データマイグレーションのメリット、注意点や移行に便利なツールなどわかりやすく紹介!

システムをリプレースする際、旧システムから新システムへデータの移行が必要な場合があります。

このデータ移行に関する一連の作業を「データマイグレーション」といい、IT技術を活用するビジネスにおいてよく目にする用語です。

一般的にデータマイグレーションは、同じ性質を持つデータを旧→新システムへ移行する際に行われますが、別のシステムで活用するために既存のデータを加工してから移行するケースも存在します。

データマイグレーションによってこれまで蓄積してきたデータの有効活用ができる一方、データ移行の作業はトラブルが発生しやすいため、慎重に移行計画を立てなければなりません。

今回は、データマイグレーションを行うメリットや注意点、移行に役立つツールをご紹介します。

Nao Yanagisawa
監修者 Jitera代表取締役 柳澤 直

2014年 大学在学中にソフトウェア開発企業を設立

2016年 新卒でリクルートに入社 SUUMOの開発担当

2017年 開発会社Jiteraを設立
開発AIエージェント「JITERA」を開発

2024年 「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」に選出

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執筆者 shu-ichi

とある企業のシステム管理者として10年以上勤めています。 自身の経験や知識を活かし、誰にでも分かりやすい記事をお届けしたいです。

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    データマイグレーションとは?

    データマイグレーションとは?

    データマイグレーションとは、「移住」を意味するMigrationから派生した言葉で、あるシステムから別のシステムへデータを移行する処理です。

    既存システムが実状に沿わなくなった、ハードウェアの保守期限が満了したなど、システムリプレースを検討する要因は様々あります。

    新しいシステムへ切り替わる度にデータを1から登録するのは、企業にとって労力の無駄であり、データの利活用も進みません。データマイグレーションを行えば、これまでのデータを余す所なく活用が可能です。

    ここでは、データマイグレーションを行う目的や重要性について解説します。

    データマイグレーションの目的・メリット

    データマイグレーションはシステムのリプレース、または、他システムでのデータ活用のために行うのが一般的です。

    企業にとって過去の販売データや技術情報は、重要な資産でもあります。それらの貴重なデータを古い環境で保存し続けると、ハードウェア劣化やセキュリティリスクによるデータ破損のリスクを避けられません。

    新しいシステムやハードウェア環境へデータを移行すれば、セキュリティリスクを低減し、さらには運用コストの抑制といったメリットも得られます。

    システムやハード・ソフトウェアの刷新

    システムやハード・ソフトウェアを刷新する際、データマイグレーションが行われます。

    最新技術が詰め込まれたシステムやハードを導入しても、データが無ければ何もできません。既存のシステムから必要なデータを移行すれば、新しいシステムを使って従来以上のパフォーマンスを発揮できます。

    既存システムから新しいシステムへデータマイグレーションを行う際は、特にデータ様式に注意が必要です。

    新しいシステムが既存システムと同一メーカーであれば影響は少ないでしょう。しかし、これまでと異なるメーカーのシステムを採用した場合、データの並び順や桁数など、データ様式が異なるために正常に移行できないケースがよく見受けられます。

    データマイグレーションを行う前は、新・旧システムのデータ様式を比較し、漏れなく移行できるか確認してから作業を開始するのがおすすめです。

    ハード・ソフトウェアのサポート終了によるリスク回避

    メーカーが提供するハードウェア・ソフトウェアは、サポート終了の日がいつか必ず訪れます。一般的にはサポート終了の1年前までに通知されるケースが多いようですが、市場の状況によって半年~3ヶ月以内と急に通知される場合も少なくありません。

    サポートが終了したハードウェア・ソフトウェアは、それらを使って何かしらの障害が発生しても、メーカーは修理対応などを行いません。修理が行われなければシステムを利用できず、システム内に保管されているデータも取り出せない事態に陥ります。

    このようなリスクを回避するため、既存のハードウェア・ソフトウェアはサポート終了前までにリプレースを行い、データマイグレーションを行いましょう。

    また、新しいハードウェア・ソフトウェアの調達はもちろんですが、データマイグレーションを行う際は、作業期間に余裕を持つのが重要です。

    データマイグレーションにかかる時間はデータ量に比例するため、移行対象のデータがどれぐらいあるか事前確認をおすすめします。

    レガシーシステムのブラックボックス化を防ぐ

    データマイグレーションは、レガシーシステムのブラックボックス化防止にも繋がります。

    レガシーシステムとは、企業において昔から稼働し続けているシステムで、長年稼働した結果、老朽化・複雑化してしまった、まさに過去の遺産(レガシー)と呼べる古いシステムを表します。

    これらレガシーシステムは業務に必要である一方、企業の成長を止める一因にもなりかねません。古いシステムは性能が乏しく、現代のシステムだと当たり前に搭載されている機能すら無いケースがよくあるからです。

    また、システムの内部構造を理解している担当者が退職してしまい、障害が発生しても誰も対応できず、業務が停滞するリスクも存在します。

    レガシーシステムが稼働するOS自体も既にサポート終了している場合も多く、セキュリティパッチが提供されないため、セキュリティリスクが存在し続ける点からしても、早い段階でレガシーシステムからの脱却を検討しましょう。

    企業の成長戦略に不可欠

    データマイグレーションは、システムのリプレース時に行う「データ移行」だけでなく、他システムで活用するために行うケースもあります。DWHへのデータ蓄積や、BIツールでのデータ利活用などです。

    ビジネスにおける成長戦略として、各種ツールを用いたデータの分析・活用は欠かせません。

    分析の元となるデータは企業内の各システムに蓄積されており、それらデータをシステム内だけに留めておくのではなく二次利用してこそ、企業の成長へと繋がります。

    データを活用するためにデータマイグレーションを行い、分析できるシステムへ積極的に取り込む仕組みづくりをおすすめします。

    データマイグレーションの重要性

    データマイグレーションは、確実かつ正確に実行されなければなりません。

    企業はこれまで蓄積したデータを分析して今後のビジネス方針を決めていきますが、このデータが不正確なものだと、誤ったビジネス方針に繋がってしまうからです。

    旧システムから新システムへ、誤りや欠落のないデータマイグレーションを行うためには、慎重な計画と漏れのない確認が必要です。

    それほどデータマイグレーションの重要性は高いと理解しておきましょう。

    パフォーマンスと競争力を高める

    先述のように多くの企業で未だにレガシーシステムが稼働しており、経済産業省が2018年に公開したレポートでは、日本企業の80%近くが何らかのレガシーシステムを使い続けているといった統計も示されています。

    レガシーシステムは長年にわたって構築された独自の仕様や、対応できる技術者の不在、セキュリティリスクへの対策不足が考えられ、使い続けるほど企業のパフォーマンス低下に繋がります。

    企業のパフォーマンス低下を防ぎ、競争力を高める方法は、デジタルトランスフォーメーション(DX)です。そして、DXを実現させるためにデータマイグレーションは欠かせません。

    レガシーシステムへ蓄積されたデータをDXへ繋ぐためにデータマイグレーションを行い、企業のパフォーマンスと競争力を高めましょう。

    保守コストの削減

    レガシーシステムを運用し続けると、保守コストの肥大化が懸念されます。開発者や担当者以外にはメンテナンス自体が困難であり、ハードウェア老朽化による故障が頻発した結果、復旧不可になるといった最悪の事態もあり得る状態です。

    また、一般的にレガシーシステムは、社内ネットワークでの使用を想定した設計のため、外部システムやクラウドサービスと連携するのが難しく、拡張性が乏しい側面もあります。そのため、保守コストがかかってでも使い続けるしかない状況に陥りやすくなります。

    保守コストを削減するためには、新しいハードウェア・システム環境へ刷新するのはもちろん、ハードウェアに依存しないクラウドサービスやオープンプラットフォームへ移行する方法も考えられます。

    新環境へ移行する際は、データマイグレーションを行えば既存データの活用も可能に。保守メンテナンスも簡単になり保守コストを削減でき、稼働後から機能を追加する拡張性の向上も期待できます。

    蓄積してきた会社の資産を有効活用

    これまで蓄積してきた大量のデータは、企業にとって大切な資産の一つです。新しいシステムへリプレースするごとに資産(データ)を切り捨てていては、企業の成長に繋がりません。

    新しいシステムやプラットフォームへ移行できても、肝心要のデータが無ければ何もできないのと同じ状態です。そのため、データマイグレーションは確実に行う必要があります。

    データマイグレーションを計画するのであれば、既存システムの調査・分析を行い、移行仕様の設計から作業の実施、そして最終テストまで含めた綿密な計画を立てなければなりません。

    一貫したデータマイグレーション計画を立てれば、日常業務への影響を抑えつつ、蓄積してきた会社の資産の有効活用が可能となります。

    データマイグレーションの方式

    スムーズかつ確実なデータマイグレーションを実施するには、あらかじめどの方式を採用するか決めておくのが大切です。

    データマイグレーションの方式にはいくつかタイプがあり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。どの方式を採用すべきか、既存システムの性質や日常業務への影響を考慮して決定しましょう。

    ここでは、3つの主なデータマイグレーションの方式を解説します。

    ビッグバン

    ビッグバンとは「一括移行方式」とも呼ばれる方式です。旧システムから新システムへ、すべてのデータを一気に移行する方式となっています。

    この方式は、旧システムからデータマイグレーションに必要なデータを抜き出した後、旧システムを完全停止させるのが特徴。完全停止させる理由は、データ抜き出し後に新しいデータが追加されるのを防ぐためです。

    新しいデータが追加されると、再度データの抜き出しを行わなければならず、データマイグレーションもやり直しとなる可能性があります。

    また、短期間でデータマイグレーションを完了できるのもこの方式のメリットです。一刻も早く新システムを立ち上げたいなど、移行作業にあまり時間をかけたくない場合におすすめです。

    一方、これらのメリットは一部のデメリットにもなり得ます。

    旧システムの完全停止を行うと日常業務への影響は避けられませんし、データマイグレーションを短期間で行う=必然的に移行作業の負荷が高くなります。

    トリクルダウン

    一気にデータ移行を行うビッグバン方式と異なり、トリクルダウンは「段階移行方式」とも呼ばれる方式です。新システムで必要となるデータを、長期間かつ複数回に分けて旧システムからデータ移行を行う方式となっています。

    トリクルダウン方式であれば、旧システムを停止させる必要はありません。通常どおり日常業務を行いつつ、並行して新システムへ必要なデータの抜き出しも進めていきます。

    データの抜き出しを複数回に分けることで、追加された新しいデータも含められ、データの抜き出し中に不備が発覚しても対応しやすいのがメリットです。

    一方、デメリットとしては新システムへの移行に時間がかかる点です。革新的な機能がある新システムであっても、データマイグレーションが完了するまでは使用できません。

    当然、その間は旧システム・新システムどちらも稼働させなければならず、業務負担や運用コストが余計にかかる点を考慮する必要があります。

    混合マイグレーション

    一気に移行する「ビッグバン」、段階的に移行する「トリクルダウン」の特徴を兼ね備えた方式が「混合マイグレーション」です。ハイブリッド方式とも呼ばれます。

    ”一気にまとめて”と”段階的”は相反すると思えますが、この方式は、一括で抜き出すデータと段階的に抜き出すデータをデータの性質によって分けて行うのが特徴です。

    一例として、顧客・取引先・商品情報といったデータは一括でデータ移行して、個別の取引データは直近のものから順次データ移行するといった方法となります。

    この方式のメリット・デメリットは、「ビッグバン」「トリクルダウン」2つの方式のちょうど中間程度です。段階的にデータ移行するよりも短期間で完了し、旧システムの停止も短い時間で対応可能となります。

    2つの方式のいいとこ取りに思えますが、データマイグレーションにおける具体的な計画とスケジュール管理の難易度に関しては、どの方式よりも精密さが求められる点に注意が必要です。

    データマイグレーションの手順

    引用元:Freepik

    ここからは、具体的なデータマイグレーションの手順について順を追って解説します。基本の大まかな流れは、以下のとおりです。

    1. 事前準備
    2. 計画の設計
    3. データの前処理
    4. テスト
    5. 本番作業
    6. 移行後の検証

    データマイグレーションは単純な作業ではありません。事前準備やデータの前処理を注意深く行わなければ、企業側に思わぬ損害を与えかねない点に留意しましょう。

    各手順ではそれぞれ気を付けるべき事項があるので、本項で併せて解説します。

    プロジェクトの準備:移行範囲やリスク、リソースを見積もる

    具体的なデータマイグレーション処理へ移る前に、一連のプロジェクトに係る準備が必要です。

    データ移行の対象となるシステムを分析し、「どのデータを」「どの程度の期間まで」抜き出すかデータの移行範囲、データ抜き出しや失敗時のリスクを把握、データマイグレーションに必要となる人的・物理的・時間といったリソースを見積もらなければなりません。

    データの移行範囲を決めるのは、そのままデータマイグレーションに必要な時間に反映されます。所要時間が想定以上なのであれば、データの移行範囲や方式自体の見直しを検討しましょう。

    また、データマイグレーション作業には余裕あるリソースの配分も必要です。処理を行う機器の準備はもちろんですが、計画の立案や処理の実行、結果の確認など、様々なタイミングで人的作業も求められます。

    さらにこのプロジェクト準備の段階を細分化すると、「ワークロードの管理」「データ量」「完了までの時間」についても分析が必要になるため、これらについても解説します。

    ワークロードの管理

    ワークロードとは英語だと「Workload」、日本語では「仕事量」や「作業負荷」と訳され、IT技術においては「機器に実行させる処理の負荷の大きさ」を表します。

    データマイグレーションの処理は、機器に大きな負荷がかかります。特にビッグバン方式でデータ抜き出しを実行するのであれば、ワークロードに耐えうる機器で処理を行わなければなりません。

    データの抜き出し中は、処理中断やデータの破損を招く可能性があるため、機器を触るべきではありません。日常業務を行わない夜間帯などに処理するのをおすすめします。

    データの抜き出し作業の遅延は移行スケジュールへ直接影響してくるため、機器にどれだけの負荷がかかっているか定期的なモニタリングを行いましょう。

    このように適切なワークロードの管理を行い、データの抜き出し作業が滞らない事前準備が求められます。

    データ量

    データマイグレーション対象のデータ量がどの程度になるかも事前確認がです。

    通常、抜き出したデータを保管するためにはストレージ領域が必要ですが、そのデータの規模によって準備するストレージも変わってきます。

    比較的データ量が小規模なのであれば、既存のストレージ装置や、市販されている一般的なNASなどでも対応可能です。

    しかし、データ量が大規模であれば、データマイグレーション用のストレージ装置の新設や大容量オンラインストレージを契約するなど、新たなインフラが必要になる可能性があります。

    また、クラウドサービスへのデータマイグレーションを行うのであれば、サービス事業者側が提供するデータマイグレーション専用のデバイスを利用するという手もあります。

    このように新しいインフラは別途コストが必要になるため、データ量がどの程度になるのかを事前に把握して置かなければなりません。

    完了までの時間

    データマイグレーションが、どれだけの時間で完了するか把握するのも事前準備として大切な要素です。完了までの時間によって、今後の移行スケジュール全体に大きく影響するといっても過言ではありません。

    完了までの時間は、データ抜き出しに使う機器や、ネットワーク環境で大きく左右される点に注意してください。これらの要素を加味し、完了までの時間を正確に算出するのは困難ですが、大まかな時間を出すだけであれば方法が無いわけではありません。

    それは、マイグレーションテストを少量のデータだけで行う方法です。この方法であれば、移行完了に要する大まかな時間の把握も可能です。しかし、データマイグレーションの規模が大きくなるほど、完了目安としていた時間と乖離しやすくなりますので、その点には注意しましょう。

    移行計画の設計をする

    プロジェクトの準備が整ったら、次に移行計画の設計を行います。その際は、計画内容をまとめた移行計画書の作成も必要です。移行計画書に盛り込む内容の一例をご紹介します。

    • システムリプレースの目的
    • データマイグレーション方式
    • 移行データの要件定義
    • 社内におけるデータマイグレーションの実行体制
    • 作業スケジュール
    • データマイグレーションにおいて考え得るリスクと対策

    データマイグレーションを開始するタイミングをはじめ、システム停止を行う日時や時間帯、日常業務への影響など、移行に伴う作業やイベントについては社内共有しておきましょう。

    計画書に盛り込むべき上記の中で、データマイグレーションで予測されるリスクと、そのリカバリー方法については特に重要な点として記載します。

    データマイグレーションに失敗した場合、どのように旧システムを復旧させるのか予め計画に盛り込んでおけば、万が一の事態で慌てることがありません。

    データクレンジングと前処理を行う

    データクレンジングとは、データマイグレーション対象とするデータの中から、テストデータなど不要なものや、イレギュラーな異常値データなどを省いておき、”データを綺麗にする”作業を表します。

    旧システムに入っているテストデータは、移行先である新システムには不要です。不要なデータ分のデータ量が大きくなり、かつ、抽出に余計な時間を使ってしまうため、データマイグレーション対象のデータには含めずに削除しておくのが推奨されます。

    また、イレギュラーな異常値データも省いておくのが無難です。何かしらの要因によって発生してしまった異常値データは、新システムに取り込むべきではなく、また、データマイグレーションが正常に行われない原因にもなりかねません。

    データマイグレーション範囲のデータの解析をしっかりと行い、”データの洗浄”と前処理を行っておきましょう。

    テストを実行する

    データマイグレーションの準備が整ったら、次は移行テストの実行です。いきなり本番移行を行い、予期せぬ事態に陥らないためにも入念なテストが求められます。

    テストの内容については、事前にテスト計画書の作成が必要です。基本的には本番移行と同様の手順で行いますが、テスト計画書には以下の点を盛り込むのが推奨されます。

    • 移行作業の正確性をチェックする
    • データマイグレーションツールの処理時間
    • データマイグレーションの実行手順
    • 計画していたリスク対策(リカバリー対応)が正常に機能するか

    テストで特に確認すべきなのは、処理時間は想定の範囲内なのか、実行手順に問題がなく正常に移行できているか、予め計画していたリスク対策(リカバリー対応)が働くかです。これらの点は重点的に確認しておきましょう。

    テスト結果と計画内容の乖離が認められる場合は、本番のプロセスには移行せず、計画の見直し→再テストを実行を繰り返します。

    本番移行を実行する

    テストに問題がなければ、本番であるデータマイグレーションを行います。

    移行計画書の手順どおりに本番環境でのデータ抜き出しを実行します。抜き出しの際にシステム停止が発生するなど日常業務へ影響があるのであれば、改めて社内で周知しておくと良いでしょう。

    データマイグレーションが長期間に渡って行われるのであれば、進捗状況の定期的なモニタリングが必要です。

    移行計画よりも大幅に遅れている、もしくは、日常業務への影響が顕著に出ているなどが認められた場合、データマイグレーションの一時停止や、中止も検討するべきです。

    テストでも発生しなかった不慮の事態なのであれば、本番特有の現象である可能性が高いため、データマイグレーションの中止も視野に入れ、改めて移行計画やテストの見直しを行いましょう。

    移行後の検証・調整や変更を行う

    データマイグレーションが完了したら、移行後の検証・調整や変更を行います。

    まずはデータマイグレーションの処理ログを確認して、移行に失敗しているデータや、処理が停止していた時間などが無いか全体的に確認しましょう。

    そのようなデータが見つかった場合は詳細内容を控えておき、どのような形で新システムへデータを入れ込むか検討が必要です。新システムへ手入力する方法もありますが、データ量に応じて適切な方法を検討しましょう。

    新システムが既に稼働できる状態であれば、データマイグレーション後に新システムの動作を確認する方法もあります。新システムで問題なくデータが参照できるのであれば、データマイグレーションは正常に完了していると判断可能です。

    大量のデータマイグレーションを行ったのであれば、多少のエラーや想定外のデータは十分起こり得るため、別途調整を行いデータを整えていきましょう。

    データマイグレーションを便利に実施するツール・ソフト

    引用元:Freepik

    データマイグレーションでの移行先は、社内にサーバーと端末を置く従来のオンプレミス環境だけでなく、近年急速に普及し始めたクラウドプラットフォームも選択肢になり得ます。

    クラウドプラットフォームを利用するには高速な通信インフラが必要となりますが、社内にハードウェアを置かないのは企業にとってもメリットが多く、利用料金と従来環境で発生していたコストを比較して検討するのをおすすめします。

    ここでは、既存のオンプレミス環境からクラウドプラットフォームへ移行する際に役立つツールをご紹介します。

    AWS Database Migration Service

    引用元:AWS

    AWS Database Migration Service(略称:AWS DMS)とは、既存のオンプレミス環境にあるデータベースを、Amazonが提供するクラウドサービスプラットフォーム「AWS」へ移行できるツールです。

    AWS DMSの特徴として、互換性のあるデータベースであれば、異なる種類であってもデータマイグレーションが可能な点が挙げられます。

    例えばオンプレミス環境にあるMySQLデータベースを、AWS上のMariaDBやAmazon Aurora MySQLへデータ構造を気にせず移行が可能です。

    また、移行元となるデータベースがSQLを使用していなくとも、AWS上のデータベースへ移行できる点もメリットといえます。

    Azure Database Migration Service

    引用元:Microsoft

    Azure Database Migration Serviceとは、既存のオンプレミス環境にあるデータベースを、Microsoftが提供するクラウドサービスプラットフォーム「Azure」へ移行できるツールです。

    オンプレミス上のSQLserverデータベースを、Azure上に生成するAzure SQL Databaseへ移行するが主な使用方法となります。

    Azureはクラウドプラットフォームのため、通常はオンライン上でデータの転送を行いますが、オフライン転送にも対応しているのが特徴です。

    オンプレミス環境にあるデータを可搬デバイスへ保存し、Azure データセンターへ送るとデータのアップロードを行ってくれます。

    Google Cloud Platform の BigQuery Data Transfer Service

    引用元:Google Cloud

    Google Cloud Platformで提供しているBigQueryとは、ビッグデータ解析用のデータウェアハウスです。そのBigQuery内のツールとしてData Transfer Serviceが存在しており、BigQueryへのデータマイグレーションで活用できます。

    転送を行うデータは独自の暗号化が施され、セキュリティを担保しつつデータマイグレーションが可能です。

    サポートされるデータソースは限定されていますが、Google Software as a Service上で動作するものであれば多くのアプリが対応しています。

    Integrate.io

    引用元:Integrate.io

    Integrate.ioとは、専門知識やプログラミング技術不要で扱えるデータパイプラインプラットフォームです。Integrate.ioが提供するクラウドプラットフォームへのデータマイグレーションを標準で搭載しています。

    データパイプラインとは、データ分析における手作業を減らすために考案された仕組みであり、データの確保や分析、検証のプロセスを集中管理するものです。

    Integrate.ioでは様々なデータソースから取り込みが可能で、取り込んだデータをクラウドプラットフォーム上のデータベースや、データウェアハウスへ活用できます。

    Oracle Cloud Migrationサービス

    引用元:Oracle

    Oracle Cloud Migrationサービスとは、データベースソフトウェアを開発している「Oracle」が提供するパブリッククラウド(Oracle Cloud Infrastructure)へ、Oracleデータベースのデータマイグレーションが行えるサービスです。

    2022年にリリースされた比較的新しいサービスであり、オンプレミス環境にあるOracleデータベースを、データ構造を変えずにクラウドへ移行できます。

    社内で蓄積されてきたOracleデータベースに手を加えることなくスムーズに移行できるため、データベース管理の負担を減らしつつ、社内資産の有効活用が可能です。

    データマイグレーションを便利に実施するツール・ソフトの選び方

    引用元:Freepik

    データマイグレーションをサポートするツールは多種多様ありますが、どれが自社に最適なのか選び方の基準が分かりにくいかもしれません。

    データマイグレーションの対象とするデータの種類や、なぜ移行を行うかの目的によって、適切なツールが異なってくる点に注意が必要です。

    ここでは、データマイグレーションを便利に実施するツール・ソフトの選び方について解説します。

    さまざまなフォーマットに対応しているか

    データマイグレーションの対象となるデータの形式は様々です。CSVやXMLなど一般的なソフトでも取り込める形式や、データベース自体を移行するケースもあります。

    そのため、データマイグレーションを実施するツール・ソフトは、さまざまなフォーマットに対応しているか確認するのがおすすめです。

    移行先も同じデータ形式であればデータマイグレーションは容易ですが、移行先のデータフォーマットが異なるのであれば、抽出したデータの加工が必要となるなど、移行前に手作業が発生する可能性があります。

    手作業ではミスが発生する可能性も高まるため、できるだけ多くのデータフォーマットに対応しているデータマイグレーションツールを選べば、人為的なエラーを防止が可能です。

    直観的な操作で設定できるか

    データマイグレーションツール・ソフトは、使いやすさも肝心です。有用な機能がたくさんあるのに、高度な専門知識を持たないと操作すらおぼつかないツールでは意味がありません。

    利用したい機能がどの画面を開けば使えるのか、操作画面を見て直感的に扱えるツールであるのが望ましいです。

    また、サポート面が充実しているかどうかも選定のポイントになります。

    データマイグレーションは慎重に行わなければならず、不明点があってもそのまま作業を進めてしまっては、あとで取り返しがつかない移行結果になりかねません。

    ツールの性能は十分か

    データマイグレーションは大量のデータを取り扱うため、ツール自体の性能も重要となります。

    例えば選んだツールが、1回の処理で1万件までしか処理できない場合、100万件の移行データを準備するために100回も操作しなければなりません。

    このようにデータマイグレーション作業の所要時間は、ツールの性能によって大きく左右されます。

    データマイグレーションにかける手間をできるだけ抑えるには、いくつかのツールの性能を比較し、コスト面とのバランスを考慮してツールを決定しましょう。

    特に新システムの稼働が迫っている場合など、データマイグレーションにかけられる時間が限られている場合は、ツール性能を重視して選ぶのをおすすめします。

    データマイグレーションのまとめ

    引用元:Freepik

    いかがでしたでしょうか。今回はデータマイグレーションの概要やメリット、注意点や移行に便利なツールを紹介させて頂きました。

    旧システムから新システムへリプレースを行う場合、これまで蓄積してきたデータを移行しないという選択肢はありません。データは企業において今後の成長戦略や運営方針を決定する情報であり、大切な資産であるからです。

    しかし、その重要なデータを適切に新システムへ移行できなければ、そのデータは信用できないものに成り下がってしまいます。

    そうしないためにも、データマイグレーション計画は時間に余裕を持って立案し、テストや本番作業をを丁寧に行うことをおすすめします。

    データマイグレーションの方式やツールの選定方法、その他データマイグレーションについてお悩みであれば、ぜひ株式会社Jiteraへお問合せください。

    貴社の課題点をヒアリングさせて頂き、解決へ向けたご提案を行わせて頂きます。

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