ソフトウェアアーキテクチャとは?基本の要素や具体例をわかりやすく解説

ソフトウェアアーキテクチャは、高品質なソフトウェアを開発するために欠かせません。この記事では、その基礎知識や重要性、構成要素、設計プロセス、一般的な問題点について詳しく解説します。

学習に役立つ書籍も紹介しています。初心者から経験豊富な開発者まで、ぜひ最後までお読みください。

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    ソフトウェアアーキテクチャとは?

    ソフトウェアアーキテクチャとは?

    柔軟かつクオリティの高いソフトウェアを作り出す上で、ソフトウェアの基本的な構造を設計するソフトウェアアーキテクチャは欠かせません。事前にエンジニアは基礎知識や重要性を理解し、ソフトウェアにおける基本的な構造を正しく設計するスキルを身に着けなければなりません。

    ソフトウェアを生み出す時に関連するアプリケーションとの相互関係やコンポーネント、導入する機器の配置など様々な検討材料があります。データフローやセキュリティ面もしっかりと考えながら、開発プロセスで必要な要素を考えていきます。

    設計後ソフトウェアの構築に向けてプログラミング作業などに移りますが、構築時には設計通りに進めなければなりません。システム要件を設計段階で満たしながら、先々メンテナンスも保守作業で容易に行えるように配慮できれば完璧と言えるでしょう。

    ソフトウェアアーキテクチャ設定で重要な基本要素

    ソフトウェアアーキテクチャの設計では押さえるべき基本的な要素があります。これらを理解することで、効率的なソフトウェアの設計が可能になるでしょう。

    品質属性(非機能要件)

    品質属性(非機能要件)

    品質属性(非機能要件)では、システムのパフォーマンス、セキュリティ、拡張性を設計します。

    ソフトウェアがどのように動作するかを決定し、ユーザー体験とシステムの持続可能性に大きく影響を及ぼします。高可用性、スケーラビリティ、保守の容易さは、品質属性の中でも特に重要な項目です。これらの要件が設計の初期段階で明確にできているかが、プロジェクトの成功を大きく左右します。

    機能要件と同じくらい重視されるべきであり、設計プロセスにおいて重要な役割を果たします。

    構造

    ソフトウェアアーキテクチャの構造では、ソフトウェアのコンポーネントとそれらの関係を定義します。モジュールやクラス、サービスなどのソフトウェアを構成するさまざまな要素が、どのように関連して全体の機能を実現するのかを明らかにします。

    構造を設計することで、システムの整合性を高めてコンポーネント間のインターフェースを調整でき、将来のメンテナンスやエンハンスが容易になります。

    ルールとガイドライン

    ソフトウェアアーキテクチャにおいて、ルールとガイドラインをあらかじめ定めておくことが重要です。これには、コーディング規約、設計パターンの適用、再利用可能なコンポーネントの活用などが含まれます。

    ガイドラインは開発プロセスを標準化し、プロジェクト全体の品質を向上させます。多くの人が関わる場合、一貫性と効率を高める上で不可欠です。

    プロジェクトの透明性を高め、新しいチームメンバーが迅速にプロジェクトに取り組めるようにもなります。

    ソフトウェアアーキテクチャ図とシステム構成図の違い

    ソフトウェアアーキテクチャ図とシステム構成図の違い

    ソフトウェアアーキテクチャ図やシステム構成図は、ソフトウェアアーキテクチャにおいて構築時に必要不可欠です。しかし記載内容をしっかりと事前に把握しておかないと、システム全体の構成にも大きく影響してしまいます。

    ソフトウェアアーキテクチャ図はシステム全体の設計者であるシステムアーキテクトを中心に作成し、全体像把握や主要コンポーネントを確認していきます。

    全体像やコンポーネントとの関係性を理解できますが、ソフトウェアアーキテクチャ図は抽象的な表現が多いです。また構築時に機器などを設置する部屋や、どこに置くかは明確になりません。

    一方システム構成図はシステムエンジニアが中心となって作成しますが、構築時に必要な機器やソフトウェアを具体的にまとめていきます。機器名称やバージョンを記載したり、ネットワーク機器やケーブルなど必要な項目も記載していきます。

    機器間の接続内容やソフトウェアをどこへインストールするかも記載しながら運用や保守に関する作業内容も具体的にまとめておくと、今後の運用時にも役立てることができます。障害発生時に全体構成を理解する時に、システム構成図は非常に役立つことでしょう。

    ソフトウェアアーキテクチャ図とシステム構成図の違いについて作成者や時期そして記載内容を比較すると、以下のようになります。

    ソフトウェアアーキテクチャ図 システム構成図
    主な作成者 システムアーキテクト(システム全体の設計者) システムエンジニアが中心となって作成
    目的 全体像把握や各種コンポーネントとの関係性を明確にする システム構築時の機器やソフトウェア、保守や運用業務の作業内容の明確化
    表現方法 抽象的 具体的
    内容 インターフェース、データフローなど 機器、OS、ネットワーク機器やケーブルなど

    ソフトウェアアーキテクチャの主なパターンと具体例

    ソフトウェアアーキテクチャの設計パターンはさまざまで、各パターンは特定の問題を解決するために最適化されています。ここでは一般的なアーキテクチャパターンについて紹介します。

    クライアント・サーバーアーキテクチャ

    クライアント・サーバーアーキテクチャは、クライアントとサーバーの2つで構成されています。

    クライアント・サーバーアーキテクチャ

    参考:クライアントサーバーシステム|Web技術の歴史(誕生〜現代のフレームワークまで)

    クライアントはサーバーにサービスをリクエストします。サーバーはクライアントからのリクエストに応えるのが役割です。データ処理やストレージ管理などをしてクライアントへサービスを提供します。そしてクライアントはサービスを利用します。

    データと処理を集中管理することで、ユーザーのデバイスには最小限の負荷しかかけないことが特徴です。

    レイヤードアーキテクチャ

    レイヤードアーキテクチャを導入した開発

    参考:レイヤードアーキテクチャを導入した開発 – RareJob Tech Blog

    レイヤードアーキテクチャでは、ソフトウェアを複数の階層へ明確に分割します。階層ごとに独立した特定の機能を持たせ、隣接する層とのみ通信する設計です。TCP/IPのプロトコルアーキテクチャなどで用いられています。

    各層を独立して更新または交換することが可能であり、アプリケーションの柔軟性が向上するのが特徴です。コードの整理と再利用が容易になり、保守性が向上します。

    マイクロサービスアーキテクチャ

    マイクロサービスアーキテクチャ

    参考:マイクロサービスとは? 今さら聞けないDX関連用語をわかりやすく解説|DX SQUARE

    マイクロサービスアーキテクチャは、小さく独立したサービスの集合体として構築します。各サービスには特定の機能があり、独立して開発やデプロイができます。

    大規模なシステムも柔軟に管理でき、容易に新しい機能を追加したり既存の機能を更新したりできるようになるのが特徴です。障害の際には被疑部を特定しやすいため、システム全体の安定性が向上します。

    イベントドリブンアーキテクチャ

    イベントドリブンアーキテクチャ

    参考:イベント駆動アーキテクチャの可能性 #AWS – Qiita

    イベントドリブンアーキテクチャは、特定のアクションや状態の変更といった「イベント」の発生に基づいてソフトウェアが動作する構造です。イベントの発生に応じて各コンポーネントが反応し、必要な処理を実行します。

    リアルタイムのデータ処理や高度なユーザーインタラクションが可能になり、システムの応答性と柔軟性が大幅に向上します。特に、非同期処理や動的なデータフローが重要なアプリケーションに適しています。

    アダプターアーキテクチャ

    アダプターアーキテクチャ

    参考:アダプターのアーキテクチャー

    アダプターアーキテクチャは、互換性のない異なるソフトウェア間での通信を可能にするための設計です。異なる形式のデータやプロトコルを、アダプターが変換することで実現しています。

    統合プロジェクトや既存ソフトウェアの活用において特に有効であり、異なる技術やアプリケーション間の橋渡しを実現します。

    ソフトウェアアーキテクチャ設計のプロセス

    ソフトウェアアーキテクチャを計画的に段階を踏んで設計します。高品質なソフトウェアの開発には、戦略的で体系的な設計が欠かせません。

    要件の収集と分析

    ソフトウェアアーキテクチャの設計は、要件の収集と分析から始まります。ユーザーが解決したいであろう課題から、ソフトウェアが満たすべき機能的および非機能的要件を明確にします。開発の目的を明確にしてニーズを特定し、技術的な制約を評価します。

    この段階で要求分析を詳細にすることにより後の設計プロセスがスムーズになり、設計ミスや将来的な再設計のリスクを最小限に抑えられます。

    アーキテクチャのパターンを選択

    要件を収集し分析したら、最適なアーキテクチャパターンを選択します。ソフトウェアの目的、規模、複雑さ、将来の拡張性を考慮します。

    アーキテクチャパターンはシステム全体の構造と性能に大きく関わります。効率的な開発や長期的なシステム運用に影響します。適切に選択することはプロジェクトの成功に不可欠であり、将来的な保守性や拡張性が高まります。

    アーキテクチャの詳細設計

    パターンが選択されたら、アーキテクチャを詳細に設計します。主要コンポーネント、データフロー、インターフェースなどの詳細を定義します。

    詳細設計は、開発の目的を実際の構造へ具体化するプロセスです。設計の意図が実装チームへ正確に伝わることで効果的な開発が実現できます。将来の拡張性や柔軟性にも影響を与えるため、慎重な検討が求められます。

    アーキテクチャの検証

    アーキテクチャを設計したら、要件を満たしているかを検証します。設計レビュー、性能モデリング、プロトタイピング、シミュレーションなどが含まれ、設計の妥当性と実現可能性の評価が目的です。

    検証によって設計の問題点を早い段階で明らかにします。コストのかかる手戻りを避けるために不可欠であり、設計を改善して製品の品質を高めます。

    アーキテクチャの文書化

    最後に、設計したアーキテクチャを詳細に文書化します。文書化は、プロジェクトチームや将来のメンテナンスチームが設計を理解し、適切に実装するために不可欠です。

    文書化の目的は、プロジェクトチームで設計の詳細を明確に共有することと、将来のメンテナンスやエンハンスに役立てることです。文書化によってシステムの構造、設計意図、使用されるパターンが明確になり、長期的なプロジェクト管理や知識の共有が実現できます。

    ソフトウェアアーキテクチャ設計で起こりうる問題

    ソフトウェアアーキテクチャの設計では予期しないトラブルに直面することがあります。課題を事前に理解して対処しておくことが重要です。設計および運用段階で起こりうる問題を取り上げます。

    設計段階でのトラブル

    設計段階で起こりうるトラブルは多岐にわたります。これらを認識して適切に対処することは、プロジェクトを進めていく上で欠かせません。ここでは、一般的な問題とその回避方法を紹介します。

    機能要件を十分に理解していない

    機能要件を十分に理解していないことによる問題は、ソフトウェアアーキテクチャの設計でしばしば見られます。ユーザーのニーズや期待を把握しきれていないことで、必要な機能を満たした製品が開発できなくなります。

    要件収集の段階で十分なコミュニケーションが欠如していたり、ユーザーのニーズを深く理解していなかったりが原因となりえます。初期段階での徹底した要件分析が不可欠です。

    技術的な制約の考慮漏れ

    技術的な制約や限界が十分に考慮されていないことも、設計段階での大きな問題です。

    使用する技術やツールの選択によっては、パフォーマンス、セキュリティ、互換性などに影響を与える可能性があります。プラットフォームに依存する制約が見落とされることもあります。

    早い段階で技術的な制約を把握することで、最終的な開発コストや時間の浪費を未然に防げます。

    将来性を考えていない設計

    短期的な要件を重視しすぎたアーキテクチャでは、将来的なメンテナンスやエンハンスが難しくなる恐れがあります。アーキテクチャに拡張性や柔軟性が不足していると、システムのアップグレードや変更が必要になった際に大規模な再設計や高い開発コストが必要となりえます。

    初期の設計段階から将来性を考慮して設計することは非常に重要です。

    運用段階でのトラブル

    運用段階では設計の不備が明らかになることで、設計段階でのものとは異なる問題が顕在化することがあります。運用段階でよくあるトラブルとその回避方法を紹介します。

    パフォーマンスの低下

    設計されたアーキテクチャが実際の運用環境において想定していたパフォーマンスを発揮できていない場合、大きな問題になります。不適切なリソース割り当て、効率的ではないコンポーネント間の通信、不十分なスケーリングなどが原因として考えられます。

    パフォーマンスの低下によって応答速度が遅くなると、ユーザーエクスペリエンスが損なわれかねません。

    セキュリティの脆弱性

    セキュリティは設計段階でしっかりと考慮されるべきですが、しばしば見落とされがちです。アーキテクチャにセキュリティの脆弱性が含まれていると、運用中に深刻なセキュリティ問題を引き起こす可能性があります。

    システムへの侵入やデータの漏洩により、重大な責任問題につながることがあります。初期段階での適切なセキュリティ対策は不可欠です。

    保守性の低下

    アーキテクチャの保守性が低いと、運用段階で多くの問題を引き起こす原因になります。時間が経過するにつれてソフトウェアの問題を修正したりアップデートしたりが困難になり、最終的にはシステムの信頼性や性能が低下します。

    初期の設計段階から保守性を考慮したアーキテクチャを選択することが重要であり、適切な設計をして文書化することが不可欠です。

    ソフトウェアアーキテクチャに関するおすすめの本

    ソフトウェアアーキテクチャについて学ぶための資料は数多くありますが、特におすすめの書籍を4つ紹介します。これらは初心者から上級者まで幅広いレベルに適しており、理論と実践がバランスよく記されています。

    ソフトウェアアーキテクチャの基礎

    この本は、ソフトウェアアーキテクチャの基本的な概念と原則を紹介しています。アーキテクチャ設計の基礎から応用までを幅広くカバーしています。

    アーキテクチャを決定する上で考慮すべき事柄を一つずつ丁寧に解説されています。それらはトレードオフの関係になっていることが多いため、開発の目的から要件の優先順位を明確にすることは非常に重要です。

    アーキテクチャの重要性と効果的な設計方法を学びたい初心者の方々におすすめです。

    公式サイト

    Clean Architecture 達人に学ぶソフトウェアの構造と設計


    ソフトウェアアーキテクチャの原則と実践に焦点を当てています。クリーンアーキテクチャの概念を詳細に解説していて、高品質なソフトウェア設計に必要な知識が身につきます。

    半世紀以上にわたって大きなものから小さなものまでさまざまなシステムを構築してきた著者の経験によると、「アーキテクチャのルールはどれも同じ」とのこと。

    プログラムを構成する要素をどのように組み立てればよいか。時代を超越した不変のルールを学びたい方におすすめです。

    公式サイト

    ソフトウェアソフトウェアアーキテクチャ構築の原理

    この書籍には、より実践的なアプローチが書かれています。具体的なケーススタディを通じて、効果的なソフトウェアアーキテクチャの構築方法を紹介しています。

    アーキテクチャ設計は判断の連続です。開発するソフトウェアは誰に使われるのか、彼らにとって何が重要か、さまざまなニーズを調整しながら設計する方法が書かれています。

    実務で直面しうる問題に対処する方法が学べるため、開発プロジェクトの責任者におすすめです。

    公式サイト

    データ指向アプリケーションデザイン

    この書籍はデータ処理に焦点を当てています。

    データの量や複雑さ、変化を考慮した設計が必要なアプリケーションを「データ指向」としています。データ指向による大規模なアプリケーションのアーキテクチャ設計に特化した内容です。データ処理に関係する技術を紹介し、データの管理や解決策、トレードオフが詳しく書かれています。

    データ指向のアプリケーション設計に興味がある開発者におすすめです。

    公式サイト

    まとめ:ソフトウェアアーキテクチャの学び方とその重要性

    ソフトウェアアーキテクチャの学び方とその重要性

    ソフトウェア構築で基本的な構造を設計するソフトウェアアーキテクチャは非常に重要です。

    内容を間違えてしまうと開発プロセスだけでなくリリース後の保守や運用作業まで影響を及ぼすこともあります。

    株式会社Jiteraはソフトウェアアーキテクチャなどの相談にも応じており、適切なソフトウェア開発が行えるようにサポートを行っています。

    ソフトウェアアーキテクチャだけでなく独自ツール開発や、関連する開発に関する相談があれば株式会社Jiteraにお気軽にお問い合わせください。

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