リモートワーク化が進むビジネスシーンにおいてファイル転送は欠かせない重要な要素です。ウェブサイト運営やシステム開発、資料共有など、様々な場面でその必要性が高まっています。ファイルを安全かつ効率的に送受信するためにも、最適な方法を選択する必要があるでしょう。
本記事では、ビジネスから個人的な活動まで幅広く役立つファイル転送プロトコル「FTP」について詳しく解説します。FTPの基本的な仕組みから、利用のメリット、さらには初心者でも簡単に使えるFTPソフトまでご紹介していきます。
FTPについて聞いたことはあるけれど、具体的な使い方がわからないという方も、ぜひこちらの記事で理解を深めてみてください。

システムエンジニア(SE)、プログラマー、ウェブサイト作成業務、ネットワークエンジニアなどを経験。 現在、フリーマルチライターとして活動中。最近はAI活用方面に没頭中。
FTPの基礎知識
FTP(File Transfer Protocol)は、コンピューター間でファイルを転送するための標準的なネットワークプロトコルです。
この技術は、大容量ファイルの転送や複数のファイルを一括で扱う際に威力を発揮します。ウェブサイトのコンテンツ、バックアップデータ、ソフトウェアアップデートなど、様々な用途で利用されています。
FTPとは
FTPの技術は1971年にMITのAbhay Bhushan氏によって開発され、インターネットの基本的なプロトコルの一つとして長年使用されてきました。
FTPの主な特徴は以下の通りです。
- クライアント・サーバーモデル:FTPクライアントがFTPサーバーに接続してファイルを転送
- 2つの接続:制御接続(コマンドの送受信)とデータ接続(実際のファイル転送)を使用
- 認証機能:ユーザー名とパスワードによる認証
- アクティブモードとパッシブモード:ファイアウォールの設定に応じて選択可能
- ASCII転送モードとバイナリ転送モード:テキストファイルと非テキストファイルの転送
FTPは、大容量ファイルの転送、複数ファイルの一括転送、定期的な自動転送など、様々なシーンで活用されています。特に、ウェブサイトの管理、ソフトウェア開発、データバックアップなど、ビジネスシーンやリモートワークにおいて重要な役割を果たしています。
ただし、基本的なFTPは暗号化されていないため、セキュリティ面での懸念があります。そのため、近年ではFTPS(FTP over SSL/TLS)やSFTP(SSH File Transfer Protocol)など、暗号化された安全なプロトコルの使用が推奨されています。
FTPサーバーとは
FTPサーバーは、FTPプロトコルを使用してファイルの送受信を行うためのソフトウェアまたはハードウェアです。主に以下の機能が備わっています。
- ファイルストレージ:アップロードされたファイルを保存し、管理します。
- アクセス制御:ユーザー認証を行い、適切なアクセス権限を管理します。
- ファイル転送:クライアントからのリクエストに応じて、ファイルのアップロードやダウンロードを処理します。
- ディレクトリ管理:フォルダ構造の作成、変更、削除などを可能にします。
- ログ記録:アクセスやファイル転送の履歴を記録し、セキュリティ管理に活用します。
FTPサーバーは、企業内のファイル共有、ウェブホスティング、ソフトウェア配布など様々な用途で利用されています。例えば、大規模なECサイトでは商品画像や説明文のアップロードにFTPサーバーを使用することがあります。
多くの場合、WindowsサーバーやLinuxサーバー上にFTPサーバーソフトウェアをインストールして運用しますがクラウドサービスとしてFTPサーバー機能を利用するケースも増えています。
HTTPとの違い
FTPとHTTPは両方ともファイル転送に使用されるプロトコルですが、その目的と機能には重要な違いがあります。
HTTPは主にウェブブラウザとウェブサーバー間の通信に使用され、ウェブページの表示や小規模なファイルのダウンロードに適しています。一方、FTPは大容量ファイルの転送や複数ファイルの一括転送に特化しています。
HTTPは通常、クライアントからサーバーに向かって単一の接続を使用しますが、FTPは制御接続とデータ接続の2つの接続を使用します。FTPはファイルの双方向転送(アップロードとダウンロード)をサポートしていますが、HTTPは主にダウンロード向けの通信規格となっている点が特徴といえるでしょう。
FTPでできること
FTPは多様な機能を持ち、ビジネスシーンにおいて幅広く活用されています。以下に、FTPで実現できる主な機能と具体的な使用例を紹介します。
ファイルのアップロード・ダウンロード
- ウェブサイトのコンテンツ更新:HTMLファイル、画像、動画などをサーバーにアップロード
- ソフトウェア配布:アプリケーションやアップデートファイルを提供
- データバックアップ:重要なビジネスデータを定期的にバックアップ
ファイル転送
クライアントとサーバー間のファイル転送にはパッシブモードとアクティブモードの2つのモードがあります。
下記にそれぞれの特徴をまとめています。なお、現在の主流はパッシブモードで、アクティブモードで稼働している例は少ないでしょう。
特徴 | アクティブモード | パッシブモード |
接続の開始 | サーバーがクライアントに接続 | クライアントがサーバーに接続 |
データポートの開放 | クライアント側で開放 | サーバー側で開放 |
ファイアウォールの影響 | クライアント側のファイアウォールで問題が発生しやすい | サーバー側のファイアウォールで問題が発生しやすい |
セキュリティ | やや低い(クライアントのポートを外部に開放) | やや高い(クライアントが全ての接続を開始) |
設定の複雑さ | クライアント側の設定が複雑 | サーバー側の設定が複雑 |
ファイル管理
- リモートサーバー上のファイル名変更、移動、削除
- ファイルのアクセス権限設定
セキュアな転送(FTPS/SFTP)
- 機密情報を含むファイルの安全な送受信
- コンプライアンス要件を満たすデータ転送
クロスプラットフォーム対応
- Windows、Mac、Linux間でのファイル転送
- モバイルデバイスからのアクセスとファイル操作
これらの技術はフリーランスと企業といった関係性でも有効に活用できるでしょう。例えば、リモートワーク者同士の開発プロジェクトにおいてFTPを使用することで、ソースコードの共有、ビルドファイルの配布、テストデータの収集などを安全に行えます。
FTPの仕組み
FTPの仕組みは、クライアント・サーバーモデルに基づいており、効率的かつ信頼性の高いファイル転送を実現しています。ここからはFTPの基本的な仕組みについて、サーバーとクライアントの関係、通信プロセスといった観点からわかりやすく説明します
FTPサーバーとクライアントの関係
FTPシステムは、クライアント・サーバーモデルといった仕組みを採用しています。主にFTPサーバーとFTPクライアントという2つの主要なコンポーネントで構成されています。
- FTPサーバー:
- ファイルを保存し、クライアントからのリクエストに応じてファイルの送受信を行います。
- 常時稼働し、複数のクライアントからの同時接続を管理します。
- ユーザー認証、アクセス権限管理、ログ記録などのセキュリティ機能を提供します。
- FTPクライアント:
- ユーザーがFTPサーバーにアクセスするためのソフトウェアです。
- グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)やコマンドラインインターフェース(CLI)を通じて操作します。
- ファイルのアップロード、ダウンロード、削除、名前変更などの操作を行います。
FTPサーバーとクライアントの関係は、以下のような特徴があります:
- 一対多の関係:一つのFTPサーバーに対して、複数のクライアントが同時に接続可能できる
- 役割の明確な分離:サーバーはファイルの保存と提供を担当し、クライアントはユーザーインターフェースと操作機能を提供している
- プロトコルの共有:両者は同じFTPプロトコルを使用して通信を行い、互換性を確保している
この関係性により、企業は中央集中型のファイル管理システムを構築し、社内外のユーザーに効率的なファイルアクセスを提供することができます。
例えば、大規模な開発プロジェクトでもFTPサーバーを使用してソースコードやドキュメントを一元管理し、世界中のエンジニアが場所を選ばずにアクセス可能になっています。
FTPの通信プロセス
FTPの通信プロセスは、クライアントがサーバーに接続してからファイル転送を完了するまでの一連の手順を指します。このプロセスは以下の主要なステップで構成されています。
- 接続の確立:
- クライアントがサーバーのIPアドレスとポート番号(通常は21番)を指定して接続を開始します。
- サーバーは接続を受け入れ、ウェルカムメッセージを送信します。
- 認証:
- クライアントはユーザー名とパスワードをサーバーに送信します。
- サーバーは認証情報を検証し、アクセスを許可または拒否します。
- コマンドの送信:
- クライアントは特定の操作(ディレクトリ一覧の取得、ファイルのアップロード/ダウンロードなど)を要求するコマンドを送信します。
- これらのコマンドは制御接続(コントロールチャネル)を通じて送信されます。
- データ接続の確立:
- ファイル転送を行う前に、データ接続(データチャネル)が確立されます。
- アクティブモードでは、クライアントがポートを開き、サーバーがそのポートに接続します。
- パッシブモードでは、サーバーがポートを開き、クライアントがそのポートに接続します。
- データ転送:
- 確立されたデータ接続を通じて、実際のファイル転送が行われます。
- 転送モード(ASCIIまたはバイナリ)に応じてデータが送信されます。
- 転送の完了と確認:
- データ転送が完了すると、データ接続は閉じられます。
- サーバーは転送の成功または失敗を示す応答コードをクライアントに送信します。
- セッションの終了:
- クライアントが「QUIT」コマンドを送信すると、FTPセッションが終了します。
- サーバーは制御接続を閉じ、セッションを完全に終了します。
FTP利用のメリット
FTPは、ファイル転送を効率的かつ安全に行うための便利なツールです。
ここでは、FTP利用のメリットについてさらに詳しく解説していきます。
効率的なファイル転送
FTPは、大容量ファイルもスムーズに転送できるためウェブサイトの公開やデータ共有など、さまざまな場面で活用できます。
FTPの主なメリットは以下のとおりです。
- 高速転送:複数ファイルを同時に転送
- フォルダごと転送:フォルダ内のすべてのファイルをまとめて転送
- 再開機能:通信エラーが発生しても、中断したところから再開
- 自動化機能:スクリプトを使って、自動的にファイル転送
FTPにはファイル転送を効率化するさまざまな機能が備わっています。ウェブサイトの更新時にすべてのファイルをアップロードする必要はなく更新されたファイルのみをアップロードするようカスタマイズすることで、作業時間とデータ通信量を節約が可能となります。
また、フォルダ転送機能を使えば複数のファイルを個別に選択することなく、まとめて転送できます。また、セキュアなデータ通信制御によりネットワークの切断が発生してもデータの損失などのトラブルを防ぐ信頼性が確保されています。自動化機能を使う事で、定期的なバッチファイル処理や更新など、手間をかけずに安全なファイル転送が可能でしょう。
セキュリティの強化
FTPには暗号化通信やアクセス権限設定などのセキュリティ機能が備わっており、不正アクセスといったサイバー攻撃から大切なデータを守ることができます。
FTPの主なセキュリティ機能は以下のとおりです。
- 暗号化通信:FTPSやSFTPなどの暗号化通信を使用
- アクセス権限設定:ユーザーごとにアクセスできるファイルやフォルダを制限
- ファイアウォール:ファイアウォールの設定で不正アクセスを防ぐ
- パスワード管理:強力なパスワードを設定し、定期的に変更
FTPは、セキュリティ対策をしっかり行えば、安全にファイル転送を行うことが可能です。具体的には暗号化通信を使用することで通信中のデータを暗号化し、窃盗や抜き取りを防ぐことができます。
アクセス権限設定によってユーザーごとに閲覧・編集できるファイルやフォルダを制限することで、不正アクセスを防ぎます。また、パスワード管理によって強力なパスワードを定期的に変更するといった対策も可能です
初心者も簡単に使えるFTPソフト
FTPは便利なツールですが、使い慣れない方には少し難しいと感じるかもしれません。そんな方におすすめなのが初心者でも簡単に使える「FTPソフト」。
FTPソフトは、GUI操作で簡単にファイル転送が行えるソフトウェアが多く、CUIでの操作になれないユーザーやクライアントにとっても扱いやすいツールといえます。代表的な無料と有料のFTPソフトをご紹介していきます。
無料のFTPソフト
- FFFTP:日本語対応で使いやすい
- FileZilla:多機能で安定性が高い
- WinSCP:セキュリティに強い
無料のFTPソフトは個人や小規模な企業で利用するのにおすすめです。
ただし、機能が限定されていたり、サポートがなかったりする場合があります。
有料のFTPソフト
- CrossFTP:多機能で使いやすく、サポートも充実
- Cyberduck:Macユーザーにおすすめ
- Transmit:デザインがおしゃれで使いやすい
有料のFTPソフトは多機能でサポートも充実しているので、企業や多くのファイルを扱う人におすすめです。無料のソフトと比べて機能が豊富で使いやすくサポートも充実しているといった特徴があります。
さらに詳しく知りたいという方向けに、おすすめのFTPソフト10選を別途ご紹介しています。よければ下記リンクより参考にしてみてください。
まとめ:FTPで効率よくファイル転送しましょう
ここまでFTPについて基礎的な知識や仕組み、実際のツールなどをご紹介してきました。ビジネスにおいてもFTPはファイル管理を最適化するツールとして活用できるでしょう。
例えば、営業資料を顧客に共有したり社内データを支店に転送したりするなど、さまざまな用途で利用可能です。FTPを活用することで安心安全なデータのやりとりが行えるようになるでしょう。
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