タスク管理はプロジェクト管理に欠かせない重要な作業ですが、タスクの洗い出しや割り振り、スケジュールの作成、進捗管理などやることは盛りだくさんです。
特にタスクの洗い出しや割り振りについては、プロジェクト開始まで時間がない中、急いで行った経験がある人も多いのではないでしょうか?
AI技術の進化により、進捗管理の効率化にAIを活用する事例が増えています。
AIを導入することで、タスクの自動生成や割り当てはもちろん、スケジュール管理やリスク予測まで自動化でき、業務効率が劇的に向上します。
今まで時間をかけていた作業をAIに任せることで、本来集中すべき業務に時間を割けるようになるでしょう。
今回は、私が実際にシステム開発の現場で導入し、その効果を実感したAIツールを使ったタスク管理方法や、AIを使いこなすためのプロンプトの作り方まで、具体的な方法を紹介します。
2014年 大学在学中にソフトウェア開発企業を設立
2016年 新卒でリクルートに入社 SUUMOの開発担当
2017年 開発会社Jiteraを設立
開発AIエージェント「JITERA」を開発
2024年 「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」に選出
進捗管理におけるAIの使い方
AIを活用した進捗管理は、従来の方法と比べて格段に効率的で正確です。
ここでは進捗管理におけるAIの使い方について以下の3つを紹介します。
- タスク自動生成と割り当て
- スケジュール管理と調整
- リスク管理と予測
それではそれぞれについて見ていきましょう。
タスクの生成と割り当て
AIを活用することで、タスクの生成と効率的な割り当てが可能になります。特に、AIでタスクを生成することで、プロジェクト開始時の作業を大幅に効率化できます。
AIは、プロジェクトの規模や内容、過去のデータなどを分析し、必要なタスクを自動で生成してくれます。
さらに、各メンバーのスキルや経験、現在の作業負荷などを考慮して、最適な担当者へ自動でタスクを割り当てることも可能です。
AIが生成したタスクリストは、人間が作成するよりも網羅的で、見落としがちな細かいタスクまでカバーしています。さらに、各タスクに予想所要時間が付与されているため、リソース配分や全体スケジュールの把握が容易になります。
AIを活用してタスクを自動生成する具体的なプロンプトは、このあと紹介します。
スケジュール管理と調整
AIはスケジュール管理にも大いに役立ちます。
最近では、GoogleカレンダーやOutlookと連携することで、会議のスケジュール調整を自動化しようとする試みもあります。
さらに、プロジェクトの進捗状況をリアルタイムでモニタリングし、遅延が発生した場合には自動的にスケジュールを調整するような使い方もできます。
AIを活用してスケジュール管理することで、スケジュール調整にかかる時間を削減できる効果も得られるでしょう。
リスク管理と予測
AIは大量のデータを解析し、プロジェクトのリスクを予測する能力があります。AIを活用してリスク管理をすることで、プロジェクトの成功率を上げる効果を期待できます。
例えば、過去のプロジェクトデータを基に、どのタスクが遅延する可能性が高いかを予測し、事前に対策を講じることができます。
また、リスクが発生した場合の影響を最小限に抑えるための最適なアクションプランを提案することも可能です。
AIによるリスク管理を行うことで、経験や直感に頼らない、より客観的かつ包括的なリスク評価ができます。
AIを使った進捗管理方法の例とプロンプト
ここでは、私が実際にAIを活用してタスク管理を行った例と、さらに使いこなすためのコツを紹介します。
実際のプロンプトや出力内容と共に紹介するのでぜひ参考にしてみてください。
実際の使用例
以下は、私が実際のプロジェクトでAIを活用してタスク管理を行った例です。
使用したAIツール:OpenAI GPT-4o
実際のプロンプト:
あなたは経験豊富なプロジェクトマネージャーです。以下のプロジェクト目標に基づいて、具体的で実行可能なタスクリストを作成してください。
プロジェクト目標:
– ECサイト向けの新しい顧客管理システム(CRM)を開発する
プロジェクト詳細:
– 主要機能:顧客情報管理、購買履歴追跡、セグメンテーション、キャンペーン管理、顧客サポート統合、分析ダッシュボード
– 開発期間:6ヶ月
– チーム構成:プロジェクトマネージャー1名、フロントエンドデベロッパー2名、バックエンドデベロッパー2名、データベースエンジニア1名、QAエンジニア1名、UIデザイナー1名、ビジネスアナリスト1名
タスクリストを作成する際は、以下の点に注意してください:
1. 各タスクは具体的で明確であること
2. タスクの優先順位を1-5で示すこと(1が最も高い)
3. 各タスクの推定所要時間を記載すること
4. タスク間の依存関係がある場合は明記すること
5. 各タスクに担当者や役割を割り当てること(具体的な名前がない場合は役職や部署で可)
出力形式:
– タスク名: [タスク内容]
優先度: [1-5]
推定時間: [時間]
担当: [担当者/役割]
依存関係: [あれば記載]
最後に、プロジェクト全体の推定所要時間と、クリティカルパスとなるタスクを3つ挙げてください。
実際の出力:
フェーズ 1: プロジェクト計画と設計
- プロジェクトキックオフミーティング
- タスク内容: プロジェクトの全体像を説明し、チームメンバーの役割を確認
- 優先度: 1
- 推定時間: 2時間
- 担当: プロジェクトマネージャー
- 依存関係: なし
- 要件定義
- タスク内容: ビジネスアナリストが顧客管理システムの詳細要件を定義
- 優先度: 1
- 推定時間: 40時間
- 担当: ビジネスアナリスト
- 依存関係: プロジェクトキックオフミーティング
- システム設計
- タスク内容: システムアーキテクチャの設計、データベーススキーマ設計
- 優先度: 1
- 推定時間: 80時間
- 担当: バックエンドデベロッパー、データベースエンジニア
- 依存関係: 要件定義
- UI/UXデザイン
- タスク内容: 顧客管理システムのインターフェースデザイン
- 優先度: 2
- 推定時間: 60時間
- 担当: UIデザイナー
- 依存関係: 要件定義
フェーズ 2: 開発
- データベース構築
- タスク内容: データベースのセットアップとテーブル作成
- 優先度: 2
- 推定時間: 40時間
- 担当: データベースエンジニア
- 依存関係: システム設計
- バックエンド開発
- タスク内容: APIおよびサーバーサイドロジックの実装
- 優先度: 2
- 推定時間: 160時間
- 担当: バックエンドデベロッパー
- 依存関係: データベース構築
- フロントエンド開発
- タスク内容: 顧客情報管理、購買履歴追跡、セグメンテーション、キャンペーン管理、顧客サポート統合、分析ダッシュボードのUI実装
- 優先度: 3
- 推定時間: 160時間
- 担当: フロントエンドデベロッパー
- 依存関係: UI/UXデザイン
…以下省略
推定所要時間
プロジェクト全体の推定所要時間: 702時間
クリティカルパスとなるタスク
- 要件定義
- システム設計
- 統合テスト
このようにAIを活用することで、プロジェクト開始から終了までの主なタスク、優先度、担当者の一覧を洗い出せました。
また、実際に活用したときは、工程や機能ごとにもう少し細かい要件を伝えて、より詳細なタスクを出力するという使い方もしていました。
AIを活用すると機能一覧や画面一覧からそれを作るためのタスクを自動生成してくれるため、効率化だけではなく観点の抜け漏れを防げます。
プロジェクトマネージャーやプロジェクトリーダーとして進捗管理を行う際のアドバイザーに、AIを活用するのがおすすめです。
生成されたタスクの最適化方法
AIが生成したタスクリストは、完璧ではありません。
より精度の高いタスク管理を実現するために、以下の5点を意識して、タスクリストを最適化するのがおすすめです。
- タスクの確認と修正
- タスクの優先順位付け
- 担当者の割り当て
- 期限の設定
- タスクの詳細化
以下ではそれぞれについて説明します。
タスクの確認と修正
AIが生成したタスクを一つずつ確認し、タスクの内容が適切か、抜け漏れがないかなどを確認します。
必要に応じて、タスクの内容を修正したり、不要なタスクを削除したりします。
タスクの優先順位付け
各タスクの優先度を再評価し、必要に応じて調整します。
プロジェクトの目標達成に向けてどのタスクが重要度が高いかを判断し、優先順位を再検討しましょう。
担当者の割り当て
AIの提案を参考にしながら、各メンバーのスキルや経験、作業負荷などを考慮して、最適な担当者を割り当てます。
プロジェクト作業以外のスケジュールやチームメンバーの休暇予定なども考慮した割り当てを行うのがおすすめです。
期限の設定
各タスクに適切な期限を設定します。
プロジェクト全体のスケジュールを考慮し、タスク間の依存関係も踏まえて現実的な期限を設定します。
AIが提案した期限を基に、チームの状況や外部要因を加味して調整するとよいでしょう。
タスクの詳細化
必要に応じて、タスクをさらに細分化します。
大きなタスクを小さな実行可能な単位に分割することで、進捗管理が容易になります。
AIを使ったタスク作成のコツ
AIを活用してタスクを自動生成する際、適切なプロンプトの作成が極めて重要です。
ここでは、私の経験から、効果的なプロンプトを作成するためのテクニックと、さらにそれを最適化するための裏技を紹介します。
効率的なプロンプトの作り方
効率的なプロンプトを作成するには、以下の5つのポイントを押さえることが重要です。
- 具体的で明確な指示を出す
- コンテキストを提供する
- フォーマットを指定する
- 例を示す
- 細かい要件を明記する
以下ではそれぞれについて説明します。
具体的で明確な指示を出す
AIには具体的で明確な指示を出すことが重要です。
抽象的な表現ではなく、「○○の設計書を作成する」「○○のテストコードを書く」のように具体的なタスク内容を指示します。
コンテキストを提供する
プロジェクトの背景や目的を含めたコンテキストを提供することで、AIはより適切なタスクを生成できます。
例えば、プロジェクトの目的や背景、ターゲットユーザーなどを伝えることで、AIはより適切なタスクを生成できます。
フォーマットを指定する
タスクのフォーマットを指定することで、出力されるタスクが一貫性を持つようになります。
出力結果として、タスク名、担当者、期限、詳細などを指定すると良いでしょう。
例を示す
AIに期待する出力の例を提供することで、より適切な結果が得られます。
例えば、「以下のような形式でタスクを生成してください」といった具体的な例を提供することが有効です。
例を示すことで、AIは期待するアウトプットのタイプを理解しやすくなります。
細かい要件を明記する
プロジェクトに特有の要件や制約条件を明確に伝えることで、より精度の高いタスク生成が可能になります。
期限や優先順位、担当者のスキルなどの要件もあればプロンプトに含めるのがおすすめです。
プロンプト作成の裏技
効率的なプロンプト作成をさらに最適化するための裏技として、「生成AIにプロンプトを作ってもらう」という方法があります。
これは、メタプロンプティングと呼ばれる技術で、AIの能力を活用してより効果的なプロンプトを生成する方法です。
実際の使用例:
あなたは経験豊富なAIプロンプトエンジニアです。以下のプロジェクトに関する詳細なタスクリストを生成するための最適なプロンプトを作成してください:
プロジェクト概要:
– 名称:ECサイトの支払いシステム刷新
– 目的:既存の決済システムを新しいクラウドベースのソリューションに移行
– 期間:3ヶ月
– チーム:プロジェクトマネージャー1名、バックエンドエンジニア2名、フロントエンドエンジニア1名、QAエンジニア1名
プロンプトには、タスクの詳細、担当者、予想所要時間、依存関係、優先度を含めるように指示してください。また、セキュリティとパフォーマンスに関する考慮事項も含めてください。
このように、AIにプロンプトの作成を依頼することで、人間が見落としがちな視点や、より効果的な表現方法を取り入れたプロンプトを作成できます。
実際には、まずAIにプロンプトのたたき台を作ってもらい、プロジェクトの特性などの細かい要件を追記するというやり方がおすすめです。
まとめ
進捗管理にAIを活用することで、プロジェクト管理の効率化と品質向上効果を得られます。
この記事では、AIを活用したタスク管理の具体的な方法や活用ノウハウについて解説しました。
進捗管理におけるAIの使い方としては、タスクの自動生成と割り当て、スケジュール管理と調整、リスク管理と予測などが挙げられます。
また、AIを使用してタスクを生成するときは、具体的で明確な指示を出すこと、コンテキストを提供すること、フォーマットを指定すること、例を示すこと、細かい要件を明記することなどが重要です。プロンプトの作成にもAIを活用するのもおすすめです。
AIを活用したタスク管理は、単にタスクを自動生成するだけではありません。
人間の経験と判断力をAIの能力と組み合わせることで、より効果的なプロジェクト管理が可能となります。
今回紹介した内容も参考に、プロジェクトの特性や組織の文化に合わせて、AIの活用方法を模索してみるのはいかがでしょうか。
AIをうまく活用し、プロジェクトの成功確率を高め、より効率的で効果的なプロジェクト管理を実現しましょう。