえば、キャッシュされたデータの返答などを指します。
複数のサーバー間で負荷分散
リバースプロキシを使用して、複数のサーバー間で負荷分散を行うことができます。これは、以下の手順で実現されるものです。
- クライアントからのリクエスト
- リバースプロキシの負荷分析
- サーバーの選択
- リクエストの転送
- サーバーからの応答の受信
- クライアントへの応答の送信
クライアントからのリクエストがリバースプロキシに送信されます。リバースプロキシは、外部のクライアントとして見え、サーバーの負荷分散を行う役割を担います。
クライアントからのリクエストがあると、リバースプロキシは、複数のバックエンドサーバーの負荷状況を監視します。監視する内容は、各サーバーの応答時間・CPU使用率・メモリ使用率などです。
リバースプロキシは、リクエストを処理するために最適なバックエンドサーバーを選択します。どのサーバーを選択するかは、負荷分散アルゴリズムに基づいて行われ、一般的なアルゴリズムには、ラウンドロビン・重み付きラウンドロビン・最少接続数・最短応答時間などがあります。
次に、選択されたバックエンドサーバーにリクエストが転送されます。リバースプロキシは、クライアントからのリクエストをそのまま選択するか、またはリクエストを変更する場合もあり、これはキャッシュされたデータを利用する場合です。
選択されたバックエンドサーバーは、リクエストを処理し、その結果として生成されたレスポンスをリバースプロキシに送信します。リバースプロキシは、サーバーからの応答を受け取り、それをもとにクライアントに送信します。
セキュリティ対策としても活用
リバースプロキシは、セキュリティ対策としても活用ができます。以下は、セキュリティ対策として活用される、おもな仕組みなどです。
- IPアドレスの隠蔽
- アクセス制御
- SSL終端
- HTTPヘッダーの検査と修正
- データの検査とフィルタリング
- DoS/DDoS攻撃の防止
リバースプロキシが外部との通信を受け持つため、バックエンドサーバーのIPアドレスの隠蔽が可能です。IPアドレスを隠蔽できるため、攻撃者が直接サーバーへアクセスすることを防げます。
リバースプロキシは、アクセス制御リストやホワイトリストなどの機能を使用して、特定のIPアドレスやユーザーエージェント、あるいはリクエストの内容に基づいたアクセス制御が可能です。アクセス制御することで、不正なトラフィックや攻撃のブロックが可能となります。
リバースプロキシが、SSL/TLS暗号化を解除してからサーバーにリクエストを転送するため、バックエンドサーバーのSSL/TLS処理は不要です。SSL/TLSの処理が不要となるため、サーバーのリソースを節約し、同時にセキュリティ強化にも繋げられます。
リバースプロキシは、受信したリクエストや応答のHTTPヘッダーを検査し、不正なヘッダーや構文エラーを修正できます。不正なヘッダーや構文エラーを修正できるため、ヘッダーインジェクション攻撃などのセキュリティリスクの軽減が可能です。
リバースプロキシは、リクエストや応答のデータを検査し、マルウェアや悪意のあるコンテンツを検出してブロックできます。悪影響を与えるものをブロックできるため、サーバーに与えるリスクの軽減が可能です。
リバースプロキシは、DoS(Denial of Service)やDDoS(Distributed Denial of Service)攻撃からサーバーを保護するためのフィルタリングや制御を実施できます。たとえば、アクセス制御やリクエストのレート制限などです。
実際の動き
ここでは、上図を見ながら実際の動きをみてきましょう。クライアントからリクエストが送信され、リバースプロキシが処理をしてレスポンスを返す流れは、以下のとおりです。
- クライアントからのアクセスや要求をリバースプロキシが受け取る
- リバースプロキシからターゲットサーバーに要求を転送
- ターゲットサーバーがリバースプロキシに返答する
- リバースプロキシがクライアントに応答する
このような流れの中で、先述した負荷分散処理やセキュリティ対策が行われます。
リバースプロキシ(Reverse Proxy)のメリット
リバースプロキシの仕組みの中には、負荷分散やセキュリティ対策なども含まれていることがわかりました。
では、このリバースプロキシを採用することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。
ここでは、以下の項目に分けて、リバースプロキシを利用するメリットを解説します。
- サーバーの負荷分散
- セキュリティレベルが上がる
- 柔軟な環境の構築
それぞれのメリットをみて、自社でどのようにリバースプロキシを活用するかの参考にしてください。
サーバーの負荷分散
リバースプロキシによるサーバーの負荷分散には、以下のようなメリットがあります。
- 高可用性と信頼性の向上
- スケーラビリティの向上
- 負荷の均等化
- 障害時の対応
- 効率的なリソース利用
リバースプロキシが複数のバックエンドサーバーにトラフィックを分散させることで、単一のサーバーがオーバーロードになるリスクが低減します。サーバーがオーバーロードするリスクが低減することで、サービスの可用性が向上し、ユーザーがサイトにアクセスできる確率が高まるでしょう。
サービスの需要が増加した場合、リバースプロキシは新しいサーバーを追加し、トラフィックを効果的に分散することができます。トラフィックを効果的に分散することで、サービスを柔軟に拡張することが可能です。
リバースプロキシは、負荷分散アルゴリズムに基づいてトラフィックを適切に分散します。トラフィックが適切に分散されることで、バックエンドサーバーの負荷が均等化され、各サーバーが効率的にリクエストを処理できます。
リバースプロキシは、バックエンドサーバーの状態を監視し、障害が発生した場合に、健全なサーバーへの自動的なトラフィックの再ルーティングが可能です。再ルーティングを行うことで、サービスの中断を最小限に抑えられるでしょう。
リバースプロキシがリクエストを適切に分散することで、バックエンドサーバーのリソースを効率的に利用できます。適切な負荷分散により、各サーバーが過剰な負荷を回避できるため、リソースの浪費を防げます。
セキュリティレベルが上がる
リバースプロキシを使用すれば、セキュリティレベルを上げることができます。以下は、そのおもなメリットです。
- IPアドレスの隠蔽
- アクセス制御
- SSL処理が不要
- HTTPヘッダーの検査と修正
- データの計算とフィルタリング
先述のように、リバースプロキシを利用することで、上記のようなメリットが得られ、セキュリティレベルが向上します。
セキュリティが向上することで、外部からの攻撃や悪意あるトラフィックから通信データを保護できます。
柔軟な環境の構築
リバースプロキシを使用することで、柔軟な環境を構築することができます。以下は、そのおもなメリットです。
- アプリケーションの隠蔽
- 異なるプロトコルの統合
- 負荷分散と高可用性
- 動的なコンテンツのキャッシュ
- セキュリティの強化
リバースプロキシを介して、外部のクライアントがアクセスするため、バックエンドのサーバーの実隠蔽を実現できます。このため、バックエンドのアプリケーション構成を変更する必要があっても、クライアント側に影響を与えずに実施できます。
リバースプロキシは、異なるプロトコル間で通信を橋渡しできます。たとえば、HTTPとHTTPSの統合や、HTTPとWebSocketの統合などが可能です。
これらの統合により、複数のプロトコルを使用するアプリケーションを柔軟に運用できます。リバースプロキシは、複数のバックエンドサーバー間で、トラフィックを分散することができます。
トラフィックを分散することで、サービスの負荷を均等に分散し、同時に障害が発生した場合にも、他のサーバーにトラフィックを切り替えることで高可用性の実現が可能です。リバースプロキシは、動的なコンテンツのキャッシュを管理することができます。
キャッシュを管理することで、同じリクエストに対してバックエンドサーバーへのアクセスを削減し、応答時間を短縮することができます。リバースプロキシのセキュリティ機能を利用すれば、外部からの攻撃や悪意あるトラフィックからのサーバーの保護が可能です。
アクセス制御・SSL終端・HTTPヘッダーの検査などの機能を利用して、セキュリティレベルの向上が図れます。
リバースプロキシ(Reverse Proxy)のデメリット・対策
リバースプロキシを利用することで、さまざまなメリットが得られることがわかりました。しかしながら、デメリットも多くあります。
ここでは、以下の項目に分けて、リバースプロキシを利用した際のデメリットを解説します。
- リバースプロキシ自体がダウンすると、全体のサービスが停止
- 設定が不適切、リソース不足の場合はパフォーマンスが低下
- SSL/TLSの設定が複雑になる
- 中間者攻撃(Man-in-the-Middle攻撃)のリスクが高まる
- 設定やメンテナンスが複雑
- クライアントとサーバーのプライバシーに影響
これらのデメリットも理解した上で、リバースプロキシを利用するようにしてください。
また、以下の記事でリバースプロキシとフォワードプロキシに関して詳しく解説しているため、参考にしてください。
リバースプロキシ自体がダウンすると、全体のサービスが停止
リバースプロキシのデメリットの1つは、リバースプロキシ自体がダウンした場合に、全体のサービスが停止する可能性があることです。以下は、その要因となるものです。
- シングルポイント・オブ・フェイルヤー
- 負荷分散の障害
- フェイルオーバーの管理
- スケーラビリティの限界
リバースプロキシが、単一のポイントで外部からのトラフィックを受け取ってバックエンドのサーバーに転送するため、リバースプロキシ自体がダウンした場合に、トラフィックがサービスに到達しなくなってしまいます。
リバースプロキシが、複数のバックエンドサーバーにトラフィックを分散している場合、リバースプロキシ自体の負荷が高まるとリクエストの転送が遅延し、サービスのパフォーマンスに影響を与える可能性があります。
ほかにも、リバースプロキシにて障害が発生した場合、ほかのサーバーにトラフィックを転送する能力を持っている場合でも、フェイルオーバーの管理には注意が必要です。
正しく構成されていない場合や、監視や自動復旧機能が欠如している場合には、ダウンタイムが発生する可能性があります。
リバースプロキシが、トラフィックを処理する能力には限界があります。特に、急激なトラフィックの増加や、複雑なセキュリティ機能の適用により、リバースプロキシがパフォーマンスのボトネックとなる可能性があるでしょう。
設定が不適切、リソース不足の場合はパフォーマンスが低下
リバースプロキシを利用すると、設定が不適切であったり、リソースが不足している場合に、パフォーマンスが低下する場合があります。
以下は、その具体的な理由です。
- 不適切な設定
- リソース不足
- ボトルネックの発生
- 適度なセキュリティ機能の適用
リバースプロキシの構成が適切でない場合、トラフィックの適切な分散が行われず、バックエンドサーバーへの負荷が不均衡になる可能性があります。また、セキュリティ設定やキャッシュの管理などが不適切であると、悪意のある攻撃や不正なアクセスを受けやすくなるでしょう。
リバースプロキシが処理するトラフィックが増加した場合、リソースが不足してしまうとパフォーマンスが低下します。特に、CPUやメモリの不足は、トラフィックの処理速度やレスポンス時間に直接栄養を与える可能性が高いです。
リバースプロキシがトラフィックを処理する際に、ネットワーク帯域幅やディスクアクセスなどのボトルネックが発生する場合があります。特に、大規模なアクセスや大容量のデータ転送を処理する場合には、これらのボトルネックが問題となるでしょう。
リバースプロキシが過度なセキュリティ機能を適用している場合、その処理によってパフォーマンスが低下する可能性があります。特に、SSL終端やHTTPヘッダーの検査などは、処理に多くのリソースを必要とするため、適度な設定が重要です。
SSL/TLSの設定が複雑になる
SSL/TLSの設定が複雑になってしまうのは、リバースプロキシのデメリットの1つです。以下は、そのおもな理由です。
- SSL/TLS終端の管理
- 証明書の管理
- パフォーマンスへの影響
- セキュリティの脆弱性
リバースプロキシがSSL/TLSの終端を行う場合、クライアントとの間で暗号化された通信を受け取り、複合してからバックエンドのサーバーに転送する必要があります。このため、SSL/TLSの証明書や暗号スイート、セキュリティポリシーなどの設定が複雑になります。
リバースプロキシが、複数のドメインやサブドメインに対してSSL/TLS終端を行う場合、複数の証明書の管理が必要です。証明書の有効期限の管理や更新、さまざまなドメインの証明書の適切な選択など、複雑な管理が必要となるでしょう。
SSL/TLSの終端や暗号化は、リバースプロキシの処理に追加の負荷をかける場合があります。たとえば、弱い暗号スイートやセキュリティポリシー、証明書の構成ミスなどが、セキュリティリスクとなる可能性があるでしょう。
中間者攻撃(Man-in-the-Middle攻撃)のリスクが高まる
中間車攻撃のリスクが高まることは、リバースプロキシを利用することでのデメリットの1つです。以下は、そのおもなポイントです。
- SSL/TLSの終端
- 証明書の信頼性
- クライアントとの信頼関係
- セキュリティの悪化
リバースプロキシがSSL/TLSの終端を行う場合、クライアントとの間で暗号化された通信を解読し、サーバーとの通信を行います。このため、リバースプロキシが攻撃者によって制御されてしまうと、通信の内容を閲覧・改ざん、または盗聴されてしまう可能性が高まります。
SSL/TLSの終端を行う際、リバースプロキシは、クライアントに対して自己署名証明書を提示が必要な場合が多いです。これは、クライアントにとって信頼できない証明書である可能性があり、つまりは、クライアントが攻撃者によって偽装された証明書を受け入れる可能性があります。
リバースプロキシが、中間者攻撃によってクライアントの通信を盗聴したり改ざんしたりする場合、クライアントとの信頼関係が損なわれる可能性があります。特にセンシティブな情報を取り扱う場合、これは大きな問題となるでしょう。
中間者攻撃が成功すると、通信の機密性や整合性が損なわれ、セキュリティの悪化につながります。これは特に、金融機関や個人情報を扱うサイトなど、セキュリティ要件が厳しい環境では重大な問題です。
設定やメンテナンスが複雑
リバースプロキシのデメリットとして、設定やメンテナンスが複雑である点が挙げられます。以下はそのおもな理由です。
- 複数の構成オプション
- SSL/TLSの設定
- 監視とトラブルシューティング
- 定期的なアップデートとバッチ適用
- スケーラビリティと高可用性の確保
リバースプロキシの設定は、さまざまなオプションや機能を持っています。ロードバランシング・キャッシュ設定・セキュリティポリシー・アクセス制御など、これらの機能の適切な設定が必要です。
SSL/TLSの設定は特に複雑であり、適切な暗号スイートの選択・証明書の管理・SSL終端の設定などが必要となります。設定が不適切である場合、セキュリティの脆弱性やパフォーマンスの低下などの問題が発生する可能性があるでしょう。
リバースプロキシの動作を監視して問題を解決するためには、適切な監視ツールやログの分析が必要です。トラフィックのモニタリング・負荷の分析・エラーログの確認など、リバースプロキシの適切な運用管理が求められます。
リバースプロキシのソフトウェアや関連するライブラリは定期的にアップデートされ、セキュリティの改善やバグ修正が行われます。これらのアップデートとバッチ適用を定期的に行うことが重要ですが、複雑な環境であるため、アップデート作業が容易ではありません。
大規模なシステムやトラフィックの増加に対応するために、リバースプロキシのスケーラビリティと高可用性を確保する必要があります。クラスタリング・フェイルオーバー・負荷分散など、複雑な構成が必要となるでしょう。
クライアントとサーバーのプライバシーに影響
リバースプロキシのデメリットの1つとして、クライアントとのサーバーのプライバシーに影響を及ぼす可能性があります。以下はそのおもな理由です。
- 中間攻撃者のリスク
- SSL/TLS終端の影響
- プライバシーの侵害
- ログの取得と管理
リバースプロキシが、クライアントとサーバーの間に介在する役割を果たすため、攻撃者がリバースプロキシに侵入して中間者攻撃を行う可能性があります。このような攻撃を受けると、通信内容が盗聴・改ざん、または享受されるリスクが生じるでしょう。
リバースプロキシがSSL/TLSの終端を行う場合、クライアントサーバー間の暗号化された通信を解読し、再度暗号化してバックエンドのサーバーに転送します。このため、リバースプロキシが攻撃者によって制御されている場合、通信内容を閲覧・改ざん、または盗聴される可能性があるでしょう。
リバースプロキシがクライアントとサーバーの間で通信を中継することで、通信内容やクライアントの個人情報がリバースプロキシを介して処理される可能性があります。適切なセキュリティ対策が行われていない場合、これらの情報が漏洩するリスクがあるでしょう。
リバースプロキシは通常、通信内容やリクエストヘッダーなどのログを取得し、これらの情報を管理します。適切なプライバシー保護措置が講じられていない場合、これらのログ情報が機密情報や個人情報を含んでしまう可能性があります。
おすすめのリバースプロキシ(Reverse Proxy)
ここからは、おすすめなリバースプロキシを紹介します。
以下は、それぞれのリバースプロキシを比較した、一覧表です。
リバースプロキシソフトウェア | 特徴 | メリット | デメリット |
Nginx | 軽量で高性能、柔軟性があり、リバースプロキシ、負荷分散、キャッシング、SSL/TLSサポートなどの機能を提供 | 高速で効率的なリバースプロキシ、堅牢なセキュリティ、豊富な機能、拡張性 | 設定が複雑な場合があり、柔軟性が高すぎて設定が困難な場合がある |
Varnish | 高性能なリバースプロキシとキャッシュサーバーで、HTTPレスポンスのキャッシュを効率的に処理し、負荷を軽減する | 高いパフォーマンス、HTTPレスポンスのキャッシュ機能による高速化、柔軟な構成 | キャッシュの設定が複雑であり、適切な設定が必要 |
Apache Traffic Server | 高性能なリバースプロキシとキャッシュサーバーで、Apacheソフトウェア財団によって開発されたオープンソースソフトウェア | 高性能、HTTP/2サポート、キャッシュ機能、アクセス制御 | 設定が複雑であり、柔軟性が低い場合がある |
HAProxy | 高性能なリバースプロキシとロードバランサーで、SSL/TLS終端、HTTP/2サポート、ACL、リクエストルーティングなどの機能を提供 | 高いパフォーマンス、柔軟性、高度なロードバランシング機能 | 設定が複雑であり、初心者には学習曲線が急である |
Microsoft IIS | Windows環境で使用されるWebサーバーソフトウェアで、リバースプロキシ機能を提供し、Windows Serverに組み込まれている | Windows環境でのシームレスな統合、ユーザーフレンドリーな管理ツール | オープンソースでないため、柔軟性が制限される場合がある、Linux環境では使用できない |
それぞれのリバースプロキシを比較しながら、自社にあったものを選ぶ参考にしてください。
Nginx
出典:https://www.nginx.co.jp/
NGINX(エンジンエックス)は、オープンソースのWebサーバーソフトウェアで、Webサーバーとしての利用のほか、リバースプロキシ、HTTPキャッシュ、ロードバランサとしても活用されています。
NGINXは、2004年にIgor Sysoevによって公開され、開発当初は最高のパフォーマンスと安定性を目指して設計されました。
並列処理に優れており、サイトへのアクセスが集中した場合でも高速に処理できるため、サイトの安定稼働に役立ちます。また、静的コンテンツの配信を並列化しているため、大量の画像や動画コンテンツがあってもユーザーに速く配信することが可能です。
一方、NGINXは特化型のWebサーバーであるため、汎用型のApacheと比較して苦手な点もあります。動画を多く扱うコンテンツの処理に不向き、初心者向けの設定情報が少ないといった点です。
Varnish
出典:https://varnish-cache.org/
Varnishは、Webアクセラレーターとして機能するHTTPリバースプロキシサーバです。WebブラウザとWebサーバの間に立って要求を代理で処理(応答)する役目を担います。
2005年に作成されたOSSのHTTPアクセラレータの一つで、キャッシュ機能を持つリバースプロキシとして知られています。
パフォーマンスに優れ、apacheの10数倍とも言われています。コンテンツが多い動的Webサイト用のリバースプロキシです。
Apache Traffic Server
出典:https://trafficserver.apache.org/
Apache Traffic Server(ATS)は、Apache Software Foundation(ASF)傘下で開発されているオープンソースの高性能HTTPキャッシュプロキシサーバーです。
静的Webコンテンツをキャッシュすることで、ネットワーク効率化とパフォーマンス改善を行います。
ATSは、元々は米Yahooが独自に開発していたもので、2009年にオープンソース化されてApacheプロジェクト傘下となりました。現在は世界各国の多くの企業で利用されており、いくつかの主要なCDNsやコンテンツオーナーも使用しています。
ATSでは、「新鮮さ」というパラメータを用いてキャッシュを管理しています。
サイトによってはキャッシュされると問題が発生するページなども存在するため、静的なページはなるべく長時間キャッシュを保持してもらい、動的に生成されるページはキャッシュの保持時間を短くしたい、といった要求もあります。
HAProxy
出典:https://www.haproxy.org/
HAProxy(High Availability Proxy)は、高性能なオープンソースのロードバランサーおよびリバースプロキシソフトウェアです。
HTTP・HTTPS・TCP・SSL/TLSなどのプロトコルをサポートし、複数のサーバー間で負荷を分散する機能を提供します。
HAProxyは、高いパフォーマンスを提供し、数百万の同時接続や数十Gbpsの帯域幅を処理することができます。また、SSL/TLS終端をサポートし、クライアントとの間で暗号化された通信を受け取り、復号してバックエンドのサーバーに転送することができます。
HAProxyは、オープンソースのコミュニティによって開発・メンテナンスされており、多くのWebサイトやアプリケーションで幅広く利用されています。
Microsoft IIS
出典:https://learn.microsoft.com/ja-jp/iis/get-started/introduction-to-iis/iis-web-server-overview
Microsoft IIS(Internet Information Services)は、Microsoftが提供するWindows用のWebサーバーソフトウェアです。
Webサイトやウェブアプリケーションを公開するために使用され、無料かつ使いやすいのが特徴です。
IISはWindows NT 3.51から組み込みが始まり、Microsoft製品との親和性が高いのが特徴です。
高性能で安定して動作し、セキュリティ機能も備えているため、多くの企業やウェブ開発者によって利用されています。
リバースプロキシ(Reverse Proxy)設定方法
ここまで、おすすめなリバースプロキシツールをみてきました。次に、リバースプロキシの設定方法をみていきましょう。
ここでは、以下の項目に分けて、リバースプロキシの設定方法を解説します。
- リバースプロキシソフトウェアをインストール
- リバースプロキシの設定ファイルを編集
- リバースプロキシを起動
- パフォーマンスチューニングやセキュリティ対策
リバースプロキシの設定には、十分な理解と慎重さが必要です。それぞれの手順を理解して、正しくリバースプロキシを利用しましょう。
リバースプロキシソフトウェアをインストール
リバースプロキシを使用する場合、まずは、リバースプロキシをインストールするところからはじめましょう。インストール方法は、リバースプロキシソフトウェアによって異なりますが、一般的には、公式サイトなどからダウンロードしてインストールする場合が多いです。
リバースプロキシソフトウェアは、それぞれ異なった特徴を持っているため、パフォーマンス・機能・セキュリティ・サポートなどの要素を考慮し、自社に最適なソフトウェアを選ぶようにしましょう。
リバースプロキシの設定ファイルを編集
リバースプロキシを利用するためには、設定ファイルの編集が必要となります。以下は、その編集をする際のおもなポイントです。
- 設定ファイルの場所の特定
- 設定ファイルのバックアップ
- バックエンドサーバーの指定
- ヘッダーの指定
- SSL/TLSの設定
- アクセス制御
- 設定の検証
まず、使用するリバースプロキシソフトウェアの設定ファイルの場所を知る必要があります。また、設定ファイルを編集する前に、バックアップを取るのを忘れないようにしましょう。
バックアップがあれば、設定を誤って変更してしまった場合でも、容易に元に戻せます。リバースプロキシが転送するリクエストを受け取る、バックエンドサーバーのアドレスやポートを設定します。
さらに、必要に応じて、リバースプロキシが送信するリクエストヘッダーやレスポンスヘッダーをカスタマイズしましょう。ほかにも、SSL/TLSを使用する場合は、リバースプロキシがSSL/TLS接続を受け入れるための設定が必要です。
リバースプロキシが転送するリクエストを制御するためのACL(アクセス制御リスト)や認証の設定を行います。一通り設定が終わった後は、設定の検証を行うことが重要です。
多くのリバースプロキシソフトウェアは、設定ファイルの検証ツールを提供しているため、利用すると良いでしょう。
リバースプロキシを起動
リバースプロキシを起動する際には、以下のようなポイントに気をつけるとよいでしょう。
- 設定ファイルの確認
- 設定の検証
- サービスの起動
- ログの確認
- 動作確認
リバースプロキシを起動する前に、設定ファイルに必要な設定を行ったかどうか、設定ファイルにエラーや不整合がないかなどを確認します。
その設定ファイルの構文が正しいかどうかを確認するために、リバースプロキシソフトウェアの提供する検証ツールを使用して、構文エラーや設定の不具合を修正します。
設定ファイルに問題がなければ、サービスの起動を行います。リバースプロキシを起動したら、ログの確認を行いましょう。
ログファイルを確認し、起動時のエラーなどがあるかどうかをチェックします。
なお、ログファイルの場所や設定については、通常、設定ファイル内で指定されているものが多いです。リバースプロキシが正しく起動したら、リバースプロキシが設定されているように動作していることを確認しましょう。
特定のソフトウェアや環境によって手順が異なる場合があるため、そのソフトウェアの公式ドキュメントやユーザーガイドを参照することも重要です。
パフォーマンスチューニングやセキュリティ対策
リバースプロキシが起動した後、パフォーマンスチューニングやセキュリティ対策を行います。
以下は、そのおもなポイントです。
- バックエンドサーバーの負荷分散
- キャッシュの使用
- ログの最適化
- リクエストフィルタリング
- アクセス制御
- SSL/TLSの設定
複数のバックエンドサーバーへのリクエストを均等に分散し、負荷を分散することを検討します。適切な負荷分散アルゴリズムを選択し、サーバーの負荷を効果的に管理しましょう。
静的なコンテンツやリクエストの結果をキャッシュすることで、バックエンドサーバーへの負荷を軽減します。適切なキャッシュポリシーやキャッシュの有効期限を設定すれば、パフォーマンスの向上が期待できます。
ログの適切なフォーマットやレベルを選択し、必要な情報を収集しましょう。不要なログの記録を最小限に抑え、システムのパフォーマンスを維持することが重要です。
不正なリクエストや攻撃性の高いリクエストをフィルタリングし、セキュリティを強化します。不正なアクセスや脆弱性への対策を行うために、ホワイトリストやブラックリストを活用するとよいでしょう。
ALC(アクセス制御リスト)や認証などの仕組みを使用して、リバースプロキシへのアクセスを制限することがポイントです。許可されたユーザーだけがアクセスできるようにすることで、セキュリティの向上が期待できます。
適切なSSL/TLSの設定を行い、暗号化通信のセキュリティを確保しましょう。セキュアなプロトコルや暗号スイートを選択し、セキュリティの脅威に対する防御を強化します。
リバースプロキシのまとめ
今回、リバースプロキシに関して、以下のことがわかりました。
- リバースプロキシはクライアントとサーバー間の仲介する役割を果たすネットワークデバイスまたはサービス
- セキュリティの強化・負荷分散・キャッシュ機能・SSL機能の活用などがリバースプロキシを利用するおもな目的
- リバースプロキシは外部のネットワークから内部のネットワークへの通信を中継する仕組み
- リバースプロキシ自体がダウンすると全体のサービスが停止してしまうため注意が必要
リバースプロキシは、クライアントとサーバー間の仲介する役割を果たす、ネットワークデバイスまたはサービスのことをさします。
セキュリティの強化・負荷分散・キャッシュ機能・SSL機能の活用などが、リバースプロキシを利用するおもな目的となります。
リバースプロキシは、外部のネットワークから内部のネットワークへの通信を中継する仕組みです。
多くのメリットを持つリバースプロキシですが、デメリットもいくつかあります。たとえば、リバースプロキシ自体がダウンすると、全体のサービスが停止してしまうため、注意が必要です。
リバースプロキシを活用したいと思った際に、どのように活用していけばよいかわからないこともあるでしょう。
このように、リバースプロキシに関して不明点やわからないことがあれば、多くの知見を持つ、株式会社Jiteraへご相談ください。
自社でどのようにリバースプロキシを活用したいかをヒアリングさせていただき、最適なご提案をさせていただきます。