ウェブサイトやアプリのデザインにおいて、コンテンツと同じくらい重要なのが「余白」です。
余白とはデザインの要素間に意図的に設けられた空間のことで、単なるスペースとは異なります。余白はユーザーの視線誘導、情報の区切り、デザインのリズムづくりなど、様々な効果を生み出します。しかし、余白の設定はデザイナーにとって難しい課題でもあります。本記事では、余白の効果的な使い方を解説します。
デザイナーはもちろん、事業責任者や経営者の方にも参考になる内容となっています。CVR向上や売上アップのために、余白デザインの重要性をぜひご理解ください。

制御系システムや自動化システムの新規開発を中心に、15年以上の開発経験を持つ現役エンジニアです。『デジタルは人と人をつなぐもの』という言葉が好きです。デジタルの世界をわかりやすく伝えていきます。
デザインの余白が重要な理由
余白(ホワイトスペース)とは、デザイン内の要素間や周囲の空間のことです。テキストや画像、その他のデザイン要素の間にある「空白」の部分を指します。
一般的に余白と言えば、「白色の部分」を指しますが、デザイン的には白色とは限りません。
余白は単なる「何もない場所」ではなく、デザインの重要な構成要素で、視覚的な呼吸空間を提供し、全体的なデザインの効果を高めます。
読みやすさを向上させるため
余白は、コンテンツの読みやすさを大きく向上させます。
適切な余白があることで、テキストや画像が見やすくなり、ユーザーの目の疲労を軽減します。また、情報の理解と記憶を促進し、コンテンツへの集中力を高めます。
この図のように、適切な余白(この場合は行間)があることで、テキストが読みやすくなり、情報の理解が促進されることがわかります。
要素の強調や視線の誘導をさせるため
余白は、特定の要素を強調することで、ユーザーの視線を重要な情報へ誘導する上で重要な役割を果たします。
周囲に余白がある要素は、自然と目を引き、注目を集めます。これにより、デザイナーは意図的にユーザーの注意を特定の情報や行動に向けることができます。
この図では、中央の青い円が周囲の余白によって強調されています。これにより、ユーザーの視線が自然とこの要素に引き寄せられる様子を表現しています。
デザインのリズムやバランスを整えるため
余白は、デザイン全体にリズムとバランスをもたらします。
適切に配置された余白は、ページの各要素間に調和を生み出し、視覚的な快適さを提供します。これにより、ユーザーはストレスなくコンテンツを閲覧でき、全体的なデザインの質が向上します。
この図は、適切な余白を配置することで、視覚的なリズムとバランスが生まれる様子を示しています。要素間の空間が全体的な調和を生み出しています。
ユーザーエクスペリエンスを改善するため
適切な余白の使用は、ウェブサイトやアプリの使いやすさを大幅に向上させます。
余白は異なるセクションを明確に区別し、ナビゲーションを容易にします。また、タッチスクリーンデバイスでの操作性を向上させ、ユーザーの満足度を高めます。結果として、ユーザーの滞在時間が延び、コンバージョン率の向上にもつながります。
この図は、余白の使用がモバイルアプリのユーザーエクスペリエンスにどのように影響するかを示しています。適切な余白を持つデザインは、操作性が向上し、ユーザーの満足度が高まることがわかります。
余白の配置と大きさの決める方法
余白の配置と量の決定には、要素同士の関係性やバランス、コンテンツ量との調和など、総合的な視点が必要です。要素のグルーピングを明確化したり、視覚的な均整を保つためにも、状況に応じた余白の調整が重要です。
またUI/UXとの関係も考慮し、情報設計との整合性を図ることが大切です。余白の決定法をマスターすることがデザイン力向上につながります。
要素との関係性を考える
余白の配置と大きさを決めるには、まず要素同士の関係性を考えることが重要です。関連性の強い要素同士は近接させ、非関連の要素は適度に離すことで、情報のまとまりが明確になります。
例えば、見出しと本文は密接に関連するため、見出しの下には小さな余白を取って近接させます。一方で、異なる章の間は関連性が薄いため、段落の下に大きな余白を取って明確に区切ります。要素に意味的なまとまりがあるか否かを考え、関連性の度合いに応じて余白の量を調整するのです。
UIデザインにおいて、情報設計とコンテンツ構造を理解した上で、意味的なグルーピングに基づいて余白を設定することが重要です。要素同士の関係性に着目することが配置設計の第一歩となります。
バランスの取り方を検討する
ページレイアウトのバランスも考慮し、左右対称ではなくとも視覚的な均整が保たれるよう、余白の大きさを調整します。重要度に応じてサイズに変化をつけることも効果的です。
コンテンツを中心に、上下左右に取る余白の量や比率を調整することで、視覚的な重心バランスを計算する必要があります。重要な要素ほど余白が大きい傾向にする「不均衡なバランス」が好ましいでしょう。
例えば、縦長のキービジュアルの左右に不均等な余白を取り、右寄りの重心にすることで迫力を増すことができます。逆に横長の状況では左右の余白比を変更し、画面の見え方を最適化できます。
コンテンツ量との調和を図る
コンテンツ量が多い部分と余白は相対的に小さく、コンテンツの少ない部分では余白を大きく取るなど、全体の調和を図ります。
例えば、テキスト量の多い記事本文の上下には行間よりも少し大きめの余白を確保し、見出しとの間隔を詰めます。一方、画像と短いキャプションしかない部分では、画像周囲の余白を大きく取って見栄えを良くします。
同様に、コンテンツによって必要な余白も異なります。文字主体の場合は読みやすさを重視して行間・字間に余白が必要ですが、大きなキービジュアルの場合は最小限でもインパクトがあります。
コンテンツ量と機能面の必要性を考慮し、バランスの取れた余白設計をすることがポイントです。
UI/UXとの関係も考慮する
操作性や情報設計との関係も考慮し、ボタン周囲やリンク先など機能面での余白の必要性にも配慮します。
UIデザインにおいては、情報設計と操作性を両立する必要があります。関数面で必要なパーツを使用しやすい状態にするためにも、十分な余白が必要です。
例えば、ボタンやアイコン、入力フォーム周囲に適度な余白を取ることで、インタラクティブ要素が鮮明になり操作容易性が向上します。逆にリンクテキストの連続した部分は余白を狭くして可読性を確保するといった使い分けが重要です。
【海外】余白を活用したデザイン例
海外のサイトは、商品写真と説明文のバランスを余白で調整するレイアウトが多く見受けられます。過不足のない余白バランスが商品の訴求力を最大化している好例です。
具体的には、メインビジュアルの下部に大きな余白を設けて視線の先読みを誘導したり、商品群の間隔を広くとることで高級感演出を図るなど、効果的なUI演出がなされています。
海外サイトの余白活用法からは、ゆったりと空間を配置することのメリットを学ぶことができるでしょう。
Sites Of The Day
Sites Of The Day は、優れたウェブデザインを紹介するキュレーションサイトです。
余白を巧みに活用したミニマルなデザインが特徴的で、大胆な白のスペースによって各サイトのサムネイルが際立ちます。適切に配置された余白がコンテンツに「呼吸」を与え、視覚的な休憩スペースを提供。結果として、ユーザーは快適に優れたウェブデザインを探索できる環境を得られます。
euronews.
euronews. は国際ニュースを提供するメディアサイトです。
情報過多になりがちなニュースサイトの中で、余白を効果的に使用した洗練されたデザインを採用しています。記事間やセクション間に適切な余白を設けることで、情報の視認性と可読性を高めています。白を基調とした背景と余白の組み合わせにより、重要なニュース項目や見出しが目立ち、ユーザーが必要な情報に素早くアクセスできるよう工夫されています。
Walmart
Walmart の公式サイトは、大手小売業者のeコマースプラットフォームでありながら、余白を効果的に活用したクリーンなデザインを実現しています。
製品カテゴリーや特別オファーの間に適切な余白を配置することで、膨大な商品情報を整理し、ユーザーの目線を自然に誘導しています。白を基調とした背景と余白の組み合わせにより、商品画像や価格情報が引き立ち、ショッピング体験の質を向上させています。複雑になりがちなeコマースサイトにおいて、余白の活用が秩序と使いやすさをもたらす好例となっています。
【日本】余白を活かしたデザイン例
国内サイトで特徴的なのは、写真やイラストと文字の間に和紙のように微妙な余白を設け、高級感や繊細さを演出したデザインです。飲食店のメニューや美術館パンフレットにこの手法がよく使われています。
また、文字主体の場合でも行間や段落の間に適度な余白を取ることで、ゆったりとした読み心地を実現。こうした繊細な余白表現が国内サイトならではの特徴といえます。
ウェブにおいても紙媒体の伝統を引き継ぐ形で、極力煩雑さを排除し、すっきりとした印象を演出する余白設計が日本サイトの特徴だと言えるでしょう。
AI inside
AI insaideの公式サイトは、ロゴやナビゲーションメニューの周りに十分な余白を設けることで、視覚的にすっきりとした印象を与えています。これにより、ユーザーは重要な情報に集中しやすくなります。
また、中央のメッセージ部分にも余白が多く取られており、テキストが強調されています。背景の緑の葉の画像が部分的に見えることで、視覚的な興味を引きつけつつも、余白が全体のバランスを保っています。
フロレスタ
フロレスタの公式サイトは、中央に大きく配置されたドーナツの画像が視覚的な焦点となっており、写真を使ってドーナツが強調されています。これにより、ユーザーの視線が自然と引きつけられます。
ヘッダー部分にはロゴとナビゲーションメニューが配置されていますが、余白を適切に使うことで、全体がシンプルで洗練された印象を与えています。このシンプルさにより、ユーザーは情報を直感的に理解しやすくなっています。また、ロゴとナビゲーションメニューの間に余白を設けることで、各要素が独立して見え、全体のバランスが取れています。
NUTION
NUTIONの公式サイトは、画面の大部分が白い余白で占められており、中央に配置された大きな文字が視覚的な焦点となっています。この余白の多さが、文字の存在感を強調し、ユーザーの視線を自然と引きつけるデザインです。
右上にはロゴとナビゲーションメニューが配置されていますが、これらも余白を適切に使うことで、全体がシンプルで洗練された印象を与えています。ロゴとナビゲーションメニューの間に余白を設けることで、各要素が独立して見え、全体のバランスが取れています。
【ポスター】余白を活かしたデザイン例
デザインにおける余白の使い方は、視覚的な美しさと情報の伝達力を高める重要な要素です。
本章では、余白を効果的に活用した3つのポスターを紹介します。
アサヒホワイトビール
広大な空の余白を背景に使用することで、製品の爽やかさと開放感を強調しています。中央に配置された人物とビール缶が視覚的な焦点となり、余白がその存在感を引き立てています。
ASTIGU
シンプルな背景と大胆な余白を活用しています。モデルの足元から伸びるカラフルなラインが視線を誘導し、余白がデザイン全体に洗練された印象を与えています。キャッチコピーも余白を活かして配置され、視覚的に強調されています。
比内地鶏専門 とりしげ
(出典:pinterest)
広がる田園風景の余白を背景に使用し、自然の中でのびのびとした鶏の姿を描いています。余白が田舎の静けさと広がりを表現し、ニッチなキャッチコピーが自然に溶け込むように配置されています。
【インスタグラム】余白を活かしたデザイン例
インスタグラムの投稿では、限られたスペースで視覚的なインパクトを与えることが重要です。
余白を効果的に使うことで、投稿の美しさとメッセージの伝達力を高めることができます。
本章では、余白を巧みに活用した3つのインスタグラム投稿を紹介します。
旅Ness
旅Nessの投稿は、各旅行先の魅力を余白を活かして強調しています。背景の広がりを感じさせる余白が、旅行先の開放感や壮大さを伝えています。テキストも余白を利用して配置され、視覚的に読みやすくなっています。
トヨタホーム愛知
トヨタホーム愛知の投稿は、住宅の美しさと機能性を余白を使って引き立てています。シンプルな背景と広い余白が、住宅のデザインを際立たせ、視覚的に洗練された印象を与えています。キャッチコピーも余白を活かして配置され、メッセージが強調されています。
Frosch
Froschの投稿は、製品の自然なイメージを余白を使って表現しています。背景の余白が製品の清潔感や自然さを強調し、視覚的に心地よい印象を与えています。テキストも余白を利用して配置され、視覚的にバランスの取れたデザインとなっています。
デザインに余白をつける時の注意点
デザインに関して余白(ホワイトスペース)は、空白ではなく、重要な視覚的要素です。
余白は、正しく使用することで、デザインの読みやすさ、美しさ、機能性を向上させることができます。を効果的に活用するには、いくつかの重要な点に注意を払う必要があります。
本章でが、余白をデザインに取り入れる際の主な注意点を挙げます。
デザインに一貫性を保てる
余白デザインを効果的に活用するためには、ウェブサイト全体で一貫性を保つことが重要です。
- 統一された余白のサイズや比率を使用し、ページ間で調和を保ちます。
- 同じ種類の要素(例:見出し、段落、画像)には同様の余白を適用します。
- カラースキームや書体と同様に、余白もブランドアイデンティティの一部として扱います。
一貫性のある余白デザインは、ユーザーに安定感と快適さを提供し、サイト全体の視覚的な統一感を生み出します。
コンテンツの妥協を意識する
余白は単なる空白ではなく、情報の重要度や関連性を示す視覚的なツールとして機能します。
- 重要な情報には広めの余白を設け、目立たせます。
- 関連性の高い要素同士は近づけ、そうでない要素とは適度な距離を置きます。
- 見出しと本文、画像とキャプションなど、異なる種類のコンテンツ間の関係を余白で表現します。
適切な余白の使用により、ユーザーは直感的にコンテンツの構造を理解し、効率よく情報を把握できるようになります。
余分な余白をつけない
余白は効果的なデザイン要素ですが、余白を使いすぎると逆効果になる可能性があります。
- 必要以上に広い余白は、コンテンツの密度を下げ、情報の伝達を妨げる可能性があります。
- 過剰な余白により、ユーザーが必要な情報を見つけるのに苦労する場合があります。
- 適度な余白を心がけ、コンテンツと余白のバランスを取ることが重要です。
余白の使用は、「必要最小限」ではなく「必要十分」を目指すべきです。コンテンツの可読性と視覚的な魅力のバランスを取ることが大切です。
レスポンシブなデザインを心掛ける
様々なデバイスでウェブサイトが閲覧される現代では、レスポンシブデザインは不可欠です。
- 異なる画面サイズに対応できるよう、柔軟な余白設計を行います。
- 小さな画面では余白を縮小し、大きな画面では適度に拡大します。
- コンテンツの重要度に応じて、画面サイズごとに余白の優先順位を調整します。
- 絶対値(ピクセル)ではなく、相対値(%やem)を使用して余白を設定することで、柔軟性を高めます。
レスポンシブな余白デザインにより、どのデバイスでも最適な閲覧体験を提供することができます。
まとめ:デザインの余白は重要!UX向上を目指そう
本記事では、余白がウェブデザインにおいて、いかに重要な意味を持つかについて解説してきました。UI設計や情報アーキテクチャー構築において、過不足のない適切な余白こそがユーザーエクスペリエンス向上に不可欠な要素だと再認識いただけたでしょうか。
Jitera社では、最新のAIを活用したウェブシステム開発を行っていますが、その設計・開発プロセスにおいて、特にUIデザインと情報設計で余白に着目しています。お客様の課題解決に役立つサービス開発を実現するために、常に最適な余白の追求をテーマの一つとしています。
今回のテーマである「余白」についてはもちろん、デザインについて、ウェブサイトやアプリの開発でお困りのことがございましたら、是非Jiteraまでご相談ください。