株式会社カプコン
6年分の暗黙知をAIに引き継ぎ、開発チームの新しい一歩へ
会社名 | 株式会社カプコン |
|---|---|
業界 | ゲーム・エンターテインメント |
業種 | 家庭用テレビゲームソフト、モバイルコンテンツおよびアミューズメント機器等の企画、開発、製造、販売、配信ならびにアミューズメント施設の運営 |
従業員規模 | 3,593名 (2026年3月31日現在) |
システムの種類 | フロントエンド開発、インフラ構築・運用、CS開発(CAPCOM IDシステム等) |
インタビュー担当者
株式会社カプコン | (写真左から) |
|---|---|
Jitera | カスタマーサクセスチーム 藤野 孝昭 |
課題
担当者の入れ替わり・退職により、長期プロジェクトの開発経緯がブラックボックス化していた。
各種AIツールをエンジニアが個人で利用しており、組織として統一・管理できていなかった。
インフラをはじめ、担当者が変わるたびにノウハウが失われ、引き継ぎコストが高かった。
導入効果
リバースエンジニアリングによる仕様可視化で、ブラックボックス化したコードの解析工数を大幅削減。
IaCコードのAI解析・ドキュメント自動生成により、インフラの引き継ぎコストが低減。
コンポーネント単位のドキュメント化・テスト整備など「できなかったこと」が実現可能に。
エンジニアの役割が変化。指示を出す相手が「人」から「AI」へとシフトし、高付加価値業務に集中できるようになった。
今後の展望
単純作業をAIに委譲し、人間はより高度な判断・設計業務に集中する体制を目指す。
リアルタイム共同編集・コンテキスト共有によるチーム全体でのコラボレーション強化。
業務フローに特化したカスタムエージェントをチームメンバーに展開し、組織全体での活用を広げていく。
導入の経緯と課題
― Jiteraを知ったきっかけや、導入に至るまでの経緯を教えてください。
吉田様: ちょうど昨年の今ごろ、「ソースコードとドキュメントを連携させてコード生成を効率化できないか」と考えていました。自前で仕組みを構築して試していたのですが、チームで使い回すことを考えると、管理し続けることへの限界を感じていました。既製のSaaSを探したところJiteraを見つけて、「これはまさに自分がやりたかったことだ」とすぐに問い合わせをしました。
その後、社内のAI活用に関する調整や予算確保を経て、2025年11月に正式導入しました。検討から導入まで約半年かかりましたが、組織として納得感のある形でスタートできたと思っています。

― 導入前、どのような課題を抱えていましたか?
吉田様: 一番大きかったのは、担当者の入れ替わりや部署の再編による「開発経緯のブラックボックス化」です。保守・運用フェーズのプロジェクトだけでなく、進行中のプロジェクトを含めて「当時のことは誰も知らない」という状態になりやすく、引き継ぎのたびにゼロから把握し直す必要がありました。
三橋様: 私がCAPCOM ID(カプコンの各タイトルをまたいで利用できる統合会員サービス)に関わり始めた時点では、立ち上げメンバーがすでに異動しており、関連組織の体制も変化していました。そのため、プロジェクトの経緯や背景に関する正しい情報が十分に整理されていない状態からの参加となりました。運用開始から5年経過して改修や機能追加が行われていたため、Jiteraを使ったリバースエンジニアリングがとても効果的であると考えました。
吉田様: 各種AIツールをエンジニアが個人で利用していましたが、組織として利用環境が統一されておらず、管理が煩雑でした。個人的にはコード生成の精度の高さからClaudeを高く評価していたものの、組織として導入するには社内調整が必要で、ハードルがありました。
『Jitera』を選んだ理由
― 数あるAIツールの中で、Jiteraを選んだポイントを教えてください。
吉田様: 一番の決め手は、「ソースコードとドキュメントを連携させながら、コンテキストとしてAIに引き継ぐことができる」という点です。
既存のリポジトリやドキュメントをコンテキストとして読み込ませるだけで、現場の知識を踏まえた回答が得られます。自前で仕組みを構築する必要がなく、チームですぐに使い始められる点も大きかったです。ドキュメントとコードを常に同期しながら開発を進められるため、コードを書くことと、次の担当者のために記録を残すことが、同じ作業の中で自然に完結します。
長年の課題だった「属人化」に対して、現実的なアプローチが取れると感じました。各自が別々のツールを使っている状態では、組織として知見が蓄積されていきません。Jiteraであれば、現場のコードもドキュメントも含めたコンテキストをチームで共有・蓄積できる点も、大きな決め手でした。
Claude・ChatGPTなど複数のAIモデルをひとつのプラットフォームで使い分けられる点も、用途に応じた柔軟な活用を後押ししています。
現在の活用状況
― 現在、どのようなシステム開発業務にJiteraをご活用いただいていますか?
野村様: 主にeスポーツ関連サイトやCAPCOM IDのイベント・キャンペーンページのフロントエンド開発に使っています。デザイナーがFigmaで作ったコンポーネントをコードに落とす作業や、スクリプトで完結するロジックの実装に特に効果を感じています。
「このボタンにこのアクションをつけたい」という指示を出すだけで、使用モジュールの調査から実装コードの生成まで一気にやってくれます。以前は別ツールも試していましたが精度が出なかったので、Jiteraに切り替えて正解でした。
特に気に入っているのは、コンポーネントごとにドキュメントを先に作り、それをもとにコードを生成するサイクルです。ドキュメントを編集してコードに反映し、またドキュメントに戻す、という往復をすることで、実装と同時に保守性の高いドキュメントが自然に整備されていきます。コード品質の担保については、AIを活用してテストケースの検証を効率化する運用を確立しています。

三橋様: CAPCOM IDの開発では、最初はソースコードをJiteraに読み込ませてリバースエンジニアリングし、仕様を把握するところから始めました。そこから発想を転換して、「自分たちの組織の認識と現実のギャップを埋める」ためにJiteraを活用するようにしています。社内の情報共有ツールに蓄積された仕様書や不具合対応の経緯などをコンテキストとして読み込ませ、今の実態と照らし合わせています。
Jiteraに情報を渡すと、第三者的な目線で推論してくれます。「自分たちが問題だと思っていたことが本当に課題なのか」「見えていない問題が他にないか」という問いに対して、客観的な視点から答えを返してくれます。自分たちだけでは気づきにくかったことが見えてくるのが、一番の価値だと感じています。
LLMの使い分けも工夫しています。コードのレビューや仮説の壁打ちなど目的に応じて、ClaudeやChatGPTを使い分けています。さらにJiteraの出力を別のチャットに入力し直して精度を確認するダブルチェックも実施しており、生成結果の信頼性を高めています。

嶋田様: インフラは基本的に1人で構築・運用することが多く、「担当者が変わった時に次の人が困らないか」という問題が常についてまわります。IaC(Infrastructure as Code)で書いたコードは動いていても、なぜその構成にしたのかという意図までは残しにくいものです。JiteraでIaCのコードを解析・ドキュメント化することで、クラウドリソース間の関係性や構成の意図が人間が読みやすい形で整理され、次の担当者が引き継ぎやすい環境を作れるようになりました。
DevOpsのパイプライン構築でも効果を感じています。過去に構築したパイプラインをそのまま使い回すのは難しいことが多いですが、Jiteraでコードを解析・最適化することで、プロジェクトをまたいだ再利用がしやすくなりました。また、コンテナ化された実行環境を構築することで、生成コードの動作確認も効率化できています。クラウドリソースなど慎重なチェックが必要なものについては、公式ドキュメントと照らし合わせて確認する運用も整えています。

導入後の効果
― 導入後、開発現場にどのような変化がありましたか?
野村様: 「今まではできなかったことができるようになった」という変化が大きいです。コンポーネント単位のドキュメント化やテストの整備など、以前は「やった方がいいとわかっていてもできなかった」ことが実現できるようになりました。1つ1つの作業時間は確実に減っていますが、時間が空いた分だけ次のことをやりたくなってしまうので(笑)、トータルの作業量は増えています。できることが増えている、という感覚です。
三橋様: Jiteraを使っていると、自分が何をしたいのかを明確に言語化する必要があります。その訓練の積み重ねが、チームとして「課題を正確に言語化する力」を育てているように感じます。今は一部のエンジニアが積極的に活用している段階ですが、活用しているメンバーの間では、自分たちの役割をどこまで人間がやるべきか、という議論が生まれてきています。今まで当たり前にやっていたことを見直し、新しい一歩を踏み出しつつあると感じています。
その変化はエンジニアの役割にも表れています。プロジェクト全体を俯瞰しながらタスクを整理し、AIに指示を出す、そうした「エンジニアリーダーとしての動き方」に変化が生まれてきています。組織全体への浸透は今後の課題ですが、AIを活用したメンバーが変化のきっかけを作り始めているのは確かです。

今後の『Jitera』活用について
― 今後、Jiteraをどのように活用していきたいですか?
野村様: 基本的な方向性として、「人間がやらなくてもいい単純作業はAIに委ねて、人間はより高度な判断・設計業務に集中する」という形を目指しています。モジュールの仕様を1つずつ調べてドキュメントに書き起こすような作業はAIに移譲することで、エンジニアが本来の創造的な仕事に向き合える時間を増やしたいと考えています。
― さらに期待している機能や用途があれば教えてください。
嶋田様: 今は個人でのAI活用が中心ですが、リアルタイムでのドキュメント共同編集やコンテキスト共有といった機能を使って、チーム全体での活用に広げていきたいと考えています。
三橋様: 現在は自分用のカスタムエージェントを数多く作って活用していますが、作りすぎてしまっているのが正直なところです(笑)。自分が使うには非常に使いやすい形になっているのですが、他のメンバー向けにエージェントを展開しようとした時に、そのフローに本当に特化したエージェントになっているかどうかがまだ見えていません。今後は、エージェントを対話しながら設定できるようにしたり、必要なコンテキストを自動でリストアップして読み込ませる仕組みを使いながら、チーム全体に広げていきたいと考えています。
― 担当者の入れ替わりやプロジェクト解散による「開発経緯の断絶」という課題は、ゲーム業界に限らず多くの企業が抱えるものです。既存のソースコードやドキュメントをコンテキストとして学習させ、現場の暗黙知をチームの資産として蓄積していくカプコン様の取り組みは、同様の課題を持つ多くの企業にとって参考になると思います。
本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。
