固定資産管理とは企業が持つ固定資産を正確に把握することを指します。実際に固定資産管理にはどのようなメリットがあるのか、おすすめの固定資産管理システムはあるのかについてご説明いたします。
固定資産管理とは?
「固定資産管理」という言葉は業務の中で日々耳にしているかもしれませんが、具体的にどのような意味があるかを理解している方は多くありません。
固定資産管理の定義とは、「企業が所有する固定資産を正しく把握すること」です。
企業が保有する資産には形のない「無形固定資産」から、一般的に多くの方に認知されている土地・建物などの「有形固定資産」、関連する企業への投資などの「投資その他の資産」など多岐に渡ります。
目に見える「土地」「建物」でも企業規模に比例して固定資産も増えていくため全てを把握するのは難しくなり、特に「ソフトウェア」「長期貸付金」などの視覚で認識しづらい資産も含めると見落としてしまうケースも珍しくありません。
この問題を解決する上で、「固定資産管理システム」が活用されています。
さらに、企業がIT資産を包括的に管理するための基準も重要です。IT資産管理は、固定資産管理の一環として機能することがあり、ハードウェアやソフトウェア、デジタル資産などが含まれます。
これらのIT資産に対する管理基準は、主に4つに分類されます。資産の分類と登録による各資産の現状、所在、利用状況の把握、セキュリティ管理、定期的な保守と更新、コスト管理とROI(資産のコスト効率と投資収益率)の評価に不必要な投資を避けることです。
IT資産を最適に活用し、全体のビジネス運営の効率とセキュリティを高めることが重要になります。
固定資産管理の目的・必要性
固定資産管理は「節税対策」にも繋がり、正当な会計処理を行っている証拠になるものです。より具体的に、固定資産管理の必要性を解説します。
固定資産の保全
固定資産が増えることで管理が難しくなることを前述しましたが、具体的な事例として「ある固定資産が無くなったと勘違いして、新規で資産を購入した」「耐用年数を管理できでおらず、利用者の人的被害に繋がる」などの問題が発生します。
上記のリスクを防ぐ上で、「固定資産管理」が必要です。
減価償却の計算
「固定資産」の管理とは、単に「そのものがあるか」だけをチェックする訳ではありません。
「資産の状態」から「利用できる期間」など細かな情報を紐づけることで、「その資産がどのような状態であるか」を管理できます。
多様な情報を結び付けることで減価償却計算の正確性を高める上で、「固定資産管理」が必要です。
固定資産税の算出
「資産だからとにかく多く保有した方が良いのでは?」と考える方もいますが、実際にはそうではありません。
企業が抱える固定資産が多くなるほど、「固定資産税」が重くのしかかります。
保有する資産と支払う税金のバランスを見ながら、固定資産の整理も必要です。
固定資産管理と運用業務の内容
企業ではどのような手順を経て「固定資産管理」を行っているのでしょうか?具体的な固定資産管理フローを解説します。
管理台帳の設定と管理
各固定資産の情報を台帳へ登録して、一元管理を徹底します。
「固定資産管理システムを用いて登録する」以外にも、エクセルなどを活用して管理している企業も多いです。
ラベリングと資産識別
台帳を一眼で見て、固定資産を特定できるように、固定資産と台帳を紐づける必要があります。そのための手段として、固定資産に管理ラベルを貼付する方法が一般的です。
時代の変遷とともに、直近ではQRコード・バーコードを読み取って資産を特定する方法も浸透しています。
資産の在庫点検(棚卸)
厳密にルールを策定して一定期間運用を行っていたとしても、「正しく情報の紐付けが行えているか」「適切に固定資産が管理されているか」などを年1〜2回のペースで確認します。
このような作業を定期的に行いながら、台帳と資産の紐付けのずれを改善することが必要です。
固定資産管理の具体的な方法
固定資産管理は、企業の資産効率を最大化し、財務報告の正確性を保つために不可欠です。このプロセスは、固定資産の登録から減価償却、最終的な売却や廃棄に至るまで、一連の明確なステップを含みます。効果的な固定資産管理方法を理解し、適切に実行することで、企業は財務健全性を維持し、不正や損失のリスクを減少させることができます。
台帳管理
固定資産の台帳管理は、資産の詳細な記録を保持し、資産の価値や状態を追跡する基本的なステップです。各資産には固有の識別コードが割り当てられ、購入日、初期コスト、所在地、使用状況などの詳細が記載されます。台帳はデジタル形式で管理されることが多く、リアルタイムでの更新が可能です。これにより、監査や資産評価の際に正確な情報が提供され、適切な管理を行えます。
実査
実査、または物理的検査は、記録されている資産が実際に存在し、報告された状態にあるかを確認するプロセスです。この検査は通常、年に一度実施され、資産管理者が直接各資産の位置を訪れ、その状態と数量を検証します。実査を通じて、盗難や紛失、誤記録が発見されることがあり、資産管理の正確性が保証されます。
減価償却
減価償却とは、固定資産の価値が経時的に低下することを会計上で認識するプロセスです。減価償却の計算方法には直線法や定率法など複数の方法があり、資産の種類や企業の方針に応じて選ばれます。このプロセスにより、固定資産の現在価値が定期的に更新され、税務上の利益と財務報告の精度が向上するのです。
売却・廃棄
固定資産のライフサイクルの最終段階は、売却または廃棄です。資産がもはや使用されないか、経済的価値がなくなった場合、適切な方法で処分されます。売却に際しては市場価値を評価し、最適な価格での売却を試みます。廃棄される資産は、環境規制に従い安全に処理される必要があります。この段階で正確な文書処理が行われ、財務記録が更新されます。
このような適切な固定資産管理を行うことで、企業は資産の全体的な価値を保護し、戦略的な意思決定をサポートする重要な情報を確保することができます。
固定資産を管理できるツール
固定資産の管理は、企業の財務健全性と運営効率の向上に直接的な影響を及ぼします。正確な固定資産管理を実現するためには、効果的なツールの選定が必要です。ここでは、手動管理から最新のクラウドサービスまで、さまざまな固定資産管理ツールについて紹介します。
手動管理
手動管理は、主に小規模な企業や始めたばかりのビジネスで見られる方法です。この方法では、紙の帳簿や単純なファイリングシステムを使用して資産を記録します。手動管理の利点は初期コストがほとんどかからないことですが、エラーが発生しやすく、時間がかかるため、資産が増えるにつれて非効率になる可能性があります。
表計算ソフト
表計算ソフトウェア、例えばMicrosoft ExcelやGoogle Sheetsは、中規模企業において人気のある固定資産管理ツールです。これらのプログラムを使用して、資産の購入価格、配置場所、減価償却スケジュールなどの情報を管理できます。表計算ソフトを用いることで、データの視覚化や小規模なレポート作成が容易になりますが、データ量が増加すると管理が難しくなることがある点には注意が必要です。
固定資産管理専用ソフト
固定資産管理専用ソフトウェアは、資産管理のニーズを専門的に扱うために設計されています。これらのソフトウェアは、資産登録、減価償却計算、保守スケジュールの管理、税務報告の自動化など、複雑なタスクを効率的に処理できます。例えば、SAPERPやOracle Assetsなどがあり、これらは大規模な企業での使用に特に適しています。
クラウドサービス
最新のクラウドベースの固定資産管理ツールは、アクセスの容易さとスケーラビリティを提供します。これらのサービスは、インターネットを通じてどこからでも資産データにアクセス可能で、リアルタイムでの更新と共有が行えます。クラウドサービスは、セキュリティが強化されており、定期的なバックアップと災害復旧機能が組み込まれています。例としては、Asset PandaやSage Intacctなどが挙げられます。
これらのツールを選択する際は、企業の規模、資産の種類、予算などの要素を考慮に入れ、最も適した方法を選ぶことが重要です。効果的な固定資産管理ツールを使用することで、企業は資産の正確な追跡と効率的な管理を実現できます。
固定資産管理システムとは?
元々はエクセルを利用した資産管理が一般的でしたが、「固定管理システム」を導入する上で得られるメリットを考慮して、多くの企業が取り入れるようになりました。
以下の項目で概要と重要性、仕組みと具体的な機能を解説します。
固定資産管理システムの概要と重要性
会社を運営していく上で、切っても切り離せないものが「土地」「建物」などの固定資産です。
Excelなどを用いて管理することも可能ですが、企業規模が大きくなるにつれて管理する資産が増えると同時に、固定資産税の申請などの作業量も比例して増加することから大きな負担に繋がってしまいます。
このような問題を解決するために、単に資産管理するだけでなく「会計の書類作成時に自動で仕訳を振り分けてくれる」「税金に関わる資料をワンタッチで作成できる」など他のシステムと連携する部分も重要です。
固定資産管理システムの仕組みと主な機能
固定資産管理システムは以下6つの機能によって管理を効率化します。
- 固定資産台帳の作成・管理
- 減価償却の処理
- 減損会計の処理
- 建設仮勘定
- 申告書の作成
- 会計ソフトとの連携
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固定資産管理システムを導入するメリット
従来のエクセルを利用する方法と比較して、「固定資産管理システム」を導入して得られるメリットを以下で紹介します。
精緻な管理の実現
固定資産数が爆発的に増えてしまい、「資産種類」「リース形式」「耐用年数」など固定資産に紐づける情報が多くなってしまうと、Excelでの管理が追いつかなくなり、内容の不一致などが発生してしまいます。
その他、減価償却費の計算なども時間を掛けず正確に算出可能です。
申告業務のスムーズな実施
Excelを用いた資産管理では、管理情報を人為的に更新しながらも、税務申告書類も一から準備する必要があります。
システムを利用すると、「資産管理」と「税務申告書類作成」が連携することで最小限のアクションで「税務申告書類」の雛形を自動で作成可能です。
資産情報の効率的な管理
Excelを用いた管理では、文字ベースの情報だけしか紐づけることができません。
固定資産システムを用いると写真など視覚的に判別できるデータも関連付け可能であるため、固定資産を特定するスピードが高まります。
仕分作業の効率化
税金の申請を行う際に作成が求められる「貸借対照表」「損益計算書」では、会社で発生した取引を帳簿に記載する必要があります。
近年は会計ソフトなどを用いて、自動で仕訳を行ってくれる機能を用いるのがスタンダードですが、固定資産管理と会計ソフトを連携することで科目の「自動振り分け」が可能です。
チームメンバーとの共同作業
Excel管理では、「税務」「総務」「情報システム」の各担当者が個別に情報を変更したりすることで業務に支障が出ることがありました。
固定資産管理システムでは、チャット形式で会話を行ったり、変更の承認などを全体共有したり、リマインド機能などで作業漏れを全体周知することも可能です。
リース資産の管理の効率向上が可能
リースとは「借りたいと思ったものを長期の契約で借りること」です。
例えば車を例に挙げると、購入する場合にはまとまったお金を事前に用意する必要があります。
その反面「リース」では、毎月のリース費用を支払うだけで利用可能です。
ただ、「リース契約が自動的に更新されてしまった」「破損などのトラブルが把握できない」などの問題が発生するため、システムを利用して効率化が実現できます。
まとめ
今回の記事では、「固定資産管理」の概要からシステムを導入することで起きるメリット、おすすめの固定資産管理システムの紹介などを総合的に行なってきました。
以下、記事のまとめです。
- 「固定資産管理」とは、「企業が管理する資産を正しく管理すること」です。
- 「固定資産管理」を行わないと、「資産を有効に使えない」「固定資産税が余計にかかる」などデメリットがあります。
- 「固定資産管理システム」によって、「自動仕訳」「チームメンバーとの共有が容易になる」など業務効率化にメリットが大きいです。
- 「固定資産管理システム」を選ぶ上で、「現状の仕組みから移行が容易か」「世界的な会計制度にも対応可能か」などを考慮する必要があります。
まとめ:固定資産管理は企業活動において重要な業務のひとつ
固定資産管理は、企業活動において極めて重要な業務のひとつです。企業が持続的に成長し、財務の透明性を保ちながら効率良く運営を行うためには、固定資産の正確な把握と適切な管理が不可欠になります。また、資産の評価、保守、更新を適時に行うことで、企業の財務健全性が保たれ、経営の安定に直結するのです。
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