Pythonは、AI(人口知能)開発において世界中で最も支持されているプログラミング言語としてその地位を確立しています。機械学習やディープラーニングなどのAI開発において、Pythonはその優れた機能性と豊富なライブラリ群から選ばれる言語として、世界中の研究者や開発者に広く愛用されています。
この事実を聞いて「難しそう」とか「敷居が高そう」と感じる人もいるかもしれません。
しかし、それは誤解です。Pythonは初心者向けのプログラミング言語であり、誰でも簡単にAI開発を始めることができる豊富なライブラリが用意されています。この記事では、Pythonを使ったAI開発の魅力や学習方法、さらには便利なライブラリの紹介までをわかりやすく解説していきます。
2014年 大学在学中にソフトウェア開発企業を設立
2016年 新卒でリクルートに入社 SUUMOの開発担当
2017年 開発会社Jiteraを設立
開発AIエージェント「JITERA」を開発
2024年 「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」に選出
アプリ・システム開発は生成AIを活用することで、従来の開発ではあり得なかった、低コスト・高品質開発・スピード開発が同時に実現できます。
▼従来の開発とAIを使った開発の違い
システムソリューションを得意とし、新規事業からDX推進まで幅広いジャンルの開発実績があります。
Pythonとは
Python(パイソン)は、1991年にオランダのプログラマーによって開発されたプログラミング言語です。最近では、AI(人工知能)開発において世界中の様々な分野で最も利用されている言語です。
PythonとAIの相性が良い理由は、Pythonのコードが非常にシンプルであり、簡単で読みやすく、効率的に書けることにあります。つまり、Pythonは最小限の機能だけでプログラミングし、他の複雑な処理はすべてライブラリで実現できるようになっています。
(Pythonの特徴)
- シンプルで読み書きしやすい文法
- 多種多様な開発要素に使用が可能
- 便利なライブラリが豊富に揃っている
Pythonには、豊富なライブラリが準備されています。それらは数値計算や統計処理、データ解析が得意であり、AI開発に不可欠です。
例えば、機械学習や深層学習のための TensorFlow や PyTorch、自然言語処理のための NLTK や spaCy、画像処理のための OpenCVなどがあります。これらのライブラリを組み合わせることで、PythonはAI開発のための優れたツールとして広く活用されています。
Pythonにできること
Pythonは、非常に汎用性が高く、さまざまな職業やプロジェクトで利用されています。
以下にいくつかその例を挙げてみます。
開発 | 説明 |
データサイエンス | データの収集、処理、分析、可視化などの作業にPythonが広く使用されています。PandasやNumPy、Matplotlibなどのライブラリがデータサイエンスの作業を支援します。 |
機械学習と人工知能 | TensorFlowやPyTorchなどの機械学習フレームワークがPythonで開発されており、機械学習モデルの構築やトレーニングに広く使用されています。 |
ウェブ開発 | DjangoやFlaskなどのフレームワークを使用してウェブアプリケーションを構築することができます。PythonはウェブスクレイピングやAPIの操作にも適しています。 |
自然言語処理 | NLTKやspaCyなどのライブラリを使用してテキストデータの処理や解析を行うことができます。機械翻訳やテキスト分類などのタスクにPythonが利用されています。 |
ゲーム開発 | PygameやUnityなどを使用してゲームを開発することができます。Pythonはゲーム内のロジックやAIの実装にも使用されます。 |
自動化 | Pythonはタスクの自動化にも適しており、ファイル操作やデータ処理などの作業を自動化するためのスクリプトを書くことができます。 |
これらは、はほんの一部であり実際には多くの分野でPythonが活用されています。
具体的な例としていくつか紹介しておきます。
- SNSの顔認証は、OpenCVで顔を検出、dlibやface_recognitionで顔の特徴点を検出し認識します。
- Webの検索結果表示は、WebスクレイピングやAPIを介して検索エンジンから情報を取得し、検索結果をHTML、CSS、JavaScriptなどを使用して検索結果を表示します。
- 音声認識は、Google Speech APIやMicrosoft Azure SpeechなどのAPIを利用して音声認識、録音された音声データをテキストに変換したり、pyAudioで音声データの取得や処理、PocketSphinxではオフライン環境での音声認識も可能になります。
- カーナビゲーションシステムの開発においてもデータ処理や分析の一部にPythonが活用されています。
AI開発にPythonが使われる理由は?
Pythonは、読みやすい&書きやすい、初心者にもおすすめなプログラミング言語ですが、シンプルだからできることに制限があるというわけではありません。PythonはアプリやWebサービスの開発からAI(人口知能)の開発まで、分野を問わず様々な開発に活用されています。それを可能にしているのが、豊富に存在するライブラリです。
そもそも、Pythonが最初のバージョンを公開したのは1991年で、30年以上の長い歴史があります。そして現在も開発が続けられており、便利な新機能が追加されています。
近年、Pythonが爆発的に注目された背景には、AI(人工知能)開発が大きく関係しています。Pythonは機械学習やディープラーニングなどの人工知能技術の開発に広く使用されており、その優れたライブラリやフレームワーク、簡潔で読みやすい文法が人工知能開発者にとって魅力的な要素となっています。
本章では「Python と AI(人工知能)開発」についてさらに掘り下げていきます。
科学技術計算分野の筆頭言語とも言われる
まず、科学技術計算分野で利用されているプログラミング言語はPython以外にもいくつかあることを知っておきましょう。
統計解析やデータ可視化に特化した言語R、高性能な数値計算や科学技術計算に特化した言語Juliaは、PythonやRよりも高速な計算が可能です。さらに、数値計算やシミュレーションを行うための専用言語MATLAB、古くから存在する高性能な数値計算言語Fortranなどがあります。これらの言語はそれぞれ特性や用途が異なり、科学技術計算のニーズや用途に合わせ適切な言語を選択することが重要です。
その中において、最も広く利用されているのがPythonです。他の言語も科学技術計算分野で重要な役割を果たしていますが、Pythonの使いやすさや拡張性、豊富なライブラリの存在などが要因となり、多くの研究機関や企業でPythonが選択されています。また、Pythonのコミュニティも非常に活発であり、新しいライブラリやツールの開発が盛んです。
- 豊富な科学技術計算用ライブラリがある
- 簡潔で読みやすい文法
- 拡張性と柔軟性
- コミュニティの活発さ
そのため、現在はPythonが科学技術計算分野で一番利用されている言語と言えます。
ライブラリやフレームワークが豊富
ここでは、Pythonのライブラリとフレームワークについて詳しく紹介します。
ライブラリ(Library)
ライブラリとは、「すでに誰かがプログラミングしてくれている機能」です。
Pythonは豊富なライブラリを持ち、その多くは C言語やC++で実装されています。このようなライブラリは、高速な処理を実現するために低レベルの言語で書かれており、Pythonの柔軟性と使いやすさと組み合わせることで効率的なプログラミング環境を提供しています。
Pythonは柔軟性や表現力に優れている一方で、処理速度が低いという欠点もあります。しかし、C言語やC++で実装されたライブラリを利用することで、Pythonの処理速度を向上させることができます。このように、Pythonの豊富なライブラリ群は、高速な処理を実現するために重要な役割を果たしています。
例えば、行列の掛け算を行う場合、Pythonの数値計算ライブラリNumPyを使用することが出来ます。
このように、NumPyのdot関数で呼び出すと1行で行列の掛け算の結果を得ることが可能です。
もし、このライブラリが無ければ、Pythonでコード(プログラム)を書く必要があります。
このように、Pythonだけで処理をする場合は、多重ループを使用して計算する必要があり処理が重くなりますが、C言語で実装されたNumPyを利用することでコードの見やすささけではなく高速な数値計算を実現しています。
フレームワーク(Framework)
フレームワークとは、Pythonを使用してアプリケーションを開発する際に利用される、ベースとなるソフトウェアのことです。開発に必要なツールやライブラリが容易に使用できるように設計されています。
【フレームワークの役割】
- 共通のタスクや機能を自動化する
- 開発者がアプリケーションのロジックに集中できるようサポートする
- 一般的な設計パターン(例:MVC)に基づいて構築されており、開発者がコードを整理しやすくする
- カスタマイズや拡張が容易であり、プロジェクトの要件に合わせて機能を追加したり変更したりすることができる
これらの役割を持つフレームワークは、開発プロセスを効率化し、一貫性のあるアプリケーションの開発を支援します。
Pythonのフレームワークには、Webアプリケーション開発やデータ分析などさまざまな用途に利用される人気のフレームワークがあります。代表的なPythonのフレームワークをいくつか紹介します。
フレームワーク | 特徴 |
Django | Webアプリケーションの開発に広く利用されるフレームワークです。高い生産性と堅牢なセキュリティ機能を持ち、多くの機能がデフォルトで提供されています。Djangoは、MVC(Model-View-Controller)の設計パターンに基づいています。 |
Flask | 軽量でシンプルなWebアプリケーションフレームワークです。柔軟性が高く、必要な機能を追加してカスタマイズすることができます。Flaskは、MVCよりも自由度が高いWerkzeugとJinja2という2つのライブラリに基づいています。 |
Pyramid | 柔軟性とスケーラビリティに焦点を当てたWebアプリケーションフレームワークです。小規模から大規模なプロジェクトまで幅広く対応しており、適応力が高い特徴があります。 |
FastAPI | 高速で効率的なWeb APIを構築するためのモダンなフレームワークです。型ヒントを使用して型安全性を確保し、高速な処理を実現しています。特に、Pythonのタイプヒントを活用したAPI開発に適しています。 |
上記の一覧表に、公式サイトへのリンクを貼っておきました。各フレームワークのドキュメント、チュートリアル、サンプルコードなどが提供されており、詳細な情報やリソースを入手することができます。
教育用言語として採用
海外では以前から、初心者がプログラミングを学ぶ際に、Pythonを推薦することが多く、その人気は高いです。近年、日本でもこの傾向が見られ、例えば東京大学や京都大学、慶応大学、など様々な大学でPythonを用いたプログラミング教育が行われています。
なぜPythonなのか?
それはPythonが圧倒的に初心者向きであり、さらに数値計算や統計処理、データ解析において豊富なライブラリが揃っているためです。学生がプログラミングを学ぶ目的には、機械学習やデータサイエンスなどがあります。より早く正確にデータを分析し、洞察を得るために、Pythonの柔軟性と効率性が求められています。そして、それは学生だけではなく、開発者や研究者も同じです。
信頼性が高い言語
Pythonは近年、AI(人口知能)開発の分野で爆発的に注目されていますが、実は登場してから30年以上の長い歴史があり、安定性と成熟度の高い言語です。世界中で多くの企業や組織がPythonを採用しており、信頼性の高さが証明されています。
例えば、みなさんが利用しているInstagramやYouTubeにもPythonが活用されています。
- Instagramは、Djangoフレームワークを使ってPythonで開発されている
- YouTubeは、Pythonをデータ処理や運用自動化などの用途で活用している
更に、Pythonのコミュニティは世界中で存在し、バグ修正やセキュリティの向上など信頼を高める取り組みが活発に行われています。、また、Pythonには豊富な情報源やドキュメントが存在し、開発者が問題解決や学習をサポートするためのリソースが豊富に揃っています。
コードがシンプルで理解しやすい
Pythonの設計哲学は「コードの可読性」であり、かつ「読みやすく、それでいて効率もよいコードをなるべく簡単に書けるようにする」という思想が Pythonには浸透しています。Pythonがシンプルである理由は、専門的な機能をライブラリ化して簡単に利用できるようにしたことが挙げられます。さらに、Pythonのコード自体も他のプログラミング言語と比較して非常にシンプルな構造を持っています。
以下にPythonが他の言語よりシンプルなコードが書ける特徴をリスト化しました。
項目 | 説明 |
インデントによるブロック構造 | インデントを使ってコードのブロック構造を表現するため、{}や;などの記号が不要であり、コードが見やすくなる |
組み込みデータ構造のサポート | リスト、辞書、セットなどの組み込みのデータ構造をサポートしており、データ操作が直感的で簡潔に書ける |
関数やメソッドの定義が簡潔 | defキーワードを使って関数やメソッドを定義するが、その構文がシンプルであり、冗長な記述が不要 |
型推論と動的型付け | 動的型付け言語であり、変数の型を明示的に宣言する必要がないため、コードが簡潔 |
豊富な標準ライブラリ | Pythonには豊富な標準ライブラリが含まれており、多くの一般的なタスクを簡単に実装できるため、コード量が少ない |
理解しやすいPythonのコードと比較するために、例として同じ機能を持つJavaのコードを示します。PythonとJavaはどちらも広く使用されるプログラミング言語ですが、その構文や書き方には違いがあります。
例えば、Pythonでの簡単なリスト操作を示すコードを以下に示します。
(Pythonコード)
次に、同じ機能を持つJavaのコードを以下に示します。
(Javaコード)
このように全く同じ処理した場合、Pythonではリストの要素を直接指定してリストを作成できますが、Javaでは配列を明示的に宣言する必要があります。一目瞭然でPythonのコードの方がシンプルであるのわかります。
AI開発に使われるPythonのライブラリ
PythonにはAI(人工知能)の開発に役立つ多くのライブラリが豊富に揃っています。NumPy、Pandas、Matplotlib、scikit-learn、TensorFlow、Keras、Jupyter Notebook、Chainer、PyTorchなどがその中に含まれます。それぞれのライブラリは、機械学習やデータ解析、ディープラーニングなどの分野で幅広く活用されています。これらのライブラリを使うことで、AI開発の効率化や革新的なプロジェクトの実現が可能となります。
それぞれの特徴と、主要な関数の一部をリスト化していますので、まずは「どんなことがができるのか?」をサンプルコードを見ながら解説していきます。今は、コードの深い意味まで理解する必要はありませんがどんな感じで実行されているのかをイメージすることが大切です。
NumPy
NumPy(ナムパイ )は、高速な数値計算と効率的な多次元配列操作を提供する数値計算ライブラリです。NumPyはPythonの数値計算やデータ処理において広く利用されており、「Pythonを使用している全ての科学者が利用している」と言われるほどの評価を受けています。
例えば、NumPyは世界初のブラックホールの画像化にも使用されました。この偉業は科学史において画期的な出来事であり、アインシュタインの理論に対する驚くべき視覚的証拠を提供しました。
以下のサンプルコードは「2次元配列の要素を合計する」といった処理を想定してNumPyのsum関数を使ってみました。たった1行でその答えを得ることができます。
この他にも、三角関数や指数関数などの数学関数なども充実しています。
Pandas
Pandas(パンダス)は、データ操作と分析を容易にする高レベルのデータ構造と操作を提供するライブラリです。柔軟なデータ構造を提供し、データの読み込み、整形、集計、可視化などのデータ操作を効率的に行うことができます。データ処理や分析において重要な役割を果たすライブラリであり、Pythonのデータサイエンスやデータ分析の分野で幅広く利用されています。
以下は、Pandasを使用してCSVファイルからデータを読み込み、データフレームを作成し、基本的なデータ操作を行うサンプルコードです。
このサンプルコードでは、Pandasを使用してCSVファイルからデータを読み込み、データフレームを作成しています。その後、データフレームの最初の5行や基本統計量を表示し、特定の列のデータを抽出したり、条件に合致する行を抽出したりしています。さらに、データフレームの特定の列を使って新しい列を計算し、最終的にデータフレームをCSVファイルに書き出しています。これにより、データの読み込み、操作、保存などの基本的なデータ処理が行われています。
Matplotlib
Matplotlib(マットプロットリブ)は、Pythonのデータ可視化ライブラリであり、グラフや図を描画するための豊富な機能を提供するライブラリです。データの可視化やグラフ作成に広く使用されており、直感的なグラフ作成やカスタマイズが容易に行える特徴があります。データ分析や科学技術計算の分野で重要な役割を果たしています。
以下は、Matplotlibを使用して簡単な折れ線グラフを描画するサンプルコードです。
このサンプルコードでは、Matplotlibを使用してデータxとyを折れ線グラフとして描画しています。plt.plot()関数で折れ線グラフを描画し、plt.title()やplt.xlabel()、plt.ylabel()でグラフのタイトルや軸ラベを設定しています。また、plt.grid(True)でグリッド線を表示し、plt.show()でグラフを表示しています。このように、Matplotlibを使用することで簡単にグラフを描画することができます。さまざまな種類のグラフやカスタマイズも可能であり、データの可視化に幅広く活用されています。
sckit-learn
scikit-learnはPythonの機械学習ライブラリであり、機械学習のさまざまな手法やツールを提供するライブラリです。簡単に使えるインターフェースや豊富な機能を持ち、機械学習モデルの構築、評価、予測などをサポートします。機械学習の実装や実験を行う際に広く利用されています。
以下は、scikit-learnを使用して単純な線形回帰モデルを構築し、データを予測するサンプルコードです。
このサンプルコードでは、scikit-learnを使用して線形回帰モデルを構築しています。まず、ダミーデータXとyを作成し、LinearRegression()を使用して線形回帰モデルを初期化します。その後、fit()メソッドを使ってモデルを学習させます。最後に、新しいデータX_newを予測し、予測値を表示しています。
TensorFlow
TensorFlow(テンソルフロー)は、Googleが開発したオープンソースの機械学習フレームワークであり、深層学習モデルの構築、トレーニング、デプロイメントを行うための強力なツールです。柔軟性や拡張性が高く、さまざまな機械学習タスクに対応しています。グラフベースの計算を行い、GPUを活用して高速な演算が可能であり、産業界や研究分野で広く利用されています。
以下は、TensorFlowを使用して簡単な線形回帰モデルを構築し、単純な数値予測を行うサンプルコードです。
このサンプルコードでは、TensorFlowを使用して線形回帰モデルを構築し、単純な数値予測を行っています。データXとyを定義し、Sequentialモデルに1つのDense層を追加して線形回帰モデルを構築しています。モデルをコンパイルし、SGD(確率的勾配降下法)を最適化手法として指定しています。モデルを学習させてから、新しいデータX_newを予測し、予測値を表示しています。
このように、TensorFlowを使用することで簡単に機械学習モデルを構築し、データの予測を行うことができます。柔軟性や拡張性が高く、機械学習の初心者から上級者まで幅広く利用されています。
Keras
Keras(ケラス)は、高レベルのニューラルネットワークライブラリであり、使いやすさと柔軟性を兼ね備えたPythonのライブラリです。深層学習モデルの構築やトレーニングを簡単に行うことができ、TensorFlowやTheanoなどのバックエンドエンジンをサポートしています。初心者から上級者まで幅広く利用されています。
以下は、Kerasを使用して簡単なニューラルネットワークを構築し、MNISTデータセットを使って手書き数字の分類を行うサンプルコードです。
このサンプルコードでは、Kerasを使用してニューラルネットワークモデルを構築し、MNISTデータセットを使って手書き数字の分類を行っています。データの読み込み、前処理、モデルの構築、コンパイル、学習、評価のステップを順に実行しています。Kerasを使用することで、ニューラルネットワークモデルを簡単に構築し、機械学習タスクを実行することができます。
Jupyter Notebook
Jupyter Notebook(ジュピターノートブック)は、インタラクティブな環境(ユーザーとコンピューターがリアルタイムで対話しながら作業を進めることができる環境)で、Pythonコードや他のプログラミング言語のコードを実行し、結果を視覚化しながら文書として整理できるオープンソースのウェブアプリケーションです。コードセルとテキストセルを組み合わせて、データ分析や機械学習のプロトタイピング、レポート作成などを効率的に行うことができます。学習やコラボレーションにも利用されています。
Jupyter Notebookを体験したい場合は、Jupyterをインストールし、ローカル環境で実際に試してみることをお勧めします。Jupyter Notebookを使用することで、Pythonコードの実行や結果の表示をインタラクティブに行うことができます。
Chainer
Chainer(チェイナー)は、柔軟性と拡張性を重視したディープラーニングフレームワークであり、Define-by-Runのアプローチを採用しています。ユーザーがモデルを動的に定義し、逐次的に計算グラフを構築していくことが特徴です。柔軟なモデル定義と学習プロセスのカスタマイズが可能であり、研究や実装の両方で広く利用されています。
以下は、Chainerを使用して簡単なニューラルネットワークを構築し、MNISTデータセットを使って手書き数字の分類を行うサンプルコードです。
このサンプルコードでは、Chainerを使用してニューラルネットワークモデルを構築し、MNISTデータセットを使って手書き数字の分類を行っています。データの読み込み、モデルの定義、Optimizerの設定、Trainerの設定、学習の実行などのステップを順に実行しています。Chainerを使用することで、Define-by-Runの柔軟なアプローチを活用しながら、ニューラルネットワークモデルを構築して学習することができます。
PyTorch
PyTorch(パイトーチ)は、Facebookの人工知能研究グループによって開発されました。柔軟性と高速な実装が可能な深層学習フレームワークです。Define-by-Runのアプローチを採用し、動的計算グラフを構築してモデルを定義し、学習することが特徴です。
- Define-by-Runのアプローチは、PyTorchの特徴であり、モデルを定義する際に動的計算グラフが構築される方法です。データがモデルを通過するたびに計算グラフが再構築されるため、柔軟性と直感性が向上し、複雑なモデルの定義や変更が容易になります。
以下は、PyTorchを使用して単純な多層パーセプトロン(MLP)を構築し、MNISTデータセットを使って手書き数字の分類を行うサンプルコードです。
このサンプルコードでは、PyTorchを使用して多層パーセプトロン(MLP)モデルを定義し、MNISTデータセットを使って手書き数字の分類を行っています。データの前処理、モデルの定義、損失関数とオプティマイザの設定、学習の実行などのステップを順に実行しています。PyTorchを使って柔軟かつ効率的に深層学習モデルを構築し、学習することができます。
【初歩】 PythonでAI(人工知能)を作るステップ
PythonのAI開発についてここまで解説してきましたが、ここでは、実際にAI(人口知能)を開発してシステムに組み込む場合に、どのような手順が必要になるのか解説していきたいと思います。
まずは、AI開発の全体的な流れを把握しておきましょう。
- 問題定義と要件定義
- データ収集と前処理
- モデル選定と開発
- モデルの評価
- システム統合
- テストとデバッグ
- デプロイメント
以上の手順を順に進めることで、人工知能を開発してサービスに組み込むプロセスを効果的に管理し、成功を目指すことができます。
人工知能の概要を設計
AI(人口知能)の設計は、目標達成、効率性、性能向上、信頼性と安全性、拡張性と柔軟性を確保するために必要です。適切な設計に基づいて開発されたAIシステムは、目標を効果的に達成し、高い性能を発揮し、信頼性が高く安全性が確保され、将来の拡張や改良にも柔軟に対応できます。
そのためには、人工知能の機能、開発用ライブラリやフレームワークの選定方法、機械学習の手法についての理解が必要になります。ここではそれぞれの方法について詳しく解説していきます。
人工知能の機能
人工知能(AI)の機能にはさまざまなものがありますが、一般的に以下のような主要な機能が挙げられます。
- 画像認識(顔認識、物体検出など)
- 音声認識(音声アシスタントなど)
- 自然言語処理(機械翻訳、テキスト分類、感情分析など)
- 予測分析(需要予測、金融予測、リスク予測など)
- 意思決定支援(データ分析など)
- 自己学習(機械学習や深層学習)
- パターン認識(異常検知、クラスタリング)
これらの機能を組み合わせることで、AIシステムはさまざまなタスクを自律的に実行し、人間の知能に近い作業を行うことが可能となります。
開発用ライブラリ・フレームワークを選定
Pythonを用いたAI開発において、適切な開発を行うためには、利用可能なライブラリやフレームワークの機能を把握することが重要です。すべてを暗記する必要はありませんが、情報を把握しておくことで必要な時に素早く活用できます。適切なライブラリやフレームワークを選定することはプロジェクトの成功に不可欠です。
以下に、Pythonの主要な機能と必要なライブラリやフレームワークを図にしました。
これらは一部の例であり、Pythonにはさまざまなライブラリやフレームワークが存在します。プロジェクトの要件や目的に応じて、適切なライブラリやフレームワークを選択することが重要です。
学習方法を決める
機械学習には大きく分けて「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」の3種類の方法があります。どの学習方法を採用するかで事前に準備するデータ等が変わってきますので、まずはそれぞれの違いを理解しておきましょう。
以下にそれぞれの特徴についてまとめました。
これから開発したいものが、どれに該当するのかを考えてみてください。
学習用データを収集
AI開発において機械学習を行う際、大量のデータを収集することでより優れた学習済みモデル(判別ルール)を構築することが可能です。 データ収集作業は「データ収集」と呼ばれます。
学習用のデータ収集には主に以下の3つの方法があります。
これらのデータを使用して、機械学習アルゴリズムをトレーニングし、予測モデルを構築することが可能です。適切に収集されたデータを活用することで、より正確な予測や意思決定を行うことができます。
機械学習やディープラーニングを行う
では、実際にここで機械学習やディープラーニングを行う場合のサンプルコードを見ていきましょう。
機械学習の基礎的な手順として、「①データの準備」→「②モデルの選択」→「③モデルのトレーニング」→「④モデルの評価」をしていくことになります。
以下のサンプルコードは、線形回帰モデルを使用してダミーデータをトレーニングし、テストデータで評価しています。機械学習の基本的な手順を確認するための簡単な例です。
サンプルコードで使用したライブラリは以下の通りです。
NumPy
数値計算を行うための基本的なライブラリであり、多次元配列や行列演算をサポートします。
scikit-learn
機械学習の様々なアルゴリズムやツールを提供するライブラリであり、モデルの選択、トレーニング、評価などの機能を提供します。
LinearRegression
scikit-learnライブラリ内の線形回帰モデルを表すクラスです。回帰分析を行う際に使用されます。
train_test_split
scikit-learnライブラリ内のデータセットをトレーニング用とテスト用に分割するための関数です。
mean_squared_error
scikit-learnライブラリ内の平均二乗誤差を計算する関数です。モデルの評価に使用されます。
人工知能をサービスに組み込む
人工知能をサービスに組み込む際には、まず膨大なデータを収集することが不可欠です。収集されたデータは計算用デバイスで処理され、人工知能はそのデータを学習します。データからパターンや傾向を抽出し、これらの情報を活用して最適な出力を生成します。
この出力は、例えば予測や分析結果などの形で提供され、ビジネス上の意思決定や業務プロセスの最適化に役立ちます。人工知能をサービスに組み込むことで、データ駆動型のアプローチが強化され、より効率的で洞察に基づいた意思決定が可能となります。
- 計算用デバイスとは、主にデータ処理や演算を行うために設計された機器や装置のことです。一般的には、コンピュータやサーバー、クラウドサービスなどが計算用デバイスとして使用されます。これらのデバイスは高速な演算能力や大容量のメモリを備えており、複雑な計算やデータ処理を効率的に行うことができます。人工知能や機械学習のトレーニングや推論には多くの計算リソースが必要となるため、計算用デバイスの選択は重要です。適切な計算用デバイスを使用することで、高速な学習や予測を実現し、人工知能モデルの性能向上や効率化を図ることができます。
初心者がPythonを習得する方法
Pythonを使用してAI(人工知能)の開発を行うことは、実はそれほど難しいことではありません。Pythonは非常にシンプルなプログラミング言語であり、機械学習やディープラーニングを行うためのライブラリが豊富に提供されているからです。このような環境下でAI開発を行うことは、初心者でも取り組みやすいと言えます。
Pythonをマスターすれば、AI開発の扉が開かれます。「AIの開発をしたければPythonを攻略する!」という考え方が、最初の一歩となります。
Pythonの入門には、オンライン学習サイトや書籍が役立ちます。例えば、Pythonの基礎から学べるオンラインコースや、実践的なプロジェクトを通じてスキルを磨ける書籍などがあります。Pythonの学習リソースを活用して、AI開発に向けたスキルを着実に身につけていきましょう。
学習サイトで学ぶ
Pythonは学習サイトを通じて、基礎から応用まで幅広く学ぶことができます。オンライン学習サイトでは、インタラクティブ(対話的)な学習環境や動画レッスンを通じて、自分のペースで学習を進めることが可能です。プログラミング初心者でもわかりやすい解説や実践的な演習を通じて、Pythonの文法や機能を理解し、実際のプログラミングを学ぶことが出来ます。
Pythonを学ぶための日本語のオンライン学習サイトを以下に紹介します。
学習サイト | 特徴 |
Udemy | Pythonを含むさまざまなテクノロジーやスキルに関するコースが豊富に揃っています。インストラクターによる動画レッスンや演習問題が含まれています。 |
Progate | プログラミング初心者向けにPythonコースを提供しています。インタラクティブな学習環境で学ぶことができます。 |
ドットインストール | Pythonを含むさまざまなプログラミング言語やWeb開発などのコースが豊富に揃っています。短い動画レッスンで学習できます。 |
TechAcademy | Pythonを含むプログラミングやデータサイエンスなどのコースが提供されています。オンラインで学習することができます。 |
paizaラーニング | Pythonやプログラミングに関する基礎から応用までのコースがあり、実際のコーディング演習も行えます。 |
学習教材や講座を利用する
「プログラミングするのがはじめて」の人、「Pythonの基礎からしっかり学びたい」人、そんなあなたには学習教材(書籍)やオンライン講座を利用するのもおすすめです。
おすすめの書籍
ここでは、初学者向けの書籍を紹介します。書籍を選ぶ際のポイントも覚えておきましょう。
スッキリわかるPython入門第2版 (スッキリわかる入門シリーズ)
国本 大悟 (著), 須藤 秋良 (著), 株式会社フレアリンク (監修)
プログラミング環境の準備から基礎文法、実践的なコーディング力までを丁寧に解説。3つのコンセプトに基づき、手軽にPythonを学び、なぜ・どうしてを理解し、将来の活用につながる内容。第2版ではゲーム開発の演習も追加。dokopyサービスを利用可能。未経験者から専門分野への知識獲得をサポートします。
Python1年生 第2版 体験してわかる!会話でまなべる!プログラミングのしくみ
森 巧尚 (著)
ヤギ博士とフタバちゃんの対話形式で「Pythonで何ができるの?」からはじまり、基本的なプログラムの作成から、面白い人工知能アプリの作成までを体験できます。可愛いイラスト入りで時には漫画形式で楽しく学ぶことが出来ます。
山田 祥寛 (著)
基本的な言語仕様から標準ライブラリ、ユーザー定義関数、オブジェクト指向構文、モジュールまでを詳細かつ丁寧に解説し、サンプルプログラムを用いて読者が実践しながら学ぶことができます。初学者から再入門者、学生やホビープログラマまで幅広い層におすすめされています。他の初心者用の基礎本よりは内容が充実していますので、まずはこれを読んでオンラインの学習サイトなど利用するとより理解が進みます。
おすすめの講座
本格的にPythonを学びたいなら、オンライン講座も検討してみましょう。自己学習が苦手な方、就職を考えている場合などは就職支援なども積極的に行っている講座もあります。Pythonを学べるオンライン講座の中から、以下におすすめのTop5をご紹介します。
オンライン講座 | 特徴 |
TechAcademy(テックアカデミー) | 初心者から上級者まで対応したカリキュラムがあり、実務に役立つプロジェクトを通じて学べる。 |
DMM WEBCAMP(ウェブキャンプ) | プログラミング初心者向けの基礎から応用までを網羅した講座がある。 |
SAMURAI ENGINEER(侍エンジニア) | 実践重視のカリキュラムで、実際の業務で必要なスキルを身につけることができる。 |
Aidemy(アイデミー) | インタラクティブなオンライン学習環境で、理論と実践を組み合わせた学習ができる。 |
TECH CAMP(テックキャンプ) | 就職支援や独自のカリキュラムで、現場で使える実践的なスキルを身につけることができる。 |
AI開発をPythonで行うのまとめ
Pythonは、外部のライブラリを利用することで、シンプルなコードで様々なことを実現できることが特徴です。Python自体は非常にシンプルで読みやすい言語でありながら、強力なライブラリ群を活用することで、複雑な処理を簡単に行うことができます。
多くのAIプロジェクトでは、大規模なデータセットを扱う必要がありますが、Pythonの豊富なライブラリやフレームワークは高速なデータ処理が可能です。Pythonの処理速度は他の言語に比べて遅いことがありますが、最適化されたライブラリを利用することで、高速なデータ処理を実現できます。そのため、Pythonは様々な分野のAI開発において広く採用されています。
AI開発をPythonでお考えの方やAIでシステム開発のご相談などがある場合は、株式会社Jiteraへご相談下さい。