デジタルツインとは?シミュレーションとの違いや事例、企業へのメリットなどわかりやすく解説

今日におけるテクノロジー、それもIT技術の進歩には目を見張るものがあります。その証拠に、IotやDX、AIなど、IT技術に関連した用語が頻繁にメディアで叫ばれるようになりました。本記事では、前述したような技術領域と同じくらいに成長著しいIT技術である、デジタルツインについて解説します。

官民問わず様々な業界から注目を集めているため、どのような技術なのか、ビジネスパーソンであれば熟知しておく必要があります。

Nao Yanagisawa
監修者 Jitera代表取締役 柳澤 直

2014年 大学在学中にソフトウェア開発企業を設立

2016年 新卒でリクルートに入社 SUUMOの開発担当

2017年 開発会社Jiteraを設立
開発AIエージェント「JITERA」を開発

2024年 「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」に選出

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執筆者

文系大学出身で、25歳の時にIT業界に足を踏み入れました。ヘルプデスクから要件定義まで、下流から上流まで文字通り叩き上げでキャリアを築き上げました。取得した資格もいつの間にかもう2桁に。趣味も資格取得。あと、映画鑑賞と飲み会。

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    デジタルツインとは?基本的な定義

    デジタルツインとはわかりやすく説明すると、現実世界に存在する建築物や地形、製品などの物体をサイバー空間にもそっくり再現するという技術です。まさにdigital空間上に現実世界の双子、つまりtwinを生成する、という文字通りの意味になります。

    この章では、そんなデジタルツインとは具体的にどのような技術なのか、同じような意味を持つ用語であるシミュレーションとの違いを解説します。

    デジタルツイン技術の概要

    デジタルツイン技術はとどのつまり、大量のデータを高速かつ正確に解析・計算する技術のことです。まず、サイバー空間上に物体を構築するには大量のデータとそのデータの解読が必要になります。そしてその物体が周囲にどんな影響を及ぼすか、更に大量のデータをコンピュータに送り込み、それを高速かつ正確に解読、計算してどんな変化を予測する必要があります。

    これらのデータは現実世界から送信される必要があり、その役目を担うのがIotや5Gなどの技術になります。そして、集めた大量のデータをため込むんだり解析・計算するにはAI、ビックデータなどの技術が必要です。また、AIも使用することで、リアルタイムで現実世界の物体や現象をサイバー空間に再現できるだけでなく、将来起こりうる変化についてもより正確に予測することが可能になります。

    このようにデジタルツインとは、複数のTI技術を組み合わせた結果、実現できるIT技術と言えます。

    「デジタルツイン」と「シミュレーション」の違い

    「デジタルツイン」と「シミュレーション」の違い

    デジタルツインとシミュレーションの違いとして、まず集めるデータがどのようなものなのか、という点をあげられます。デジタルツインは過去のデータとリアルタイムに集めたデータの2種類を駆使して将来における変化を予想します。それに対して、シミュレーションは過去のデータだけを使って将来的な変化を予想します。従って、デジタルツインの将来の変化の予測はシミュレーションにおけるそれよりも、精度がかなり高いです。

    また、シミュレーションは基本的に特定のシナリオを基に行いますが、デジタルツインは複数のシナリオを同時に検証します。シミュレーションは人の手を介在させることも多く、収集するデータも特定の想定に沿った種類の物が収集されます。従って、検証できるシナリオの数に限界があります。しかしデジタルツインに関しては大量のデータの処理が可能なので、複数のシナリオを同時に検証することが可能になります。

    集めるデータの種類 想定するシナリオ
    デジタルツイン 過去・現在 複数
    シミュレーション 過去 単体

    デジタルツインの企業への応用と事例

    デジタルツインは現在様々な業界で使用されていますが、ITサービスから製造業まで、使用している業界は幅広いです。デジタルツインを使用することによって、業務効率や経費削減などの効果を期待することができます。

    NTTデータ(ITサービス業)

    NTTデータでは、デジタルツインを使用して新たな価値やサービスを生み出すことを目標として、デジタルツインをビジネスに活用するためのコンサルティング事業やデジタルツインのシステムの開発を行っています。

    実際にデジタルツインを活用した開発事例を1つ例にあげると、地域生活者や観光客の動きを効率的に分析して商品やサービスのプロモーションに活かし、その地域の販売店の売り上げを伸ばすことに成功しました。

    将来的には、異なるデジタルツインを統合して更に情報を多角的な点から解析し、より精度の高い予測を行うことや、人間の意識や思考すらもデジタル化することを目指すなど、非常に野心的な使い方の研究も進めています。

    参考:デジタルツイン | NTTデータ – NTT DATA

    ソニーグループ(ITサービス業)

    ソニーはデジタルツインを使用することによって、コンピュータの画面上に現実世界の物体や地形などを非常に高い精度で再現させることに成功しています。

    画面上に視覚的に判別できるような形でデータを構築するには、非常に多くのデータを解析する必要がありますが、クラウドなども使用することでこれを可能にしています。

    生身の人間が立ち入ることが難しい場所でも精度の高い分析が行え、視覚的にデータを表現できるためプレゼンテーションにも活用しやすいため、人工衛星のプロジェクトにも活用されています。

    今後の展望としては、更にモデリングの技術などを向上させて現実世界のビジュアルに可能な限り近づけ、様々な事象の分析やビジネスに活用していくことを目指しています。

    参考:ソニーグループポータル | テクノロジー | Activities | STEF2022 感動を生むテクノロジー | 現実世界を美しく再現する Maprayデジタルツインプラットフォーム (sony.com)

    NTTドコモ(情報通信産業)

    NTTドコモはアメリカの企業であるシンメトリーと協業して、デジタルツインとVRやARを駆使して建築・土木業界向けのサービスを展開しようとしています。建築物などをドローンなどで撮影してデータを収集し、5G技術によって高速で送信します。そして、データを解析してサイバー空間上に物体を視覚的に再現するというものです。

    単純な大きさだけでなく、材料の色や質感なども再現してVR上に映し出すことから、遠方にいたとしても現場の測量ができますし、気になる部分があればいつでも何度でも現場を検証することができます。特に日本においては建築・土木業界は人手不足に悩まされていますが、この技術によって業務効率が改善されることが期待されます。

    参考:シンメトリーとドコモが「5G×デジタルツイン」で建築・土木業界の次世代の働き方を実現する共同実証実験を開始 (docomo.ne.jp)

    鹿島建設(製造業)

    鹿島建設はオービック御堂筋ビルなどの工事においてデジタルツインを活用しています。工事における各フェーズをデジタルツインで連携し、業務効率を飛躍的に向上させることに成功しました。

    業務を改善させることができた事象をいくつか紹介すると、まずビルが完成した時の様子をサイバー空間上に表現し、周辺環境への影響の調査を様々な角度から検証することができるようになりました。これにより、予めどのような対策を施せばよいかが事前にわかるようになりました。

    また、MRも使用して実際の工事現場をサイバー空間上に再現することにより、現在の工事状況はどのようなものか、視覚的にわかりやすくなったため、管理の手間を省くことに成功しました。

    参考:日本初!建物の全てのフェーズでBIMによる「デジタルツイン」を実現 | プレスリリース | 鹿島建設株式会社 (kajima.co.jp)

    富士通(製造業)

    富士通はデジタルツイン基盤「Dracena」を開発し、サービスをいくつかの業界で展開しています。このデジタルツイン基盤は、大量のデータを現実世界からIot技術や5G技術を駆使して送信・処理してクラウド上に実世界の現象や物体を再現しています。

    主に物流や人流を予測するために使用されています。例えば、モビリティ分野における使用の例としては、ある道で急ブレーキをしている車が大量にあることを察知すると、周辺の車のドライバーに注意喚起をしています。

    また、各車から収集した映像データを解析することで、事故の解決や予防も効率良く行うことが可能になります。今後も新たな適用分野がないか、同社は調査していく予定です。

    参考:リアルタイムデジタルツイン基盤“Dracena” : 富士通 (fujitsu.com)

    デジタルツインの導入やシステム開発は、ぜひJITERAにご相談ください!
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      中小企業におけるデジタルツインのメリット

      予算や人員が限られる中小企業において、デジタルツインがもたらすメリットには様々なものがあります。この章では、デジタルツインが中小企業にどのようなメリットをもたらすのか、例をいくつか解説していきます。

      デジタルツイン導入による経営効率化

      デジタルツインを導入することで、特に建設業や土木業をはじめとした製造業は経費や必要となる労力を削減し、経営効率を上げることが可能になります。前述したNTTドコモや鹿島建設の例で言えば、現地に行って採寸をしたり、確認をしたりするという手間を省くことが可能になります。

      また、工事をする現場に現場の事務所を解説したり、現地の人員や工事進捗を管理するための人を雇わなくても良くなるため、人件費を削減することができます。

      このようにして経費や仕事の手間を大幅に削減することで、会社の利益率を向上させたり、別な分野や新規事業に投資をすることが可能になるため、経営の効率をより良くすることが可能になります。

      リスク管理とイノベーションの促進

      デジタルツインを導入することで、リスクの管理とイノベーションの促進を行うことが可能になります。

      まずリスクの管理についてですが、デジタルツインの最も大きな特徴の1つが、過去に集めた情報だけでなく、リアルタイムに収集した情報も分析することで、現在の状況を正確に把握し、将来的な予測の精度も高くなるということです。将来の状況を正確に把握出来る事で、将来的なリスクを正確に把握することが可能になります。

      また、ソニーグループの例でも説明したように、デジタルツインを導入することで人間が容易に立ち入ることのできない場所や地形での予測もできるようになります。従って、今まで人間が行うことが不可能だった作業を行うにはどのような仕組みや技術が必要なのかがデジタルツインでわかるようになる可能性があります。

      熟練者の技能伝承

      デジタルツインを利用することで、製造工程の管理をしやすくなるということは鹿島建設の例でも説明した通りです。

      この製造工程をデジタルデータとしてクラウドなどのデータベースに保存することで、熟練者の技能の伝承の助けにすることができます。例えば前述した建設業や土木作業においては、どのようなプロセスを経て橋やビルができるのか、という手順がデジタルツインによってデジタルデータとして変換されます。このようにして様々な状況のデータを蓄積することで、熟練者であればどのような判断をすべきかがわかりやすくなります。

      また、NTTドコモのようにVRも使用することで、熟練者が作業している様子を遠隔で見学し、技術を継承することも可能です。

      デジタルツイン導入の注意点

      デジタルツインを導入すると、前述したように多大なメリットを自社のビジネスにもたらすことが可能になります。しかし、導入に当たっては必要なステップを踏まなければいけません。

      もし必要なステップを踏まずに導入したとしても宝の持ち腐れとなり、導入に必要になったお金と労力が無駄になってしまいます。この章では、デジタルツインの導入にあたって予めクリアせねばならない問題や注意点について解説していきます。

      高い精度の実現が難しい

      デジタルツインの技術をもってしても、現実世界の事象や物体をそっくりそのまま、全てリアルタイムに再現することは中小企業であれば猶更のこと、富士通やNTTのような日本だけでなく世界を代表する大企業ですら予算的に難しいです。

      もしこのようなことを可能にしようと思ったら、ありとあらゆる場所にデータ収集用の端末を設置し、スーパーコンピュータ張りに高性能な計算機を幾つも用意しなければなりません。

      従ってデジタルツインを導入する場合は、どのくらいのタイムラグなら許容できるのか、視覚的な情報はどのくらいの解像度が必要なのか、などの要件を予め決めたうえで見積もりや予算組みなどを行う必要があります。

      既存システム・データとの連携を適切に設計する必要がある

      現代の企業において、システムやアプリケーションは必要不可欠です。従って、デジタルツインを導入する前から何らかのシステムやアプリケーションを使用している場合が殆どです。デジタルツインを導入する場合はこれらの既存システムやアプリケーションのデータとの連携を適切に行う必要があります。

      もしも適切な連携が行われなかった場合、デジタルツインによってわかった事象を既存のシステムのデータに上手く落とし込むことができず、結局アナログな方法での情報伝達をするしかない、などの本末転倒な事態に陥るリスクもあります。

      従って、前もってデータベースに格納されているデータの形式を確認し、それに沿った形でデータを連携するようにデジタルツインを導入し、データ入力時にエラーなどが起きないようにする必要があります。

      テクノロジー人材の育成・確保が難しい

      デジタルツインを導入・運用するのにテクノロジー人材の存在は必要不可欠です。前述したようなデータの設計などはテクノロジー人材以外では実行が難しいですし、エラーなどが起こっていないかを確認する作業でさえ、OSのログを読み解く必要があるため専門の知識を必要とします。

      また、テクノロジー人材は日本だけでなく世界的に人手不足となっているため、優秀な人材は世界規模での争奪戦を強いられます。特にデジタルツインはハードウェアとソフトウェア、両方の知識が必要になる場合が多いため、更に希少性が高まります。従って、信頼のできるSES企業とのコネクションを強くしたり、資格の取得手当や技術関連のセミナーを開くなど、人材育成に関する投資を積極的に行う必要があります。

      導入・運用コストが高い

      デジタルツインを導入しようとするのであれば、データを集めるための機器やデータを格納・分析するためのプログラムやサーバーの確保が必要になります。従って導入のコストはとても大きいです。

      また導入した後についても、サーバーの電気代や場所代、監視をしてくれるエンジニアの人件費などのランニングコストも小さくありません。

      これらの問題をクリアするためにも、まずはデジタルツインを導入する目的やメリット、売り上げにどのように貢献するかを明確にする必要があります。このようにすることで銀行や投資家なども説得することができ、初期投資の額を低金利の借り入れで工面することができるかもしれません。

      また、導入度はなるべくクラウドを導入することで、管理の手間が省けたり、使用頻度が少ない時間帯はサーバー代を安くするなどのプランを導入することでランニングコストを下げることができます。

      セキュリティ・プライバシーリスクの発生

      デジタルツインは現実世界の物体や事象をデータとしてサイバー空間に再現したものです。そのデータも元はと言えばクライアントやエンドユーザー、一般人、若しくは自社の製品から集めたものです。

      もしもデジタルツインのデータがあるクラウドやサーバーにハッキングをされた場合、クライアントやエンドユーザーの情報を流出させたことにもなりませんし、自社の大切な企業秘密を競合他社に漏らすことにもなりかねません。

      従って、デジタルツインのデータが格納されてあるサイバー空間にアクセスできるパソコンなどはIPアドレス単位でファイアーウォールなどで制限しなければなりませんし、従業員や派遣職員とNSDを締結することは必須です。

      まとめ:デジタルツインとその企業への影響

      デジタルツインは最近、急激に注目を集めており、上手く導入すれば企業に対し大きなメリットをもたらすことができます。

      現実の事象や物体をサイバー空間に再現して未来を予測することで、潜在的なニーズの掘り出しや今まで人間が実施不可能だった作業の実施が可能になるなどの理由から、これまで考えられなかったイノベーションが生まれる可能性があります。

      しかし、導入したくても予めクリアするべき問題点が多すぎてしり込みする、という方は多いと思います。

      そのような時は株式会社Jiteraにお問い合わせいただくことをお勧めします。株式会社Jiteraはビジネスの戦略立案やその成長についても責任を持ちます。

      ビジネスツインについてもどのように導入して、どのように運用するか、そもそも導入すべきなのか、など様々な観点からアドバイスをさせていただきます。

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