自然言語処理(NLP)とAIの違いとは?関連性や最新の事例をもとに紹介

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コンサルティング業界に20年以上在籍。IT戦略・構想策定など上流系が得意。

自然言語処理(NLP)と人工知能(AI)は近年、技術革新の最前線にいます。しかし、これらはどのように異なり、どのように連携しているのでしょうか?

この記事では、NLPが言葉を理解し処理する技術であること、AIがこれらのデータを使って学習し意思決定を行うシステムであることを明確にします。

事例を通じて、ビジネスや日常生活におけるNLPとAIの役割をわかりやすく解説していきます。

自然言語処理(NLP)とAIの違い

自然言語処理(NLP)とAIの違い

自然言語処理(NLP)とAIは、しばしば混同されます。NLPはAIの分野の1つであり、AIはより広範な概念です。

NLPは、コンピュータに人間の言語を理解させる技術であり、AIはこれを含む幅広い技術で、学習や問題解決を可能にします。

例えば、NLPは顧客からのフィードバックを分析する際に役立ち、AIはその分析を基に意思決定を支援します。

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自然言語処理(NLP)とAIの関係

自然言語処理(NLP)と人工知能(AI)は、互いに補完し合う関係にあります。

技術 特化領域 できること 活用事例
NLP 人間の言語の理解と解釈 テキストデータからの意味抽出 顧客レビューからの感情分析
AI 広範な技術(言語処理能力含む) パターン認識、学習、問題解決 NLPによる感情分析からの情報を基に、顧客満足度を向上させる戦略の提案

NLPは、人間の言語を理解し、解釈する技術に特化しており、テキストデータから意味を抽出することに焦点を当てています。例えば、AIが顧客サービスの自動化を行う際、NLPは顧客の質問を理解し、適切な回答を生成するのに不可欠です。また、ソーシャルメディアの感情分析など、ビジネスインテリジェンスにおいても、NLPは重要な役割を担います。

一方、AIは、このような言語処理能力を含む広範な技術で、パターン認識、学習、問題解決などを可能にします。例えば、NLPは顧客のレビューから感情を分析し、その情報を基にAIが顧客満足度を向上させる戦略を提案する場合があります。

このように、NLPを活用するにあたっては、NLPは言語の解釈に、AIはNLPを活用した意思決定に活用することで効果が高まります。NLPとAIは相互に補完しながら、高度な技術解決策の実現に貢献しています。

自然言語処理(NLP)におけるディープラーニングの役割

自然言語処理(NLP)におけるディープラーニングの導入は、AI技術の進歩において革命的な役割を果たしています。

ディープラーニングは、大量のデータから複雑なパターンを学習する能力を持ち、これにより、NLPは人間の言語を深く、正確に理解することが可能になりました。

例えば、機械翻訳アプリケーションはディープラーニングを活用して、複数の言語間での自然で流暢な翻訳を実現しています。また、チャットボット音声認識システムも、ディープラーニングによるNLP技術の進歩により、人間に近い対話が可能になっています。

この技術は、言語データの複雑さと多様性に対応し、自然言語処理の精度を大幅に向上させています。ディープラーニングによるNLPの進化は、AIが私たちの言葉を理解し、自然に対話できる未来への大きな一歩です。

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ビジネスにおけるNLPの応用事例

ビジネス分野での自然言語処理(NLP)の応用は、効率性と顧客満足度の向上に大きく貢献しています。

顧客からの問合せに自動で応答するチャットボットや、言語の翻訳など、NLP技術はさまざまな形で活用されています。これらの事例は、NLPがどのようにしてビジネスプロセスを革新し、顧客エンゲージメントを深めるかを示唆しています。

チャットボット・音声アシスタント

チャットボットは、Webサイトの訪問者に用意された問合せ応答用のロボットです。今までにも一部のWebサイトでは、問合せにリアルタイムで応答するチャットが用意されていましたが、担当者になかなかつながらず、長時間待たされるのが一般的でした。チャットボットは、NLPを活用することで顧客からの問合せを理解し、あらかじめ用意されたQ&Aに結び付けることで、コールセンターなどの人を介さず顧客へ適切な回答を行うことができます。また、この分野は生成AIの登場により、さらに柔軟かつインタラクティブな回答を行えるようになりました。

また、サービスがグローバル化・多様化するに伴い、夜間や休日にも無休で働けるチャットボットの有用性はますます高まっています。

音声アシスタントは、チャットのやり取りを音声でも行えるようにしたものです。Amazonが販売するAlexaや、AppleのSiri、Googleアシスタントなどが有名です。チャットボットの役割を、あたかも実在の人を相手にするような感覚で、会話により実現することができます。これにより、PCやスマホへのテキスト入力が不要になり、さらに利便性が向上します。

機械翻訳

機械翻訳は、異なる言語間の翻訳に利用されています。Google翻訳や、DeepLなどが有名です。これらは汎用的な機械翻訳の代表格で、さまざまな人に活用されています。

一方、特定の産業分野に特化した機械翻訳サービスも存在しており、これらは利用を重ねることにより翻訳精度が高まっていきます。汎用的な機械翻訳は、学習する分野や量が多すぎて、ある分野に特化した翻訳を行いたいときに、うまく機能しないことがあります。医療、化学、法務など、業界固有の用語が多い産業では、分野特化型の機械翻訳も活用されています。

情報検索・分析

情報検索は、NLPを利用して、大量のテキストデータから特定の情報を迅速かつ正確に見つけ出す技術です。この技術は、検索エンジンの精度を高めるだけでなく、企業内の文書管理システム、法的文書の検索、学術研究の文献レビューなど、多岐にわたる分野で活用されています。

例えば、企業は情報検索の技術を用いて、過去の取引記録、顧客の問合せ履歴、技術文書などの膨大なデータベースから必要な情報を瞬時に抽出することができます。これにより、意思決定の迅速化、顧客サービスの向上、研究開発の効率化など、ビジネス運営の各面で大きなメリットが得られます。

情報検索の進化は、情報過多の時代における知識のアクセシビリティを大きく向上させています。

テキスト生成

テキスト生成の技術は、NLPとAIを駆使して、人間のように自然なテキストを作り出す能力を持っています。この技術は、ニュース記事の自動作成、ソーシャルメディアのコンテンツ生成、ビジネスレポートの作成など、多様な用途に応用されています。

例えば、メディア企業では、最新のイベントに基づく記事を瞬時に生成するためにテキスト生成技術を使用しています。マーケティング分野では、ターゲットオーディエンスに合わせたパーソナライズされた広告コピーを生成するのに活用されています。また、企業のデータ分析部門では、自動的にビジネスインサイトを文書化するレポートを生成することで、効率性を高めています。

これらの応用により、時間とリソースの節約が可能になり、創造的な作業に注力できるようになっています。

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自然言語処理(NLP)とAIを活用した企業事例

NLPとAIを活用することで、企業が提供するサービスのユーザー利便性は大きく向上を遂げています。NLPは「システムが探しやすい問いかけのコツ」を不要とし、日常会話と同等レベルの言葉で問合せを行えるとともに、応答される文章もまた、人が作成した文章と変わらないものを得られます。

ここからは、いくつかの企業を取り上げ、NLPとAIを活用したサービスの事例をご紹介します。

株式会社メルカリ

メルカリは、生成AIと大規模言語モデル(LLM)を活用したAIアシスタント機能「メルカリAIアシスト」を提供しています。メルカリAIアシスタントは、出品者に対し「簡単に出品できて売れる」「購買者に欲しいものが見つかりやすくする」といったメルカリ内での重要なユーザー体験に貢献します。

生成AIはNLPを活用した最新の技術です。また、LLMはNLPにとってのデータベースにあたる、大量のデータとディープラーニングによって構築された言語モデルです。つまり、NLPのコア技術ともいえる存在です。

これらの技術を活用することで、あたかも「メルカリに詳しい人が隣で伴走してくれる」ようなユーザー体験を提供し、出品者には”商品名を変更してみませんか?”などといったサジェスト機能を提供します。

株式会社日立製作所

日立製作所は、ヘルスケア分野にNLPを活用しています。長年にわたり医学論文や診療情報などのデータを収集・蓄積・分析し、ソリューション開発を行ってきた実績があります。たとえば、新薬開発においては、医薬品の効果に影響を与える重要因子である「バイオマーカー」を効率的に探索する技術を開発しました。

従来、人の手で膨大な時間をかけて探索していた作業が、NLPによって大幅に短縮されるとともに、導き出した結果を説明できるようにする独自の技術によって、安全な新薬開発につなげることができます。この技術は、新型コロナウイルス感染症の大規模調査にも活用されています。

サイボウズ株式会社

グループウェアの大手として知られるサイボウズは、ノーコードで業務アプリを作成する「kintone(キントーン)」でも知られています。kintoneのオフィシャルパートナーである株式会社ショーケースは、kintoneでの業務をサポートするAIアシスタント「Associate AIHub for kintone」のプロトタイプを発表しました。

Associate AIHub for kintoneは、自然言語インターフェース(NLUI)を用いて、AIを様々な用途で操作します。これまでマウスやキーボードで操作していた内容を、テキスト入力、または音声入力による対話形式でAIに代理操作をさせます。

kintoneアプリの作成やプログラミングコードの生成など、これまでkintoneユーザーが行ってきた操作をAIが代理で実行することで、専門的な知識がなくともアプリ作成が効率的に行えるようになります。

株式会社朝日新聞社

朝日新聞社は、NLPの活用に取り組んでいます。代表的な技術として、自社の新聞記事を要約する自動要約生成API「TSUNA」を提供しています。TSUNAは、記事を要約し、見出しや要約文を生成します。朝日新聞が大量に保有している過去30年分の記事データを学習しており、要約文を掲載するメディアに応じて、見出しや要約文の長さをコントロールすることができるのが特徴です。

TSUNAによる記事要約は、新幹線の電光掲示板での速報テロップや、X(旧Twitter)での要約文Postなどに活用されています。また、TSUNAのAPIは外部にも提供されており、記事データの学習によって培った要約文の作成技術を、自社のPR文、技術文書の要約などに活用することもできます。

株式会社野村総合研究所

野村総合研究所(NRI)では、20年以上の実績を持つテキスト解析ツール「TRUE TELLER/TRAINAテキストマイニング」を提供しています。

自社に蓄積する顧客からの入電情報や、SNSにあふれる消費者の声などを収集・分析し、自社のサービスや商品開発に役立てるためのNLPエンジンを提供しています。例えば、通話内容を要約する機能によって、コールセンターのオペレーターの通話終了後の後処理作業を大幅に短縮することが可能です。

NRIにはデータ活用を支援するコンサルタントが多数在籍しており、解析ツールの提供だけでなく、顧客の課題に応じたデータ活用を支援しています。

自然言語処理(NLP)技術の最新動向

自然言語処理(NLP)技術は、ディープラーニングとAIの進歩により、急速に進化しています。

最新のトレンドには、感情分析や自動要約、言語間の即時翻訳などがあり、これらはビジネスや日常生活でのコミュニケーションを大きく改善しています。特に、多言語対応の能力は、世界的なアクセシビリティを高める重要な要素です。

これらの進歩により、NLPは人と機械の対話を自然で効率的にしています。

最新のNLP技術:進化するAIアルゴリズム

最新の自然言語処理(NLP)技術は、進化するAIアルゴリズムによって、かつてない速度で前進しています。

特に、トランスフォーマーというAIモデルは、文脈理解の精度を大幅に向上させています。この技術により、機械翻訳、自動要約、質問応答システムが精密になり、自然言語を理解するコンピュータの能力が飛躍的に高まっています。例えば、GPT(Generative Pre-trained Transformer)シリーズのようなモデルは、人間のように自然で流暢なテキストを生成できるようになりました。

進化するAIアルゴリズムによって、NLPは新たな応用領域を開拓しており、ビジネス、教育、医療など、多岐にわたる分野での革新が期待されています。これらの技術は、言語の壁を越えたコミュニケーションを容易にし、情報のアクセシビリティを向上させることに貢献しています。

未来のNLP:期待される革新と課題

未来の自然言語処理(NLP)は、さらなる革新と共に新たな課題にも直面しています。

技術進化の一環として、高度な理解と生成能力を持つAIモデルの開発が進んでいます。これにより、自然言語による精密なコミュニケーションが可能になりました。例えば、個別のニーズに合わせてカスタマイズされた情報提供や、複雑な人間の感情を理解する能力の向上が期待されます。

しかし、NLPの進歩は、大量のデータと高度な計算能力を必要とするため、大規模なデータセンターの増設と電力消費量の増加につながり、環境への影響が懸念されます。また、活用領域が拡大することにより、そのNLPを動かすエンジンともいえる様々な情報に対する機密保持やプライバシーの保護といった課題を引き起こします。さらに、偏見のない公平なアルゴリズムの開発も重要な課題です。

これらの技術的、倫理的課題を解決することが、NLPの持続可能な発展には不可欠です。未来のNLPは、これらの課題に対処しつつ、人と機械の間の自然な対話をさらに進化させることが期待されています。

AIによる自然言語処理(NLP)の将来性とビジネスへの影響

AIによる自然言語処理(NLP)の進化は、ビジネスのあり方を根本から変える潜在力を持っています。

NLPのさらなる発展は、企業が顧客データを解析し、個々の顧客ニーズに合わせてカスタマイズしたサービスの提供能力を飛躍的に向上させるでしょう。また、自動化された市場調査や競合分析により、戦略立案の精度とスピードが格段に高まります。さらに、多言語に対応するNLP技術は、グローバル市場へのアクセスを容易にし、異文化間のコミュニケーション障壁を低減します。

これらの技術革新により、企業は迅速かつ効率的にオペレーションを行い、競争優位性を確保することが可能になります。Jiteraでは、生成AIを始めとした最新のNLP技術を活用して、システム開発の知見が無くても群を抜くスピードでプロダクト開発ができるソリューションを提供しています。

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