物流業界に多くの課題が存在している中で、その改善を目指して実用化の検討が進められているのがドローン配送です。現状、物流業界では、人材不足や運送トラックによる交通状況の悪化などの課題が多数あります。これらの課題に対してドローン配送を使うことで解決できるのです。
ドローン配送とは、小型の無人飛行機体を利用して荷物を配送することを言います。現状トラックを使って人が配送している荷物をドローンで自動化できれば、多くの物流業界の課題を解決できるのです。一見夢のように感じられるドローン配送ですが、実用化は可能なのでしょうか。この記事では現状や今後も展望も含めて解説します。
2014年 大学在学中にソフトウェア開発企業を設立
2016年 新卒でリクルートに入社 SUUMOの開発担当
2017年 開発会社Jiteraを設立
開発AIエージェント「JITERA」を開発
2024年 「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」に選出
ドローン配送とは?特徴や仕組みを解説
ドローンとは、無人で遠隔操作や自動操縦で飛行できる200kg以上の重量の機体のことを指します。そのドローンを利用して配送を行うことがドローン配送です。
2024年問題もあり、物流業界の課題は年々影響力を高めています。そんな中ドローン配送の必要性はより高まっていくでしょう。では改めてドローン配送とはどのような仕組みであり、特徴を持っているのか確認していきましょう。
ドローン配送の定義とは?
ドローン配送の定義とは、ドローンと言われる小型の無人飛行機を利用して商品を配送することです。ドローン配送ではGPSやセンサーなどで自動的にルートを飛行し、4つほどプロペラがついているヘリコプターのようなタイプのドローンが利用されています。このドローンを利用し、届け先までの運送を自動的に行うことができるのです。
物流業界は元々課題が多く、その課題をloTやAIなどの技術で管理しようとするスマートロジスティクスという考え方が重要視されていました。
このドローン配送もスマートロジスティクスという考え方の中で進められていて、これにより物流業界の課題の解決を推進しようと考えられています。
ドローン配送の特徴
ドローン配送の大きな特徴は以下2点があげられます。
- 無人での配送
- 交通状況に左右されない
まず1点目は無人での配送という点です。配送時今まではトラックなど車を利用し配送していたため、必ず人の手が必要になります。その点、ドローンはGPSやセンサーを利用して自動で配送を行ってくれるため配送時に人の手はかかりません。事前のコース設定や、そもそもの導入技術などのみに人材を確保できれば、その後の配送は自動で行うことができます。
2点目は交通状況の影響を受けないという点です。トラックでの配送は渋滞などに巻き込まれることで配送スピードに大きく影響を受けます。また、インフラの整備状態やトラックの通れない細い道など、多くの弊害がある中で最短ルートを出して配送しているのです。この点においてドローン配送では一切の影響を受けません。しかし天候の影響に関してはトラック配送より強く影響を受けてしまうため、その点の対策は必要になります。
ドローン配送の仕組み
ドローン配送はどのような仕組みで行われるのでしょうか。大まかな流れは以下のようになっています。
- 配送前準備
- 出発準備
- 配送
- 到着後対応
大まかな流れは現状のトラック配送と変わりありませんが、対応内容に関していくつか変更する箇所が発生します。最初の配送前準備では、受け渡しにあたる帳簿を作成し効率的なルートを作成する必要があります。トラック配送でも同様の対応を行いますが、ドローン配送の方が考慮する内容が少なくなり、容易にルートを確定できるかもしれません。
その後の出発準備では、ドローンの飛行可否を判断します。ドローンは天候の影響を大きく受けるので、細かく規程を作成し配送可否を早く簡単に判断できる仕組みづくりが大切です。現状では天候に関するデータベースを利用して正確かつスピーディに判断が行えるよう検討されています。
その後の配送は基本的にドローンによる自動配送です。しかし自動配送でも、人の目による監視が必要になるでしょう。後述しておりますが、安全性を確保のため対応が必要になります。最後の到着後対応は利用者の方でドローンから荷下ろししていただき、配送完了の確認が取れるような仕組みになっております。
ドローン配送のメリット
ドローン配送を行うことで得られるメリットは複数ありますが、この記事では4つのメリットを紹介させていただきます。
人材不足や交通への影響など多くの課題を抱えている物流業界にとってはどのメリットもより大きな影響を及ぼすものとなっています。また、ドローン配送実用化によるメリットは、物流業界の企業にとっても、配送を受ける届け先の方にとってもメリットとなるものになっています。だからこそドローン配送の実用化は確実かつ迅速な実用化が求められているのです。
配送コストの削減
1つ目のメリットが配送コストの削減です。ここでいうコストとはお金と時間、また人のことを指しています。物流業界に限らない話ではありますが、人材不足や社員の高齢化が広まっています。その中でほぼ無人で配送を行えるドローンを活用できれば、少ない人数で多くの配送を行うことができるのです。
また、ドローンは導入にお金がかかっても燃料費や維持費があまりかからないため、お金も削減できます。効率的なルートを作成しても結局再配達などでそのルート通りにいかないことが多いからこそ、運送にあたるコストが少なくなる影響は大きいです。
そして時間の観点でも、効率的に計算して配送を行うことができ、移動の手間も少ないため、再配送のコストも削減できます。
このようにドローン配送を行うことでトラックを使って人が配送するより、多くのコストを削減できるのです。
配送スピードの向上
2点目は配送スピードの向上です。ドローンを利用する場合道路を利用しなくてよくなるため、渋滞の影響で遅くなることや、トラックが通れる道を選ぶための回り道などを行わなくてよくなります。また、空の道を通ることで直線距離での配送が可能になるのです。
ドローンの移動速度はおよそ時速30kmです。トラックの最大速度に比べると遅いかもしれませんが、渋滞や信号待ちがないことを考えると、それでも配送スピードは早くなるでしょう。また時間を正確に計算できるのも魅力です。
これらのメリットにより、トラックでの配送に比べて早くお客様のもとへ配送を行うことができるのです。
交通渋滞の改善
3点目は交通渋滞の改善です。配送にあたり交通渋滞に巻き込まれる心配をしないで良いと前述しましたが、それ以前に配送トラックの数が減ることで交通渋滞の改善を見込めます。公道はもちろん、高速道路など多くのトラックが走行しているシーンをよく見かけると思います。それらのトラックが少数になれば単純な交通量が減ることが推測できます。
また路上に停車する配送トラックなどによって交通が妨げられていることもございます。交通ルールに沿ってはいるものの、その大きさ故に他の車の通行の妨げになってしまうこともしばしば。このような配送トラックによる交通の妨げも緩和することができます。
地理的制約の緩和
4点目は地理的制約の緩和です。トラックでの配送は大きい車体であるが故にインフラ整備が整っていないと走行が難しいことがあります。特に過疎地や離島ではインフラが整っていない地域も多く、険しい道が多数存在するところも。合わせて過疎地や離島に住んでいる方も日用品などを買いに行くことが難しいため、配送の需要は高く、どうにか配送をしなくてはならない状況になっています。
このような状況の離島・過疎地に向けての配送でも、ドローン配送であれば制約が緩和されます。険しい道もそもそも使わなくなりますので、インフラが整っていてもいなくても関係なく商品を届けることができます。
また、震災などの影響で道が通れない場合もドローン配送を行うことで物資を届けることができるのも大きなメリットです。道の影響を受けないということは、多くのシーンに対応することができます。
ドローン配送の課題
メリットが多く、今後の物流業界においてなくてはならないドローン配送ですが、まだまだ課題が多いのが現状です。導入するにあたり、安全性は十分なのかバッテリーが途中で切れたりしないのか、法律としては問題ないのかなど解決しなくてはいけない課題がたくさんあります。
それぞれの課題の詳細から、現在どのような対応が行われているかなど含めて確認していきましょう。
安全性の確保
ドローンを無人で動かすにあたり不安なのは安全性です。天候や荷物、バッテリーの影響などで墜落してしまうことが懸念されます。もし墜落したドローンが人や家に当たってしまった場合の被害は計り知れません。
また、盗難といったセキュリティ面も課題視されています。配送中の無人ドローンを狙って、荷物を盗まれたり壊されたりする可能性はもちろん、ドローンそのものが盗まれる可能性も少なくありません。
このような可能性を少しでも減らすために天候やルートの事前確認の徹底や、配送中のサポート体制の整備も準備が進められています。
バッテリー持続時間の制限
ドローンは電気にて動いています。そのため長時間動かすためにはバッテリー容量を必要十分に搭載しておく必要があるのですが、元々数十分ほどしか飛行できないものや、荷物の重さの影響で飛行時間が大きく減ってしまったりすることがありました。メリットとしてあげた離島や過疎地への配送も、長時間の飛行と重さへの対策が練られなければ実現は難しいです。
また、荷物の重さによってもバッテリー消耗に影響するため、軽量で少ない消費電力で配送できるドローンが必要になります。
こちらの課題に関しては多くの企業の実証実験によって、解決の兆しにあります。実際山岳への配送や離島への配送を実現した事例も。しかし運用となるとその充電を必ず確認することも重要になるため、運用面での精度向上も検討すべき課題になります。
法規制
ドローン配送を行うにあたり重要な以下の法規制に関して解説します。
- 飛行場所
- 飛行方法
- 操縦者の資格
- 操縦する機体
まず飛行場所に関して、ドローンの飛行が禁止されている領域は航空法や民法、道路交通法などの影響によって変わります。一例になりますが、空港の周辺や人口集中地区の飛行は禁止です。これらの領域は国から許可得ることで飛行可能になる場所もあります。
2つ目は飛行方法です。飲酒しての飛行や他人に迷惑をかけるような飛行はもちろん禁止です。その他夜間の飛行や目視外の飛行に関しても承認を得なければなりません。
3つ目は操縦者の資格です。ドローンの操縦は基本資格がなくても誰でも可能ですが、2022年にドローン操縦の国家資格ができました。この資格を取得することで、申請が不要になったり、難しい操縦も許可されるようになったりします。
4つ目は操縦する機体です。2022年から重さ100g以上のドローンが航空法での規制対象になりました。該当の条件に当てはまるドローンは国土交通省に申請しなくてはなりません。
このような法規制があるなかでどのようにドローン配送を行うかを検討することが重要となっています。
天候に左右されやすい
ドローン配送の実現が叶った場合、運用において大きな課題が天候の影響を大きく受けるという点です。雨や風はもちろん、気温などによっても配送できる荷物が限定されるため細かい条件設定が必要になります。
このような課題を防ぐために細かい天候データとの連携が必要不可欠です。この点に関してはドローン配送の準備の一環で合わせて行われていますが、急な天候の変化などにどのように対応するかが難しいところになります。
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ドローン配送のおすすめサービス
Amazon Prime Air
Amazonでは「Prime Air」というドローン配送サービスを2o24年後半で実用することを発表しております。こちらはイタリア・イギリス・米国内主要都市での実施予定です。対象地域も増やしていく予定にあり、2024年末には米国内都市3箇所目を目的としています。
利用するドローンは騒音が少なく軽量、またより長い距離の飛行が可能であるMK30ドローン機です。これを利用することにより、小雨程度であれば飛行可能になるなど天候による影響も少なくなると予想されています。またAmazonの配送ネットワークにドローン配送が統合されます。今後の運用としては一部の当日お急ぎ便に関してドローン配送を行なっていくそうです。
Amazonでは国とも連携し、何度もテクノロジーの改良を重ねてドローン配送の準備を進めています。Amazonで設定した安全性の基準が商業ドローン配送業界全体の安全性の基準を引き上げるものになるよう、最高基準での設計を目指しているのです。
楽天ドローン
楽天では、グループ会社のSKY ESTATE株式会社の社名を変更し、楽天ドローンという会社でドローンの開発を進めています。楽天ドローンでは、2016年にゴルフ場のデリバリーサービスとしてドローン配送を行いました。これをきっかけにドローン配送を各地で行っております。
ドローンのメリットである過疎地や離島へ住んでいる方への配送も実現しています。本土のスーパーから物資を約4km離れた三重県の間崎島への配送を行いました。他にも長野県の白馬村で山岳へのドローン配送など、ドローンを生かしたトラックでの配送が難しい場所へ配送しています。
このようにすでに多くの実績があり、ドローンのメリットを最大限活用しています。より精度を高くしていき、生活の当たり前になる日も近いのではないでしょうか。
その他のサービス
その他のドローン配送のサービスとしてあげられるのが、記憶に新しい能登半島地震でも活用されたドローン配送です。
能登半島地震では被災地となってしまった地域への交通は土砂崩れや地割れなどの影響でトラックや車も向かうのが難しい孤立してしまった地域があり、その地域への物資の配送が課題になっていました。そんな中、ドローン関連の企業で作られている日本UAS産業振興協議会では、輪島市への薬や軽油の配送を行っています。
このようにドローンでの配送は災害時に特に活用メリットが存在しています。普段の日常使いをスタンダートとし、災害時にもより安全に多く活用できるような状態を作っていけると良いでしょう。
ドローン配送の実証実験と実用化の見通し
すでに多くの事例があり、多くのメリットを見込めるドローン配送ですが、今後はどのようになっていくのでしょうか。現在行っている実証実験の状況や実用化に向けた現状・課題・展望を改めて解説いたします。
実証実験の状況
すでに多くの実証実験を重ねているドローン配送ですが、どのような実証実験が行われてきたのでしょうか。
もうすでに楽天が行っていますが、離島への配送や山岳など、距離と高度を意識した実証実験は多数行われてきました。それ以外にも夜間飛行の実証実験も行われていて、さまざまな環境でのドローン配送を想定して実験が行われています。
最近ではANAがレベル4にあたるドローン配送の実証実験を行いました。レベル4とは有人地帯であり、補助者なし目視外での飛行のことを指します。自社操縦士でのレベル4での実証実験は国内で初めての事例となります。こちらの実験ではより少ない人数での配送を実現するために最適飛行経路の選定や、ラストワンマイルでの配送が可能かなど実用に向けた細かな項目を検討するための実験となっています。
実用化に向けた課題と展望
今後一般配送でもドローン配送を取り入れる実用化を目標としている中で、まだ実現できない壁となる課題があるのも確かです。以下が実用化にあたる大きな課題になります。
- 安全性の確保
- 天候の影響
- 複数のドローンが動くことによる、リソースの用意
安全性の確保に関しては、いくら実験しても足りないようなものですが、やはり墜落などによる被害を絶対に起こさないよう、徹底した研究が必要になります。天候による影響も、小雨程度なら飛行可能であるドローンなどもありますが、雨や雷は難しいのが現状です。
また、実用化を行う場合、多くのドローンが利用されることが想定されます。しっかりリソースを用意し、万全の状態で実用化することが求められます。
今後の展望としては2028年までに山間部・離島をはじめ全国各地で実用化を目標としています。これにより、買い物弱者と言われる過疎地や離島の方の買い物がしやすくなるだけでなく、交通渋滞の緩和なども見込めるのではないでしょうか。
また、震災での利用も促進していき、物資の受け渡しができない、難しい場所がなくなっていくことを望みます。
ドローン配送が可能なエリア
現在ドローンが使われており、利用が可能なエリアもございます。以下に実証実験内容と合わせて地域をまとめていきます。
- 新潟県新潟市:駅前という人口集中地区でドローン配送実証を実現。日本初の試み
- 長野県伊那市:山間部の集落への商品配達サービス「ゆうあいマーケット」を実施。当日の注文から配達可能
- 石川県加賀市:3D マップを使ったドローンAI管制プラットフォームを構築。 医薬品配送にて実証
- 和歌山県印南町:マニュアル作成と育成強化を実施。「災害時に誰でもドローンを飛ばせる体制」を確立
- 島根県美郷町:災害にも強く不便のない街を目指し、ドローンを活用。災害時に備え、避難所を「空の駅」として活用
上記にようにすでに実例があり、ドローン配送の活用を進行している地域もございます。町全体での活用を行っている場所や、ドローン活用をより便利にするために、ドローンAI管制プラットフォームを作成するなど、活動の仕方はさまざま。
お住まいの地区でも推進が進められている可能性もあるため、ぜひ一度検索のうえ確認してみてください。
ドローン配送のまとめ
ドローン配送は現在の物流業界での課題を改善するメリットが多数存在する方法です。運送トラックによる渋滞の緩和や、物流業界の人手不足などの改善を見込めます。ドローン配送にも天候の影響や安全性などまだまだ課題はございますが、大手企業を筆頭に着実にその課題の解消が進んでいます。
現在すでにある事例から見ても、ドローン配送に多くのメリットがあることは明らかです。交通の便が悪い過疎地や離島への配送や、長期休暇などの要因による渋滞など道路状況に左右されずに配送することが可能です。また、震災発生時、道路が使えない状況に陥ったとき、トラックでの配送は不可能になります。そのようなシーンでもドローン配送を利用することで、問題なく物資の運搬を行うことができるのです。
今から自分の会社でもドローン配送に挑戦したいという方にとってまだまだハードルの高い分野かもしれません。しかし、すでに多くの実証実験が行われていて、ノウハウは多く世の中に存在しています。自社内での対応が難しくても外部パートナーへ依頼を行うことでハードルを下げて挑戦を行えます。ぜひドローン配送に興味がある方は、お気軽に株式会社Jiteraへ質問や相談からお問い合わせください。