Rustは、安全性・速度・並行性を重視したプログラミング言語で、GUIアプリケーションの開発が可能です。
この記事では、RustでGUIアプリケーションを開発するためのフレームワークを解説しています。
この記事を読んで、RustでGUIアプリケーションを開発する際の参考にしてください。
PHPを独学で勉強した後にWeb業界に参入。大手企業でプログラマーとして活躍後、自社サービスの立ち上げ、大手検索エンジンサービスの保守運用作業、ソーシャルゲーム開発などに携わりながら、SE・管理職の道を歩んで現在に至る。現在は、管理職に携わる傍ら、これまでの経験を活かした執筆活動を続けている。
RustでのGUIアプリケーション開発の概要

Rustは、安全性・速度・並行性を重視したプログラミング言語で、Mozilla Researchによって開発されました。メモリの安全性を確保しながらも、高速なパフォーマンスを提供することに重点を置いているのが特徴的です。
Rustでは、GUIアプリケーション開発が可能ですが、いくつかのGUIフレームワークやライブラリが存在します。
ここでは、RustでのGUIアプリケーション開発を理解するために、以下の項目に分けて、その基本を解説します。
- RustとGUIアプリケーション開発の基礎知識
- GUIアプリケーション開発におけるRustのメリットと課題
それぞれの内容をみながら、RustでのGUIアプリケーション開発の概要を理解していきましょう。
RustとGUIアプリケーション開発の基礎知識
Rustを使用して、GUIアプリケーションを開発する際のポイントは、以下のとおりです。
- GUIフレームワークの選択
- Rustの基本知識
- イベント処理
- レイアウトとUIデザイン
- マルチスレッド処理
- テストとデバッグ
RustでGUIアプリケーションを開発するには、まずは使用するGUIフレームワークを選択しましょう。おもな選択肢には、Druid・gtk-rs・iced・Touri・Conrodなどがあります。
GUIアプリケーションを開発する前に、Rustの基本的な文法や機能を理解していくことが重要です。所有権システム・トレイト・パターンマッチングなどの概念を把握しておくと、効率的なコードを書けるでしょう。
GUIアプリケーションでは、ユーザーの入力に対するイベント処理が重要です。ボタンのクリック・テキストフィールドの変更・マウスの移動などのイベントを適切に処理する必要があります。
選択したフレームワークやライブラリが、どのようにイベント処理をサポートしているかを確認するとよいでしょう。
GUIアプリケーション開発では、UIのレイアウトやデザインも重要です。ウィジットの配置・サイズ・色・フォンtなどを適切に設計し、ユーザーが使いやすいインターフェースを提供できるように心がけましょう。選択したフレームワークやライブラリが、どのようにレイアウトを管理するかを理解し、適切に利用することがポイントです。
一部のGUIアプリケーションでは、マルチスレッド処理が必要な場合があります。たとえば、UIとバックエンドの処理を別々のスレッドで実行して、UIのフリーズを防ぐ、などです。
GUIアプリケーションの開発では、適切なテストとデバッグが不可欠となります。Rustでは、テストフレームワークを利用してユニットテストや結合テストを実行し、コードの品質を確保することが重要です。
また、デバッガを活用して問題を特定し、効率的に修正していくとよいでしょう。
GUIアプリケーション開発におけるRustのメリットと課題
Rustを使用したGUIアプリケーションのメリットは、おもに以下のようなものがあります。
- 安全性と信頼性
- 高速なパフォーマンス
- 豊富なエコシステム
- クロスプラットフォームをサポート
Rustは、メモリ安全性を保証するための所有権システムを持っており、ヌルポインタやデータ競合などの一般的な問題を回避が可能です。その結果、GUIアプリケーションの安全性と信頼性の向上が期待できます。
Rustは、CやC++と同様に低レベルの制御ができ、直接的なメモリアクセスが可能です。直接的なメモリアクセスができるため、高速で効率的なGUIアプリケーションの開発ができます。
Rustには、豊富なエコシステムがあり、多くのGUIフレームワークやライブラリの利用が可能です。これらフレームワークやライブラリの中から、開発者は必要なツールやリソースを容易に見つけられるでしょう。
一部のGUIフレームワークは、クロスプラットフォームに対応しており、Rustで開発したアプリケーションを複数のプラットフォームでの実行が可能です。
また、以下のような課題もあります。
- 生産性の低下
- GUIフレームワークの成熟度
- 学習曲線の急増
- リソースの制限
Rustはメモリ安全性を保証するため、時に開発者に対して厳しい制約を設ける場合があります。所有権システムや借用規則を理解するのに時間がかかる場合があり、開発の初期段階での生産の低下を引き起こす可能性があるでしょう。
RustのGUIフレームワークは、まだ比較的新しいものが多く、成熟度や機能の面でほかの言語のGUIフレームワークと比較して劣ることがあります。また、ドキュメントやサポートの質も異なる場合があるでしょう。
Rustは、新しいプログラミング言語であるため、学習曲線が急増する可能性があります。特に、所有権システムやトレイトなどの概念は、ほかの言語と異なるアプローチがあるため、習得が難しい場合があるでしょう。
RustのGUIアプリケーション開発には、ほかの言語と比較して利用可能なリソースやツールが制限されている場合があります。
特定のGUIフレームワークやライブラリが特定のプラットフォームにしか対応していない場合があるため注意が必要です。
Rustに関しては、以下の記事でも詳しく解説してるため、参考にしてください。
Rustで利用可能なGUIフレームワークとライブラリ

RustでGUIアプリケーション開発を行う際は、フレームワークやライブラリの選択が重要であることがわかりました。ここでは、Rustで利用可能なGUIフレームワークやライブラリを、以下3つ紹介します。
- Tauri
- Druid
- Iced
それぞれのツールの特徴を掴んで、自社にあったフレームワークやライブラリをみつけてください。
Tauri

出典:公式サイト
Tauri は、Web 技術を使用してデスクトップアプリを開発するためのフレームワークです。プラグインをサポートする機能を搭載しており、高いパフォーマンスとリソース効率が期待できます。
クロスプラットフォームにも対応しているため、さまざまなOSで動作するデスクトップアプリの作成が可能です。このため、Web開発者が簡単にデスクトップアプリを構築できるのが魅力の1つです。
GUI は Web ページをデザインすることで作成するため、メイン言語は Rust ですが、Web ページを作成するには HTML5・CSS・JavaScript の知識も必要になります。
Druid

出典:公式サイト
Druid は、Rust ネイティブの UI デザインツールキットです。
データドリブンで宣言的なフレームワークで、アプリケーションモデルを Data トレイトで記述し、ウィジェットのツリーを構築します。
Druid の主な目的は、洗練されたユーザーエクスペリエンスを提供することです。
Rust に精通したプログラマーであれば、Druid のしくみを理解するのは容易でしょう。
Iced

出典:公式サイト
Icedは、Rust用のクロスプラットフォームのGUIライブラリです。
シンプルさとタイプセーフティを重視しており、タイプセーフで反応性の高いプログラミングモデルを持つことが特徴的です。
クロスプラットフォームに対応しており、Windows・macOS・Linux・Webに対応しています。
GUIアプリケーション開発の実践例と活用事例

ここまで、RustでGUIアプリケーションを開発するのにおすすめなフレームワークやライブラリをみてきました。次に、これらのフレームワークやライブラリを活用した事例をみていきましょう。
以下は、そのおもな3つの事例です。
- Tauriを用いた実際のプロジェクト例
- Druidの活用事例とユースケース
- Icedを用いたGUIアプリケーションの開発事例
それぞれのフレームワークやライブラリの事例をみて、自社で活用できるかの参考にしてください。
Tauriを用いた実際のプロジェクト例
Tauriを用いたプロジェクト例にToDoリストがあります。
このプロジェクトは、ToDoリストを管理するシンプルなGUIアプリケーションを開発するものです。Tauriを使用した、デスクトップアプリケーションとして構築されており、以下はそのおもな機能です。
- タスクの追加・編集・削除
- タスクの完了/未完了のマーク
- タスクの優先順位の設定
- タスクのフィルタリング
Todoリストは、バックエンドをRustで構築して、フロントエンドをHTML・CSS・JavaScriptで構築したデスクトップアプリケーションです。また、タスクのデータを永続化するためのデータベースとしてSQLiteが使用されています。
Druidの活用事例とユースケース
Druidでは、さまざまな形式でのアプリケーション作成が可能です。
まず、デスクトップアプリケーションでは、以下のようなものがあります。
- メモアプリケーション
- タスク管理アプリケーション
- ブログエディタ
- メールクライアント
- カレンダーアプリケーション
これらのアプリケーションは、豊富なUIコンポーネント・イベント処理・データバインディングなどの機能を活用して、使いやすく効率的なユーザーインターフェースの提供が可能です。
ほかにも、Druidでは、クロスプラットフォームのサポートしており、Windows・macOS・Linuxなどの複数のプラットフォームで動作します。このため、複数のプラットフォームに対応したアプリケーションを作成した場合に、便利です。
Druidでは、データ可視化アプリケーションの作成が可能で、以下はその一例です。
- 地図やグラフィックを使用した地理情報システム
- センサーデータのリアルタイム表示やログの可視化
- チャットやグラフを表示するデータ分析ツール
これらのアプリケーションでは、Druidの豊富な描画機能やアニメーション機能を活用して、データを効果的に可視化できるのが特徴です。
Druidでは、ゲーム開発にも活用されています。
GUIフレームワークとしての基本機能に加えて、ゲームループや描画エンジンなどのゲーム開発に必要な機能を提供しています。ただし、大規模なゲーム開発には不向きで、ほかの専用のゲームエンジンがより適している場合が多いです。
このように、Druidは幅広い分野で活用されています。
Icedを用いたGUIアプリケーションの開発事例
Icedを用いたGUIアプリケーションの開発事例に、Markdown Editorがあります。このプロジェクトは、Markdown形式のテキストを編集できるシンプルなGUIテキストエディタです。
このGUIアプリケーションのおもな機能は、以下のとおりです。
- Markdown形式のテキストを編集できるエディタ領域
- テキストのリアルタイムプレビュー
- テキストの保存と読み込み
- テキストのエクスポート(HTML形式など)
このアプリケーションは、バッグエンドをRustで構築し、デスクトップアプリケーションのフロントエンドを構築するために Icedを使用しています。
Rust GUIフレームワークの比較と選択ポイント

Rust GUIフレームワークを活用して開発したアプリケーションには、さまざまなものがあることがわかりました。次に、そのフレームワークを比較するポイントをみていきましょう。
以下は、比較する際のおもなポイントです。
- 機能とAPIの豊富さ
- クロスプラットフォームのサポート
- ドキュメントとコミュニティのサポート
- パフォーマンス
- コードの安全性
GUIフレームワークを比較する際に、そのフレームワークで提供される機能やAPIの豊富さを比較することが重要です。
一部のフレームワークは、基本的なUIコンポーネントのみを提供している場合がありますが、ほかのフレームワークはより多くの高度な機能やカスタマイズオプションを提供しています。開発するアプリケーションの要件に応じて、適切なフレームワークを選択しましょう。
GUIアプリケーションは、複数のプラットフォームで動作する必要がある場合が多く、この場合、クロスプラットフォーム対応しているフレームワークであることが必須です。使用するGUIフレームワークがクロスプラットフォーム対応しているかどうかを確認し、対応しているプラットフォームとの互換性を確認しましょう。
開発中にドキュメントやコミュニティを活用できるかが重要なポイントです。わかりやすいドキュメントやアクティブなコミュニティがあれば、問題の解決や新しい機能の学習が容易になるでしょう。
GUIアプリケーションは、応答性とパフォーマンスが重要で、フレームワークがどのようにイベント処理やレンダリングを行うかを評価して、適切なパフォーマンスを提供するかどうかを確認するようにしましょう。
Rustは、安全性を重視する言語ですが、フレームワークがその安全性をどの程度サポートしているのかも重要です。メモリ安全性やデータ競合でのチェックがフレームワークに組み込まれているかどうかを確認し、コードの安全性を確保しましょう。
Rustを用いたGUIアプリケーション開発のまとめ

今回は、RustのGUIアプリケーション開発に関して、以下のことがわかりました。
- Rustは安全性・速度・並行性を重視したプログラミング言語である
- RustでGUIアプリケーションを開発するには使用するGUIフレームワークを選択することが重要
- 一部のGUIフレームワークはクロスプラットフォームに対応している
- RustのGUIフレームワークを選ぶ際に機能やAPIの豊富さを比較することが重要
Rustは、安全性・速度・並行性を重視したプログラミング言語で、GUIアプリケーション開発が可能です。
RustでGUIアプリケーションを開発するには、使用するGUIフレームワークの選択が重要です。
GUIフレームワークにはさまざまなものがありますが、一部では、クロスプラットフォームに対応しているものがあります。このようなものであれば、多くのプラットフォームに対応したアプリケーションを開発できるため、便利です。
RustのGUIフレームワークを選ぶ際に、機能やAPIの豊富さを比較することが重要となります。どのようなアプリケーションを開発したいかによって選ぶとよいでしょう。
このような、多くの選択肢があるRustでのGUIアプリケーション開発では、わからないことも多くなるでしょう。RustでのGUIアプリケーション開発で、困ったことや迷うことがあれば、知見を多く持つ、株式会社Jiteraへご相談ください。
どのようなアプリケーションを開発したいかをヒアリングさせていただき、適切なアドバイスをご提案させていただきます。

